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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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004 伯爵令嬢の野望

ハーシェルヒルムの説明という、少し時間軸が前のお話です。


そして、長い上に前後編に分かれます。

アーデルベルトとベアトリクスがお見合いしている同刻、アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息がディオティマの逆鱗に触れる少し前の時間、王宮の一室にて、ミルクティ色の髪をハーフアップにし煌びやかな髪留めで着飾り、亜麻色の瞳には喜色満面の笑みを携え優雅にお茶をする少女は喜色の色を隠さなかった。


その少女はベアトリクスの兄、エーレンフリート・テイラー侯爵子息の婚約者フランチェスカ・ブラウン伯爵令嬢であり、自身の父親と心待ちにしているお相手を待っていた。


その隣にはフランチェスカと容姿はそっくりなのにも関わらずブラウン伯爵はスラっとした体躯をやや前のめりにし、背中は丸まり、顔色は最近の激務の責だけでは無く蒼白としている。茶を啜る手元も茶器がカタカタと音がたってしまうように小刻みに震えている。


「まぁお父様。緊張なさっているの?情けない。第一王子殿下とはいつも顔を合わせているのでしょう?」


実の父親になんていいようかと思われるが、フランチェスカは見た目は温厚な父親に似てふんわりとした可愛らしご令嬢だが、性格は正反対で野心あふれる母親に似ていた。常と同じような発言にブラウン伯爵の顔は更に青みを増した。


「フランチェスカ。なぜ、殿下方に呼ばれているのか分かっているのかい?」


小さな女の子にでも、話しかけるような優しい声色で問いかける。しかし、娘はことの重大さを分かっていない。にっこりと微笑むと頬を紅に染め、言い放つ。


「そうね。きっと私がここに住むようになるお話じゃないかしら?」


ブラウン伯爵は今にも気を失ってしまいそうだ。ブラウン伯爵を重宝しているイーヴォイェレミアス第一王子殿下に事前に少し話を伺っていなかったらすでに気をやっていただろうと考えていた。


「そんな。不敬な発言。不用意にしてはいけないよ」


なぜ、兄妹でこうも考え方が違うのか思考を飛ばすブラウン伯爵ではあったが、すぐに現実へと呼び戻されるコンコンとドアがノックされ従者がブラウン伯爵父娘に声をかける。


「王子殿下方がいらっしゃいました」


ブラウン伯爵とフランチェスカは立ち上がり、腰を落とし貴族の礼と口上を述べ終えると、イーヴォイェレミアス第一王子殿下が座るように促す。


応接室の中心には大きな正方形のテーブルが置かれ、四方に椅子が配置されており、ブラウン親子が座る長椅子の対面の一人掛けのソファ2つ。それぞれにイーヴォイェレミアス第一王子殿下とハーシェルヒルム第二王子殿下が腰を下す。


4人での会談であれば椅子はブラウン親子が座る長椅子とソファ2つで足りるのだが。今回は両者の両脇に長椅子と1人掛けのソファが配置されている。


(なぜ、こんなに家具が多いのかしら?・・・あら?もしかして、陛下もいらっしゃる!すぐ婚約の運びになるのかしら?)


うきうきとフランチェスカは期待を膨らませる。陛下が到着されるのではれば上座に王子たちが鎮座することにはならないことには気が付かない。


高位貴族は一概に、見目が麗しく整ってる。高位貴族の主君が見目麗しい奥方を娶るのだからそれが道理なのであるが、殿下方は別格であった。


第二王子は、きらきらと月の光を浴びたように美しく光る銀髪は、西北の異国から嫁いできた先々代王妃の色を受け継いでいる。銀髪はこの国では珍しく王妃の血筋とその侍女として同行してきた王妃の従妹が嫁いだエヴァンス侯爵の血筋にしか存在せず珍しい。瞳は父と兄と同じく王家に多く遺伝するタンザナイトの様に青紫に煌めきを放ち、顔立ちは辺境伯の騎士姫である現王妃に酷似して女性と見まがうほど美しい容姿をしていた。


第一王子は光り輝くような艶やかで王家に多い黄金の髪は、緩やかに波打ちサイドをそれぞれに少し流しているが、後の髪は後ろに纏められ左肩より前に垂らしている。涼しげで鋭く形どった眼は、第二王子と同様にタンザナイトのような青紫の瞳が理知的に魅せた。


透き通っているがどこか威厳をまとう声で口を開いた。


「本日は、城までご足労感謝するブラウン伯爵令嬢。伯爵は仕事中にすまないな」


「大事なお話と伺っております。お気遣いありがとう存じます」


「さて、話に入る前に客を入れさせて頂こう。入れ」


イーヴォイェレミアス第一王子殿下がドアの前に待機していた、侍従に声を掛け来客を招き入れる。フランチェスカ嬢の婚約者エーレンフリート・テイラー侯爵子息とその父親であるテイラー侯爵だった。


(あら?なぜリート様が?あっ!婚約を白紙にするからお呼びになったのでしょうか?ハーシェルヒルム殿下ったら、お仕事が早いですわ。きっと早く私と婚約したいのね。来年にはすぐに婚姻を結ぶのかしら!でも、まだリート様の婚約者、顔に出してはいけないわ!)


浮足立つ、気持ちを抑え淑女の笑みを携え淑女の礼をするフランチェスカを貴族的な笑顔で微笑み返すエーレンフリートと、いつもより一段と眉間に皺が寄っているテイラー侯爵。


「リート様、テイラー侯爵様、ごきげんよう」


「久しいですね。ブラウン伯爵令嬢」


エーレンフリートは、顔は笑みの形をとっている。侯爵は一瞥しそのまま腰を下す。


(まぁ!私とリート様の婚約が無くなるからってなに?おじ様のあの態度!私が王子妃になったらただじゃおかないんだから!)


王子妃になったから何ができるのか考える事もせず、フランチェスカは心の中で暴言を吐いている中、揃って席に着くとイーヴォイェレミアス殿下による合図で新しいお茶とお菓子に入れ替えられる。お茶がそれぞれに渡るのを確認した殿下はそのまま、フランチェスカを見据え声をかける。


「さて、なぜ呼ばれたか、ご存じか?ブラウン伯爵令嬢?」


フランチェスカは、イーヴォイェレミアスに直接声をかけられ驚いたが、ハーシェルヒルムを目線だけでチラッと伺うが目線が合わない。おかしいなとは思ったが、元来自己肯定感が強いフランチェスカは照れているのであろうと自分から話をする事にした。


「はい。第一王子殿下、それはハーシェルヒルム様と私の事でございますでしょうか?」


ハーシェルヒルムの左瞼がピクリと動き、エーレンフリートは驚きに危うく茶を吹きそうになるのを誤魔かした。


「ほう。弟との事とは?」


「ハーシェルヒルム様と私の新たな関係の事でございます」


頬に手を添えしおらしく話ているが、彼女以外は冷めた目で、いやブラウン伯爵に至っては白目を剥く寸前と言えようか室内の人間の温度差は激しかった。


「ブラウン伯爵令嬢。私は貴方に名を呼ぶことを許していないが?」


低く冷静な声で、ハーシェルヒルムに注意されやっとフランチェスカも空気の重たさに気が付いた。


「失礼致しました。第二王子殿下。ですが・・・」


フランチェスカが話を続けようとすると、さらにハーシェルヒルムは続けた。


「確かに従兄弟の婚約者殿ということは知っておりましたが、そもそもブラウン伯爵令嬢とは本日初対面なのだが?私と貴方との関係とは?」


「え?ハーシっ。第二王子殿下!お忘れでしょうか?私たちはあの夜に出会い、文を交わした仲ではございませんか?」


「あの夜とは?貴方から文は頂きましたが、私は返しておりません。交わしたとは言えないと思いますが?」


どこまで、お花畑なんだ?と混乱するハーシェルヒルムとフランチェスカの話は噛みあ合わない。


「何をおっしゃるのですか!あの夜。あの夜です!」


取り乱し目線を下げぶつぶつと言葉にならないフランチェスカにイーヴォイェレミアス第一王子殿下が声をかける。


「あの夜とは、いつのことかな?」


その質問に、フランチェスカは顔をバッと上げ、第一王子ではなくハーシェルヒルムに向かって掠れた声で目に涙を浮かべ訴える。顔立ちが愛らしいので庇護欲を掻き立てられる仕草に壁際に立つ護衛たちは数人、頬を紅に染める。しかし、席についている全員と控えてる侍女たちの顔からスーッと表情が無くなる。


「あの夜は、丁度ひと月前の仮面舞踏会でございます!ハーシっ・・・第二王子殿下にお会いしてお話したのでございます」


「ブラウン伯爵令嬢・・・仮面舞踏会に出席されたのか・・・?」


「みっ未婚の!のっ!成人前のっ!のっ!令嬢が!?何ってところに!なぜそんな所に!どうやって!」


エーレンフリートが眉を潜め不審そうに尋ねる声に、ブラウン伯爵は完全に狼狽し声を重ねガタンと席を立ち声を荒げる!事前に、娘がやらかしたので同席するようにとしか聞かせれていなかったブラウン伯爵はパニック状態に陥る。


仮面舞踏会といえば、この国では壮年の紳士淑女の社交場である。未亡人や夫人を先に亡くした低位の貴族の紳士が参加する事が多く。社交では無く享楽を楽しむための社交場である。たまに既婚者もいるが仮面を被っている間は身分を明かさないのがルールであり、嗜みである。出会い、婚姻を結ぶ事はあるが、若いご令嬢が顔を出すところでは断じてない。


さらに、フランチェスカには侯爵子息という高位の婚約者までいる。行く意味が分からないとブラウン伯爵は頭を抱える。


「えっと、お父様?どうしましたの?落ち着いてくださいまし!お母様も良くお顔を出す夜会だと伺いましたわ!お母様と参加した事もありますわ。デビュタントは14で済ませていますでしょう?私、もう17ですわ1人で夜会くらい行けます!」


「ニコラが?良く顔を出す?・・・・・」


真っ青になったブラウン伯爵は呆然と倒れるように着席した。


「パトリック・ブラウン!!!落ち着け!夫人の話は後だ!私が後で聞いてやる!」


イーヴォイェレミアス第一王子殿下が一喝すると、ブラウン伯爵は背筋はシャキッと姿勢を戻し顔を上げる。


「パトリック、話せるか?まず、仮面舞踏会について娘に説明しろ」


高圧的ではあるが、労りの感じる声で第一王子は続けて、ブラウン伯爵へ説明を促す。ブラウン伯爵はフランチェスカに向き直り、浅はかな愛おしい娘に説明を始めた。


「フラン。仮面舞踏会がどのような場所なのか分かっているかい?」


「仮面をつけた夜会でございましょう?身分を明かさないだけでお話を楽しむのですよね?この時ばかりは低位の家紋からでも高位の方に話掛けられると伺いました。ですので、私ハーシェルヒルム様にお声がけしたのです!」


「まぁ、低位から高位に話しかけられる場所ではあるな。だがな・・・・」


「パトリック!少々回り諄くはないか?」


今まで。口を閉じていたエーレンフリートの父。ジークフリート・テイラー侯爵がエーレンフリートと同色の短かい髪を全て後ろに撫で上げ良く見える眉間に皺をくっきりと寄せ金の瞳は怒りをあらわにして更に言葉でブラウン伯爵を刺す。威厳のある低く通る声でそのまま早々に話を進め始めた。友人同士であるため、加減が一切ない。


「成人も待たず、不倫や一夜の相手を探すふしだらな会に参加するご令嬢は、我が侯爵家の次期夫人にふさわしくない。そちらの有責だが・・・パトリック。付き合いが長い其方の人となりは知っている。私の部署に在籍している次期ブラウン伯爵も順調に育っている。と感じている。彼の為にも婚約の白紙で手を打とう」


先ほどの一喝で小刻み震え膝の上で握りしめていた手を見つめていたブラウン伯爵は、光明をみつけたように顔を上げパァと目に喜色が宿る。


「しかし、ご令嬢はしかるべき処分をお願いする。其方を信じ婚約した3年間のエーレンフリートの人生を軽く見てもらっては困る!そして、夫人にもだ!」


「父上・・・」


ブラウン伯爵の顔は、コクコクと首を縦に振ることしかできず真っ青を通り越してほぼ白になっている顔をさらに深々と下げる。


エーレンフリートもあまり話の噛み合わないところはあったが、貴族令嬢とはそのようなものとか婚約者を大切に思っていたし、婚約者としての態度を怠った事が無かった。


そんな自分が不貞を働かれショックを受けたが、全ては父の考えで決まるだろうと諦め黙って話だけを聞いていた。父の自分への思いやりのある言葉に目頭が熱くなった。そんな感動を霧散させる声が割って入る。


「なっなんですか!?ジークおじ様!お父様を脅すなんて!まぁ婚約は白紙には致しますけど!私の有責って!ふしだらってなんですの???わたくしは、未来の王子妃ですのよ!!!」


そこで、ブラウン伯爵は1回意識を失うことになる。護衛騎士達が運び出そうとしたが、フランチェスカへの説明の後に必要だからそのまま寝かせておけと第一王子が言うと、護衛騎士達は自分の立ち位置へ戻った。


「さっきからさぁ~王子妃ってなんの話をしているの?リートの婚約者だから大人しく聞いていれば!君、大丈夫?何か怪しいものでもやってるの?しかも、元婚約者の父親を愛称で呼び続けるのもやめなよ。侯爵と伯爵令嬢なんて、雲泥の差の身分があると思うんだけど?」


「こらっ」と第一王子が窘めるが、第二王子ハーシェルヒルムは止まらない。


「まず俺と君、会ったことないって最初に言ったよね?理解できないの?」


フランチェスカはへこたれない。冷気を出すような冷たい青紫の瞳を向けられても言いつのる。


「わたくしは、1ヶ月前の舞踏会でお会いしました!ハーシェ・・・・第二殿下の銀の髪は珍しいではないですか!?見間違いはございません!腰までの長さの銀の髪で紫の瞳です!わたくし!殿下にあの場所でお会いしました!」


「あぁ~まずそこからか・・・俺、先週帰国したばかりなんだよね。隣国(・・)からの留学(・・)から帰ってきたばかり(・・・・・・・・)なの。大々的にパレードしてもらったんだけどわからない???まぁ早朝だったから参列者のほとんどが城下の民達だったけど、兄上が企画して民に迎え入れられて、うれしかったよ。新聞にも載ってたしね!新聞にも載ったから貴族もほとんどの人が知っていると思うけど?君は何故知らないのかな?」


「あっ朝は・・・使用人に迷惑・・・だから・・・早く起きてはいけないと・・・新聞は・・・・・・・・・・・・・読みません」


「はぁ~未来の侯爵夫人がこんな不勉強者でいいの?あぁ今、白紙になったのか。そう、でね。俺、国に入ったのは2週間前かな?だからひと月もまえの王都での舞踏会?なんて参加出来ないの。妄言がやばいんじゃない?」


未だブラウン伯爵は気絶中の中、イーヴォイェレミアス第一王子殿下は、片手で額を覆い溜息をつき、テイラー侯爵は腕を組み同意し、エーレンフリートは困った顔で、腕を組んで憤慨している従兄弟のハーシェルヒルムをぼんやりと眺め、青い顔のフランチェスカは口をパクパクとさせながら固まった。

拝読ありがとうございます!


なんとか今日中に上げれました。

また人が続々と増えます!また増えます。


 ~登場人物~

イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)

王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*目:赤紫

【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)

王国第三子、第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*目:青紫

【愛称:ジーク】ジークフリート・テイラー侯爵(45)

現テイラー侯爵*髪:水色、ショートオールバック、ストレート*目:金

【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)

テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*目:金

パトリック・ブラウン伯爵(45)

現ブラウン伯爵当主*髪:ミルクティ色、ゆるウェーブ、ボブ*目:亜麻色

【愛称:フラン】フランチェスカ・ブラウン伯爵令嬢(17)

ブラウン伯爵令嬢二子、女児一人*髪:ミルクティ色、ロング、ゆるウェーブ*目:亜麻色

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