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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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047 国王陛下の断罪

やっとここまできました!

イーヴォイェレミアスはニコニコとご機嫌になり、未だ頭の整理に窮している宰相を一瞥すると口を開いた。陛下はこれからどう自分が不利益を被らないように脳内で算段をたてているのだろう。父親が賢いという事はイーヴォイェレミアスだってしっている。しかし、反撃の手を緩める気は毛頭ない。


「話が脱線してしまいましたね。叔父上たちの謀反に対する証拠の話でした。では、一つこちらの証拠を」


イーヴォイェレミアスの声に、クレメンスとハーシェルヒルムの側近のナサニエルが夜会会場で音楽を鳴らす大きな蓄音機を運び入れて来た。会場の中央に設置され固定をするとクレメンスとナサニエルはイーヴォイェレミアスを見返す。それに、頷くと二人は徐に機械を作動させる。動き始めた蓄音機を守るようにふたりはお互いに背を向けて全方位を俯瞰するように立った。


蓄音機は、まずはキャウトィランヴ国の商人とノアベルト宰相の会話を流し始めた。次々と宰相たちの北の国の国を貶める話が進む。慌てたノアベルト宰相が動こうとした際には、侯爵より爵位の上のスチュワート公爵がゆったりと笑顔を称えながら前に立つ。


その録音は、場面を変えキャウトィランヴ国の第二王子に助力を願い、ウォーカー辺境、アンダーソン公爵を逆族として捉えた後の領地の分け前の話が続く。ウォーカー辺境伯はキャウトィランヴ国の第二王子の褒章となり、アンダーソン公爵領とアンダーソン公爵家の諸々を分ける話を、酒にでも酔っているのだろうか。大きな声でがはがはと笑いを混じり談笑している。


中には、オーランド・アンダーソンの最愛の妻であるユリアーナを所望するサンチェスト侯爵の声が響き、オーランドとユリアーナの兄であるジークフリート・テイラーに睨まれ、奥方に頭を殴打されたサンチェス侯爵が気を失う珍事も起きた。


その会話の中には、更にモール侯爵、ガルシア伯爵、マディソン子爵、エルナン男爵ら宰相側の貴族たちも現れる。本日は高位貴族の招待にもかかわらず全員が招待されており其々が、機械を止めようと動くが流石に城の騎士たちに差し止められる。それに伴って準備に加担していた寄子たちは青い顔で震えるしかなかった。すると、突然、ヘルムフリート国王陛下が大きな声を出した。


「おぉ!なんということだ!ノアベルトが余を謀っていたとわ!」


国王陛下の言葉に、ノアベルトは青い瞳を最大限まで見開きヘルムフリートと見返す。口はハクハクと動いているが言葉が紡ぐことが出来ない。


「イーヴォイェレミアス!それに名は出てきている貴族たちを捉えろ!」


ノアベルト宰相とその一派を切り捨てることにしたであろう国王にイーヴォイェレミアスは向き直り、御意と答えると騎士たちへ合図を出す。瞬時に拘束された貴族たちは、会場から運び出されていくかと思われたが騎士たちは壁際に拘束したまま待機する。


ノアベルト宰相に至っては、拘束されている者の最初の場から動いていない。


「イーヴォイェレミアス、もうよい。聞くに堪えないこの証拠を仕舞いなさい。淑女たちに聞かせるような事ではあるまい」


あたかも慈悲深い国王の顔になった国王は音声を止めるように指示する。そんなことをさせるわけがないイーヴォイェレミアスはにっこっりと微笑むと続ける。


「いいえ。最後の音声が実は1番始めに入手した証拠でございます」


聞こえたのは先ほどまで、慈悲深いばかりに最も信頼している側近である宰相に裏切られた哀れな国王陛下の声だった。それは、ハーシェルヒルム達が夜会に潜入し入手した音声であり、もちろんブラウン伯爵夫人ニコラの声も入る。


その内容に、全ての貴族が絶句する。もちろん宰相たちあちら側の人間もだ。自身の欲。恋情の為にずっと支えてくれた王妃、実の子供たちの哀れな処遇の計画を嬉々として最愛に語る有様は誰が聞いても耳を塞ぎたくなるほどの醜聞であり言い逃れのできない言葉ばかりだった。


「嘘だ!これは余ではない!余に似た声の人間だ!誰が撮って来た証拠だ!お前は知っているのだろう?その者を尋問するひっとらえてこいイーヴォイェレミアス!」


すると陛下の声の中ゆっくりと蓄音機に寄りハーシェルヒルムは音声を止めた。そして、父親である国王へと向き直る。


ヘルムフリートと同じ銀の髪を後ろに撫でつけ、主役である彼は今日。誰よりも華やかな恰好をしており、誰よりもヘルムフリートに似ているように見える。実際は、顔立ちは王妃に似ているが髪と瞳の色が同じで男性であるが為にそっくりに見えるハーシェルヒルムが静かに答える。


「私が録音してございます。その場におりました」


会場の空気がピンッと張り詰める。ハーシェルヒルムの語りは静かであり震えてもいないが悲痛さが伝わる声だった。


「その後の、音声まできちんと撮れています。流しますか?」


静かな声の問いに、ヘルムフリートは真っ青になり先ほどの宰相と同様口をハクハクと動かす。沈黙の数秒後に絹を切り裂くような女性の声が響き渡る。


「辞めなさい!なんと破廉恥な!この様な場で流すものではないでしょう!ご令嬢方もいるのですよ!」


ニコラ夫人の声に、大体の人間がこの後の事を想像できた。イーヴォイェレミアスは鼻から呆れたように息を漏らすとニコラ夫人に向き直り言葉を吐き捨てる。


「流すわけないでしょう。ここには、外国の貴賓もいるのですよ?」


今更。自分の発言の失態に気がついて顔を真っ白にしながら口を抑えるがもう遅い。その音声は事実で、国王陛下とニコラ夫人は今もなおそういう関係であり、情事を起こしている。貴族たちの頭にその事実が入ってくると、ニコラ夫人の隣に佇む少年が見えてくる。


彼は、ニコラス・ブラウン伯爵令息。今年、学園に入学したばかりのデビュッタントさえ終えていない彼は他の次期当主に連れられてきた令嬢方よりもしっかりと幼く異質で、髪は国王陛下と同じ銀の髪に、瞳はニコラ夫人と同じ紫紺色。先ほどの音声で入っていた。あの子はすぐに貴族たちの中でも合致した。


「父上。更には、彼らとあなたが出した手紙を色々と入手して御座います。これが証拠と言う物でございます。国王であれば、何でも許されるのではございませんよ?

・・・・・・・さて、集まり頂いた皆さまにここで考えて頂きたい。ランゲリーヴ王国の王族を揺るがし、国を危険に晒したのは誰かということを・・・・」


イーヴォイェレミアスの声に、貴族たちは一斉に国王陛下に目線を投げ視線を下げる。落胆の動きだった。


まさか、自国の王が自身の恋情を叶えるため、実の弟やずっと自国を守ってきた辺境伯を陥れ、王妃にも瑕疵をつけ、既に資質の完璧な第一王子を退けその恋情の相手との子を資質も分からぬまま王太子にゆくゆくは王へとなるような陰謀を立てるとは・・・聞いていたがこの場にくるまで飲み込むことが出来なかった。


そう、今日招待された貴族の中でイーヴォイェレミアス達に問題ないとされた貴族家の次期当主にハーシェルヒルムが近づき事と次第を話し着実にこちら側の人間を増やしていた。ハーシェルヒルムが度々、城を出ていたのは商人たちを見張るだけでは無かった。


次期当主に話す際に、現当主に話すかそうでないかは彼らに任せることにした。つまり、次期当主に話すと判断出来るほどの信頼されていない親。そもそも、信頼の無い家々がハーシェルヒルムの婚約者候補に令嬢を連れ立って来ていたことは明白だった。


貴族とて慈善事業ではない。何より自領の利益が優先される。王弟殿下や辺境伯の陥れることだけを画策しているのであれば、政戦に負けた彼らが悪いとされ退位するほどではと、王に恩を売り自身の利益の為に変な反論をする者もいたかもしれない。


しかし、ヘルムフリート国王陛下は北の隣国キャウトィランヴ国を招き入れ辺境伯領をあちらに渡す予定だと言った。自国を減らし、その国で認められてもいない王子を、危険を招き入れている国王をそのまま国王に据えるのは明らかに自身の利益をも損なう。


「さて、現国王ヘルムフリートの退位に反対の者は!」


「なっ何をこの場で行うつもりだ!」


「「裁判にすると申したでしょう?」」


慌てふためくヘルムフリートに、イーヴォイェレミアスとハーシェルヒルムの声が揃う。ジークフリートに至ってはいつの間にか最高裁判官の法衣を纏っている。見渡すと本日の招待客は貴族院のメンバーである高位貴族。ここで、全員の承認を得てしまえば国王の退位は覆せない。


「くそくそ、いつも私の思い通りにはならぬ!何が王だ。最高権力者だ!

それもこれも、お前のせいだ!お前が生まれた頃から父上と母上の寵愛はお前に向き。私には厳しい事しかいわぬようになった!」


陛下は、周囲の自身の近衛から剣を奪い。先ほどまで睨んでいた身構えている王弟ではなく、その愛娘であるディオティマに向かった。王子たちも側近たちも王弟殿下の警護に警戒を向けているばかりでディオティマから離れてしまっていた。


日々、ニコラと逢瀬の為に鍛えていたヘルムフリートの動きは早く皆が踵を返したがその頃にはヘルムフリートはディオティマに迫っていた。ヘルムフリートの剣がディオティマに届く瞬間、キーンと言う硬質な音が周囲に響き渡った。


近衛の刃が間に合ったかと思い全員の注意が向いた先には、シルバートレイで剣を受け流すアーデルべルトがトレイを持っている反対の腕でディオティマを抱え庇っていた。


国王がシルバートレイで防がれた事にあっけにとらわれている間に、スチュワート前公爵によってヘルムフリートの剣を持つ手の合谷に瞬時に握手をするように力を加え剣を落とさせると足払いをして剣を遠ざけそれをクレメンスが足で抑える。


剣を落とした姿勢で立っている国王を、第一王子の命を受けた護衛騎士達が後ろ手にして拘束する。

拝読ありがとうございます。



 ~登場人物~

【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)

王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫


【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)

王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*瞳:青紫


ヘルムフリート国王陛下(42)

髪:銀髪、腰まのロング、ウェーブ*瞳:青紫


【愛称:ディー】ディオティマ・アンダーソン公爵令嬢(16)

アンダーソン公爵一人娘*髪:オレンジ色、腰までの長髪、ゆるウェーブがかかった髪質*瞳:青


【愛称:アード】アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息(16)

エヴァンス侯爵家長子*髪:腰までの長髪・黄金色・ストレート*瞳:碧

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