005 伯爵令嬢の事実
フランチェスカお嬢様のお話の続きです。
おひとり新登場!
「妄言ではございません!わたくし!お会いしたのです!そして、愛を誓いあったのです!真実の愛ですわ!」
我に返った、フランチェスカの悲鳴の様な叫び声によってブラウン伯爵はビクッと体を起こし意識を取り戻した。
「おはよう!パトリック。まだ話は進んでないがひと月前に2人が出会えない話は終わったよ」
第一王子が優しく声をかけると、ブラウン伯爵は立ち上がり机に頭がつくのではと思うほど頭を垂れこの場の全員に謝罪をした。すると第一王子は、
「うん。謝罪は後でまとめて貰おうか。席について貰えるかい?で、今はブラウン伯爵令嬢が王都に居るはずのないハーシェルヒルムに王都で会ったという話だったね。さて、ブラウン伯爵令嬢その人物はどんな容姿だったのか教えて貰えるかな?あっ後、ハーシェルヒルムが怒るから一人称は彼と呼んで貰っていいかな?」
第一王子はニコッと優しく微笑んだ。が、目の奥はまったく笑っていない。そんなことにも気が付かずぽーっと頬を染めたフランチェスカは質問に答える。教育を受けた伯爵令嬢として表情のつくろい方云々は兎も角、受け答えには自信が満ち溢れはっきりとしている。
「畏まりました!第一王子殿下。ハーっ・・・彼は銀色の腰までの真っすぐな髪を青いリボンで背中のあたりで結んでおりました。瞳はアメシストを思わせる紫色で、青みがかっていたかもしれませんわ!仮面は右半分が隠れるよう白地に模様が・・・入っておりましたので左目は・・・・良く見えており・・・ました・・・ので・・・・瞳の・・・・・・・色も・・・・見間違い・・では・・ない・・・・・かと」
フランチェスカは、最初こそは嬉々としてハーシェルヒルムを見つめながら頬を蒸気させほんのり紅色に色つけながら自信あり気に説明していた。しかし段々、顔色を失い目線がだんだん上がりハーシェルヒルムの後方に向かっていった。最後には何とか話続けている状態になりつつ言葉を締めた。
フランチェスカが話始めると同時に、第一王子イーヴォイェレミアスは後方に合図をする。1人の護衛騎士が、オールバックにしてポニーテールを結んでいた長い髪を解き、前髪を両サイドに残し後を侍女がリボンでふんわりと後ろに纏めて結び、片手に侍女から渡された白い物をもってハーシェルヒルムの横に向かってゆっくりと歩み出る。
「あぁ、彼の紹介をしなくてはいけないね。ハリス伯爵の次男でジェラルドというんだ」
フランチェスカは、口をゆるく開け呆然と彼をみつめた。彼は、髪と目の色がハーシェルヒルム殿下とほぼ同じで、イーヴォイェレミアス殿下と面差しが似ていたが、騎士らしく鍛え上げられている容姿は、更に精悍さを醸し出していた。
ブラウン伯爵は、娘がジェラルドを知らなかった事に驚愕し、エーレンフリートとテイラー侯爵は、合点がいった面持ちになっている。
「ジェラルド!君はひと月前の夜。何をしていたか分かるか?」
第一王子殿下に話掛けられたジェラルドは敬礼をし答えた。
「はっ!殿下に事前に問い合わせ頂いておりましたので、報告書を確認した所。ひと月前の調査記録がありました!そのままお話してもよろしいでしょうか?」
「あぁ。かいつまんで話してくれ」
「はっ!私は、殿下のご依頼の調査の為、ある仮面舞踏会へ潜入致しました!様々なご婦人や紳士から情報を聞き取っておりました!」
騎士らしく、ハキハキとはっきりと報告するジェラルドを見て、第一王子が嬉しそうに、
「彼は記憶力がいいんだ。話していた内容を全て覚えて書き出してくれるんだ。重宝しているよ」
「はっ!!ありがたいお言葉であります!」
ジェラルドは、表情に変わりはないが、少しだけ耳の先を赤く染めている。上位の貴族の前で、上司である第一王子によって褒められた事に喜びを感じていた。
「で、だね。彼が書いた報告書に・・・・・あったよ」
手元の報告書の束の中から、出会った日を見つけたハーシェルヒルムは指でなぞる。フランチェスカは真っ青になりエーレンフリートを見ている。
「あっ・・・・おっ・・・・お待ち・・・・ください・・・・」
「あぁ~ねぇ~。僕も従弟殿を辱めるつもりはないから読まないよ」
イーヴォイェレミアス第一王子はにっこりと笑顔だが、目は怒りにゆらりと燃えている。
「ジェラルド、彼女の行動だけ教えてくれるかい?」
「はい。私が、仮面舞踏会で調査をしていると、ミルクティ色のウェーブのかかったご婦人がおりました。あのような仮面舞踏会へ来るには不自然にお若い気がしました。男性は若い者も出入りしておりますが、女性でお若い方はほとんどみられません。
任務は完了しておりましたし、何かに巻き込まれてはと思いまして話掛けてみると、彼女は私の顔を見るとぱぁっと顔を綻ばせ私の手を取り、ずっとお慕いしていると告白を受けました」
「あぁ、彼女は2年前の留学へ向かうハーシェルヒルムを送る夜会で、ハーシェルヒルムを見かけたんだろうね。年齢的にデビュタントかな?写し絵をかなり所有しているそうだよ。それで、ジェラルドをハーシュと間違えた。ハーシュはまだ留学から帰ってきていないのに・・・・2
年前の夜会の意味も忘れてしまっていたのかな?」
「・・・殿下。爽やかな顔で嫌味な言い回しは辞めたほうがいいと言っているでしょう?敵を作りますよ」
エーレンフリートがため息交じりに諭すと、肩を竦めた第一王子はジェラルドに先を促す。フランチェスカとブラウン伯爵はどんどん顔色を失う。ブラウン伯爵に至ってはまた気絶寸前である。そこらのご令嬢より儚げなのはいかがなものか。
「はい。それで、わたくしも・・・・男ですので、愛らしい女性に言い寄られ舞い上がりまして・・・・」
「いたしたのか!」
ハーシェルヒルムが突然大きな声をあげ振り返る。ジェラルドは小刻みに首を横に振るが、ジェラルドへの怒りは続く。
「お前、あれほどお前と私は容姿が似ているんだ!女性関係には気をつけろと・・・・はぁ~。ん?諜報活動だろ?なんでその髪色で行ったんだ?目立つだろう?」
「殿下。仮面舞踏会です」
「ん?わかっている」
「・・・殿下。仮面舞踏会ではかつらを被るものの方が多いのです。高貴な演出なんでしょうか?目を惹く容姿が好まれますので、殿下方や侯爵様方の様な髪色のかつらの着用者が多いのです・・・」
ハーシェルヒルムは頭を抱える。そんな彼をよそに第一王子はジェラルドに先を促す。
「はっ!お身体は大切にしたほうが方がいいと最後まではいたしておりません!ですが、恋人に近い行・・「そこはいい!」私は彼女を気に入り愛をささやきました。彼女も受け入れてくれたのですが、連絡先は彼女が知っていると言うのでそのまま別れました。それ以降彼女とは連絡も取れず、舞踏会でも会えず仕舞いでございました!」
途中第一王子の静止も入ったが、羞恥の報告をジェラルドは、口早に終えた。
「あぁ、ハーシュと勘違いしてハーシュに手紙を送ってるから、お前には連絡行かないし、舞踏会も目標達成されたと思っているから赴かないな。まぁ責任問題になるから最後までいたしていないのは不幸中の幸いと言えるな」
投げ捨てるように第一王子は述べた。フランチェスカは完全に顔の色を失い、目は見開き、口を半開きにハクハクと動かしている。
「さて、この国の第一王子である私が頼りにしている、大事な従弟。エーレンフリート・テイラー侯爵子息の元婚約者のフランチェスカ・ブラウン伯爵令嬢、君はどうなるのかな?」
もったいぶった言い方で、ニコッと微笑む。そんな第一王子に怯えながらフランチェスカは、元婚約者のエーレンフリートを潤んだ瞳で見つめる。それは、ジェラルドが同じ伯爵家の出身だからであろうか。更に次男である。殿下の護衛騎士でも平民に身分を落とすか騎士伯だ。保身が脳裏に過ったのだろう。そんな中、フランチェスカは思い付き裏がった声を上げる。
「そっその彼はっ・・・何故!そんなに殿下方に似ておられますの!?殿下になりすましではございませんの!わたくし騙されたのですわ!!!」
どうだ!と勝機を見つけた顔でいいつのるフランチェスカを、ブラウン伯爵は目を見開き顎が外れるのではないかと思うほど口をあけ驚愕する。そんな中、第一王子であるイーヴォイェレミアスは公式の場で出さないような大きな溜息をつく。
「はぁ~。パトリック、教育不足も甚だしいぞ!メルヴァンとの差が激しすぎないか?」
第一王子に指摘された、パトリック・ブラウン伯爵は突然、立ち上がり地面に伏して謝罪を始めた。何回目だろうか。
「申し訳ございません。メルヴァンはわたくしの母上に似ておりましたので・・・」
「あぁ夫人に疎まれていたのか」
「左様で御座います。わたくしどもの婚姻を母はあまりよく思っておりませんでした。妻も男爵家の令嬢にしても教育が伴っておりませんでしたので母が教育を施しました。妻には冷たく感じたのでしょう・・・妻に疎まれていたメルヴァンを我が父が不憫思い領地にて預かり教育してございました」
「其方の結婚は王家に巻き込まれたところが・・・王宮勤めで忙しく、家庭は家人に任せているという事だな。働き方を考えなくてはいけないな。下にも息子がいるだろう。彼らにも目を配っておかなくてはいけないよ」
「殿下。その話は後ほど、今はブラウン伯爵令嬢の話でございます」
すると今まで口をほとんど挟んでいないエーレンフリートが静かに口を開いた。その優しい声色とは乖離の激しく、元婚約者の呼び方が完璧に他人行儀になっていた。否。彼は真相を知る入室時から婚約者であるはずの彼女をブラウン伯爵令嬢と呼んでいた。そんな彼にフランチェスカは慌てた声で話しかけるが、にっこりと微笑むエーレンフリートの目は冷たく笑っていない。
「リート様。そんな他人行儀な・・・」
「ブラウン伯爵令嬢。私と貴方は元婚約者であり、他人でございます。白紙ですので、元とつけるのも憚れますね。どうぞ、テイラー侯爵子息とお呼びください」
優しい声色ではあったもののはっきりと拒絶の意を伝えた。そんなエーレンフリートを見つめ痛まし気に眉間に皺を寄せたイーヴォイェレミアス第一王子はフランチェスカに向き直り続ける。
「さぁ。フランチェスカ・ブラウン伯爵令嬢。高位貴族の婚約者である身でお披露目は済ませたとはいえ成人でもないご令嬢が大人の社交場に顔を出し、恋人を作り。面識のない王族に文書を送り、あまつさえ王族との嘘の繋がりを吹聴して周りましたね」
「 吹聴?どうゆうことでございましょう?殿下!」
耳を疑う話にブラウン伯爵は殿下に問いかける。婚約者のある身で未成年で社交場に行った事、第二王子殿下に謂れのない手紙を送った事。今の、会談でも不敬な物言いもあるもののこれまでのやらかしが比でないほどの事が聞こえた。
「あぁ。すまないなパトリック。先に伝えるとこの会談に参加出来ないのではないかと思ってな。あえて伝えておらんかった。其方の娘は、社交場のジェラルドとの情事をハーシェルヒルムと偽り数多のご令嬢・ご婦人方に吹聴しておったのだよ。グレーテの報告だよ。間違いない。
あっそうそうなりすましの話だが、ジェラルドはねぇ〜大叔母上の孫でね。彼の父親は陛下の従兄弟、我々は又従弟にあたる。親戚だよ。先々代王妃の血を引いている。だから銀髪であり顔立ちも似ている。なりすまし等ではない。低位の者はほどんどが知らないが伯爵以上の高位貴族では周知の事実だよ」
「そっそのグレーテという方の勘違いではございませんの!」
フランチェスカは必死だった。
「あぁグレーテの説明も必要かい?グレーテも近衛騎士に所属する女性騎士でジェラルドの妹だ。彼女も優秀でね。数あるお茶会に参加している。今回は私に報告というわけでは無く。ジェラルドの想い人ではないかと、どう話していいのかと主である我が妹に相談したようだ」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
「さて、パトリック。ご息女への対応は決まったか?」
イーヴォイェレミアスは綺麗に微笑み、ブラウン伯爵に尋ねた。先ほどまでの弱弱しい伯爵を成りを潜め、為政者の臣下として、官僚として判断を下すことになった。
フランチェスカのお話はとりあえずおしまいです。
1番の問題が噂なので、ブラウン伯爵と嫡子メルヴァンの今後の為、お咎めは王族からでは無く、家で出来る範囲で廃嫡までは望んでいません。まぁ再教育の要望という内輪で治めようとしています。王宮に呼んだのはフランチェスカに改心のショックを与えたかったので・・・。
~登場人物~
イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)
王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*目:赤紫
【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)
王国第三子、第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*目:青紫
【愛称:ジーク】ジークフリート・テイラー侯爵(45)
現テイラー侯爵*髪:水色、ショートオールバック、ストレート*目:金
【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)
テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*目:金
パトリック・ブラウン伯爵(45)
現ブラウン伯爵当主*髪:ミルクティ色、ゆるウェーブ、ボブ*目:亜麻色
【愛称:フラン】フランチェスカ・ブラウン伯爵令嬢(17)
ブラウン伯爵令嬢二子、女児一人*髪:ミルクティ色、ロング、ゆるウェーブ*目:亜麻色
ジェラルド・ハリス伯爵子息(19)【イーヴォイェレミアス第一王子殿下 側近】
ハリス子爵家第二子・次男*髪:銀髪、腰までロング、ストレート*目:紫




