040 侯爵子息の強行
遅くなりました!
エピソードが多すぎでは無いかと・・・困っています。
「なんで、迎えに来たんだい?」
ハーシェルヒルムの誕生祝いの夜会に参加するために準備をしているところに、笑顔で迎えに来たエーレンフリートと顔を合わせて何食わぬ顔で馬車に乗った叔父が馬車が走った途端に口を開く。
「北の状況を見て、叔父上が単独で王都に向かうのではないかと思いまして」
「そうだね。父上も辺境騎士団の半数も国境沿いに滞在してる。これ以上、領都の守りを減らせないだろう?」
「そう思い。叔父上が一人でこちらに向かう気がしたので参りました」
「叔父さんは、そんなに頼りないかね?」
エーレンフリートの目の前の叔父は、叔父と呼ぶには23歳と若くエーレンフリートと5つしか離れていない。髪は辺境伯家当主に多い黒髪、瞳はエーレンフリートの祖母である母親と同じ空の色をしていた。背はエーレンフリートよりはるかに高く身体は屈強と言っていいだろうがっしりとしていた。
「彼の方も色々考えているようですよ。まぁ宰相閣下の口添えでしょうが」
「そうなのか?」
「あはは聞きますか?どうやら、叔父上を近衛の誰かとトラブルを起させて反撃させて『辺境伯が近衛に手を出した』という事実を作ろうとなさってるみたいですよ」
「おぉ。そんなに短慮に見えるのかね?」
「まぁ。『人助けをしようとして手を出した』体では?」
「人助けか・・・手を出すかもな。だから、この大人数か?」
フィンセントが馬車の外に目をやると、一小隊ほどの人数がいる。単独でトラブルに向かうと制圧に多少暴力が必要だが、大人数で制圧する場合。殆どが拘束程度で収まる。
その中の馬車の一番近くには、ひときわ美しい金の髪を一つに纏めた顔の綺麗な男と、その男に似た銀の髪の男がいる。エーレンフリートより若そうだと叔父は口に出す。
「どこから、あんな綺麗な子たちを連れて来たんだ?」
「はぁ。辞めて下さいよ!だから、男好きとか言われるんですよ?いい加減、婚約者でも見繕っては?」
「はぁ~可愛くない!昔は、フィン兄様!フィン兄様ってくっついてきてたのに!」
「辞めて下さい!いくつの話ですか!?」
「10歳くらいまでは言ってたぞ!学園に入ってから澄ましやがって!」
「これでも、テイラー家の嫡男ですので」
「あぁ。義兄さんを目指してるなら・・・そうなるか・・・」
何を思い出したのか、フィンセンは大きな体を両腕で抱きブルブルと武者震いをする。そんな叔父をみてエーレンフリートもあははと乾いた笑いを出すしかなかった。そして、先ほどのフィンセントの質問に答える。
「それで、あの綺麗な子らはエヴァンス兄弟、スチュワート公爵の甥です」
「あ?あのスチュワート前公爵に鍛えられた?あぁーあれが・・・・ん?ベティの婿殿じゃないのか!?」
「ちゃんと手紙読んでるんですね。えぇ銀髪の方が」
「おいっ何故、紹介しない!」
「え?紹介してほしかったですか?」
すっとぼけるエーレンフリートに、フィンセントは顔をしかめて腕を組みながら真剣な顔で言う。
「そりゃ~ベティの相手を見定めないとだろ?」
「大丈夫です!父上のお眼鏡にかかってるので何の問題も無いです。イヴも気に入ってますし・・・」
「そうか・・・・義兄さんとイヴが・・・すげぇな」
「そう。問題無いです」
「ん?婿殿紹介とかじゃないなら何で彼らを連れて来た?」
「あぁ。抑止力ですよ。護衛は皆さんスチュワート公の騎士団の方です。今からキャウトィランヴ国に接してる二つの領地の当主を断罪しようとしてるんですよ?スチュワート公には手を出せません。後、あの方は英雄ですからあの方まで敵に回すと国として立ちいかなくなるでしょうし」
「だが、スチュワート公の騎士たちが俺を迎えに来たらおかしくないか?」
「そこで、婿殿ですよ。私が久しぶりに叔父のところへ行くのでベティの婚約者であるクレメンスも挨拶がてら同行する。それを聞いたスチュワート公の騎士団が辺境伯へ行きたがりお目付け役で兄のアーデルベルトも同行した」
「じゃあ、紹介しろよ!しかし、はぁ~色々考えるねぇ~」
「叔父上も色々考えましょうよ・・・当主でしょう?」
「・・・・・嫁は頭のいい娘がいいな!」
ニカッと音がしそうな歯を見せて笑って誤魔化す姿は、辺境で魔物と対峙したりキャウトィランヴ国の国境沿いで小競り合いの守護をまとめているようには見えない。
フィンセント・ウォーカーが産まれたのは姉である王妃が成人直前の17歳の時だった。エーレンフリートの母であるウォーカー家の次女ヘルミーナは産まれた当初からテイラー侯爵の嫡男に嫁ぐことが決められており王妃である長女のイーリスティアはフィンセントが産まれる17歳の年まで次期当主として勉学にも訓練も厳しく教育されていた。
もちろん、婚約者もいた。この事の辺境伯騎士団の次期団長と名高い男だった。しかし、フィンセントが産まれた事によって婚約も次期領主も保留となった。
丁度その頃、キャウトィランヴ国の進行が危ぶまれ王家と辺境伯の関係強化のために当時の国王である前国王より婚約打診があり、現国王は半年ほど渋っていたがニコラがブラウン伯爵と結婚したため了承し、イーリスティナは王家へ嫁ぐこととなった。
フィンセントは自分が産まれたことによって次期当主になれなかった長姉の事を、領地の人々の口から聞かされていた。それは、姉を慕っていた女性騎士たちだったり、姉と婚約者を応援していた侍女たちだったり、姉の采配で栄え始めていた領都民たちで、いたるところに子供に余計な事を言う人間がいるのだった。
老齢の両親や時々会う下の姉であるテイラー夫人ヘルミーナにも長姉は気にしていない。今は王妃であり身分には申し分無いのだから気にすることは無いと言われるが、長女であるイーリスティナの気持ちは本人から一度も聞いたことが無い。兄弟ではあるが、王妃と辺境伯嫡男という立場は私的な会話を深く行うことは叶わなかった。
フィンセントが13歳で王都の学園に通う頃に第三王子であるテオフィリスが産まれた。その五年後にはフェリシアも産まれた。ゆくゆくは自身の子に辺境伯を継がせるために姉は細い体で5人もの子を産んだのでは無いかとフィンセントは考えた。
出産は過酷なものだと母親から聞いていたフィンセントは、テオフィリスが産まれた頃は、長姉は30歳。フェリシアを産んだときは35歳となっている長姉は無理して子供を産んでまで、フィンセントにそのまま辺境伯を継がせる気が無いのではとまで考えた。
だから、フィンセントは未だ婚約者を定めておらずはぐらかしていた、自分は姉の子が育つまでの中継ぎであると・・・。
「それで、陛下は本当にやるのかい?」
「はい。動いてる証拠は諸々揃いました」
「・・・・・姉上も加担しているのか?」
「え?そんなことは無いですよ。一応、イヴの妃殿下を慮った巻き込んでいませんが妃殿下が協力体制なのかは父上が調べています。そんな痕跡はありません」
「そうか・・・・」
「叔父上?」
「いやっ何でもない!何もハーシュの誕生の夜会でしなくてもいいのにな!」
落ち込んでる様子を見せた後、誤魔化すように話を変えたフィンセントをエーレンフリートも困った様に相槌をうつ。
フィンセントが学園に通う間、テイラー侯爵家に滞在していた。エーレンフリートも、兄の様に慕っている叔父が辺境伯の爵位継承で悩んでいることは知っていた。この件が終わった後でいいから伯母と叔父が話し合う機会があればいいのだが向かいにいる叔父に聞こえない声で独りごちる。
拝読ありがとうございます!
~登場人物~
【愛称:フィン】フィンセント・ウォーカー辺境伯(24)
辺境伯現当主、王妃・テイラー夫人の弟 髪:黒 瞳:青
【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)
テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*瞳:金




