033 王子殿下の放蕩
色々な人の場面に飛んでます!
皆さま大丈夫でしょうか?
そして私の予約も1日飛んでて・・・今の時間に投稿です・・・
「また、第二王子は降りたのですか!?」
宰相の大声が、ハーシェルヒルムの執務室で響き渡る。珍しく留守を任されたナサニエルは両肩を竦め答える。
「はい。婚約者に成られる帝国の姫様のおもてなしを任されたでしょう?どうやら張り切ってしまわれた様で、門から城へ向かう道の安全性の確認もしたいし、王都の女性に流行っているドレスや装飾品の確認とプレゼントの購入もしたいそうです」
「そういう事は臣下の君が行うことでは無いのか!?君は子爵家の出だろう?よほど君の方が適任では無いか!?」
ナサニエルは神と同じ桃色の長いまつげを伏せ、ジャネットと同じ美少女の様な顔で悲し気な表情を作り言葉を続ける。顔の造形を最大限に生かす男である。
「はい・・・・。私はしがない子爵令息でございます。
姫君にお似合いになさるような装飾店へは入店すらお断りされてしまいます。それに、姫君とお会いしたことはございますが、しがない子爵家出ですので、姫とお言葉も交わしたこともございません。殿下がご自身でお選びとおっしゃられましては、私の様なものでは・・・とてもとても・・・お力になれなくて・・・」
悲し気なナサニエルの表情は、宰相の周辺で仕事をするような自信を漲らせた女官たちより儚げで周りの同情を買う。宰相の補佐達も、殿下に命令されますと私たち従者では反抗することは出来ませんよ。とナサニエルを擁護する。
「ぐっう・・・・・戻りましたら知らせなさい!」
宰相は悔しそうに、顔を歪め退室する。そんな宰相に恭しく頭を垂れて床を眺めながら、ベーッと舌を出す。宰相が退室した廊下側の扉がばたんと閉まると、隣の会議室の扉が開く。
「帰ったか?」
「殿下。おかえりなさいませ」
「あぁ。戻った」
「いつ頃お戻りに?」
「宰相がこの部屋に入るのが見えたから隣で待ってた」
「あぁ。そうですね。自由に遊びまわってると思われないといけませんしね」
宰相が怒号を飛ばしていた為、ナサニエルを残して側近たちは退室しており、執務室にはナサニエルと、戻ったばかりのハーシェルヒルムとオリヴァーだけになっていた。そうだなと呟きながらハーシェルヒルムは、自身の執務机に並ぶ書類に目をやる。
「流石に溜めたな。・・・・・さて、やるか」
「はい。あっバルヒェット宰相が戻ったら知らせるようにと仰ってましたがどうなさいますか?」
「ん?これが終わった頃でいいのではないか?第一王子は執務で忙しく、第一王女は歓待の宴の準備で忙しい。第二王子は久々の帰国に羽を伸ばしている。と思わせたほうがいいだろう」
書類の束を眺めつつ、ナサニエルが、暖かいストレートの癖の少ないお茶をハーシェルヒルムとオリヴァーにも出しながらと答える。
「そうですね。では、オリヴァー。外の様子を伺っておいてもらえますか?殿下は先に情報共有をお願いします」
オリヴァーは頷きお茶を持ちながら扉近くに移動する。オリヴァーは自然豊かな子爵領で育ったためか、気配の察知に長けていた。扉近くの椅子に腰かけると優雅にお茶に口をつけながら廊下の様子を伺う。何人がどのくらいの速さで何処に向かっているのかが分かるそうだがナサニエルにはさっぱりだった。
そして、今日の街の視察の話をハーシェルヒルムは始める。もともと、打合せ通りの視察が出来たことでなかなかに機嫌がいい。
「あぁそうだな。オリヴァーと一緒にナルツェルが良くいくという菓子店に行ってきたぞ」
「え?目立ちませんか?とくにオリヴァーが・・・」
「まぁ。男二人では目立つからな!今日の私はかわいく出来上がっていたぞ!」
ナサニエルの質問に、イーヴォイェレミアスはドヤッとした顔で楽しかったぞと答える。
「またですか・・・え?どこでお着替えに?」
「姉上のところだ!ジャネットのワンピースが丁度いいからな」
「また、姉上の服を借りたんですか!」
ナサニエルの双子の姉であるジャネットは女性にしては少し背が高い。男性にしては背の低いナサニエルとあまり変わらず、ハーシェルヒルムも拳一つ分ほどしか身長が変わらない。
ジャネットの足元が少し見える程度の丈のワンピースがハーシェルヒルムが着ると平民の年頃の女性が良く着る踝ほどの丈になる。ジャネットは、女性らしくなかなかメリハリのある体躯をさらに鍛えているので、細身のハーシェルヒルムが胸の方に詰め物をいれるとピッタリサイズになるのだ。
ジャネットは、言わないがハーシェルヒルムが服を借りた後はどんよりとしている。帰りに姉の好きなケーキを買いに行こうと考えていたナサニエルにハーシェルヒルムは続ける。
「乳兄弟だろう?いいじゃないか服の貸し借りなど!マノンなんか嬉々として化粧を施してしてくれたぞ」
「はいはい。殿下のご趣味ですものね。オリヴァーも離宮に行ったんですか?」
「いやっ。準備のできた私を馬車で迎えねばならなかったから馬場で待機してもらった。城の使用人が街に出る為に使う馬車でなくてはいけないからな」
「どうせなら、連れて行けばいいものを・・・・」
姉であるジャネットの気持ちを聞いてからジャネットには何もするなと止められているので積極的には動いていないがオリヴァーと会える機会というものがあえばとそれとなく支援しようと考えてはいるナサニエルはボソッと呟くがハーシェルヒルムには届かなかったようで聞き返される。
「ん?なんか言ったか?」
「いえっこちらの話です」
「それで、どうでしたか?」
「あぁ。あの商家は、本当に北の国の人間の出入りが多い。カフェの窓際に居座っていたからな。オリヴァーが甘いもの好きで助かったんだ。長居できた」
「殿下は、甘いもの好きそうな顔だけどあまり食べれませんからねぇ」
「おいしく頂きました」
静かに外の様子をうかがっているオリヴァーはいい笑顔で答えた。本当に好みの味だったんだろう。かなりいい笑顔だ。ジャネットの為によって帰ろうとナサニエルが考えているとハーシェルヒルムも同意した。
「私にはあの量の菓子を食べるのは無理だが、オリヴァーにもたまには、役得無いとな!それから商家にも、私への装飾品を贈るという名目で顔を出してみたぞ!」
「何か新しい情報が?」
「どうやら、あちらの『王子』なんだが、第二王子かもしれぬ」
「第二王子ですか?」
「あぁ。商人たちの中に少し身ぎれいで若い男がいてな。若いわりに周りが気を遣う様子が見られた」
「第二王子の容姿をご存じで?」
「いやっ。知らぬ。その男が『アンディー』と呼ばれていたんだ」
「第二王子の名前は、『ヨリック殿下』では無かったですか?」
「いやっ。キャウトィランヴ国の王族はファーストネームとセカンドネームが命名されて、一般市民が呼称としてセカンドネームを呼ばせるのだ。ファーストネームは家族と伴侶のみ呼ばれるのを許されている」
「あぁ!そうでしたね」
「そして、あちらの第二王子の名前は『ヨリック・アンドリース・キャウトィランヴ』だ」
「だからアンディーですか」
「あぁ。ちなみに、第一王子は『ジーヘル・エデュアルト』殿下。第三王子は『イフナース・オリフィエル』殿下だ」
「おぉ!覚えてらしていましたか?」
「帝国でウルリーケ第二皇女から紹介されたでは無いか。その第二王子の元婚約者のシルフィア公爵令嬢を!」
「あぁ。あの方は面白かったですね!率直な帝国の第三皇子より素直でしたね」
「あぁ。同じ第二王子という立場だったから散々からまれて愚痴られたからな。私は関係ないのにな。だが・・・第二王子は軍部に入れられたと聞いたが・・・」
「殿下はお話を聞いてくださる雰囲気がありますからね。邪険にもできないでしょう?それに、シルフィア公爵令嬢、最終的には『あなたくらい顔が良ければまだ許せたかもしれない』と仰っておりましたから単に殿下を気に入っておられたのでは?
しかし・・・アンドリース第二王子ですか。あまり知略を尽くす方という印象はありませんね。策略とかではなく、利用されているのでは?」
「いや。無いだろう。『でも、自分より美人の夫で嫌ね』とか言ってたぞ。あの娘は不敬が過ぎる。しかし、王族が利用されるなどあってはならないことだろう?」
「殿下方はきちんと教育も受けてそのような思想ですが、アンドリース第二王子はそもそも公爵令嬢と陛下の生誕祭で婚約を破棄する方ですし・・・」
ナサニエルが少し呆れたように話を続けると、ハーシェルヒルムは美しく整えられた銀の頭を抱えて唸る。
「あぁ。そうだったな。そのことも視野に入れて、また兄上と相談しなくてはならないな」
理解しがたい行動をする人間が高位の人間にもいるのだとシルフィア公爵令嬢に、懇々と言われたなということを思い出しながら情報の整理と今度の共有について話をすませた。
拝読ありがとうございます!
~登場人物~
【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)
王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*瞳:青紫
【愛称:エル】ナサニエル・イーストン子爵(17)【ハーシェルヒルム 又従弟/側近(従者)】
イーストン子爵家三子(次男) 髪:ピンク、ふわふわ天然パーマ 瞳:赤
オリヴァー・ミラー騎士伯(25)【ハーシェルヒルム 側近(騎士)】
ミラージュ子爵家五男。 髪:黒、短髪 瞳:明るい茶色
ノアベルト・バルヒェット侯爵(40)宰相
王家の遠縁 髪:金 瞳:青




