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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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30/55

030 伯爵令息の困惑

本日は1人称です。

下記の登場人物でも掲載ありますがニコラスは。

銀髪さらさらボブ・紫紺色の瞳の少年です!

<ニコラス・ブラウン視点>


なんでなのだろうか?

今日は突然、兄上と二人で城に呼ばれた。王子殿下と王女殿下に初めてお目通りすることになった。エーレンフリート様の計らいだろうか?


しかも、王宮に上がったのも初めてなのに、第一王女殿下の離宮の一室だった。


ルードリッヒとコンラーディンと一緒に呼ばれ、役割を与えられた。兄弟が関連して、未熟な僕たちが勝手しないように監視の役割を持っているのだろうか?

二人はお兄様方が、すでに殿下に協力しているようだったから呼ばれたのだろうか。


王子殿下と王女殿下・・・3人とお会いする事が怖かった。しかし、会った眼差しは、エーレンフリート様のそれと同じで嫌悪や憎悪などの忌避を感じる感情を見ることは無かった。むしろ、心配して・・・頂いて・・・・貰っているような気さえする。


ハーシェルヒルム殿下もリシュエンヌ殿下からも優しい眼差しに困惑した。イーヴォイェレミアス殿下に至っては、何か話したそうにでもあり、話せない事を申し訳なさそうに憐憫の眼差しで見てきた。


なんで?


僕は、きっと・・・・殿下たちの父親の不義の子だと思う。


あの人と陛下の二人と僕の見た目で明らかだと思う。メルヴァン兄上より、どう考えてもハーシェルヒルム殿下に似ている。エーレンフリート様もその可能性があると言っていた。メルヴァン兄上も少し悲し気な顔で、「お前がそう思うのも仕方ない」と言って頭をなでてくれた。何故、彼らは僕を受け入れてくれているの?


不思議でならない。


僕は嫌悪の対象であるはずだ。だって、フランチェスカ姉上もナイツェル兄上も父上と似ていない僕を母上に可愛がられている僕を侮蔑の目で見てくる。きっと、あの人の不義に子だと・・・ただ、王族に近いこの色を持っている僕を冷遇できないだけだ。


父上のミルィティー色の髪色と亜麻色の目を持つ姉上が冷たい目で見てくるのは辛い。目の色は辛うじて母上と同じ紫紺色に近いけど・・・青紫と言われればそうとも見える。少し青みが濃いだけ・・・髪の色なんて親族にもいない銀色だ。せめて金であれば我が国の高位貴族に多いのに。


けど、銀の髪は前々王妃の国の高位貴族の色だ。その姫君の子孫と侍女でついてきた従妹が嫁いだエヴァンス家の色・・・


「おいっ!」


思考の海に浸かっているとルードリッヒが突然大きな声をかけつつ肩を叩いてきた。


「なんだよ!急に!乱暴な!」


「急にじゃねぇよ!さっきから呼んでるのに地面ばかり見やがって!絨毯の繊維でも数えてるのか?」


「????さっきから?」


ポカンとした僕に呆れた顔でルードリッヒが顔を覗き込む。言葉使いは悪いが心配そうな顔をしている。コンラーディンがおっとりとした声で声をかけてくれた。


「ニコラス。大丈夫かい?何か嫌な事でもあった?顔色が良くないよ?」


「いやっ!嫌な事は全然ない!ちょっと考え事をしてて!すまない!ルードリッヒ、君の声にも気がついていなかった。すまない。何の用だい?」


「いやっお茶だよ。今日は少し暑いから冷たいのを貰うか?それとも暖かい方が落ち着くか?リシュ姉様の離宮の菓子は上手いんだぞ!食べたほうがいいぞ!」


きゅっと喉が閉まった。目の奥に水分が増すのを感じるがぐっとが我慢する。


最近では、メルヴァン兄上も家に帰って来るので以前より父にも気にかけて貰えるが少し腫物扱いだと感じる。そんな事はないかもしれないけど、僕の心はそう感じてしまう。


今までは僕を嫌う姉と兄。僕の見た目だけを愛でて見せびらかし僕自身をみてくれない母親と過ごしていた。僕に着いた家庭教師は勉強も教えてくれるが、余計なこともたくさん教えてくれた。


自分の事を気遣ってくれる人にどういう反応をしていいのか分からず。口を噤んでしまう。


「ニコラス。美味しいお菓子とお茶を頂こう?」


コンラーディンの声は落ち着く。


「そうだぞ!リシュ姉はお菓子にうるさっ・・・こだわりがあるから食べないともったいないぞ!」


ルードリッヒは粗暴な話し方だけど、優しさを感じる。


「ありがとう。頂くよ。お茶は温かいものを頂けますか?」


2人へお礼を言う。待機しているメイドへお茶の希望を伝えると、すぐに温かいお茶が差し出された。「ありがとう」と微笑んで礼を言うとメイドは少し戸惑い「いいえ」というと静かにドアの傍まで下がっていった。


「落ち着いたか?ニコラス」


「あぁ。すまない。心配かけたね」


「本当だよ。お前が冷静じゃないと困るんだぜ?」


「ふふっ。ルーが焦って人の世話してるの始めたみたよ」


ルードリッヒの言葉にありがたいなとしみじみ感じながら返事を重ねると、コンラーディンから堪えていたのだろう笑いが漏れた。


「なんだよ!それ!俺が冷酷非道みたいじゃねぇ?」


「いいや。ルーは凄く優しい人だよ。テイラー家の皆さんそうだね」


コンラーディンがルードリッヒを褒めて擁護すると、彼は顔を真っ赤にしてお茶を煽った。そんな彼を不思議に思い「反論しないんだ?」と問うと、


「あいつに反論しても勝てないからしない」


ぶっきらぼうに返すルードリッヒに、コンラーディンと目を合わせくすくすと笑ってしまった。


「やっと、笑ったな。少しは落ち着いたか?」


そんな僕の顔をみて満面の笑みでルードリッヒが言うものだから、ほら優しいでしょ?というコンラーディンがまたルードリッヒに睨まれる。3人顔を合わせて大笑いした。ひとしきり笑った後に「ありがとう」と返す。


「まぁ大丈夫ならいい」


「何か話したいことがあったら話していいからね。言いたくない事は聞かないよ」


また目の奥がぐっと水分を感じる。優しさに泣きそうになるので話題を変える事に頭を回した。


「ありがとう、ところでルードリッヒは何故そんな話し方なの?」


「あぁ??」


「ルーはハーシェルヒルム殿下を真似してるんだよ。殿下は市井へ降りるとき市民と同じような話し方をなさるから真似ている内に抜けなくなってるんだよ。普段は普通に貴族らしく話すけど、身内しかいないとその話し方になっちゃうんだよね」


「なんで。コディーが言うかな?」


「え?説明できるの?恥ずかがって説明しないでしょう?」


「うっ・・・」


「ふふっ。なんか二人の性格が段々分かってきた」


「だろ?コディーはしゃべり方はおっとりしてるがぜんぜ〜んおっとりしてないからな!しかも、腕ぷっしもつえ~」


「あぁ強いのは分かってたよ。アーデルベルト様もクレメンス様もお強いものね。前ストゥワート公爵の手ほどきがあるのかい?」


「そうだね。お祖父様の訓練は手ほどきではないけどね。あれはしごきだ」


コンラーディンが遠い目になるのを見て、なんとも言えない空気になりまた3人で笑う。


「ルードリッヒとコンラーディンは昔から仲がいいの?」


「そうだね。3年くらい前かな?10歳になると母親のお茶会に連れて行かれるだろう?母親同士のお茶会で出会ったんだよ。お互い末っ子が男の子で同じ年だって事でね。うちの母上が、ルーの母上の信者なんだよ」


「あはは信者。確かに!熱量がヤバいよな」


「あぁ本当に、テイラー夫人は困ってないかい?」


「ん~大丈夫だと思うよ。母上は女性からの人気が高くて慣れている。1度聞いたことあるけど『可愛らしいじゃない?』って言ってたぞ」


ほっと安心するコンラーディンのと、ほう。と感心するニコラスに母親の話が続くのは照れ臭く感じたのか急にルードリッヒは話を変えた。


「なぁ。俺はルーでいい。こいつもコディーでいいぞ!ニコラスは・・・ニコか?女っぽいいな・・・・ニックでいいか?ん?ラスもかっこいいか?」


「・・・・愛称で呼んでいいの?」


「はぁ?友達だろラス!」


「残念だったね。もう友達認定されちゃったよ。逃げられないよ。ラス」


「なんだよ!友達じゃねーの?」


ニコラスは、ぷるぷると顔を横に振り、手をぎゅっと握りしめる。二人を見上げると思ったよりも大きな声が出てしまった。


「友達になりたい!」


「・・・・だから友達だって」


「なりたいじゃなくて、なってるんだってさ」


大きな声に驚いた顔になったルードリッヒとコンラーディンに呆れた笑顔で言葉を返された。それから、少し他愛もない話をした後、メルヴァン兄上が迎えに来て帰路につくことになった。馬車では、色々メルヴァン兄上が話をしてくれた。


初めて兄上と長く話し、初めて兄姉かもしれない人たちと会い、初めて友達が出来た。


今まで、感じたことのない胸のあたりに暖かさを覚えた。これから、むしろ今大変なことが起き始めているのに、自分が火種かもしれないのに。とニコラスは幸せをかみしめて眠った。

拝読ありがとうございます!


  ~登場人物~

【愛称:ラス】ニコラス・ブラウン伯爵令嬢(13)

 ブラウン伯爵令嬢四子(三男)*髪:銀、ストレート、ボブ*瞳:紫紺色

【愛称:ルー】ルードリッヒ・テイラー侯爵子息侯爵子息(13)

テイラー侯爵長子長男*髪:薄紫、短髪 ストレート*瞳:青

【愛称:コディー】コンラーディン・エヴァンス侯爵令息(13)

エヴァンス侯爵三子*髪:銀髪・ボブ・ウェーブ*瞳:碧


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