055 王弟殿下の布石
最後のお話です☆
どなたのお話でしょう♪
城では様々な事が動いている中、学生で城に勤務していないベアトリス達には日常が訪れていた。しかし、急に宰相職に任命された王弟オーランド・アンダーソン公爵は、王族区域の離宮を急遽整える事になった。
兄王に嫌われ疎まれていたオーランドは、必要最低しか王都には訪れず。王都に滞在する際は、妻の実家であるテイラー家が招き入れてくれる為に王都にタウンハウスを持っていなかった。
館を置いた場合、兄にどの様な嫌がらせを受けるのかと心配し、管理する使用人を置くことさえ憚られたからだ。しかし、宰相となり城の仕事が増えるのであればテイラー家にずっと厄介になるわけにもいかないとタウンハウスを探していると、甥であるイーヴォイェレミアスに城の離宮を使ってはどうかと提案された。
城であれば、愛妻ユリアーナと愛娘ディオティマの安全面でも安心出来るのでその提案を受け急ピッチで整えさせた。やっと、離宮に生活を整えたところで、オーランドは宰相として忙しくなり執務室で夜を明かしたり、寝落ちしたっりと離宮にさえ帰る事が少なくなっていた。
帰ったとしても深夜、妻は起きてきてくれ少しだけ話す事が出来たが娘であるディオティマとは長く顔を合わせることが出来なかった。そんな中、ディオティマが姪のベアトリスを呼んでお茶をしたいと言う手紙が届いたのでオーランドは了承した。
◇◇◇
「ディーお姉様!お招きありがとう存じます」
「良く来てくれたわね。ベティ、レメ様。アード様。さあ、庭のガゼボにお茶の準備をしているのよ」
「お招きありがとうございます。私もよろしかったんでしょうか?」
アーデルベルトが相も変わらず恐縮しながらディオティマに問うと、ディオティマは、『もう長い事一緒に居るでしょう?私とお茶するのは嫌ですか?』と拗ねたように問い返す。
「いえ。そんな恐れ多いです。ディオティマ様をいやなのだと・・・」
アーデルベルトが慌てだすので、ディオティマは手を掴みポンポンと落ち着かせるとエスコートして下しまし。とエスコートを促す。
そんな二人をニコニコと微笑みながらベアトリスは眺めるが、クレメンスは手綱を掴まれている馬のようだなと思いながら苦笑する。
ガゼボにつくとアンダーソン公爵家の使用人たちが、アンダーソン公爵の自慢のお菓子やお茶を配膳してくれる。その様子を眺めつつ、庭園に目を移したベアトリスは呟く。
「城内には離宮がたくさんありましのね。私、知らなかったです」
「えぇ。面白いわよねぇ。国王の住居は本館の最奥にあり、その奥の北側に成人した王族の為の離宮。本館から東側に、来賓をもてなす離宮が距離を置かれて配置されて、西側は城で働くもの達の住居が立ち並ぶらしいのよ。王族に直接使える側近は、領地を持っていない次男や三男の場合、夫婦で生活出来る離宮まであるそうよ」
「それでは、オーランド叔父様はもしかして初めて王族の離宮に?」
「えぇそうなの。王子や王女は学園に入る頃に離宮を賜り整え始めるの。側近たちを動かす練習としてね。ずっと、使われていない離宮を賜るのだからまずは建物が人の手を借りないと痛む事から学ぶとハーシュが言っていたわ。それから修繕個所をまとめ、予算を組むの。それを申請して建物が住まえる様になると、次は布類ね。カーテンやカーペット。それは離宮を修繕している間に発注しないと揃わないと言っていたわ」
ふふっとディオティマが笑うと他の3人はどうしたのか?と丸い目をする。
「ごめんなさい。イヴ兄様の離宮はカーテンやカーペットが間に合わず、部屋のチェックしたり家具の相談に離宮を訪れるたびに廊下を歩く音がうるさくてしょうがなかったとハーシュに教えてくれたそうよ。イヴ兄様には、それを事前に教えてくれる兄や姉がいないものね。本来ならお父様がその立場にあったんでしょうね」
悲し気な顔になるディオティマに、アーデルベルトが不自然にならない程度に話を変えるように質問をする。
「しかし、今回アンダーソン公爵邸は早く整いましたね?」
「えぇ。そうなのこの離宮は、ハーシュが13歳の時から3年間手を加えた離宮なの。修繕が帰国の頃に終わって、カーペットとカーテンが入り始めたところだったのよ。後は家具を入れるだけだったから。今は、お父様は陛下のお母様は妃殿下から、私はリシュエンヌお姉様から賜った家具を入れて貰ったの」
「まぁ。ハーシュお兄様は、また一から離宮を整えますの?」
ディオティマの説明に、ベアトリスはハーシェルヒルムの離宮の心配をする。眉を下げて心配するベアトリスにディオティマは微笑んで答える。
「来年には、イヴ兄様が国王陛下として本館に映るから、イヴ兄様の離宮を頂けるのですって。家具はイヴ兄様が気に入っているものばかりだから本館へ移動させるのでハーシュは今から家具を整えないといけないのかとがっかりしてたわ。離宮を貰えるって伺って、全て整った離宮を貰えるとおもったみたい」
くすくすと笑うディオティマにつられベアトリスも笑うと更にクレメンス、アーデルベルトも不敬ですがと言いながら苦笑する。
「楽しそうだね」
そこに、低温の穏やかな声が響く。ディオティマは立ち上がると走りだし、金の髪と青紫の瞳を持った美丈夫に抱き着く。
「お父様!吃驚したわいつ戻りましたの?」
「ディー。お客様の前でこんなにはしゃいで、私の可愛い姫はいくつになっても可愛らしいな」
少しばかり注意を含みながらも、慈しむように微笑むオーランドにほっこりとしつつ、3人は席を立ち挨拶をする。
「叔父様、お久しぶりです。最近は多忙のようで離宮までお戻りになれないとか、ディー姉様が寂しがっていましたわ」
「あぁ。そうなんだ。寂しい思いをさせて申し訳ないよ。ベティは、ますます綺麗になって!今日はディーの招きに来てくれて嬉しいよ」
「お久しぶりでございます。クレメンスです」
「あぁ。覚えているよ。姪っ子の事をよろしく頼むよ」
「お初にお目にお言葉をお掛けさせて頂きます。クレメンスの兄。アーデルベルト・エヴァンスと申します」
アーデルベルトが挨拶をして頭を上げた瞬間目の前に来ていたオーランドに抱きこまれた。アーデルベルトの方が上背もあり、戦闘面でも上であるだろうが、王族であり、憧れのディオティマのお父様に急に抱き着かれたアーデルベルトは目を白黒させて硬直した。
突然のオーランドの奇行に、ディオティマを始めベアトリスもクレメンスもポカンとするしかできなかった。数分なのか数秒なのか分からないがぎゅっとアーデルベルトを抱きしめたオーランドはやっと口を開いた。涙声で・・・
「あの日は・・・・ディオティマを守って・・・くれて・・・ありがとう。あの日、兄上に・・・ディーが狙われて・・・絶望した。足を動かしたくても・・・全く早く走れず・・・君がディーの傍にいてくれて・・・本当に良かった」
やっと、抱きしめられている意味に気がつきアーデルベルトの緊張も少し緩む。ディオティマもベアトリスもホッと目を合わせているとオーランドはアーデルベルトの肩を両手でガシッと掴み更に話始めた。
「これからも、ディーをよろしく頼む」
「はい。私のできうる限りディオティマ様をお守りしたいと思います」
キリッと答えるアーデルベルトにオーランドは満足そうに微笑み更に話を続ける。しかし、その言葉に誰も理解が追い付かなくなった。
「あぁ。エヴァンス卿にも、話はつけたからな」
「「「「???」」」」
「君の家が、3兄弟で本当に良かった!」
「はい?」
「あぁ。それから、君は学園はまだ1年あったな。すぐに来てほしいが、学生の頃から城で働けるのは王族の側近のみか・・・私も王族に戻るし、私の側近扱いで行けると思う!」
「え?」
「宰相補佐官のポストを空けているが。君なら護衛騎士でも通りそうだし侍従もできそうだな!」
「「「「え?」」」」
「でも、次期アンダーソン公爵としては、宰相補佐官になるからな。卒業するまでは、ディーの護衛で卒業して就職という形がいいか。だが、君の有能さは聞いているからな。手伝いにはきてほしいな!」
オーランドの話は、どうやらアーデルベルトの話ではありそうだが、アーデルベルトももちろんの事3人も置いてけぼりで話をどんどん進める。オーランドの話の意味に1番最初に気がついたのはディオティマだった。
ディオティマは、いつもの淑女せんとした彼女らしくもなく顔を真っ赤に染めて口をハクハクとしながらオーランドに尋ねる。
「お父様?アード様が、次期アンダーソン公爵とおっしゃいました?」
「あぁ!そうだよ!」
「え?養子にですか?」
「何故だい?ディーの旦那様に決まってるだろう!」
「えぇ!?初めて伺いましたわ!」
「そうだね!先ほど、やっと色々解決してねぇ~。コンラーディン君は、顔立ちは1番夫人に似ているが中身はエヴァンス卿そっくりだね!いやぁ!色々約束させられちゃったよ!」
今度はクレメンスが、立てなおし弟の不審な話に反応する。
「うちのコディーが、オーランド殿下になんと・・・条件を・・・つけたのです・・・・か?」
「あぁ。嫡男のアーデルベルト君を我が家に貰い受けるわけだからね。彼が後継者になるんじゃないか?なので、婚約者の選定の際に口添えと、子が出来ない場合のディオティマとアーデルベルトの子供が複数いる場合。エヴァンス家の後継者問題を相談したいと言っていたよ!しっかりとした子だよね?」
未だ放心状態のアーデルベルトはどうやら気になる単語を拾ったようでブツブツとそれを繰り返す。
「僕と・・・ディオティマ様・・・の子供?・・・・」
色々理解はしたが、良く分からない展開に4人がついていけないとオーランドはディオティマに向き問いかける。
「アレ?ディー嬉しくなかった?ここ最近、手紙にもアーデルベルト君の事ばかりだったし、領地からこっちに来て再開した後も学園の話のほとんどはアーデルベルト君だったからイヴからも聞いててっきりディオティマの思い人かと思ったんだけど。勘違い?」
「え?」
ディオティマに急に、自分の心に育ち始めた気持ちを父親にバレている事と、ここで暴露された事に羞恥心が噴火のように湧きあがりオーランドに怒鳴りつけるがわなわなと震えその後が続かない。
「なんてことを言うのよ!」
「あぁ。なんてこったお父様の勘違いか、では・・・婿養子は諦めて、そのまま養子にもらおうか!君の人柄と有能さは手放せないからね!」
そんな事をウィンクをしながら言うオーランドにさっき真っ赤に染まったディオティマの顔は真っ青に急降下する。フラッと体が傾くディオティマをアーデルベルトはオーランドを避けて抱きとめる。
アーデルベルトが抱きとめたディオティマと目が合うが二人は決まず気に目をそらし、そらしたままディオティマに話しかける、更にオーランドに顔を向けて話を続ける。
「ディオティマ様にご不快な事をお聞かせしたようで、申し訳ありません。私の様な者では、ディオティマ様の隣には相応しくありません。
オーランド様、ディオティマ様は倒れるほどお嫌なお話です。どうか、ディオティマ様のお気持ちを汲んで下さい。宰相補佐官のお話は大変嬉しいのですが、アーデルベルト・エヴァンスとしてお引き立て頂けたらと思います」
ディオティマを抱えるように近くの椅子に座らせるとアーデルベルトが離れようとした瞬間、ディオティマがギュッとアーデルベルトの服を掴む。
「あのっ・・・・・・わたくしは・・・嫌ではありません」
海の様な青い瞳を少し伏せおずおずと話すディオティマは、再開したときの様な高貴さが成りを顰め最近見せてくれるようになった年相応の少女の様な顔にアーデルベルトはドキリとする。
「アーデルベルトは、どう思っているんですか?私の隣は・・・嫌なのですか?」
「へ?あっ・・・あの・・・・」
「こんな可愛げの無い女なんて百年の恋も冷めますわよね?ごめんなさい変な事を聞いて」
「何を言ってるんですか!ディオティマ様はかわいいですよ!最近、見せてくれる素のお顔や時折されるいたずらっ子の様な仕草は可愛らしく、ですが、他の人に見せる凛としたお姿は美しく、完璧な女性です!」
「え?あっ・・・ありがとう」
「はい!」
ニコッと微笑むアーデルベルトを尻尾を振った犬にしか見えないクレメンスと、ディオティマの気持ちの変化に薄々感じていたベアトリスはホッとして目を合わせ微笑む。
「じゃあ、二人が婚約するってことでいいね!」
にこっと無邪気な顔で微笑むオーランドにディオティマは
「お父様は反省して下さいまし!人の気持ちを聞く前に全て外堀を埋めるのはおやめください!お母様には全て報告させて頂きます!」
「あっごめん!すまなかった!ユリアーナにだけは言わないでディー!そーいえば、ユリの時もやってお怒られたんだ!」
オーランドの縋るような叫び声と、4人の笑い声がアンダーソン公爵の離宮に響き渡った。
完
拝読ありがとうございます。
~登場人物~
【愛称:ディー】ディオティマ・アンダーソン公爵令嬢(16)
アンダーソン公爵一人娘*髪:オレンジ色、腰までの長髪、ゆるウェーブがかかった髪質*瞳:青
【愛称:アード】アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息(16)
エヴァンス侯爵家長子*髪:腰までの長髪・黄金色・ストレート*瞳:碧
オーランド・アンダーソン公爵(35)
アンダーソン公爵、王弟*髪:金、肩までの胃くせ毛*瞳:青紫
【愛称:ベティ】ベアトリクス・テイラー侯爵令嬢(15)
テイラー侯爵家第二子長女*髪色:桔梗色・腰までの長髪・ストレート*瞳:金
【愛称:レメ】クレメンス・エヴァンス侯爵令息(15)
エヴァンス侯爵次子*髪:短髪・銀・センターパート・ストレート*瞳:赤
【あとがき】
最後まで読んで頂きありがとうございます!
群像劇として、まんべんなく話を進めたかったので、その先は皆さまの好きな妄想を働かしていただければなと他力本願な事を思っております。
少しでも、あははと楽しんで頂けたら幸いです。
誤字報告して下さった皆様には感謝の念に堪えません!
ありがとうございました!
また、他の作品で会えたら嬉しく思います。
拝読ありがとうございました。




