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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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050 国王陛下の不実

おいっって思う回です。

イーヴォイェレミアス自ら、尋問に立ち会ったのはノアベルト宰相、ニコラ・ブラウン、イーリシティナ王妃の3人だが、他の諸々の人間への聞き取りが終わり最後の国王陛下で父であるヘルムフリートの王族専用の牢へと向かった。


そこは、王族やそれに連なる傍系王族が罪を犯した際に投獄される塔と呼ばれる建物で1フロアに1部屋づつの部屋があるあまり大きくない建物だった。


その建物は少し特殊な作りになっており、階下の声は上階に筒抜けだが上階の声はまったく階下へと通さない構造になっていた。


つまり現在、階下に収容されているニコラの声は、上階にいるヘルムフリートには筒抜けになっており、ヘルムフリートがいくら呼び掛けてもニコラには何も届かない。


ニコラの事情聴取は、5日前に済ませてある。イーヴォイェレミアスは事情聴取をする司官達の隣で聞いていたが、幼女と話している気分になるほど不思議な体験であり胸焼けを起こすほど意味の分からないものだった。


ヘルムフリートは5日前にニコラの事情聴取を聞いたのだった。父親がどんな様子なのか気がかりだったが部屋付きの使用人たちからの報告は5日前から一昨日までは発狂して暴れていたと聞いたがその後は急に大人しくなって今は殆どベットから出ていないと不思議な顔で報告を受けた。


今日は、ニコラ・ブラウンの声が聞こえては事情聴取の妨げになると彼女は別の牢へと移送されている。なんと呼べばいいのか・・・自分たち兄弟の人生を適当に扱った人間を父上とは呼びたくも無く。陛下というのも、もう違う気がした。扉の前で立ち止まる。今更、ニコラスがニコラ夫人の事をあの女と呼ぶことが腑に落ちた。開錠した侍従がノックをして扉を開くので、そのまま入室の声をかけることにした。


「失礼します」


呼び方を決めることが出来ず、そのまま入室するとヘルムフリートはベットに横たわっていた身体を使用人の手を借りて起き上がり、こちらに顔を向けて同じ青紫の瞳を下げて微笑む。


「イヴ。お見舞いありがとう。どうだ、執務の調子は?」


ヘルムフリートの少し柔らかい物腰と、何もなかったような口ぶりに驚き使用人に視線を向ける。使用人も首を傾げるだけで何もわからないようだった。しかも、イヴと呼んだ。


「今、イヴと呼びましたか?」


「おぉすまん。体が弱ると心も弱って困る。幼少の頃の呼び名でついな」


恰も子を慈しむ様な顔でイーヴォイェレミアスに話しかけるヘルムフリートにイーヴォイェレミアスは混乱するしかなかった。震える唇で側近に医者の手配を頼む。


「どうした?イヴ。最近、ティナも顔を見せないのだが忙しいのか?」


「何も、おぼえてないのですか?」


「何がだ?」


「1週間前に何をしたのか覚えてないのですか?」


「1週間前?ハーシュの誕生日だったな。祝いに出れなくて寂しがっていたか?」


「?」


「殿下、医者が着ました」


近くに待機していたびであろう医者を侍従が連れてきたので、診察を医者がに任せて、イーリシティナの離宮へ向かった。混乱の中ヘルムフリートの事を伝え、ふたりで医者の診察を待った。1刻ほど時間がかかり、医者がふたりの待つ部屋に訪れてゆっくりと話を始めた。


「大変申し訳にくい事なのですが、陛下はニコラ・ブラウンの記憶を無くしております。そして、ご自身の記憶を改ざんしております」


医者の説明に愕然としたが、医者は侯爵家の家の者であり、あの場にはいなかったが王妃の許可を得て当主から城の医者として事の顛末を聞いていた。医者の聞き取りによるとヘルムフリートはニコラと出会った事を無かった事にしていた。


学生の時に思いを寄せた人はいなく、成人後政略結婚でイーリシティナと結婚したがお互いに尊重し合い愛を育み子供たちを5人育てたと記憶を改ざんしているという。今は、病気が見つかり療養していると思っている。


何故、そうなったかと聞くと使用人たちに聞き取りをしていた侍従の話を聞いて。医者が考えるには、5日前のニコラの事情聴取から話は始まる。


彼女の事情聴取は、自分は悪くない。ヘルムフリートが勝手に計画して協力してほしいというから臣下として断れなかっただけで貴族としてしょうがない事だったと言う。ヘルムフリートを愛しているのかという事については、好きだけど、別に愛してはいないと答えた。


ずっと、自分自身に苦労をかけず望みを叶えてくれたブラウン伯爵であるパトリックの方が愛しているし、パトリックが最近相手してくれなかったからヘルムフリートに唆されて関係を持ったと言った。彼女に、貴族はみんなしていると説明したのはヘルムフリートだから唆されてそうなったと言えばそうなのだが、王妃の言っていた少女の様な人。貴族社会に興味が無い。が真実となってニコラの口から出てくる事にイーヴォイェレミアスでさえ戦慄していた。


母親から事前に聞かされていなければ、自分自身も取り乱していたかもしれない。それを聞いている父上は何を思ってるのかと思ったが、使用人たちが悪態をついて暴れていますと言うので自業自得だと放置していた。既に、花瓶を一つ壊されたそうだがそれからは壊れそうなものは下げさせた。


食器も、流石に木でできた物は出せないからと変形しても再度作り直せる金属のものへと変更させた。そこから一昨日まで、ニコラの恨み節というか独り言の愚痴を散々に聞かされ発狂し暴れまわり、その後は糸が切れたように一昨日から昨日は殆ど寝てた。


だが食事の時間に声をかけると穏やかに起き上がり受け答えするので今迄の陛下と殆ど接点の無かった使用人たちは落ち着いたのだと感違いして、大人しくしていますと報告をして、今日のイーヴォイェレミアスと対面したという事だった。


医者が退室した部屋に、側近たちに指示を出し其々の護衛騎士1人づつを残した。イーリシティナは、片手で額を押さえるが今更いらないことをしなさそうな父親に対しイーヴォイェレミアスは冷たくも事務的に返す。


「あぁ。なんて無責任な・・・」


「丁度いいではないですが、城の森の館にお二人で住まわせる予定だったではないですか」


「・・・・・・」


「そんなジト目で見ないでください。物心ついてから呼ばれたことのない愛称で呼ばれた私の気持ちも考えて下さいよ」


「まぁ。そうね・・・」


「2人の予定でしたけど、癇癪起しても大変なので病気療養って事で数人、使用人を1週間交代でつけましょう。使用人を全くつけない予定だったんですから待遇向上ですよ」


「もぉ!イヴ!少しは歯に衣着せて頂戴!」


「母上とふたり身内ばかりなのに?」


二人の護衛騎士にも目配せをする。イーヴォイェレミアスの護衛騎士はハトコで幼馴染のジェラルド。イーリシティナの護衛も辺境伯からついて着たイーリシティナの従兄弟であり殆ど身内である。しかも、イーヴォイェレミアスはある程度の年齢になるまで彼が父親だと思っていたくらいだ。


「はぁ~。あの状態の陛下に事情聴取する必要あると思います?病気療養ということにして退位を促しましょう。イヴ(愛称で呼ぶ息子)のいう事なら聞いてくれるんじゃないですか?」


はっと鼻で笑う息子に違和感を感じイーリシティナはゆっくりと声をかける。しかし、イーヴォイェレミアスは止まらない。止めることが出来ないでいた。


「イヴ。落ち着いて」


「寧ろ母上は何故落ち着いていられるのですか」


「・・・・・気持ちは分かるからかしら・・・」


「はっ気持ち分かるんですか!じゃあ聞かせて下さいよ。

執務ばかり押し付けて慈しまなかった王妃を蟄居させて辺境へ送り返し、散々ないがしろにしてきた自分の子供の将来を自分勝手に決めて変更して、望んでもいないのに愛する人とやらの子供だからと一介の伯爵令息を重責のある王に推し進めようとして!国の四分の一近くも他国へ明け渡し、自分は愛する人とやらと余生を楽しもうと策略してバレたら記憶を無くして、ないがしろにしてきた息子を愛称で呼ぶあいつの気持ちとやらを聞かせて下さいよ!


片思いなんて皆してますよ!思い人と結ばれるなんて高位の貴族には稀です!思い人では無い相手と婚約して結婚して家を守るんです。何を甘ったれたことを言ってるんですか!

でしたら、最初から叔父上に王位を譲って子爵家にでも入れば良かったんです!それが、愛する人を選んだ正しい解答でしょう?お祖父様はその提案までなさってるんだからそれを受け入ればよかったんです!自分は何も失わず、何もかも手に入れようとすることがどんなに傲慢か!」


イーヴォイェレミアスは一気にまくしたてると、肩で息をする。護衛の二人も息を飲む。こんな感情的になっているイーヴォイェレミアスを二人でも見たことが無かった。イーリシティナはイーヴォイェレミアスの両手を包み額に当てる。


ごめんなさい。を繰り返すイーリシティナを呆然と眺めていたイーヴォイェレミアスは段々と呼吸が整ってきた。深呼吸を繰り返しさらに呼吸を整える。


「母上」


「・・・・・」


「すみません。取り乱しました」


イーヴォイェレミアスの謝罪に、イーリシティナは顔を上げてイーヴォイェレミアスの頬に手を寄せる。


「色々な負担を貴方に背負わせてごめんなさい。貴方は聡い子だからあの人の行動を全て把握していたのね」


「はい。ニコラスとも話をしました」


「そうではないのよ。幼少期から気がついていたの?」


「えぇ。お祖母様に似ているリシュエンヌや、父の色彩のハーシェルヒルムとの対応の差ですか?」


イーリシティナは顔をしかめて、えぇと答える。ヘルムフリートが子供たちにあまり関心が無い事を出来るだけ悟られないようにイーリシティナは努めていた。しかし、子供というものは感じ安く思ったよりも聡い。


「まぁ。嫡男であるから厳しいものだと思っていました。エーレンフリートもそう言っていましたし。ですが、ジークフリート叔父上の様な眼差しを陛下に見ることは私は叶いませんでした」


「そうね・・・・」


「母上、たくさん愚痴りましたが大丈夫です。私には、心配してくれて軽口を言うエーレンフリート(従兄弟)がいて、私の計画に乗ってくれるディオティマ(可愛い従妹)もいる。それ以前に、兄を支えようと奮闘する弟妹がいるんです」


「そうね」


「私は大丈夫です。母上とジェラルド達に愚痴れましたし!」


「ただ聞かされただけです殿下。でも、俺も殿下と同意なので異論はないですよ!」


ジェラルドが幼馴染のハトコの顔ウィンク付きで言う。4人で笑ってしまった。ひとつばかりおおきな深呼吸を零すとイーヴォイェレミアスは決意の顔で伝える。


「陛下の退位は決定事項です。陛下と会話をして、伯爵夫人(ニコラ夫人)の侍女を1人つけ下働きの使用人と共に城の森の奥の邸での療養を伝えます。よろしいでしょうか?あの陛下であれば退位式も行えるかもしれません」


「そうね。記憶が戻るのか戻らないのかも観察しつつその様に動きましょう。私も貴方の味方ですよ」


イーリシティナは微笑むと、イーヴォイェレミアスは助かりますと返した。

拝読ありがとうございます。



 ~登場人物~

【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)

王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫


ヘルムフリート国王陛下(42)

髪:銀髪、腰まのロング、ウェーブ*瞳:青紫


イーリスティナ王妃殿下(40)

ウォーカー辺境伯長女*髪:藤色、ロングストレート*瞳:碧


【愛称:ジル】ジェラルド・ハリス伯爵子息(19)【イーヴォイェレミアス 又従弟/側近(騎士)】

ハリス伯爵子息二子(次男) 髪:銀、ロング(影武者もできるようにあえて延ばしている) 瞳:紫


妃殿下の護衛騎士(43)

妃殿下の従兄弟

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