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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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35/55

035 侯爵子息の親睦

遅くなりました。日を跨いでしまった・・・

少し長いです!

西の空からアイボリーの人々が行き交う明るい昼の色を残しつつも、東に向かって朱が混ざり、更には紺が広がる時間にクレメンスは、黒に近いミットナイトブルーのジャケットとスラックスに自身の紅い瞳の色に合わせたピンクホワイトのシャツを合わせたタキシード。


アーデルベルトは、自身の翡翠色の瞳に合わせたアイビ-グレーのジャケットとスラックスに髪の色に合うようにアイボリーのシャツを合わせたタキシード。エヴァンス兄弟の手持ちで最も質のいいタキシードに身を固めたふたりは無言でテイラー家に向かう馬車に乗っていた。


「「ようこそいらっしゃいました。アーデルベルト様、クレメンス様」」


馬車止めにゆっくりと馬車が止まり、扉が開くとそこには最近では良く会うふたりが余所行きの微笑を貼り付けて出迎えてくれた。馬車から降りた二人が固まっていると、ディオティマとベアトリクスは一度目を合わせクスリと笑うと、再び淑女の笑みに戻した。


ディオティマがアーダルベルトの前に、ベアトリクスがクレメンスの前に立つとふたりは右手を其々に差し出した。そこで、やっと我に返ったふたりは其々手を掬い上げ自身の左腕に誘導してエスコートのカタチを取る。


クレメンスは、ベアトリクスの対応と微笑みに少し力が抜けて歩き出すが、アーデルデルトは未だガチガチに固まっている。ディオティマはくすりと笑うと空いている左手でアーデルベルトの二の腕をポンポンと軽くたたく。アーデルデルトは、驚いて翡翠色の目を見開きディオティマを見下ろす。


「そんなに、緊張しなくても大丈夫よ。テイラー家も、うちも変な人はいないわよ!最近は殿下方とお話しをするのも慣れてきたのでしょう?」


「いえっ・・・」


「どうしたの?」


「あのっ・・・・」


アーデルベルトの一向に落ち着かない反応に、ディオティマが眉を顰めると。アーデルベルトは慌てて正直な話をする。


「ディオティマ様のエスコートに緊張してまして!あっ、あっ、と・・・ディオティマ様のご両親もいらっ・・・しゃっ・・・るとのことで・・・えっと。あの・・・」


「そっ・・・・そう。あぁ~ん~。エスコートは慣れてくださいまし?私の両親も普通の人よ。怖い事はないわ!」


最近のアーデルベルトはディオティマにも慣れていると思っていた。でも、それはクラスメイトの距離感での話だと分かった。今は、エスコートまで許しているのだから仲の良い男友達ほどの距離感だろうか。


アーデルベルトの緊張が全てディオティマ関連の事に、照れ臭く感じたがディオティマはそれでもエスコートには慣れてもらわないといけないし、自身の両親が緊張するような相手でもないと早口で説明する。


なかなか、後ろから付いてこないアーデルベルトを玄関扉の前でクレメンス達が振り返り、小声であるが、兄を叱責する。


「兄上、テイラー夫妻に失礼です!ディオティマ様もいらしゃるのであればアンダーソン公爵夫妻もお待たせしていますよ!急いでください!」


「あぁ!すまない!・・・・・ディオティマ様。参りましょう。・・・・宜しくお願い致します」


「えぇ。安心して!私の友人と話してあるのよ。私がついていますわ。そんなに緊張なさらないで」


「あっはい!」


ディオティマの励ましで、少しだけアーデルベルトの顔にも笑みが零れる。顔が強張っているが大丈夫かなと思いながら執事が開く玄関扉をくぐり玄関ホールへと入る。


家族は、晩餐室で待っているということで、そのまま晩餐室に向かいながらクレメンスは大分和らい表情になり、ベアトリクスと楽しそうに話しをしながら歩を進めている。


「あのふたり、良い雰囲気ね。ベティが幸せそうで良かったわ」


「えぇ。そうですね。ベアトリクス嬢と婚約が決まってから、私もクレメンスの色々な一面を知りました」


「兄弟でも知らないことってあるものなの?」


「そうですね。我々は年子のですので仲の良い方ですが、私もここ2年は留学しておりましたので、弟にお慕いする相手が出来ていたことに驚きましたよ」


「あら、そうなの?」


「アレは、昔から冷めていたので。嫡男でも無いし、銀髪に紅い目は珍しいですからね。私とは間逆ですから・・・」


「間逆?」


「はい。父が銀の髪に碧の目で、母が金の髪に紅の目なんです。エヴァンス家の珍しい銀の髪と、スチュワート公爵家の珍しい紅い瞳は幼少期は好機か嫌悪の対象でして・・・」


「まぁそうねぇ。ふたりとも顔を整ってますしね」


「え?あっ・・・そうですか。ありがとうございます」


ふいに、顔を褒められ照れるアーデルベルトにディオティマは不思議そうに問いかける。


「言われ慣れているでしょう?」


「言われ慣れているのと、ディオティマ様に褒められるのは違います」


あぁそうなの。とディオティマが答えるころには晩餐室に到着し、執事が開ける扉をクレメンス達とくぐった。晩餐室に入った瞬間、手を添えているアーデルベルトの体が再び固さを取り戻してしまった。


「本日は、私の誕生のお祝いに来てくださりありがとう存じます」


今日の主役のテイラー夫人は、ベアトリクスより紫の強い髪を、シニヨンスタイルに品よくアップしており、ルードリッヒと同じ晴れた濃い空色の瞳はにこりと細め礼を述べ歓迎する。


アーデルベルトとは、お見合いのあの日以来の再会であったのでアーデルベルトには謝罪もあった。同様に、テイラー侯爵からも謝罪されたアーデルベルトは恐縮しっぱなしであったため、エーレンフリートが止め和やかな晩餐が始まった。


今日の晩餐は、テイラー夫人であるヘルミーナの誕生日を家族で祝う会であり、テイラー家の他にはジークフリートの妹のユリアーナの家族であるアンダーソン公爵位とベアトリクスの婚約者であるエヴァンス兄弟のみの招待となっていた。



◇◇◇



晩餐の後には、男女で分かれ歓談をすることとなった。女性陣はデザートと珍しいお茶を楽しむために晩餐室に残り、男性陣はルードリッヒもいるのでシガールームでは無く、図書室で珈琲を楽しむこととなった。


図書室へとジークフリートとエーレンフリートを先頭に、ルードリッヒとオーランドが談笑しながら進む中、クレメンスと話しながら歩いていたアーデルベルトの前を歩いていたオーランドが歩調を緩めふたりに声をかける。


「ディーと仲良くしてくれていると伺っている。ありがとう」


元王族で、現在では公爵家当主のオーランドは、王家に多い金の髪に王族に引き継がれる青紫の瞳をしていた。第一王子であるイーヴォイェレミアスと同じ色を持つので、似ているなと思ったが、陛下に似ている第一王子に似ているということは国王陛下と王弟殿下はよく似ているのがわかった。


しかし、常に顰めた顔を張り付けている国王陛下とは違い、柔和な微笑みを絶やさないオーランドは印象が違う。しかし、ディオティマの父であるオーランドに声をかけられるとアーデルベルトは恐縮する。その隣でクレメンスも言葉を返す。


「いえ。そんな・・・私の方こそお話して頂けて光栄です」


「ディオティマ様は私共にも優しくお声がけして下さるので私たちも嬉しく思っています」


「ふふっ。今まで学園での話しは、こういう事を学んだ。あの課題は難しかった。この講義は受けてみたいという勉学の話し多くてね。学園生活を楽しめているのかと心配していたんだ。

でも、最近では色々と君の話を聞くんだよ、アーデルベルト君。もちろん、ハーシュの愚痴もよく聞くようになったがね」


オーランドは青紫の瞳の片目を閉じて茶目っ気たっぷりにウィンクをしてほほ笑む。


「わっ私の話ですか?」


「兄上、なにやらかしているんですか?ディオティマ様に失礼はしてないですか?」


オーランドは、慌てるエヴァンス兄弟に目を丸くして驚くがまた目を細めて微笑む。


「いやっ。悪い事では・・・・ないのかな?アーデルベルト君が面白いという話をよく聞くよ。そして、博識で語学が堪能なんだろう?」


謙遜するアーデルベルトの隣でクレメンスが焦り、兄に詰め寄る。ディオティマが絡むとアーデルベルトの信用が無いに等しい。


「兄上、本当に何をしてるんですか!閣下の間が怖いです」


「あはは大丈夫だよ。アンダーソン家ではエヴァンス兄弟の評判は概ね良好だよ」


朗らかに笑うオーランドに恐縮しながら、図書室へと入る。テイラー家の図書室は広い。内部は2階ほどの高さがあり壁一面の本棚が天井までびっしりとあるが、2階の高さにはきちんとした階段と廊下があり1階と2階の境目、2階と天井の境目には嵌め殺しの明り取りの窓が本棚を支える柱の間に並んでいた。


その中央には、奥から書見台の机が並び、その手前には執務机のように平らで広い机が並べられ、入口に近い開けた場所に低い長テーブルを囲むように長椅子や一人掛けのソファーが並べられている空間があった。


テイラー家の当主であるジークフリートが、1番奥の上座の一人掛けにへオーランドを案内するとアーデルベルトとクレメンスをその隣の長椅子へ、自身はオーランドの隣の一人掛けに、エーレンフリートとルードリッヒを自身の隣にある長椅子へ座りテーブルを囲んだ。


侍女たちによって、珈琲の準備がされ甘味類とナッツ類が置かれると使用人たちはジークフリートの執事を残し退室した。退室した途端。温められたミルクと砂糖を珈琲にたっぷり入れたルードリッヒを横目にジークフリートは話を始める。


「今日はヘルミーナの誕生日だからね。手短に済ませたいが、この様にこの面子が会うことは難しいだろう。エーレンフリート現在の状況は把握しているか?」


「はい。父上。叔父上にもいろいろ報告したいことがあります」


エーレンフリートは、今までにそれぞれが集めた情報を少しずつは報告していたが最初から説明を始めた。国王陛下の執務がイーヴォイェレミアスに偏り始めたことから二人で調べ始めたこと。他国に嫁いだ元王女(殿下たちの叔母)が陛下の振る舞いに対して妃殿下を案じてた事。ブラウン伯爵が陛下の元恋人だったこと。


フランチェスカの振る舞いの原因は何かということ。ニコラス・ブラウン伯爵子息の告白。国王陛下が北のキャウトィランヴ国の商人と密会していたこと。その場に、フランチェスカの母であるブラウン伯爵夫人がいたこと。不倫関係であること。


オーランド叔父上と妃殿下の実家のフィンランド叔父上を嵌めようとしていること。アンダーソン公爵領とウォーカー辺境伯がキャウトィランヴ国の取引に使う予定のこと。宰相が陛下側であること。


現在、陛下の誕生祭の為の来賓をもてなす準備をイーヴォイェレミアスと共にリシュエンヌとハーシェルヒルムに依頼してきたこと。どうやら3週間後のハーシェルヒルムの誕生祭にことを起こすのではないかという推測。


今までの情報を全てをオーランドとジークフリートと共有した。時々、アーデルベルトやクレメンスが立ち会った時の細かな情報や、その時のそれぞれの動き、弟であるコンラーディンによるニコラスの状況や今の精神状態、祖父であるストゥワート前公爵との共有と前公爵側の動き等を補足していった。


「・・・・・なんというか。リートはともかく未だ学生の君たちをこんなに巻き込んで・・・・」


オーランドは言葉を詰まらせる。国の頂点である国王陛下の裏切りであるとともに実兄の余りの愚行に絶句する。オーランドは、ニコラスの事を知らなかった。13歳で学園に通い始めるが社交界。つまりオーランドが参加するような夜会には来年からしかニコラスは出られない。


もちろん、ブラウン伯爵夫人の参加するお茶会はアンダーソン公爵夫人の招かれるような主催者ではない。ニコラスの容姿を見なければ、単純にブラウン家の第4子としての情報しかない。


「彼は・・・ニコラス君は。本当に兄上の?」


「それは、定かではありませんが・・・ハーシェルヒルムと同じ色彩の子です。顔立ちは母親似でしょうね。愛らしい顔をしています」


「・・・・そうか・・・・」


エーレンフリートの説明に、完全に絶句したオーランドを一瞥すると今まで黙って聞いていたジークフリートが口を開く。


「これは、国の基盤を揺るがす事件になる。ハーシュの誕生祭に行うという事は高位貴族だけの参加の夜会か・・・。スチュワート前公爵は協力いただいてるようだが、スチュワート現当主は?」


「叔父上にも共有しております。しかし、叔父上はぎりぎりまで動くなとお祖父様(おじいさま)の指示です」


叔父上(ストゥワート公爵)は大雑把なところがあるからね。味方であることは確実ですのでご心配なく」


アーデルベルトとクレメンスの説明にジークフリートは胸を撫でおろす。


「バルヒェット宰相が動いているとなると、大人である現当主方が動くとこちらの動きが掴まれやすくなるだろう。エーレンフリート、夜会には現当主と次期当主を招待するようにハーシュに頼みなさい。アーデルベルト殿、クレメンス殿。ハーシュの誕生祭に呼ばれる、公爵家、侯爵家、一部の伯爵家に噂を流すことは可能か?」


「はい!出来ます」


「どのような噂でしょうか?」


ジークフリートの問いかけにアーデルベルトとクレメンスは前のめりに了承すると、ジークフリートは珍しく微笑み話しを続ける。


「『北のキャウトィランヴ国が戦争の用意をしているという情報を聞いた』と、そうだな君たちはその程度で話を止めなさい。話の途中にそんな事を聞いたような気がする程度に何か所かで話をすれば気になる子息は他に情報を持っているかと周囲に尋ね広まるだろう」


「父上、大丈夫ですか?そのようなことをして」


「あぁ。学園の中というものは、根拠のない『噂』は良く回るものだろう?アーデルベルトとクレメンスはそれを聞きまわる人間と、一切興味が無さそうな素振りをするものを確認しなさい」


「聞きまわる者と、興味が無さそうな者ですか?」


「あぁ。『聞きまわる者』は国を憂い、きちんと情報を確保したい者だ。子息自体は宰相側では今のところない者だ。そういう家は、国益を考えているか、状況を見据えてどちらでも行けるようにしているだろう。『一切興味が無い者』は情報を知っていて話を収めたい者で宰相側だろう。もしくは・・・」


「もしくは?」


「何も考えてないものだ。近づくな・・・」


「「「・・・・・はい」」」


エーレンフリート、アーデルベルト、クレメンスは神妙な顔になり了承する。そんな3人からルードリッヒに目を向けたジークフリートは最後に末の息子に言葉を向ける。


「さて、ルードリッヒ」


「はい。父上」


「話は聞いたな」


「はい」


「覚えたか?」


「はい」


「どうすべきかわかるか?」


「情報を開示せず、情報をもとに危険を回避する。でよろしいでしょうか?」


ジークフリートは、満足気に顔を綻ばせ頷く。ルードリッヒはニカッと顔を綻ばせて了解しました!と敬礼した。

拝読ありがとうございます。

リアクションあると励みになります!宜しくお願い致します!


 ~登場人物~

【愛称:ジーク】ジークフリート・テイラー侯爵(45)

現テイラー侯爵*髪:水色、ショートオールバック、ストレート*瞳:金

【愛称:ミーナ】ヘルミーナ・テイラー侯爵夫人(35)

現テイラー侯爵夫人*髪:紫紺、ストレートロング、結い上げ*瞳:青

【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)

テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*瞳:金

【愛称:ベティ】ベアトリクス・テイラー侯爵令嬢(15)

テイラー侯爵家第二子長女*髪色:桔梗色・腰までの長髪・ストレート*瞳:金

【愛称:ルー】ルードリッヒ・テイラー侯爵子息侯爵子息(13)

テイラー侯爵長子長男*髪:薄紫、短髪 ストレート*瞳:青

オーランド・アンダーソン公爵(35)

アンダーソン公爵、王弟*髪:金、肩までのくせ毛*瞳:青紫

【愛称:ディー】ディオティマ・アンダーソン公爵令嬢(16)

アンダーソン公爵一人娘*髪:オレンジ色、腰までの長髪、ゆるウェーブがかかった髪質*瞳:青

【愛称:アード】アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息(16)

エヴァンス侯爵家長子*髪:腰までの長髪・黄金色・ストレート*瞳:碧

【愛称:レメ】クレメンス・エヴァンス侯爵令息(15)

エヴァンス侯爵次子*髪:短髪・銀・センターパート・ストレート*瞳:赤

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