016 王子殿下の羨望
お茶会です!
兄弟多いですよぉ。
翌日。本日のお茶会はリシュエンヌの離宮の中庭にて行われると城を迂回して馬車を走らせて到着した。エーレンフリートたちが到着すると、リシュエンヌ専属の執事がエントランスを横切り奥の中庭に出る扉に案内すると、そこにはリシュエンヌと共に、第三王子テオフィリスと第二王女フェリシアが待っていた。
「本日はこの様な素晴らしい会にお招きありがとうございます」
代表として少し長めの水色の髪を揺らしエーレンフリートが挨拶をする。すぐ隣にはベアトリクス、ベアトリクスの隣には緊張で顔色を薄くしているクレメンスが同じように礼をとる。更にクレメンスは一歩前に出ると初対面の挨拶を行った。
「本日は私の様な者までお招き感謝の念に堪えません。エヴァンス侯爵が次子、クレメンスと申します。以後お見知りおきを」
「えぇ。ベアトリクスの伴侶となる方ですもの。よろしくお願いしますね」
緊張でいつもより顔の血色が白みを帯びている銀髪のクレメンスは、全体的に儚げな容姿になってしまっている様子に苦笑いを抑えリシュエンヌは微笑みを返す。
リシュエンヌは、スッとエーレンフリートの目の前に手を差し出しにこりと微笑む。一瞬たじろいで表情が固まってしまったエーレンフリートだが、それは仲の良い人間にしか気がつけないほどの一瞬で立て直し、にこりと微笑みを返し、手を受け取りエスコートの姿勢を取るとリシュエンヌは彼を自身の席の隣へと案内をする。
続けて習う様にベアトリクスの前でエスコートの礼をしたテオフィリス第三王子の手をベアトリクスにこにこ微笑みながら手を添えてる、10歳になったばかりのテオフィリスはベアトリクスにまだ身長が追い付いていないことと、従姉であるベアトリクスが自信を幼子を見つめる目が不満ですよと少し拗ねた顔をするが、逆効果でベアトリクスはさらににこにこと微笑む。
隣ではクレメンスの目の前に、5歳のフェリシア第二王女殿下が手を差し出しクレメンスが恭しくエスコートをして其々の席に案内する。
「ふふっ。フェリシアとクレメンスは髪色が同じだから兄妹の様ね。二人とも上手にできているわ。テオはお顔の練習が必要ね」
とリシュエンヌが美しい翡翠の目を細め弟妹を褒め、テオフィリス第三王子の表情に言及して続けて謝罪をした。
「ごめんなさいね。兄様もハーシュも仕事があって少し遅れるそうなの、三人はお時間大丈夫かしら?」
「問題ございません」
エーレンフリートがニッコリと微笑むと、クレメンスとベアトリクスも、微笑みを浮かべながらコクリと頷き同意する。すると突然、キラキラとした瞳でクレメンスを見つめるテオフィリス第三王子が声を上げる。
「クレメンス様は、クレメンス・エヴァンス侯爵子息様で間違いはないですか?今年の剣舞の代表者の!」
「テオ!不躾ですわ!」
「あっ!!申し訳ございません。姉上!」
「私ではありません。どなたに失礼をしたのですか?」
「申し訳ございません、クレメンス様。皆さま」
リシュエンヌの叱咤に、少し涙目になって俯いてしまったテオフィリスに優しく諭すように話しかける。
「テオ。確かに私的なお茶会ですが、この兄弟のお茶会はテオが他で間違いを起こし、嘲られないように練習する場です。特に今日はお客様がいらして興奮しているのはわかりますが、礼儀はきちんと学んでいるでしょう?私たちに貴方の成長を見せて頂戴」
零れそうだった涙を袖でぬぐい、ぐいっ顔を上げたテオフィリクスは「はい!姉上。」と元気に返事をした。
「ふふっクレメンス。驚かせて悪いわ。でも、クレメンスも身内になるのでしょう?緊張なさらないで、私ともども我が兄弟をよろしくお願いしますね」
上位貴族と言っても、今まで全く王家と繋がりが無いエヴァンス家で育ったクレメンスは、立て続けに第三王子と第一王女に話を向けられ更に顔色を白くした。辛うじて微笑みを絶やさないのは流石、学園の優秀者といったところであろう。
「ふふっ驚いてしまったみたいね。一息つきましょう。皆さんお茶とお菓子を楽しんで」
そういうと、リシュエンヌは音もなく侍女たちによって準備されたお茶を一口つけ、お菓子も一口食べて見せる。お茶会が始まり皆がそれぞれ口をつけるのを確認し、お茶やお菓子の感想を言い合う。一連の礼節を行い終わると先ほどからテオフィリスが気になっている話題にリシュエンヌが話を向けた。
「先ほど、テオが申しておりました。クレメンスは今年の剣舞の代表者に選ばれたの?貴方、騎士科ではないでしょう?」
「はい。ご存知の通り、私は次男ですので兄上を助ける為と、城に出仕できるように経営官吏科でございます。心身を鍛えてこそ頭脳も動くという祖父の勧めで騎士科の実技講義を受けておりまして、先生方の推薦により剣術大会にも出まして、剣舞の代表選抜に選ばれました。
騎士科の方々との仲を考えると遠慮したかったのですが騎士団長様に指名して頂く名誉を賜りました」
「まぁ!まぁ!優秀ですわね!でも、やっかみが凄いのではなくて?」
「そうですね。代表に決まったばかりの頃は壮絶でございました。決闘の申し込みも何件か頂きました・・・」
「それで?クレメンス様はどうなさったのですか?」
テオフィリス第三王子は、瞳をキラキラさせてずっとクレメンスを見上げている。クレメンスは少し苦笑いをして幼いテオフィリス第三王子に優しい表情で質問の答え返した。
「騎士科でも無い私が決闘など受ける事は出来ません。どうすれば良いのか悩んでいるところに、私の剣舞の練習に祖父が見学に来たのです。それで解決してしまいました」
「お祖父様でございますか?」
「はい。騎士科を薦めた母方の祖父はストゥワート前公爵なのです」
「えぇ!ストゥワート前公爵様ですか!?だから、クレメンス様もお強いのですね!」
「ふふふっそれは、どうか分かりませんが母は、祖父の末の娘で従兄弟たちが産まれたとき、祖父はまだ現役でしたが私たちが物心着いた頃には引退をしておりまして可愛がって貰いました。もちろん鍛錬つきでございます。
兄上も、弟もしっかり鍛錬させられました。我が家は代々、文官の家系でして、祖父の鍛錬でも筋肉が付きにくいようで周囲に侮られていたのですが、祖父が見学に来たことによってストゥワート前公爵の孫なら仕方ないと皆納得したのですよ。腑に落ちない感じはしましたが、助かりました」
「それは、英雄ですものね!」
クレメンスの母方の家系は代々国の防衛に携わる家系で団長を多く排出している。叔父は剣技より参謀に向いていた為、団長位を遠慮したが祖父の現役時代は隣国との争いが多発しており祖父は国を守った英雄として有名であった。クレメンスには厳しくも優しい祖父なのだが未だに騎士を目指す者にとっては伝説の人なのだった。
「あのぉ〜クレメンス様。稽古をつけて貰うことはできませんか?」
「まぁ。テオ!今日はどうしたの?」
「姉上。お願いです!こんな機会もう無いかもしれないではないですか!?」
目をうるうると潤ませテオフィリスはリシュエンヌに懇願する。いつもは、10歳とはいえ第三王子らしくきちんとしている弟を困り顔でリシュエンヌは溜息を漏らすが、リシュエンヌも弟妹には弱い。クレメンスに向き直ると申し訳なさそうに意外な事を口にした。
「・・・・クレメンス・・・。貴方がよければお願いできないかしら。弟は最近、剣の鍛錬に力を入れているみたいなの」
「シアも剣舞、見たい」
すると、今まで姉や兄の話を静かに聞いていた5歳のフェリシア第二王女がぼそりと言葉を零した。皆が目を見開き驚くがフェリシア第二王女はさらにしょぼんとした顔で続けた。
「剣舞する日。剣術の大会。シア参加出来ないの」
「そうね。シアは参加できないわね・・・」
そういうと、リシュエンヌはクレメンスに目線を移す。流石に王族二人を子守りは王族相手にがちがちの初対面のクレメンスには荷が勝ちすぎている流石に困り、リシュエンヌはエーレンフリートに助けを求めようとしたが先にベアトリクスが口を開く。
「では、フェリシア殿下は私とご一緒に見学に参りますか?」
「はい!ベティ姉様!」
そこに突然、今までいなかった声が入る。
「では、ジェラルド。訓練着をクレメンスに持ってきなさい。お前が一番背格好が近いだろう?テオ、其方の離宮の訓練場で行うのかい?」
イーヴォイェレミアス第一王子が、ジェラルドへ命令しテオフィリス第三王子に場所を確認すると、はい!と元気に返事をするのでジェラルドはすぐに、着替えを取りに自室へ向かった。
「クレメンスにベティ、折角会えたが私とのお茶会はまた今度日を改めてよう。こんなに自己主張する弟妹は初めて見た。つきあってはくれないか?」
「そうだね。二人は小さいが王族として頑張っている。こんなテオの顔初めて見たし、シアが剣舞に興味があるなんて初めて知ったよ」
「まぁまぁ!お兄様にハーシュ!挨拶もなしに会話に入って来てはいけません!弟妹に見本を見せなくてはいけませんわ!」
「うっ・・・すまぬ」
「ぐっ・・・すみません」
リシュエンヌに注意をされたイーヴォイェレミアスとハーシェルヒルムは、遅れた事の謝罪から始まる挨拶をさせられ席に着いた。
そんな三人には気が付かれないようにテオフィリスはクレメンスへそっと近づき、姉上が一番強いのですと耳打ちする。思わず、くすっと笑ってしまったクレメンスにリシュエンヌの声がかかりビクッと身体が震えた。
「クレメンス。ベティ。お願いできますか?」
「はい。光栄でございます」
「喜んで」
とそれぞれが答え、テオフィリスが代表して暇の挨拶をするとテオフィリスとフェリシアはクレメンスとベアトリクスと其々の側近を連れ立ってテオフィリスの離宮へと向かった。
拝読ありがとうございます。
【愛称:イヴ】イーヴォイェレミアス第一王子殿下(19)
王国第一子、第一王子*髪:金、肩下、ウェーブ、一つの三つ編み*瞳:赤紫
【愛称:リシュ】リシュエンヌ第一王女殿下(18)
王国第二子、第一王女*髪:金、腰下、ウェーブ*瞳:碧
【愛称:ハーシュ】ハーシェルヒルム第二王子殿下(16)
王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ストレート(ポニーテール)*瞳:青紫
【愛称:テオ】テオフィリス第三王子殿下(10)
王国第三子第二王子*髪:藤色(王妃似)、ショートナチュラルストレート*瞳:碧
【愛称:シア】フェリシア第二王女殿下(5)
王国第三子第二王子*髪:銀髪、腰まのロング、ウェーブ*瞳:桃色




