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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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021 王子殿下の失望

潜入後半です。

胸糞案件です・・・ご注意を

「まぁ!ネリー(ナサニエル)!赤い鳥が横切りましたわ!」


「あら!そうなの!閣下(オリヴァー)、どの木に止まったかわかります?」


「あぁ、しばし待ってくれるかい?・・・・・・ネリー(ナサニエル)嬢、正面の木(この部屋)があるだろう?その隣だ!あぁ!その木の洞に入ったよ」


潜入している部屋の前を、エーレンフリートが探り当てた商人が通り、ジャネットがナサニエルに伝えると廊下の気配を辿っていたオリヴァーが隣室に入った事を伝える。


ナサニエルはクレメンスの肩を叩き合図をすると小さな蓄音機のような機械に渡されていた長い紙を差し込みクルクルとレバーを回す。速さはナサニエルに肩を叩かれテンポを教えられる。



**********隣室


「お邪魔致します。高貴な方」


商人達は入室を許され、部屋へ入るとすでに部屋のソファーにゆったりと座る高貴な男性へと挨拶をする。その傍らには、仲睦まじく女性が寄り添っている。


「あぁ。楽にしてくれ」


男性は短く返事をすると、向かいの席を指し示す。商人達は三人深々と礼を取ると、一人が席に付き、二人は従者なのだろう。一人は背後へ。最後の一人は手に荷物を持って座った商人の横へ立つ。


「ふふっ。そんなに緊張しないで下さいな。私の大切なこの方は、私を大切にして下さってるの。私のお気に入りの貴方がたに無体はしないわ」


たおやかな女性のコロコロとした笑い声と共に、商人たちに警戒を説くように諭すと更に一人話を続ける。


「期間が開いてしまってごめんなさいね。愚かな娘のせいで私まで謹慎させられてしまったのよ。酷いでしょう?」


「大変でございましたね。心中お察し致します。もうよろしいのでございますか?」


謝罪をしているとは思えないほどご機嫌な様子で女性が謝ると、商人は我々と会っても大丈夫なのかと問う。


「えぇ。夫は私には甘いのですわ。満足したのでしょう。娘はまだ謹慎中ですが、私の謹慎は解けましたのよ。ふふっ少しの間、家に頻繁に帰宅されていましたけど、またお忙しくなったようであまり帰らなくなりましたし」


女性は、自身の状況を話しながら隣に寄り添っている男性を上目使いで見つめる。すると男性はとろける様な笑顔に微笑み、さも当たり前の様に言葉を返す。


「あぁ仕事が増えたのでないか?大変なのだろう」


「それは、それは」


二人の言葉に、この二人は周囲を操作出来ていると理解した商人は、満足そうに微笑み。当たり障りの無い貴族の会話を卒なく済ませると、程よい時間を見計らい、横にいる従者に目くばせをして何やら大きな紙とゴトゴトと重いものをテーブルに広げた。


「この辺りをとは思うのですが、いかがでしょうか?」


「あぁかまわん!奴が治めている土地だ。そのまま利用するのがそちらにとっても良いだろう?」


「えぇもちろんでございます。あの地は、少し南というだけでかなり豊かでございますからね」


「どのような手段を取るつもりだ。こちらが何も知らないという事は出来ないぞ」


「えぇもちろんでございます。貴方様には良い時期に時間を稼ぐことをお約束頂けましたらそれでよろしいのです。我々の種も蒔いてございます」


「うむ。説明を!其方らの邪魔をするつもりは無いが。子供らがしないとは限らぬ。詳しく話して貰わぬと手助け出来ないからな」


左様でございますねと商人は頷き計画を語り始めた。


それは、聞き耳を立てているハーシェルヒルム達にとって虫唾の走るほど私利私欲の混ざった国全体を裏切る計画であった。


計画は、ウォーカー辺境伯家と王弟殿下が結託して王家簒奪の計画を北の隣国から遊学に来ていた王子が情報を手に入れてしまった。


今まで、諍いが多かったが、友好的な関係を築きたいと思っていた王子は、自らが疑われ捕まる可能性を知りながらも、王家を裏切る臣下に憤り、陛下へ秘密裏に連絡することは出来ないかと考えていた。


だが、今は少しの友好を築き公式の滞在は認められているとは言え長年、仲たがいをしていた国の王子と陛下が二人で会うことは難しい。


側近の中に、王弟や王妃の手の者がいないとは限らない。


そこに、馴染みの商人の顧客にお忍びで街に降りている国王陛下がいる事を掴み。商人へ橋渡しを願う。


商人も、自国の王子の依頼は命令であるので断れないが、自身がいきなり王子と陛下を合わせるとその場で処罰される可能性があり、懇意にして頂いているブラウン夫人に相談を持ちかける。


そして、商人と商人の従者に扮した王子が密談出来るこの場が作られ王家簒奪の計画を陛下は知ることとなる。


「ここまではよろしいでしょうか?」


商人が男性へ質問すると、男性も頷き質問する。


「王家簒奪の証拠はどうする?何もなく断罪なんぞ出来ないぞ?」


「はい。そちらも、こちらで準備しております」


そういい商人は、辺境で人を雇い意味の無い事件を起こし若き辺境伯が王弟殿下へ内々で相談する機会を作り、会合があった事を目撃した貴族の証人もすでに準備済な事。


隣国の兵を国境沿いに分散させて配置し、辺境伯騎士団を分散の上、王都へ伝令する為の兵も領地境に配置しているという情報もつかんだと言う。


他にも色々、証拠になりえる事を準備してございますと意気揚々と話しをした。ハーシェルヒルムは、計画を全て話せるものなのかと疑問に感じたがとりあえずは話を聞くことに集中した。


「ほぉう。其方、なかなか出来るな。私の元で働かぬか?」


計画の用意周到具合に機嫌を良くした男性は楽し気に商人を勧誘すると商人は謙遜して答える。


「いえいえ滅相もございません。私はしがない庶民でございます。計画したものは他におりますし、もちろん、この計画は貴方様ご協力あっての事でございます。で、その後の事なのですが・・・」


その後の計画も、隣室で聞き耳を立てていたハーシェルヒルムたちに気分の悪い物ばかりであった。


自らの危険を承知で、我が国を救おうとしてくれた王子を陛下が気に入り、第一王女を娶らせ友好を結ぶこと。隣国には、報酬として辺境伯の領地を譲渡することと貿易を盛んに行う事。


王弟を反逆罪で捉え処刑し、実家の不祥事の責任を取り、王妃を排斥する事。


隣国の商人との伝手で、陛下へと橋渡しをしたブラウン夫人へ褒美をもたらす事。


「ニコラ、褒美はもちろん」


「えぇ。貴方の妻になることですわ。王命で離縁は出来るでしょう?」


「あぁもちろんだ」


二人は商人たちがまだいるのに楽しそうに囁き合う。そんな二人を気にせず商人たちは広げていた物を片付け始める。


「では、またご連絡させて頂きます」


と暇を告げ退室していった。ハーシェルヒルムは少し気を緩め、ふぅと息を音もなく吐く。静かなままでは怪しまれると、ジャネットとグレーテがキャッキャとお菓子の話をする。


呆然とするハーシェルヒルムを、話を聞いていたジェラルドとナサニエルは気遣うように見るが、他の4人に隣室の声は聞こえていず粛々と任務を遂行している。すると、隣室から話し声がまた耳に入る。


「ねぇ~?そう簡単にあの子たちが私との結婚を許してくれるかしら?あのじい様はいなくなったけど、子供達がいるじゃない?上三人は・・・可愛げないわよねぇ」


突然の自分たちの話に身体がビクッと動いたハーシェルヒルムにナサニエルは、聞かなくてもいいぞと漏斗のような耳当てを耳から話すように見せるが、フルフルと首を横に振ったハーシェルヒルムは表情を固めて聞き耳を立てる。


「あぁ、イヴは邪魔だな。仕事が出来るから便利なんだが、小賢しい。こちらの言いなりとはいかんだろう。だが、今度あやつの婚約者が成人するんだ。海を越えて迎えに行く際に事故にでも合うかもしれないな。リシュは褒章として送るために必要だ、すぐに送ればいい。ハーシュは・・・あぁ、奴の娘を助けるとか言えばいいなりになるんじゃないか?ニコラスが成人するまで執務をする人間は必要だろう?」


投げ捨てるように自らの実子の処遇を吐く父親の声に、ハーシェルヒルムの顔から色が段々と抜けていく。息子や娘の事を道具扱いしている上に自分の弱みもしっかりと把握されている。王子としての矜持はあるが土壇場で彼女を盾に使われたら自分がどうなるか分からない。彼女だけは、巻き込みたくないという気持ち、父親の心情、王子としての享受や責務がぐるぐると頭を重くする。


すると、その瞬間バッと耳に当てていた機材を取られナサニエルがしっかりと目を合わせる。そして、口をゆっくりと動かす。


( ひ ・ と ・ り ・ で ・ か ・ ん ・ が ・ え ・ る ・ な ・  み ・ ん ・ な ・ い ・ る)


ナサニエルの視線が、ナサニエルの隣にいるジェラルド、横に座るクレメンス、鏡の前にいるジャネットとグレーテ、扉の前のオリヴァーを一人づつ見やると、ナサニエルの視線を追うようにハーシェルヒルムもゆっくりと皆を見渡し、ナサニエルへ視線を戻すとコクリと首を縦に振った。


少しの時間をぼーっと頭を真っ白にして自分を整える。先ほどよりは幾分かましになった顔色の表情を引き締め再度、耳に機材を当てようとするとその手をジェラルドに止められ、首をフルフルと振られる。すると隣から女性の色っぽい声が響く。ビクッとするナサニエルはハーシェルヒルムの耳を塞ぎ、オリヴァーはすぐさま移動してジャネットとグレーテを両脇に抱え二人の耳を塞ぐ。


居たたまれない状況になりながらナサニエルとジェラルドは機材から耳を離さずに固まる。クレメンスはハンドルをゆっくりと回し続ける。ジェラルドがナサニエルに、小さな声で最後まで聞くかと問うと、ナサニエルは首を横にフルフルとふる。もう、隣の人たちはこちらの部屋に警戒などしていないだとうとナサニエルは小さな声で女言葉はそのままにそれぞれに指示を出す。


クリス(クレメンス)様、私の準備ができるまでそのまま続けて下さいませ」


閣下(オリヴァー)ナリッサ(ジャネット)をお送りしてくださる?」


ルディー(ジェラルド)様もティナ(グレーテ)も今日はありがとう!楽しかったわ」


すると、皆が入ってきたパートナーと部屋を出ていく。ナサニエルは鏡の付いた1本目の紐から順に引くと設置した順番で鏡が部屋へと戻る。最後の紐をゆっくりと引くと鏡が戻るとともに板も閉まった。


シャツと帽子をまたドレスに隠しドレスを着る。先ほどとは違う紐を引くとドレスの背中の紐がキュッと閉まった。


「もういいですわ。クリス(クレメンス)様。失礼します」


と声をかけると、クレメンスのシャツを上に捲し上げ、機材に通していた紙をくるくるとクレメンスの胴に蒔き、機材を自分のドレスへ隠した。


驚きに固まっていたクレメンスだが、ふと我に返り。ふぅと息をつくと気を取り直し、


「では、参りましょうか。ネリー(ナサニエル)嬢」


と言って部屋を出た。

拝読ありがとうございます。


 ~登場人物~

【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)

王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*瞳:青紫

【愛称:レメ】クレメンス・エヴァンス侯爵令息(15)

エヴァンス侯爵次子*髪:短髪・銀・センターパート・ストレート*瞳:赤

オリヴァー・ミラー騎士伯(25)【ハーシェルヒルム 側近(騎士)】

 ミラージュ子爵家五男。 髪:黒、短髪 瞳:明るい茶色

【愛称:エル】ナサニエル・イーストン子爵(17)【ハーシェルヒルム 又従弟/側近(従者)】

イーストン子爵家三子(次男) 髪:ピンク、ふわふわ天然パーマ 瞳:赤

ジェラルド・ハリス伯爵子息(19)【イーヴォイェレミアス 又従弟/側近(騎士)】

ハリス伯爵子息二子(次男) 髪:銀、ロング(影武者もできるようにあえて延ばしている) 瞳:紫

ジャネット・イーストン子爵(17)【リシュエンヌ 側近(騎士)】

ナサニエルの双子の姉 イーストン家第二子(長女) 髪:ピンク 目:赤

グレーテ・ハリス伯爵令嬢(15)【リシュエンヌ 側近(騎士)】

ジェラルドの妹。13歳で騎士の才覚を魅せリュシエンヌにスカウトされる。 髪:深緑 瞳:紫

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