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高貴なる者の義務と放埓  作者: 島城笑美


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014 伯爵子息の生立

皆さん帰宅後の兄妹の会話です。

短め

「どうぞ」


エーレンフリートの執務室にいるとドアをノックする音が聞こえ入室を許可する。入室してきたのは、クレメンスとニコラスを見送りに出ていたベアトリクスだった。何か思いつめているような顔に仕方がないなとソファーへ座るよう促す。


侍従は何も伝えてないのに、サッとお茶の準備をすると用事に出てきますと部屋を出た。相変わらず察し良いのか、巻き込まれたくないのかわからないが有能な自らの侍従の働きに満足げな笑みが零れる。ソファに座り準備されたお茶に口を付けカップを下したベアトリクスに声をかける。


「どうした?ベティ」


「あっ・・・あの・・・・お兄様はニコラス様の現状をご存じなのですか?」


「あぁ。ニコラスの事か。以前から知っていた。婚約者の弟君だろう?何度か、ご兄弟ともお茶をと頼んで同席させていたんだ」


「では、昔から?」


「そうだね。ニコラスはお茶にも極力出たくないという雰囲気はあった。体調が悪いと言われれば見舞いに行っていたら、段々と茶会に参加するようになっていったが発言は無かったね。嫌いな姉の婚約者だから警戒されて当然だろう」


そう。とつぶやくとベアトリクスは青い顔でエーレンフリートを見つめ少し非難めいた口調になり言葉を続けた。


「ブラウン伯爵やメルヴァン様は何もなさらなかったの?」


「あぁ。彼らは仕事が忙しくあまり家に帰って来ていないようだったね。ブラウン伯爵はイヴ(イーヴォイェレミアス)のお気に入りなのだよ。温和な態度と容姿だが、きちんと為政者としての心構えと豊富な知識量。何よりも裏表が無い性格のせいかな?可哀想にね・・・・」


「では、メルヴァン様は?お兄様のお1つ上ですよね?まだ新人のようなものではないですか?そんなにお忙しいと思えないのですが・・・」


「ん〜メルヴァン様に至っては夫人に疎まれていたからな・・・幼少期は領地で祖父母に育てられている。学園では寮に入り。出仕してからは官吏の宿舎で寝泊りをして家に寄り付いていない」


「まぁ!何故ですの???」


ベアトリクスは心底不思議な顔をする。ベアトリクスはきつい容姿に反して内面は優しく母性が強い。自領では、孤児院や平民の子に読み書きを教える商家が営む教室へ赴き教師役をしたり、世話や会話を楽しんでいた。親が健在にもかかわらず、子供を厭うという事が理解できなかった。考え込んでいるベアトリクスにエーレンフリートは質問を投げかける。


「あぁ。ベアトリクスはメルヴァン様にお会いした事は?」


「私が1年生の時に生徒会長ではございませんでしたから、遠目からしかお見かけしたことがないのですが。確か、橙色の髪の派手な方ですよね?短い髪でしたので男の方だと分かりましたが、女性と見間違うほどの美人なお方だったような気がします」


「あぁ美しい方だよな。メルヴァン様の祖母でブラウン伯爵の母親に似ているそうだ。ブラウン()伯爵夫人は、ブラウン伯爵とニコラ夫人の婚姻に最後まで反対していたし、結婚されてからは夫人に淑女教育のやり直しを言い渡したそうだ。まぁ私から見ても淑女教育を再度受けてほしいと思うけどね」


「まぁ!そういえば淑女教育の際に、お祖母様もブラウン()伯爵夫人は淑女の鏡と評していましたね。お手本にすると良いと・・・」


「そうなんだ。だから、自分に厳しい姑を嫌って、その姑に似た自分の息子も毛嫌いしていた・・・メルヴァン様が屋敷に帰らないのにはわけがある。そこはわかってほしい」


「・・・・・はい。そんなご事情があったんですね」


「あぁ。耳に入れても気持ちのいいことではないがベティも後2年で本格的な社交が増える。情報を多方面から聞くことが大事だ。一面だけで人を判断してはいけないよ」


「わかりましたわ!ということは・・・ニコラス様も()伯爵夫人に似ていらっしゃるのですか?綺麗な子ではありますが・・・違う気がするのですが・・・」


「いやっ。違うな。ニコラ夫人はニコラスを大事にはしている。ニコラスが夫人達を嫌っているのだよ」


「・・・・なぜ?」


「ニコラスはブラウン家の血筋にも、夫人の血筋にも似ていない」


「え?」


ベアトリクスは、サッと顔から血の気が失われた。兄が何を言っているのだろうと頭を働かせるがブラウン伯爵家の者に似ていない。銀の髪をもつ子供。銀の髪が珍しいわけではない。現にクレメンスは銀髪であるし、第一王子の側近やその縁戚に時々いらっしゃる。しかしそれは、元をたどれば先々代王妃様と王妃様の従妹に当たる侍女と血のつながりがある人間である。嫌な予感を感じたベアトリクスはバッと兄の顔を見上げる。すると、ベアトリクスの視線の意図を感じたエーレンフリートはコクリと頷いた。


「誰とも似ていない自身の容姿にニコラスが気が付いたのは5歳だそうだ。末っ子として母や姉に可愛がられる弟に嫉妬したナルチェルの8歳らしい不用意な発言で知ったと言ってた」


「そっそんな・・・小さな頃から?」


「いやっ最初はまだ小さかったのもあり、たまに会えるメルヴァンもオレンジの髪で両親とは似ていなかったから気にも留めていなかったらしい。しかし、歳を重ねると不必要な噂も耳に入るし、親族にも会う事になる」


「そこで、ご自身の髪色が親族間で無い色だと・・・気が付いた?」


「あぁ。あの子は聡いだろう?自ら色々な人間に話しかけ情報をつなぎ合わせていった」


「だから、夫人を嫌い。夫人が何かの思惑で動いているのではないかと・・・お父様のブラウン伯爵では無くとお兄様にご相談を・・?」


「あぁ。私とのお茶会に体調不良で欠席すると、私が本を持って一人で見舞いに来ることを知っているからね」


「頑張っているのですね・・・」


「そうだ、彼は未来を信じて歯を食いしばって頑張っている」


「分かりました。今回の事が終わるまで、私も見守らせていただきます!」


ベアトリクスの決意を秘めた顔に、相好を崩し微笑んだエーレンフリートは頼むと頭を下げる。孤児院の復興や、訪問に力を注ぎ人一倍、子供の環境を整えることに邁進している妹が見過ごせないニコラスの現状に目を瞑るという。先ほどの、ルードリッヒとの会話も思い出し、弟妹の成長に心が暖かくなる。


「話はおわりかい?」


「はい。お時間頂きありがとうございます・・・・・・お兄様!私ではまだお兄様のお役に立てないかと思いますが、女性には女性にしか出来ないことがあるとリシュ(リシュエンヌ)お姉様もおっしゃっておりました。私にできることがありましたらご協力惜しみませんのでお声がけ下さい」


勇ましい事を言ったベアトリクスはお辞儀をして退室した。そんな、妹に面食らったエーレンフリートはふふっと笑いが零れる。ベアトリクスと入れ替わるように入ってきた侍従に気持ち悪いと言われたが気分がいいので聞かなかった事にしてあげた。


成長する弟妹に負けないように、自身も役割をきちんと果たさなくてはと決意をし仕事に戻る事にした。

拝読ありがとうございます。


  ~ 登場人物 ~

【愛称:ベティ】ベアトリクス・テイラー侯爵令嬢(15)

 テイラー侯爵家第二子長女*髪色:桔梗色・腰までの長髪・ストレート*瞳:金

【愛称:リート】エーレンフリート・テイラー侯爵子息(18)

 テイラー侯爵長子長男*髪:水色、肩までの長髪、ストレート*瞳:金


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