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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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25/55

025 伯爵子息の混乱

着るタイミングがわからず。長くなり投稿が遅くなりました!

頑張って読んで頂けると嬉しいです!

ニコラスと話をした数日後に、何故か王家から王子たちとの交流会という名目で招待があったと父から招待状を受け取る。


参加者は、殿下方の従兄弟であり司法の家系であるメルヴァンが秘密裏にお会いしたかったエーレンフリート・テイラー侯爵令息、そのテイラー家のご息女と婚約をしたクレメンス・エヴァンス侯爵令息、その彼の兄であるアーデルデルト・エヴァンス侯爵令息、そして、イーヴォイェレミアスの執務室付きの部下であり、娘が迷惑をかけたパトリック・ブラウン伯爵の息子のメルヴァン・ブラウン。


メルヴァンは混乱したが断る事が出来るはずもない招待状である。五日後の招待を受けるという返事を窘め父に手紙を託した。



◇◇◇


1番年上であるが、1番爵位も低い。妹が失態を犯したばかりの招待にメルヴァンは胃痛に苛まれていた。そんな彼の不調に気がついたのは元凶の妹や母ではなく、末の弟であるニコラスだった。


すぐ下の妹やその妹や母と仲の良い上の弟より。7歳も下のこの末の弟の方が会話が出来ているとメルヴァンは思っていた。そんな、弟が晩餐から自室へ戻る際に、足早にメルヴァンに近づき声をかけて来た。


「メルヴァン兄上。顔色が良くないように見えます。体調がよろしくないのでしょうか?」


「あぁ。少し気の重い招待を受けてね」


「・・・・・何か悪い事ですか?」


「いやいや。殿下方が貴族令息たちと交流しようという事で、交流会を行う事にしたらしいんだ。大人数ではあまり話もできないから少人数で始める為に、試験的に行われる第1回目に父上の息子である私も呼ばれたんだ」


「名誉なことでは無いのですか?」


「名誉なことなのだが、私が唯一伯爵家というのもある。名誉と緊張は別物なんだよ」


「他には、どなたがいらっしゃるんですか?」


「ん~ニコラス。少し、私の部屋でお茶に付き合ってもらってもいいか?」


メルヴァンの言葉にニコラスは嬉しそうに、はいと答える。2人がメルヴァンの自室に入ると従者が2人にホットミルクと蜂蜜を出した。ニコラス様はお休み前ですのでと言っていたがメルヴァンの胃痛の為なのだと思う。従者には「ありがとう」と伝える。


「すまないな。ニコラス。廊下では誰が聞いているのか分からないからね。交流会のメンバーは第一王子と第二王子。テイラー侯爵令息とエヴァンス侯爵令息ご兄弟だよ」


「あぁ!そうなのですね!・・・・リート兄様が手配なさった?」


「どうした?」


「えっと、数日前にメルヴァン兄上がエーレンフリート様にお会いしたいと仰っていたではないですか?」


「あぁ」


「だからかな?と思いまして」


「ん?交流会が?」


「はい。僕の相談をお聞きくださるエーレンフリート様が手配なさったのかと」


「・・・・・・・・何故、この様な大事に?」


「・・・・・すみません。メルヴァン兄上も色々と巻き込まれるかもしれません」


ニコラスが申し訳なさそうに頭を下げると、気にするなと言いながら頭をなでる。メルヴァンはそうかと呟くと、ゆっくりと蜂蜜の甘みと香りがついたホットミルクを飲んだ。それから、しっかりと眠った。


◇◇◇


お茶会は、お昼過ぎに行われるということでいつも通りに職場に出仕していた。家で、もんもんとしているより心の安寧をもとめてである。交流会の会場も城であるし、司法省は本城とは別の建物ではあるが城壁内にあるので移動にはそこまで時間がかからない。


「ブラウン卿」


メルヴァンの部署は、司法省とは言っても事務局であり裁判運営の補助をする部署であった。なので、裁判部の人間は会計等の用がない限り事務局に訪れ無い。否。用件があっても事務局の人間か各局へ向かうので実情で、事務局に裁判部の人間は来ない。


しかし、今メルヴァンの目の前には真っすぐ伸びた空色のカーテンのように艶やかな髪を揺らし、黄金を思わせる金の瞳を細めた侯爵家の令息が立っている。


おもわず、メルヴァンは勢い良く立ち上がり礼を取る。職場では過度な挨拶を禁じられているのを、すっかり忘れた動きだった。


「ブラウン卿。頭を上げて下さい。職場内ではその様な挨拶は不要ですよ」


エーレンフリートは、優しい声色でメルヴァンに話しかける。メルヴァンは、顔を朱に変えて気まずげに顔を上げる。気まずい気持ちが顔に出ていることに気がついてはいるが顔を取り繕えずにいるとエーレンフリートは小さな声で話を続ける。


「王子殿下の交流会に、メルヴァン卿も誘われているでしょう?ご一緒しませんか?」


「え?・・・・・あっはい!宜しくお願い致します」


あまりの声の裏返りように、自分の方が1つではあるが年上なのに情けないとメルヴァンは肩を落としながらもエーレンフリートに促され、無言で付いて行く。司法省を出て本城までの馬車に乗るとエーレンフリートは頭を下げる。


「驚かせてしまった様で申し訳ありません」


「いえっ!そんなテイラー卿に頭を下げてもらうことは何も!」


「いえ、交流会の招待状から気を煩わせてしまった様ですので、配慮が足りず申し訳ないです。今日、お迎えさせて頂いたのも殿下方にお会いする前に少し話をしようと思いまして」


「はい。そうなのですね」


「ブラウン卿。普通にしませんか?」


「はい?」


「あぁ。まぁそれは追々でしょうか。まずは、殿下の離宮に到着する前に少しお話しますね。・・・私とブラウン嬢と婚約の白紙をご存じで、派閥に問題の無い人間を仲間に加えたいと我々は思っておりました」


「この度はご迷惑を・・・」


「いえ、その謝罪は大丈夫です。お父上よりも大変謝罪を受けました」


ふふっと微笑むエーレンフリートは、婚約破棄を迷惑や傷心という感じでは無く晴れやかに受け取っているようにも見えメルヴァンは、少し胸を軽くする。


「それで、ですね。ブラウン卿は、ニコラスのお話を聞いて色々と私と話をしたいと伺いました。そこで、我々はブラウン卿へも助力を願いたく本日お呼び出しさせて頂きました」


「そうなのですか・・・」


「説明は殿下方はしますが、何か注意や叱責等などでは無い事を先にお伝えしたくて・・・殿下の突然の行動には私も振り回されております・・・」



◇◇◇◇



「リート。久しいな」


離宮につき案内された応接室に到着すると、白々しく久々の再開を口にするイーヴォイェレミアスに内心苦笑しながら、エーレンフリートは慇懃に礼をとり口上を述べる。すぐに着席するよう促される。


本日は、午後ではあるが昼食時間に近いという事で殿下方は昼食を抜いたのだろう。晩餐用の高さの丸テーブルに少し低めのアフターフーンティーセットが準備されていた。色鮮やかなお菓子と共に、腹持ちのいいスコーンやサンドイッチも所狭しと並べられていた。イーヴォイェレミアスをハーシェルヒルムと挟むようにエーレンフリートを隣に座らせ、メルヴァンにはその隣を指ししめす。


ハーシェルヒルムの向こう側には。、アーダルベルトとクレメンスがすでに着席していた。どうやら定時より先に呼ばれていたようだった。前回のお茶会に招待したにもかかわらず弟妹の相手をさせた詫びとでも言ったのだろう。イーヴォイェレミアスは会議を始める様な威厳のある声で開会を告げる。


「本日は次代の王族を支える優秀な人材との交流を目的としている。面識のある者も無い者も皆、豊かな意見交換ができると好ましい。

皆の意見を忌憚なく聞きたい。ハーシェルヒルムはオリヴァーとナサニエルだけ連れて来たのだね。私の護衛はトビアス、ジェラルド。侍従はハイムンド、ラファエル、リズが残る。他は其々に打合せ通りに」


イーヴォイェレミアスの指示に従い、護衛騎士は扉の外とバルコニーの外の守りへと移動し、他の侍従たちはお茶のワゴンの搬入を終えると速やかに退室していった。すべての配置が済み、扉が閉まると一呼吸おいてイーヴォイェレミアス第一王子は侍女(リズ)へ指示を出す。


「リズ、議事録を」


「準備して御座います」


今から茶会という名の交流が始まるにも関わらず、イーヴォイェレミアスの侍女(リズ)(あるじ)の前へ厚い紙束を差し出した。今回の茶会の議事録(・・・)だ。


「当たり障りのない会話を作成してもらっている。皆、目を通してほしい」


と、自らも紙を一枚ずつ目を通すとエーレンフリートへ流していく。その間にもイーヴォイェレミアスは説明を続ける。


「完全に覚える必要はない。こんな話をしたかもしれませんね。という位に記憶していたらいいくらいだ。流し読みでかまわない」


全員が全ての議事録(・・・)に目を通し1周するし、ハーシェルヒルムまで全ての紙が戻る。それを侍女(リズ)が丁寧にまとめ、自身の茶会とは少し離れた机へと持って着席する。その間にも、ハイムント、ラファエル、ナサニエルによってお茶とお菓子が配膳されて良い香りが部屋に充満した。それにイェレミアスが先に口を付けると他の者も其々口を付ける。


「さて、初対面の者もいると思われる。自己紹介からといこうか。ブラウン伯爵子息」


挨拶は最も下位の者から行うということで、指名を受けたメルヴァンは緊張しきっていた。ニコラスにエーレンフリートと話ができないかと相談したところ、エーレンフリートに多少の説明は受けたが、この第一王子主催のお茶会である。


緊張しないわけがない。震える声を抑えるように、いつもより低めの声で紫紺色の瞳を一度閉じ立ち上がり軽く頭を垂れる。


「パトリック・ブラウン伯爵が嫡男、メルヴァン・ブラウンと申します。妹が多大なるご迷惑をおかけいたしました事、父と私で誠心誠意、贖罪を行いたいと思っております。皆さま、以後お見知りおきをお願い申し上げます」


「メルヴァン、当主であるパトリックから謝罪は受けている。そう畏まるな。其方の責でない。後、交流を銘打っておる。これより皆、名で呼ぶこととする。よろしく頼む」


メルヴァンの固すぎる自己紹介にイーヴォイェレミアスは優しくも威厳を保ち微笑みかけた。更には、ここに集まる者へ名前で呼び合う事を宣言し、クレメンスへ目くばせした。アクレメンスはコクリと頷くとメルヴァンに続いて自己紹介を進める。


アーデルベルト、エーレンフリート、王子二人の自己紹介が終わり、本題へと移る。


「ここにいる従者達は本件に深く関わっている。時間は有限であるし、いつまで人払いが出来るかもわからない状況だ.。すぐに本題ですまないが、メルヴァン話があると聞いている。先に話せるか?」


「はい。ご配慮感謝いたします」


メルヴァンは水を向けられ、まずニコラスの服の仕立ての話を伝える。半年後に向けブラウン家に不釣り合いな家格が最高級の仕立て屋の正装を採寸されたちニコラスより報告があった事。


ニコラ夫人はフランチェスカへの利用価値を失って放置している事。ナイツェルはニコラ夫人の指示で動き回り、最近ではよくお菓子(あの商家の隣へ)持って(寄って)帰宅する事を報告した。


「これは、着実に準備をしているといったところでしょうか・・・」


エーレンフリートが悩まし気に言葉を零すと、アーデルベルトが発言の許可を求め、それをイーヴォイェレミアスが許可する。


「発言よろしいでしょうか?」


「なんだ、アーデルベルト」


「はい。私、少々気になることがありまして、クレメンスの婚約済みましたら帝国へ向かおうと準備をしていたのです。しかし、このタイミングで友人の方がこちらに来ました」


「あぁ。アーデルベルトは、ハーシュの留学団に入っていたな」


「はい。直接、第二王子殿下の側近として近くにいたのではありませんが、秘密裏に護衛を兼ねて同行するようにと叔父上経由で王妃様からご依頼を受けておりました」


「公爵家の者も同行しただろう?」


「はい。公爵家の直径は騎士団所属が多い者ですが、母は公爵家の末娘になります。従兄弟たちは大分年上ですので、護衛として配置されますが学院内まで大人数着いて歩けません。ですので、学友として私が護衛の交代要員として任務を承っておりました。そこで、私は比較的自由時間が多く、友人が出来たのですが・・・」


アーデルベルトは突然口ごもり、視線が下がりそのせいで髪が顔にかかる。金糸のような髪をかき上げ困り顔で、隣のクレメンスに目をやると早く言えと促される。


「その友人が実が、帝国の第三王子でして・・・」


「「「はぁ?」」」


「帝国の第三王子は、卒業と共に立太子されたのだろう?つまり、帝国の王太子だよな?その方が、今この国にいるのか?エヴァンス邸にか?」


メルヴァンと従者達は王子に御前で失礼の無いよう辛うじて叫ぶ事を止めることが出来たが、王子たちとエーレンフリートは見事に同調して声を上げイーヴォイェレミアスは質問を投げかける。


「はい・・・すでに作日(さくじつ)帰国なさったのですが、二日間滞在しておりました。帝国の侯爵家の三男として・・・」


「はぁ。大胆だな。あちらの王太子は一度、会った事があるがなんというか・・・」


「はい。男性ですが大変可愛らしい方です。お顔は」


「兄上は、見た目と強さで気に入られたそうです。私も奇襲を受けました・・・躱してしましましたが・・・」


クレメンスが留学中に兄が気に入っられた事を話すと、自身も気に入られたのではないかと示唆した。エーレンフリートは水色の頭を両手で抑える。嫌な予感はするが、そんな三人の悩みは置いておいてイーヴォイェレミアスは王太子がなぜ来たのか尋ねる。


「王太子は、帝国にある実在する侯爵家の存在しない三男(・・・・・・・)として入国手続きをし、入国、更には王都に入ってきたと仰っておりました。入国、王都への侵入が容易すぎると、流石に城までは入れなかったが大丈夫か?と問われました・・・」


「「「「「・・・・・・・・」」」」」


「あっすみません!それは補足で、王太子は北のキャウトィランヴ国の境界付近の兵が減っていると言っていました。何か企てているのではと危惧して伝えにきたそうです。それと、ハーシェルヒルム殿下の事も気に入っておられて協力は惜しまないと・・・まぁ。この国に落ちられると帝国が面倒くさいからと・・・仰っておられました・・・」


「・・・・・有益な情報だな。しかし、凄いな。護衛は?」


「2人です。学友と留学の時に出来た友の家へ卒業旅行という名目で来たと・・・・」


「注意はしなかったのか?」


「しました。が・・・『父君もご壮健だし、私と歳の近い頼りになる叔父君もいる。下に弟妹も多くいるしな!何の問題もない!』と・・・・それ以上はもう何も・・・」


「そうか・・・・・分かった。しかし、有益な話であった。礼を言う」


「殿下方にお伝えする前に申し訳ないのですが、お祖父様(おじいさま)に相談させてもらいました。北の国に動きがある以上、早めにこちらも対策を取らねばなりません」


「公に?」


「はい。ストゥワート公爵家の騎士団には本体とは別に年配の騎士を集めた隊があります。その隊は、未だに叔父上ではなくお祖父様(おじいさま)が仕切っております。その・・・ストゥワート前公爵騎士団と辺境伯騎士団との合同演習をウォーカー辺境伯領で行いたいと本日、申請書が届く頃かと思います」


アーデルベルトの報告に、クレメンスが補足する。


「ストゥワート前公爵騎士団は老騎士隊と言っても過言ではありませんが、老獪な騎士ばかりの隊でかなりお強いです。さらにストゥワート公爵の現役の騎士団から新人(若い騎士)訓練の(しごく)為に同行させるとも仰っておりましたので、申請を許可して頂きたく存じます」


「ハイムンド!」


「はっ!確認して参ります!」


「まずは、辺境伯領の防衛強化が出来そうで安心した。礼を言う」


イーヴォイェレミアスは執務室にハイムンドを確認に行かせ、陛下では無く自ら認証するよう書類の確保へ向かわせた。少しほっとしたように状況を呟いた。そうだなと相槌をついたエーレンフリートは、自身の方の情報を話し始める。


オーランド叔父上(王弟殿下)フィンセント叔父上(現辺境伯)の接触は控えて貰っている。オーランド叔父上(王弟殿下)にはイーヴォイェレミアス殿下が即位してからの補佐をお願いするつもりだろう?それで、叔父上の提案なんだがイーヴォイェレミアス殿下、ディオティマと婚約しないか?」


「はぁ!?」


真っ先にハーシェルヒルムが反応し、アーデルベルトも真っ青になる。イーヴォイェレミアスは何とも言えない顔になったが、エーレンフリートは続ける。


「いやっ。まぁ婚約者候補だな。陛下が今、殆どの仕事をしている立太子間近と貴族院に期待されているイーヴォイェレミアスの婚約者を決めあぐねている。下手に権力を持たせたくないのだろう。


そこで、イヴがディーと婚約したいと発言すると、オーランド叔父上(王弟殿下)を良く思わない陛下は婚約を認めないだろう。しかし、イヴとディーが婚約者になればオーランド叔父上(王弟殿下)が失脚する際にイヴもディーを盾に操れるのではと考えると思う」


「だが、陛下は表立って賛成出来ないだろう?父上はオーランド叔父上(王弟殿下)を嫌っているのは皆が知っている」


「だから、議題を先に上げておいて貴族院議会で提案するんだ」


「あぁ。その時に賛成する貴族を調べるんだな?」


「あぁそうだ。それに、婚約者とはなれずとも候補にもなればディーに護衛を付ける名分も出来る」


「確かに、オーランド叔父上(王弟殿下)もそれが狙いか」


「あぁ。ご自身が嵌められる話をしているのにディーと伯母上を守る算段をすぐに立て始めたよ。それに、ベティとレメに行かせるつもりだったが、折角だから私もルーもおいでと招待を受けた。すでに、色々と読まれていた」


イーヴォイェレミアスとエーレンフリートだけで進める会話をハーシェルヒルム、クレメンス、メルヴァンは必死に話に追いつこうと聞く。アーデルデルトは、ディオティマの名前が出てからいつものポンコツを発揮している。そんな皆に、エーレンフリートは、陛下側の貴族のあぶり出しだよと説明をしていく。


「うむ。貴族院でそれが可決されるのであれば、やはり陛下はニコラスに王位を譲るつもりだろうな。そうすると、どの家の令嬢と婚約させるかだ。メルヴァン、ニコラスはまだ婚約者がいないのか?歳は?」


イーヴォイェレミアスは、未だエーレンフリートの説明を聞いている皆の横目に自身の思考を吐露する。質問されたメルヴァンは、慌てて答える。


「はい!ニコラスはまだ婚約者がおりません。13歳になります」


「リート」


「あぁ。分かった。その年頃のご令嬢を調べよう。しかし、その年では婚約者を決めていないのは昨今は普通だぞ!少し、歳上も考えるか・・・下は分かるか・・・?」


エーレンフリートはぶつぶつと考えを話しながら自身の脳内で貴族名鑑を思い出していた。そんな、イーヴォイェレミアスとエーレンフリートを見て、ハーシェルヒルムは不可解そうに尋ねるが、それには、思考の海に出ている二人ではなく、アーデルベルトが答える。


「なぜ、ニコラスの婚約者候補をみつけるのですか?」


「陛下側の協力者の絞り込みでは無いでしょうか?ニコラス様が立太子されると考えると婚約者は王太子妃、のちの王妃です。自身の娘がその地位に着くと、王妃の実家。王妃の親、次期王の祖父という権力を持つことが出来ます。それを手に入れる為に、陛下に協力する家門がいるのではと考えてるのではないでしょうか?」


アーデルベルトの優しい説明に、感嘆の声を漏らし納得しているハーシェルヒルムとメルヴァンに向かってイーヴォイェレミアスは、もう少し自分で考えなさいと苦言を呈すると肩を竦める。


エーレンフリートはリズに紙を貰うと伯爵位のご令嬢たちのリストを書いた紙をナサニエルへ、侯爵位のご令嬢を書いた紙をクレメンスへ渡す。


「私は公爵位を調べる。手分けさせてくれ。一応、記憶にある令嬢を書いているが漏れがあるかもしれない。各自確認を頼む」


「「御意」」


「リート・・・義弟(クレメンス)はともかく。私の従者を使うのやめてくれないか?ナサニエルも普通に返事したな!」


「殿下。我々は仲間(チーム)ですよ」


ナサニエルのにこやかな返事に不満げな顔になるが、理にかなっているのでそれ以上の文句も言えずハーシェルヒルムは黙る。そして、思い出したようにイーヴォイェレミアスはエーレンフリートに尋ねる。


「リート、ディーと私が婚約すれば守れるか?」


「陛下の油断を誘え、やはりディーに護衛がつけられるの何より有効ですね。

陛下のシナリオ通りに事が進むと、王家簒奪を図った父(王弟殿下)を持つディーは危険な立場になる。もちろん、回避の予定ではありますが。万が一、回避できなかった場合、君の立場は?」


エーレンフリートは水色の髪をサラサラと揺らし、金の瞳でイーヴォイェレミアスを見据える。


「王位継承順位を降ろされるだろうな。王妃の実家の罪によって」


「あぁ。そのつもりだろうね。しかし、君はなまじ優秀すぎる。殆ど関わり合いの無い母親の実家(ウォーカー辺境伯)の罪で引きずり下す為に、高位貴族全体の認証をとるのはかなり骨が折れる」


「そうか!私の婚約者がディーの場合、犯罪者の娘でディーは幼少期に辺境伯領で育っている。彼女を助けるためにと陛下は言える」


「イヴがディーと恋仲で婚約したいと申し出ても、陛下は反対の態度を取るが貴族院に賛成させる。後々使えると読んでいる陛下は、しぶしぶのカタチで婚約を認める。我々が陛下の策に屈したとしてもディーの安全は確保できる。君の婚約者であればだ。他の誰でも駄目だ」


エーレンフリートは強い口調で、イーヴォイェレミアスとその隣で悔しそうに拳を握りしめ青い顔になりながらエーレンフリートを見据えるハーシェルヒルムに訴え諭す。


「ディーは、例え陛下のシナリオを阻止できたとしても、陛下(売国奴)の姪でもある。どんなに穏便に済ますつもりでも全ての貴族へ秘匿するのは難しい。イーヴォイェレミアスの婚約者の地位が無ければいらぬ謗りを受けるのは避けられない。ましてや、それから婚約者など見つからない」


(ハーシェルヒルム)の恋心を知っているエーレンフリートは心苦しいが、王族が一度整えた婚約はよほどのことが無い限り覆る事はない。陛下の策を回避したとしても、イーヴォイェレミアスとディオティマの婚約は必須だと思っている。彼女(大切な従妹)の安全を確保したかった。


「分かった。そう申し出よう。帝国から、姫君の婚約の匂わす手紙も私に送るよう頼むことは可能か?連絡出来るか?アーデルベルト」


「はい。すぐに!手紙では無く鳥を飛ばします。まだ国境付近に滞在してるでしょうから、すぐに書状が届くかと思いますし、彼なら了承すると思います」


「それが可能であれば、帝国の姫君と私の婚約が決まったら困るであろうから早々にディオティマとの婚約を認めるだろう。アーデルデルト無理はする必要ないぞ。出来ればだ。」


イーヴォイェレミアスが婚約の手順を話し終えると、次はメルヴァン緊張に顔を強張らせ紫紺色の瞳はパタパタと瞬きを増やし発言の許可を求める。


「あの大変不敬で、不躾で申し訳ないのですが・・・・・・・殿下方の継承順位を下げる事が視野に入っていないのは何故でしょうか?ニコラスを王太子にするのであればご兄弟を廃するのが確実かと・・・・・」


「ないな」


「何故でしょう?」


イーヴォイェレミアスの低い返事に再度メルヴァンは説明を求める質問をする。それを知っておかないといけない気がした。すると、そこに王子二人とエーレンフリートの声が重なる。


「「「面倒だからだ」」」


「面倒?」


「今、陛下の執務の殆どを私がハーシュの協力の元で回している。ニコラスが立太子したとてすぐに私の様に執務が出来るわけではない」


「だから、父上は兄上と私を残してニコラスの補佐をさせるつもりだ。王妃(母親)の安全を盾にな」


「それに関しては、父上(テイラー侯爵)も同じ考えだ。司法の番人である父上(テイラー侯爵)は一定の距離を取っている。そして、法廷の円滑に進める為にも陛下の人となりを把握していらっしゃる。


折角、念願の女性(ニコラ夫人)を傍に置けるのに以前の様に執務と王太子への教育に謀殺される日々に戻りたくない。まぁ、陛下は王弟殿下を遠ざけてしまったので全て一人でこなすことになったのだがな。


だから、今回は都合の良い駒として今の子供達の弱み(母親の安全)を握り使うつもりがあると思われる」


メルヴァンは、自身の力量に多少なりとも自信があった。しかし、高位の人間はこんなにも多方面からの情報を処理して未来を把握できるものかと、感嘆するばかりだった。


自信の価値・弱点、相手の思考・思惑をあらゆる手段で情報として受け取り精査する。彼らに国の上に立っていてほしいと切に強く願い、自身もお役に立ちたいと思った。

長文拝読ありがとうございます。

ここ分かりにくいぞ!ってことがありましたら、是非ご一報を。

誤字脱字もいつもありがたいです!


 ~登場人物~

メルヴァン・ブラウン伯爵令息(22)

ブラウン伯爵令嬢一子(長男)*髪:オレンジ色、ストレート、ボブ*瞳:紫紺色

【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)

 テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*瞳:金

【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)

王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫

【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)

王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*瞳:青紫

【愛称:レメ】クレメンス・エヴァンス侯爵令息(15)

エヴァンス侯爵次子*髪:短髪・銀・センターパート・ストレート*瞳:赤

【愛称:アード】アーデルベルト・エヴァンス侯爵令息(16)

エヴァンス侯爵家長子*髪:腰までの長髪・黄金色・ストレート*瞳:碧

リズ・モール子爵令嬢(18)【イーヴォイェレミアス 側近(侍女)】

モール子爵家一子(長女)5人兄弟長女 髪:赤茶 目:瑠璃色

【愛称:エル】ナサニエル・イーストン子爵(17)【ハーシェルヒルム 又従弟/側近(従者)】

イーストン子爵家三子(次男) 髪:ピンク、ふわふわ天然パーマ 瞳:赤

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