046 公爵令嬢の災難
連続しているのに二日も開けてしまったので、
本日は朝9時と夜21時で更新したいと思います!
目をむくヨリックを一瞥すると、イフナースの言葉に従いイーヴォイェレミアスがジェラルドに目くばせをする。ジェラルドはトビアスと共にヨリックの元へと向かう。その間に、イーヴォイェレミアスはヨリックに問いかける。
「丁寧に一番上位の貴族牢に案内されますか?騎士に拘束されながら地下牢へ参りますか?」
イーヴォイェレミアスの笑顔の質問に、顔を青ざめたヨリックは、性懲りもなくシルフィアに目を向け命令をする。もちろん、シルフィアに眉間に深いしわえを寄せながらも優雅な声で言い返す。
「シルフィア!どうにかしろ!お前ならどうにかできるだろ?天才なんだろ!」
「天才にも出来る事と出来ぬ事があります。王族であるのなら、ご自身の瑕疵はご自身で解決できるものではないでしょうか?それが、上に立つものとしての責任でございます。
更に、申し上げて置きますが・・・何故、何の関係も無い他人の為に私が労力を使わなければならないのでしょうか?」
「貴様はキャウトィランヴ国の高位貴族だろう!自国の王子の窮地を助けるのは貴様らの義務だ!」
他国の王子ではるがあまりにな言葉に、周囲は絶句し白い目でみてしまう。シルフィアは反論しようとしたところにイーヴォイェレミアスの笑い声が響き渡る。第一王子らしからぬ高笑いに全ての人々の動きが止まる。
「あはははは。そうだね。貴族が国を守る王族を支えるのが王侯貴族の在り方というものだね。ヨリック殿下の意を組んで身柄の交換を受け入れよう!」
「「「は?」」」
イーヴォイェレミアスの言葉に、周囲の人間は驚顔になり、エーレンフリート、リシュエンヌとハーシェルヒルムが額を抑える。そんな周囲を無視して、イーヴォイェレミアスは顔を青くするがじっとターコイズの瞳でイーヴォイェレミアスを見据えるシルフィアの前に立つ。しかし、すっと視線を隣のイフナースに向けると微笑む。美しい男の美しい微笑みに二人が硬直する。
「なので、イフナース・オリフィエル殿下。ヨリック殿はお持ち帰り下さい。どちらに留めておきますか?」
イーヴォイェレミアスの質問に、少しの混乱を持ちながらも普段は外交官として海千山千の貴族の重鎮たちとの会話に勤しむイフナースはきっぱりと言葉を返す。シルフィアは青い顔をしながら二人を見つめるしかできない。第二王子のように、論破のできる相手ではないのは理解しているがもやもやと心が重くなる。
「地下牢と牢馬車をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「あい分かりました。ハイムンド予定変更だ。部屋の手配を!ジェラルド、トビアス!多少手荒でも構わないとのことだ拘束しお連れしなさい」
ハッと答え動く側近たちから目をシルフィアに向けるとイーヴォイェレミアスは殊更きらきらした微笑みになり口を開く。護衛騎士であるジェラルドたちは部屋の手配が完了するまでヨリックに猿轡を加えさせ拘束して待機している。拘束され猿轡までされているヨリックもこの場にいるのでニヤニヤとシルフィアに目を向ける。
「ウーレンベック嬢。ヨリックと引き換えに我が国は貴殿を所望する」
元婚約者のせいで、自身の身の上を拘束されると青ざめるシルフィアだが王位継承権を持っている公爵令嬢は、ランゲリーヴ王国に対する自国の王族の愚行の保障として身柄を所望されるのであれば自国の貴族として従わざるを得ないことは知っていた。
シルフィアの公爵令嬢としての高い矜持が喉の奥から込み上げる目の潤みは表に出してなるものかと耐えているとイーヴォイェレミアスの綺麗な微笑みが少しだけ陰りを持ち顔を覗き込むように口を開く。
「貴殿を、我が妃に迎えたい。了承してもらえるだろうか?」
・・・・・・・・・・・・・・
エーレンフリートはやっぱりと言いながら頭を抱え、ハーシェルヒルムとリシュエンヌは両手で顔を覆う。テオフィル殿下はニコニコと楽し気に眺めているが会場中の貴族たちが息を止める中、ヨリックが暴れ始めジェラルドによって混沌させられる。ディオティマの父でありイーヴォイェレミアスの叔父であるオーランドが立ち直り、狼狽して大きな声を張り上げる!
「イヴ!君は、ディーと婚約しているだろう!」
「叔父上、私は可愛い従妹を不幸にはしたくありません」
「何を言っている!婚約者である君が!君が!ふっ不幸!にしてるんだろう!浮気は認めん!」
常とは違う大きな声で狼狽しながら憤るオーランドの見据えながらも、イーヴォイェレミアスは余裕をもって答える。
「浮気ではありません。心外な」
「しかし、兄上が!認めたのだろう?婚約者はディーだっ!」
「えぇ。認めましたね。しかし、オーランド叔父上・・・手続きは?」
ニコッと可愛い顔で首をかしげる甥の言っていることの意味が分からずオーランドは混乱の中で言葉が漏れる。エーレンフリートの溜息も聞こえる。
「は?」
「陛下と叔父上は顔を合わせて婚約の契約をしましたか?」
「いやっ兄上が忙しいと君が持ってきた書類にサインを」
オーランドと顔を合わせるのを嫌うヘルムフリートが、イーヴォイェレミアスを正確にはほとんどはイーヴォイェレミアスの側近たちを伝書バトのように婚約の話し合いをして書類を行き来した。最後の婚約書類だけはイーヴォイェレミアスが持って行きオーランドにサインを貰った。
「して、その書類の決済と控えを頂きましたか?」
「え?あ?いやっ!まだ控えは届いていない・・・・・」
本当に性格が悪いというエーレンフリートの小声は無視する。イーヴォイェレミアス自身も知っている。イーヴォイェレミアスとオーランドの会話を聞いていた陛下も事に気がついたのか、イーヴォイェレミアスを責めるように言い立てる。突けそうな場所をやっと見つけてつつき始めたとイーヴォイェレミアスはヘルムフリートに向き直る。
「なんという事を!?第一王子の分際で国王を謀っただと!不敬罪だっ!」
「なぜ、私が謀ったのでしょうか?」
「王である私の認証を破棄したのだろうが!?」
「陛下。不備のある書類は陛下の玉璽がありましても指し戻されます。陛下は修正後の書類に押印はされたのでしょうか?」
また、きょとんとした可愛い顔を作ったイーヴォイェレミアスはコテンと首を斜めに傾ける。エーレンフリートのはぁーあざとい仕草まで入れて来たわ。という声は聞こえないことにした。そんな、会話の届かないヘルムフリートはノアベルトを見る。
「なっ不備だと!どういうことだノアベルト!」
「差し戻し書類は、我々で再度精査して陛下へ戻しております。・・・・・最近は差し戻し書類が多く・・・・色々と準備も重なり・・・・まだ確認しておりません・・・」
宰相であるノアベルトは、段々と青ざめていた顔が土気色になってきた。頭頂部の輝きも増しそうだな。まぁどうせこれからは人に会えないしいいかとイーヴォイェレミアスは思考を飛ばしながらも話は進める。
「未だ、裁可がございませんので、ディーは私の婚約者候補のただの従妹でございます。テオフィル殿下が言いますには帝国の医療で代々研究したところによりますと、血が近いのはあまり良くないそうです。叔父上、まだ決済前の婚約を取り下げませんか?私はできうる限り可愛い従妹には幸せで穏やかな結婚を願っています」
憂いを帯びた顔で叔父に向き問うと、その後ろではディオティマはイヴ兄様ありがとう存じますと返す。お互いに微笑み合う従兄妹同士を見てディオティマも承知の上の動きだったのだとオーランドは目を丸くした目を細め了承する。
イーヴォイェレミアスは、一度シルフィアに紫紺色の瞳を戻すと手を掬い唇を触れないキスを落とすと、先に我々の事を済ませますね考えて置いてくださいと一言伝え貴族を見渡し、陛下に向き直ると堂々と口を開く。
拝読ありがとうございます。
緊張感の薄い人々ですみません。
~登場人物~
【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)
王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫
ヨリック・アンドリース・キャウトィランヴ(17)
北国第二王子 髪:レモンイエロー 瞳:ワインレッド
イフナース・オリフィエル・キャウトィランヴ(15)
北国第三王子 髪:アッシュグレイ瞳:カーマイン
シルフィア・ウーレンベック公爵令嬢(17)
第二王子元婚約者 髪:ローズ 瞳:ターコイズ
オーランド・アンダーソン公爵(35)
アンダーソン公爵、王弟*髪:金、肩までの胃くせ毛*瞳:青紫
【愛称:ディー】ディオティマ・アンダーソン公爵令嬢(16)
アンダーソン公爵一人娘*髪:オレンジ色、腰までの長髪、ゆるウェーブがかかった髪質*瞳:青
【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)
テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*瞳:金




