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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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031 王女殿下の采配

王族案件は単位が取れます!

昨日の招集は、あの事件対策の今後の動きや計画の話を詰めることが出来た。しかし、陛下の生誕祭の歓待の宴への話を出来ていなかったので、リシュエンヌはディオティマとベアトリクスを招いて打合せをすることにした。


「殿下。アンダーソン侯爵令嬢とテイラー侯爵令嬢がいらっしゃいました」


「ありがとう。お通しして」


侍女長(マリア)の声かけに、返答するとディオティマとベアトリクスが入室してきた。


「連日朝から申し訳ないわ。ディー、ベティお疲れではないかしら?さぁ、おかけになって」


ディオティマとベアトリクスは、臣下の礼をとり挨拶を済ませるとリシュエンヌに促されるままリシュエンヌの向かいの座り心地がいい長椅子へと隣り合わせ着席した。王族と高位貴族の関係であるが故に敬意は払うが、従姉妹同士であるため場の空気は和やかに流れる。


「残念な事にこの後、昼食は公務で会食なのよ。早速本題で悪いのですけど、本日は、離宮の采配についてお話してかまわないかしら?」


「構いませんわ。王女殿下」


ラピスラズリの様な蒼い瞳を細めたディオティマが代表して答える。そんな、ディオティマに追従してベアトリクスもコクリと微笑を浮かべ頷く。今日、二人は長い髪を結い上げ、上質ではあるが落ち着いたデザインのドレスを姉妹の様に着こなしている。


「ふふっ。ありがとう。今日は二人ともお揃いなのね」


「はい。お兄様の指示で、あくまで私たちはイーヴォイェレミアス殿下とハーシェルヒルム殿下の補佐としてリシュエンヌ殿下と打合せに向かっているという姿勢をとりなさいと申しつけられましたので、出仕着のような装いで合わせさせて頂いたのですわ」


「ふふっ。一応、公務の打合せではありますが、ここには詳細を知るものしかいないわ!呼び方は従姉妹同士ということでお願い。なんだか距離を感じて悲しいわ」


リシュエンヌの言葉に、ディオティマとベアトリクスは目を合わせ苦笑するとリシュエンヌを向き直り微笑む。


「しょうがないですわね。リシュ姉様。お姉様もお疲れではないですか?」


「ふふっありがとう。大丈夫よ」


宰相の意向に沿った形をとり、離宮を整える割り振りをする。リシュエンヌ王女殿下は北国の来賓が滞在する離宮。


第一王子の婚約者であるディオティマは、第二王子ハーシェルヒルムの婚約者もいらっしゃる帝国の来賓が滞在する離宮。


ベアトリクスは、王妃様を手伝うテイラー夫人小間使いとして、テイラー領との交流のある西国の国王陛下が滞在される離宮を整える事と、それぞれの来賓の国の風習や好みを3人の知りうる限りの情報交換を行い、適切な商会の選定の話し合いを詰める。


「ねぇ。リシュ姉様。お姉様の整える離宮は北のキャウトィランヴ国仕様になさるのですわよね?」


「そうね。主だった部屋はこちらの国の装飾でもてなすつもりではいるけど、寝室に関してはゆったりお過ごしになれるようにあちらの風習を取り入れたいところよね」


「ねぇ。お姉様。でしたらあの商会を使うのはいかがでしょうか?」


ディオティマがリシュエンヌに提案する。リシュエンヌは思案顔になり乗り気ではないようにディオティマに聞き返す。


「あの商会とは陛下たちが利用している?」


「そうです。少し忙しくしてもらいましょう」


「でも、城内へ招き入れるのは・・・」


「ご心配は分かりますわ!確かに、知らずに招き入れるのは危険極まりないですが、分かっておりますもの」


「監視をつけるという事ですね!ディーお姉様」


ベアトリクスが胸の前で手を合わせて、ディオティマを尊敬へ眼差しを向けるとディオティマも柔らかく微笑みベアトリクスに答えリシュエンヌへ説明を始めた。


「そうよ。ベティ。リシュお姉様、その際に我が家の使用人をお手伝いに向かわせますわ。人懐っこい子が数人おりますの」


「情報を探るということね。ディー・・・・上手くいくかしら?」


「まぁ。情報を得られると幸いです。彼らが少し動き安い方があちらは計画が上手くいっていると思うのではないかしら?」


「流石ですわ!ディーお姉様!それに・・・悲しいことに、傲慢にも上位に立つ方々とは、下男や下女を人間扱いしない方々が多く、下男下女にまで箝口令を敷かないものなのです。なので、休憩でおもてなししますと案外、有益な情報を頂けるかもしれませんわ」


「ベティ・・・・詳しいのね」


すると、ベアトリクスはテイラー領内の孤児院について説明した。


国内では基本的に孤児院は未成年のみで成人すると男女関係なく院を出なくてはいけない決まりがある。しかし、テイラー領では学生時代のエーレンフリートが勉強の一環で調べた領内の事件事故にについて孤児院出身の若い男女が事件に加害者にも被害者にも多くいることがわかった。


そこで、小都市として試験的にテイラー領の孤児院では成人しても出なくていい事にした。だが、ただというわけにはいかない。きちんと就職を果たし給与の3割を孤児院に納めるのだ。


それによって、孤児院が全てを寄付で賄わずに済み、孤児たちも婚姻して家庭を持つまで安全に過ごし、自身で家を借りるより安価で安全な住まいを確保する事ができる。


孤児の就職である、仕事のよっては半分以上を家賃になってしまう。3割を払うことで自分を育ててくれた孤児院にも恩返しができ弟妹の衣食住が潤い自身の貯金も出来るので王都へ出稼ぎに行くのでなければほとんどの子が婚姻するまで院で過ごしている。


もちろん、院の家事を手伝い、休みの日には小さな子供たちの面倒を見てくれる子もいる。相互に助け合える仕組みが構築され、領内の事件も減少している。もちろん、働かず居座ろうとするものもいるのでそこはきちんと取り締まり仕事の斡旋等も行なっている。


「私、領に戻った際には孤児院の慰問に行きますの。私では微々たるお手伝いしかできませんが、成人して、外でお仕事する子たちともよくお話しさせて頂きますのよ」


ふふッと笑いベアトリクスはさらに話しを続ける。


「お勉強が苦手だった子達は家事能力を磨いてお洗濯や荷物運びが主だったお仕事をしますの。下級貴族や、裕福な商人の家での下男、下女としてお仕事につく子も多いのよ。彼らは普段はお屋敷で済んでいますが休暇を貰うと孤児院に泊まりにくるみたいなの。そして、貴族は上級使用人には箝口令をしくわりには下級使用人に口止めはしないのよ。よく職場のお話をしてくれるわ」


「口止めを特にされていない使用人たちの存在がうまれるのね。下級使用人は主人の目に映らないように立ちまわるように躾けられているから直接接することが無くても屋敷での事情を全く話を聞いたり、見たりしない訳ではないわよね」


「そうなの。リシュお姉様。なので、証拠には出来ないのですが、情報収集の相手としては有効だと思うわ」


「ありがとう。ベティ。有益なお話しだったわ」


それからしばらく、家具やリネン類の手配を長く話していた為、何回目かのお茶の入れ替えに3人はお茶に口をつけホッと一息をつく。しばしのゆったりとした沈黙の後にリシュエンヌがボソリと2人へ謝罪する。


「ごめんなさいね。二人とも王家の事に皆を巻き込んでしまって・・・」


そんなリシェエンヌに姿勢を正し胸をはりゆったりと微笑みをたえて静かにディオティマが答える。


「王女殿下。(わたくし)は王弟の娘です。準王族である矜持がございます。ベティだって高位貴族であり、王族の親類という立場に誇りをもっておりますわ」


「でも・・・・。ディーには悪い事もしたわ。お兄様と婚約なんて・・・本当に受けてしまっていいの?」


「ふふっ。陛下から内示も届いてますもの。周知がまだでもこれは確定ですわ。それに王族が1度決めた事を簡単に覆してはなりませんわ。それに・・・・・私もこれで良かったと思っているのですのよ」


やわらかく微笑みを返すディオティマを見つめるリシュエンヌの瞳は潤いをまして深いため息をつく。


「はぁ~。成人してもいない子達でも貴族としての矜持を持って考えて動いているのにいい大人が何を考えているのかしら。まったく」


「そうですわね。20年も経て、何故今動かれたのかも考えておいた方が良いのでしょうか?」


「そうね。ベティの言う通り把握しておく事で危険を回避できることもあるわね」


ベアトリクスとディオティマの思案顔に自分たちのことはいいのかしらとリシュエンヌは苦笑しつつ、自身に考察を述べた。それは、15年ほど前に前王であるリシュエンヌの祖父が病に臥した時期からの話しへと遡る。


「陛下が戴冠された頃ですか?」


「そうね。2年ほどで回復されたのですけど、もうお歳も召されておりましたから、王位をお父様へ移されたの。

10年ほどは何事もなく、執務にせいを出されていたわ。でも、お兄様は2年前に成人したじゃない?それからは、執務をお兄様へ回されて、その前にはお祖父様も亡くなったものだからお父様の箍が外れてしまったのでしょうね」


リシュエンヌは、眉間に僅かばかり力が入り頬に手を当て思案する。すると、ベアトリクスが疑問を投げかける。リシュエンヌは答える。


「15年前から2年ほどは、前陛下の監視が無かったという事ですか?」


「そうね。お祖父様が執務を行えなくても、お父様は優秀でしたから、執務は滞りなく行われていたと聞いたわ。歴史の先生が褒めるほどの偉業だそうよ。国王が突然倒られて王太子によって大きな問題も無く治世が保たれていた事は。

そんなの、お祖父様を支えていた臣下とお父様を支える臣下の協力あってこそで、お父様だけの偉業であるはずがないのに歴史に名を残すのはお父様なのよ。その状況で監視の目は無く、予定も自身で組み立てる事も可能だった。有能なのは確かなのよ」


「・・・・・」


「ニコラス様は13歳でしたね・・・」


リシュエンヌの回答に、眉尻を下げたベアトリクスはニコラスの年齢を告げる。そんな二人に思案顔のディオティマは疑問を投げかける。


「ですが、お祖父様が亡くなって3年経ちますわ。それに亡くなる2年ほど前から辺境伯領へ蟄居されていたわ。私達と過ごされていたもの」


「5年もかけた計画ということかしら?どうも違和感があるわね」


「そうですねぇ。時間をかけたわりには杜撰ではないでしょうか?計画は最近の事でないないのでしょうか?」


「?ベティ。どうゆう事?」


「お兄様が、宰相が陛下側についた理由について気になさっておりまして・・・

ニコラス様、ルーに連れられて最近よく我が家にいらっしゃるのですが10歳のころから私的なお茶会にブラウン夫人に連れ立ってお茶会に参加するようになったと仰っていらっしゃったの」


貴族の子息令嬢が他家へ顔見せされるのは学園に入学する13歳になる頃だが、友人同士のお茶会などには就学前の子供に社交を学ばせる為、交友を深める為、お見合いの為、理由は様々にも連れ立つことは珍しくもない。


「ブラウン夫人の交友関係に宰相夫人でもおりましたかしら?」


リシュエンヌが貴族の交友関係に思考を走らせていると、ベアトリクスが話を続ける。


「ニコラスからお茶会の話を聞いたお兄様が調べたところによりますと、宰相夫人は、第一王子派のブラウン家とは距離を置いておりますが、宰相の妹君がブラウン夫人の年の離れた従妹君とご友人とのことでした。そこからニコラス様の容姿が宰相に伝わったかと思いますわ」


リシュエンヌの眉間にくっきりと皺がより苦し気な声がもれる。


「宰相の娘はテオと同じ年だわ」


「第三王子殿下と同じ年ということは10歳ですね。ニコラス様との3つ違いは年回りとしてはいいですわね」


「宰相様が陛下のお味方なのはわかりますが、宰相様を切り捨てて陛下がお逃げになる可能性もありませんか?」


ベアトリクスの指摘に、リシュエンヌは苦い顔になりお兄様にお知らせしないといけないわね。と言うとディオティマが自身が今から会うので伝えることが出来るという。


「ディー無理はしないで!グレースからジェラルド経由で伝えもするから周りに気を付けてね!」


「わかりましたわ。リシュ姉様」


ディオティマはふわりと笑うと了承した。

拝読ありがとうございます。


 ~登場人物~

【愛称:リシュ】リシュエンヌ第一王女殿下(18)

王国第二子、第一王女*髪:金、腰下、ウェーブ*瞳:碧

【愛称:ベティ】ベアトリクス・テイラー侯爵令嬢(15)

 テイラー侯爵家第二子長女*髪色:桔梗色・腰までの長髪・ストレート*瞳:金

【愛称:ディー】ディオティマ・アンダーソン公爵令嬢(16)

 アンダーソン公爵一人娘*髪:オレンジ色、腰までの長髪、ゆるウェーブがかかった髪質*瞳:青

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