045 第二王子の除籍
すみません。やっと時間が取れました。
二日と1時間遅れの更新です!
ちょっと面白い回なのですが、相変わらずの人の多さです。
「王族である、我の証言を証拠として認めないというのか!?何たる不敬!これは国際問題になるぞ!」
存在を忘れかけていたヨリック・アンドリースの大声が響き渡る。淡い金色の髪も、ワインレッドの美しい瞳も背の高い容姿も全てが高貴なものであったが、発言だけはどうしても頂けないこの王子相手に言葉は通じるのか?とご思案するイーヴォイェレミアスの少し斜め後ろから張りのある少女の声が発せられた。
「貴方にそんな権限は何もないわ!」
ヨリック・アンドリースと同じ年頃の令嬢は、薔薇のように滑らかな紅い髪を品よく編み込んでおり、ターコイズの瞳は意志の強さを物語っていた。イーヴォイェレミアス達とハーシェルヒルムの団体は少し左右に寄って彼女たちの通る道を作る。進み出て来た令嬢を視界にいれたヨリックはワインレッドの瞳が飛び出しそうなほど目を見開き口を大きく開けると大声を発する。
「なっ!シルフィア!何故貴様が!?」
「貴方に、名前を呼ばれる謂れは無いわ!クラーセン公爵令嬢とお呼びなさい!」
「なっ公爵令嬢ごときが!」
「私には、貴方に無い王位継承権が辛うじてあります。どちらか上位が明白ではありませんこと?」
「なっ婚約を破棄された婚約者のくせに!婚約者気取りか!」
「婚約を破棄されたのは貴方!あ・な・た・の有責で破棄になったのよ。記憶力も無いのですか?全く気取っておりません!貴方の婚約者は、タチアナ。トルベッケ家から離籍された平民の娘です!」
「なっ」
ヨリックから出てくる頭が痛くなるような言葉の数々にシルフィアは反論するが、ヨリックの持論は止まりそうにない。白けた気持ちでヨリックを見ている中、彼女より幾分か少年の高い声が遮る。
「兄上!貴方は王族にまだ籍は残っておりますが、王位継承権も剥奪済、今後の籍も保障されておりません!一貴族の次男と同等と何度伝えれば理解なされるのか!」
ヨリック・アンドリースより、少し背は低いが少年から青年に変わる年頃の男性は、短い濃い金の髪にリンゴのように紅い瞳を持った男はヨリックより明るめの瞳と濃い髪色をしていたが色彩も顔立ちもとても似ていた。しかし、その佇まいと言葉はどれをとってもヨリック・アンドリースより理知的であった。
「はぁー!?キャウトィランヴ国の次期王太子とおっしゃっていたではありませんか!」
三人のやりとりをあっけにとられていると、宰相が悲鳴のような声を上げる。自国の宰相の有様にイーヴォイェレミアスが半目になり、エーレンフリートからは大きなため息をついた。横並びになり、今話をしている二人の少しばかり離れた後ろに立つリシュエンヌをエスコートしている帝国の第三皇子さえも苦笑いをしている。
「次期王太子?そんなことは、事実無根です。婚約破棄騒動によりヨリック・アンドリースは王族にいる事さえ王妃の愛情と言う名の首の皮一枚でついているようなものです!今回の事で、除籍が決まりました」
「何を言っている!」
「何を言っている。のは貴方ですわ!私も陛下も次は無いと申しました!それでも、除籍されないと王妃様が仰るのであればクラーセン侯爵領は帝国に組します!国王がそんな損害をだした王族をそのまま王族のままで置いておくでしょうか?」
シルフィアの発言に、イーヴォイェレミアスは隣に並ぶテオフィル第三皇子に目をやるとにこやかに微笑まれた。根回しがいいな。流石、あの王子の婚約者を長い事していたご令嬢だと呟くと、後ろに控えたエヴァンス侯爵がアーデルベルトの隣で幼少の頃より尻ぬぐいをされておりましたとつけ加える。
「何を言っている!お前にそんな権限が無いだろう!それに、帝国が受け入れるわけないだろうが!」
そこに、パンパンパンと会場内に響く手を叩く音がする。場の空気が静まり返り、リシュエンヌの隣にいるオリエンタルブルーの長い髪を一つに結び銀の瞳を細め手を叩く煌びやかな品の良い衣装を纏う少年に会場中の目線が向かう。少年は二、三歩歩みシルフィア達に歩み寄ると発言する。
「クラーセン公爵家の受け入れ打診は内々にありました。こちらとしては正式に申し込まれるのであれば喜んで受ける予定ですよ」
「誰だ!貴様ごときが何を言う」
噛みつくように男に言い返したヨリック・アンドリースを一瞬見据えて、シルフィアに微笑みの表情ではあるが目が笑っていない顔を向ける。
「シルフィア嬢。君の気持ちが良く分かったよ」
髪の色と同じオリエンタルブルーの眉を下げて、シルフィアに同情と同意を示すとことさらにこやかにヨリックに向き直る。
「私の顔を忘れたのかい?貴国は長年、当帝国の友好国であるはずなんだが?君との2年前までは毎年顔を合わせていたのだが?」
「・・・・・・・」
ヨリックは今更気がついたのだろう。押し黙る。
イーヴォイェレミアスの隣のエーレンフリートがお前にそっくりだな。とボソリとつぶやく。反対側に立っているフィンセントにも聞こえたのだろう。口を抑え小刻みに揺れている。先ほどまで、国家反逆罪で捕まりそうになり、実の姉を見つめて大きな体を震わしていたのに立ち直りが早い。
ヨリック・アンドリースを黙らせる事に成功したテオフィル第三皇子は、イーヴォイェレミアスに振り向くと目を向ける。イーヴォイェレミアスは頷くと、徐に宰相を見据えて口を開く。
「国内の事ばかりにかまけているから、そうなるんだよ。いくら、キャウトィランヴ国が情報に規制をかけているとは言え情報の入手経路が数多くあるんだ。何故、事実確認をしなかった?」
ノアベルト宰相は先ほどまでの自信満々の顔を真っ青に変え、イーヴォイェレミアスを睨み返す。未だ逆転が出来ると思っている様子に溜息がでる。陛下に至っては、ただ立っていた。基本的に、周りの人間たちに指示をして動かしていた陛下は自分の意としたことと別の行動をされると弱いのだとこれにもまたイーヴォイェレミアスは溜息をもらす。
「王妃様からの玉璽の押されたお手紙も頂いている!」
宰相の叫ぶような言葉に、ヨリック・アンドリースと似た少年が少しばかり顔を歪めて呟き、その後は懐から1枚の書状を開き見せ、張りのあるまだ高い声でしっかりと口上を述べる。
「玉璽。そうですか母上に関わってしまっているのですね。残念です。
私は、キャウトィランヴ国、第三王子イフナース・オリフィエル・キャウトィランヴ。自国の王の勅命により、帝国第三皇子テオフィル殿下のお力添えを頂き、イーヴォイェレミアス第一王子殿下の許可を得てこの場に参上いたしました。
先ほどの発言も王より賜った事実。ヨリック・アンドリースは次期王太子どころか王位継承権さえ剥奪された身。この様に貴国に迷惑をかけましたのは・・・我が王家の不徳の致すところ。今後の外交にて国交の回復を厚かましくも願っております」
最後の方こそ少しの揺らぎは、そこは今後の外交の憂いだろう。外国での堂々とした佇まいにイフナース第三王子殿下は15歳だったな。ハーシェルヒルムより一つ下かと関係の無い事を考えていたイーヴォイェレミアスはその言葉にゆっくりと答える。もはや、国の代表として陛下の語る隙は与えられない。
「イフナース・オリフィエル殿下。ヨリックの処遇は?貴国はどの様にお考えでしょうか?」
「ヨリックの除籍は私の采配に任されております。彼は・・・ただのキャウトィランヴ国民です。ランゲリーヴ王国の意向に添うようにと王よりお言葉を頂いております」
「分かりました」
イフナースの燃える様な赤い瞳を見つめイーヴォイェレミアスは了承する。
拝読ありがとうございます。
~登場人物~
ヨリック・アンドリース・キャウトィランヴ(17)
北国第二王子 髪:レモンイエロー 瞳:ワインレッド
イフナース・オリフィエル・キャウトィランヴ(15)
北国第三王子 髪:アッシュグレイ瞳:カーマイン
シルフィア・ウーレンベック公爵令嬢(17)
第二王子元婚約者 髪:ローズ 瞳:ターコイズ
テオフィル・リーヴバレンティ(16)
帝国皇太子 髪:オリエンタルブリー 瞳:シルバー
ノアベルト・バルヒェット侯爵(40)
王家の遠縁 髪:金 瞳:青
【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)
王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫
茶々を入れるだけのエーレンフリート様と笑ってるだけのフィンセント叔父上は割愛します。




