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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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049 王妃殿下の真実

母子の会話です。

ハーシェルヒルムの誕生の夜会から、急ぎ行われた立太式は簡素に行われた。それは、今から発表とはなるが表向きとして現国王ヘルムフリートは病気療養の為、退位する。戴冠15周年43歳のヘルムフリート自身の誕生の祝いの際に退位まで行う運びになった。それに伴い、イーヴォイェレミアスは冠を頂くことになるので早急に簡素に終わった。


罪人を裁くためには立太子していないと出来ない。イーヴォイェレミアスが立太子出来ない場合、それは全てイーリシティナが行う事となる。


立太子してからの日々は、あらゆる手続きや捕らえられた貴族の罪状を決め其々の罰を既決され少しのゆとりを取り戻した日常の中。イーリシティナ王妃の離宮に、イーヴォイェレミアス、リシュエンヌ、ハーシェルヒルムが招かれた。


イーリシティナに招かれたかたちになったが、イーヴォイェレミアスの提案のお茶会であった。最初の挨拶を和やかに終え少しの談笑の後に、徐にイーヴォイェレミアスが口を開いた。


「母上には隠居を申し渡します」


品の良い装飾品や家具が彩り、全体的に落ち着いた雰囲気の王妃宮の一室にて、立太子したばかりの次期国王に内定しているイーヴォイェレミアスのそんな第一声から母子での和やかなはずのお茶会は転換した。


リシュエンヌは、だから幼い弟妹は招待しなかったのかと納得したが、ハーシェルヒルムは青紫の目を最大限までに開き口を薄っすらと開かせ締める事を忘れている。


「承ります」


イーリシティナの短い返事に我に返ったハーシェルヒルムは兄へと詰め寄る。


「何故ですか!?兄上!」


「・・・・・やはり気が付いていなかったか」


「何がですか!?」


「今回の件。母上を解決の作戦に折り込んでいなかった事にハーシュは疑問をもっていなかったのかい?」


「は?そっそれは、ち・・・父上の不貞の話ですから・・・母上の心情を慮っての事ではないのですか!?」


イーヴォイェレミアスはふっと優しい微笑みになり、リシュエンヌははぁ~と盛大な溜息をついた。そんな二人にハーシェルヒルムは混乱するしかなかった。さらに、今まさに処罰を言い渡された母親に至っては眉尻を下げ困った顔をしている。


「なんですか?姉上!何故、母上はそのまま受け入れるのですか!?兄上!!」


「ハーシュ。落ち着きなさい。それでは、説明もできないでしょう?」


リシュエンヌの言葉にぐっと唇を噛んで少し俯く。留学で兄には及ばないが自分の進むべき方向もしっかりとしてきて、今回の父親の計画の阻止に力を奮い、大分大人になったなと思っていた弟の少年らしい仕草に他の3人からは苦笑いが零れる。


「お母様は、陛下の今回の計画をご存じだったのでしょう?」


リシュエンヌの母親への質問に、俯いていた顔をガバッと顔をイーリシティナに向けたハーシェルヒルムは信じられないというように青紫の目を見開く。


「えぇ」


母親の短い返答にハーシェルヒルムの顔は青くなり、青紫の瞳は潤みを増す。そんな、ハーシェルヒルムに兄と姉は眉尻を下げて困ったような笑顔になる。だが話しを進めた方が彼の為だろうと母親への質問を再開する。


「いつからなんですか?」


「そうね。こそこそしてらっしゃたのは14〜15年前かしら。前陛下がお倒れになった頃かしら?でも、そうね。このような計画になったのは3年ほど前ね」


「ニコラスが10歳にになり、他家のお茶会に顔を出した所からですね」


「そうね。それで、ノアベルト宰相が野心を抱いてしまったのでしょうね」


ハーシェルヒルムはリシュエンヌと母であるイーリシティナが当たり前の様な顔をして話している内容が未だ理解できない顔をしている。混乱したままの顔で兄であるイーヴォイェレミアスへと顔を向ける。そんな、ハーシェルヒルムに困りながらもイーヴォイェレミアスは背筋を伸ばし、そのまま母親に質問を続ける。


「僕らへの試練ですか?」


「・・・・違うわ。あなた達が阻止することは出来るだろうと信じてもいたけど、私が黙っていたのは陛下への悔悟かしら」


「悔悟ですか?」


「私は、自分の将来の為に彼から愛する人と添い遂げるという機会を取り上げたもの」


「なっ!何を言っているのですか!?ニコラ夫人の事ですか?」


ハーシェルヒルムの驚愕の声に、イーリシティナはニコリと微笑む。


「しかし、ニコラ夫人は元は領地を持たない子爵の令嬢でしょう?ブラウン伯爵家に入ることさえ破格の扱いですよ!王太子とだなんて、王妃になるなんて!無理でしょう!」


「ん~家格の問題ではないな」


ハーシェルヒルムの発言に対し、イーヴォイェレミアスは否定の言葉を返すと、どういうことなのかと更に問いかけにイーヴォイェレミアスがゆっくりと答える。


「我が国では曽祖父様の時代より、身分に関係なく功績を上げたものに爵位を与える制度を進めている。それゆえ、下位の物は上を目指すし、上位のものは下位の者に抜かれない様切磋琢磨する。

なので、資質と教養があるものが高位の身分に嫁ぐ際に寄り親や縁戚へ養女に入り婚姻することは何ら不思議ではない。されに、彼女の叔父は歴史、王家への貢献がありお祖父様の覚え目出度いスメールデイズ侯爵だ」


「お祖父様の覚えがめでたいスメールデイス侯爵家、縁のご令嬢であればスメールデイス家の養女として王太子に嫁ぐことも可能ではありますね」


リシュエンヌの考察に追従するようにイーリシティナも続ける。


「そうなのですが、ニコラ様は幼少の事から勉学にご興味が無いようでして・・・学園に入ってからも成績は振るわなかったの。彼女の素行を幼少期から知っているスメールデイス家は最初から彼女を養女にする事を拒否。王妃にふさわしくない令嬢だとお義父様に、貴方方のお祖父様に進言したの。

ですがヘルムフリート様があまりに熱心でしたので前陛下も、独自で素行を調査しました。そんな中、それぞれで独自の素行調査をしていた上位貴族の皆様もニコラ様の素行を調査して養女として受け入れることも、ヘルムフリート様のお相手・・・未来の王妃になること厭ったのです。

その状況を知った陛下は、ニコラ様を受け入れる事自体を拒否。ニコラ様と添い遂げたいのであれば王位継承権を返上して、子爵家に婿入りしなさいと伝えたました」


「お父様は、オーランド叔父上に王位を譲ることことを良しとしないでしょうね」


「そうね。オーランド様に王位を譲ることも拒否。ニコラ様とお別れになるのも拒否。そんな中、我が家にフィンセントが産まれました」


「叔父上ですか・・・」


「えぇ。待望の男児に辺境伯領はかつてないほど沸きました。私のことなど、全て忘れたように」


「・・・・・」


「そこで、お声をかけて下さったのが前国王の貴方たちのお祖父様なのよ。『息子には今は思い人がいるようだが、その相手は他の縁談を斡旋している。苦労を掛けるかもしれぬが次期王妃になってくれないか?』と、私が次期辺境伯を下ろされるだろうとか、そんな事は一言もなく。私の能力が王族に必要だから打診したのだと仰って下さったわ。あの頃、王妃に相応しい令嬢たちはヘルムフリート様と共に国を支えることは無理だと早々に結婚や婚約をしていたのよ」


「そもそも、陛下に婚約者はいなかったのですか?」


「貴方たちに、婚約者が最近までいなかったように。あの頃から、親同士が友人同士であったり、どうしても結ばなくてはいけない家で無い限り、13歳で学園に通いはじめ14歳のデビュタントを迎えその後に婚約者を決める事が主流になり始めていたの。

長い間、共に過ごし家を支える夫婦です。相性が悪すぎては破綻して貴族の家を潰すことを王家としても良しとしませんでした。ですので、ヘルムフリート様も15歳頃に婚約者の選定を済ませ婚約する予定でしたの。そして、ヘルムフリート様が学園に入学した同級生にニコラ様がいらっしゃったのです」


「年齢的にそうですが、王族と下位貴族です。何故、父上と接点があったんでしょうか?」


ハーシェルヒルムの質問に、イーリシティナでなくイーヴォイェレミアスが答えた。


「彼女は自身の欲望に忠実だったんだ。自身で接点を作ったと叔母上から伺った」


「そうね。典型的なハニートラップの様な出会いは無いのよ。ゆっくりとじっくちとヘルムフリート様に近づいていったの。彼女はね。悪い人ではないの。策略を巡らしたり、誰かを貶めることはなさらないわ。でも、時に無垢という事は怖いのよ」


「どうゆう事ですか?」


ハーシェルヒルムの質問に、イーヴォイェレミアスは顔をしかめる。そんなイーヴォイェレミアスの反応に苦笑いをしながらイーリシティナは答える。


「イーヴォイェレミアスはお話したでしょう?彼女の関心は、自分自身、自分自身を着飾るもの、自分自身の要望を叶えてくれるもの。の順に心を傾けるわ。その他は、本当に何もいらないの。王妃も王族も貴族としての矜持もなにもかも・・・正直、ヘルムフリート様をお好きかどうかも分からないわ」


イーリシティナは、藤色の美麗な眉を歪め頬に手を当てて溜息をつく。その話に、ハーシェルヒルムは驚愕する。リシュエンヌも信じられないと眉を顰める。そんな、二人に苦笑いを漏らしイーヴォイェレミアスが話を続ける。


「ニコラ夫人はね。結構、パトリックの事を好いているよ。自分をお姫様扱いをしてくれて、可愛い子供を与えてくれて。素敵な衣装や宝飾品を送ってくれるからね。パトリックは気弱そうに見えて有能なんだ。ブラウン伯爵夫妻も手伝って領地経営で富を得ている。下手な侯爵家より家の予算。妻の予算も潤沢なんだ。

だが、陛下の意向で私の執務が増えた。それはもちろん側近たちにもしわ寄せが行く。なかなか家に帰れなくなったパトリックの目を盗んで、ニコラ夫人を仮面舞踏会という遊びに誘った夫人がいる。それが、ノアベルト宰相の妻、バルヒェット侯爵夫人なんだ」


イーヴォイェレミアスが言葉をくぎると、イーリシティナが続きを話始める。


「そして、再び自分を好いているヘルムフリート様の甘言にのせらた。王族御用達のお店は侯爵家以上の家柄でないとよほどの縁が必要になりますからね。上質のドレスを手に入れる為に、キャウトィランヴ国の策略に利用されたのよ。それも、ノアベルトが手引きしている可能性は否めないのだけど・・・そこは彼は黙秘しているわ」


「そうなんですね・・・そこは、もう・・・大丈夫です。母上の悔悟とは?母上の隠居処分とはなんですか?」


「そうね。私はヘルムフリート様に救われたけど、私はヘルムフリート様を救うことが出来なかったから・・・悔悟。あなた達には、申し訳ないけど・・・イヴが気がつかないでヘルムフリート様が本懐を遂げたとしたらそれを受け入れてもらおうと思っていたわ。フィンセントも同様よ」


「なっ」


「イヴは、ニコラスの成人までは今と変わらずニコラスの要望次第では宰相への着任が望めたわ。リシュエンヌの縁談も、あの様な凄い方とか知らなかったけど次期王妃の可能性があったもの。賢いリシュなら上手に成し遂げられると思っているし、ハーシュは警戒されていないので現状維持。テオとシアはニコラスを支える為の教育を施す予定。そんなことをヘルムフリート様はあの方の手帳に書き記していたわ。

フィンセントには厳しいけれど、あの子はもう少し辺境を預かるものとして賢く立ち回ってほしいわ」


「母上に読まれているのですか・・・そんな手帳を・・・」


頭を抱えてイーヴォイェレミアスはつい言葉を漏らす。イーリシティナは更に続ける。


「わざとじゃないかしら?私にその覚悟をしておけという示唆なのかと思ったのだけど・・・そんなに深くは考えてないかもしれないわね。あんなに恋に浮れて詰めが甘くなるなんて思っていなかったわ」


母であるイーリシティナの告白と、父であるヘルムフリートの愚行に3人は言葉を発することが出来ず沈黙が広がる。さらに、イーリシティナはイーヴォイェレミアスに向き直る問う。


「私の罪は、次期国王であるイーヴォイェレミアスにその情報を進言しなかった事。だから蟄居というかたちになったといことであってるかしら?」

拝読ありがとうございます。


 ~登場人物~

イーリスティナ王妃殿下(40)

ウォーカー辺境伯長女*髪:藤色、ロングストレート*瞳:碧


【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)

王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫


【愛称:リシュ】リシュエンヌ第一王女殿下(18)

王国第二子、第一王女*髪:金、腰下、ウェーブ*瞳:碧


【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)

王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*瞳:青紫

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