表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/55

028 侯爵子息の寂寥

投稿し間違えたかと思って削除したら。

当たってました・・・

「エーレンフリート様。殿下から召喚状でございます」


「召喚状?手紙や招待状では無く?」


このように。と言いながらハンスはサルヴァの上に1通の晴れた空の様な真っ青な封書を載せ渡す。通常の手紙は白、王家からの夜会やお茶会などの招待状は黄金に近い黄色の封書で届く。青の封書は話があるから来いという呼び出しの召喚状の時に使われる。


暗い執務室に灯りをともしらばかりで封書を受け取る。春になりめっきり温かくなっていた部屋を今日の雨はひんやりと冷やしていた。暖炉には火を入れたばかりなのでまだ肌寒い。上着をそのままに執務机の椅子に腰かけると、準備されているペパーナイフで封を開けて中を確認する。


珍しくハンスはどのような内容ですかと問いかけてきた。エーレンフリートの眉間が僅かばかり動いたのをみつけたのだろう。他の者にはバレないであろう所作まで見られていて少し気まずくさらに眉間に皺が寄る。


「頼みたい仕事が出来たから三日後にリシュエンヌ殿下の離宮へ来るようにと、イヴからきた。こんなに堂々と呼ぶなんて・・・しかもリシュの離宮。どういうことだ?」


「私には分かりかねます。第一王子殿下が正式に呼んでも大丈夫だと判断されたのでしたら、大丈夫ではございませんか?」


そうだな。とだけ返事をすると、執務室の品質のいい椅子に沈み込む様に持たれる。ふぅ~と空に息を吐く。それに、合わせてお茶の準備をしていたハンスが淹れたてのお茶を差し出す。


「婚約式の話ですかね?」


リボンタイを外しハンスに渡すと、無言でお茶に口をつけながらチラリとハンスを見る。お喋りでは無い従者の珍しい発言にエーレンフリートがハンスをきちんと見返すとハンスはいつも微笑んでいる顔をさらに深め話を続ける。


「第一王子殿下とアンダーソン公爵令嬢の婚約がご親族には内々に決まったと知らせが来たのでしょう?候補ではなく、婚約者に決定しましたね。近い内に婚約式をせねばなりませんね。第二王子のお誕生日は来月でしたか、先に行うなら急がねばなりません。第三王子殿下のお誕生日後でしょうか?それとも、同じ日になさいますかねぇ。陛下はやりそうではないですか?」


「同日にはさせん!ハーシュが可哀想だ!」


先ほどまで、紙紐で結っていた薄い空色の髪を降ろしふてくされたように言い捨て、また茶に口を付ける。


「そうですねぇ。そのご相談なのでしょう。しかし、坊ちゃんはよろしかったのですか?」


突然、ハンスの声が低く真面目な顔になりエーレンフリートに問いかけた。エーレンフリートは目を見開き「何が?」とハンスに問う。


「坊ちゃんもアンダーソン公爵令嬢の事、可愛がっていたではありませんか?ご自分が娶ろうとは思わなかったのですか?」


「はぁあ?ディーの事は可愛がっているが、何故娶る話になる?」


「・・・・・・・」


ハンスは笑顔を消し、眉を顰めると大きな溜息をついた。「なんだ?」というエーレンフリートにハンスは仕方なさそうに答える。


「坊ちゃん。女性に卒なくお優しいですが、ベアトリスお嬢様とアンダーソン公爵令嬢へは甘い自覚がございますか?お可愛いのでしょう?」


「あぁ。妹と従妹だから可愛いに決まっているだろう?それに二人とも私を慕ってくれるしな。可愛くないわけないだろう」


「えぇ。ベアトリスお嬢様は妹君ですのでその甘さはわかります。しかし、アンダーソン公爵令嬢は?」


「妹の様に可愛がっているぞ?」


「妹ではございません。さらに言えば貴族は、何処かと縁を結ばなくてはいけないような家でなければ、いとこ同士で婚姻を結ぶことは稀ではありません。身内を強固にするために、よくあることです。それに、王女殿下にあのように甘く接しますか?彼の方も従妹でございますよ」


今までは、ブラウン伯爵令嬢と婚約しているのだから、そういう目で見ては困るので伝えていなかったが、ハンスから見ればどう考えてもただの従妹に対する可愛がりでは無かった。エーレンフリートの傍に常にいたハンスは、きっとディオティマが新たな婚約者になるだろうと思っていた。


今は、長年の婚約が白紙になったばかりなので敢えて時期を待っていたのにもかかわらず。エーレンフリートは、王弟殿下とお話しした後、自らディオティマ・アンダーソン侯爵令嬢と王太子の婚約を薦めてきたという。報告を聞いたときうっかり開いた口が塞がらなかった。


ハンスの問いに、顎に手を載せ少し熟案しているとだんだんと顔色が赤くなり顎に添えられていた手は先に口を覆い、段々その手は上がり目元を覆い抑え硬直した。


「まさか、坊ちゃんがこんなに鈍い人間だったとは・・・」


エーレンフリートは幼少の頃から優秀であった。勉学も仕事に関する知識を身に着け思案することにも長けていた。弊害だろうか。こと恋愛にはまったく無関心だった。最近の風潮では珍しく学園に入学する前の13歳にはフランチェスカ・ブラウン伯爵令嬢との婚姻が決まっていたのもその要因だろうと思う。


「間に合いませんか?まだ婚約式はされていませんし、親族のみの内々の知らせでございましょう?」


「・・・・・・いや。ディーはイヴで無くては駄目だ。俺以外ならイヴにしか任せきれない」


「では、坊ちゃんでいいのでは?」


「・・・・ハンス。私はテイラー家の嫡男だ。司法を司る家の者としてこれ以上王家と近づきすぎるのはどう考えても良くない。次期陛下と従兄弟という関係でも近いのに、妻が王弟殿下の娘では公平な司法が行われているか臣民も市民も不安しかない。王家の都合のいい司法でいてはいけない


テイラー家は昨今、国内貴族とばかり縁を持ってきた。侯爵家でいえば遠縁の親戚でないのはエヴァンス侯爵家くらいだ。だからこそ、ブラウン伯爵家との縁をお祖父様も認めていたんだ。


もしも、帝国の王太子殿下と良好な関係が持てるのなら姫様に付いてくる側近も視野に入れてもいいかもしれないな」


ほんの数秒考え込んだエーレンフリートは真っすぐな目でハンスを説き伏せた。その後も、本人の障害の伴侶の話であるのにもかかわらず。政治の様な話をポンポンと出してくる。あぁこの人はテイラー家の嫡男で根っからの高位貴族なのだなと思い至ったハンスは深々とお辞儀をした。


「エーレンフリート様にお従い致します」


「あぁ。頼む」


「殿下に呼ばれているのは、三日後でございますね。二日間で資料を作成しなくてはいけませんね。情報が足りない箇所はございませんか?」


茶器と交換で、あの件の資料をエーレンフリートの前に準備すると自分の執務机に戻り自身も同じ資料に目を通しながら三日後の会議の為の打合せを始めた。

拝読ありがとうございます!



 ~登場人物~

【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)

テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*瞳:金

ハンス(19)【エーレンフリート従者】

テイラー家家令の息子。 髪:こげ茶 目:深緑


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ