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第2章 現実逃避


〜闘技大会まで残り3日〜


「よしよし!」


「くふぅ〜、、」


迷宮の11層で出現したばかりの闘気を維持させる訓練をするオルグを見守るカイトとアッシュ。


この数日間のクラス内でのタッグマッチで互いの改善すべきポイントや、特徴を見つけたカイト達。


まずオルグは剣術に関しては問題はないが、力、スピード、技でグラフを作るとしたら、圧倒的にスピードが足りない事がわかった。協調性はあるが、カイトの動きについていけるかが課題である。


そしてカイトは自分自身で生きてきた前世の記憶もあり、誰かと協力をするタイプではなく、自分自身で物事を解決しようとする傾向があるので、協力というより言葉は悪いが利用という形でオルグを使うのがしっくり来た。


勿論オルグに合わせる事もできるが、そうした時にカイトの動きが格段に鈍り、オルグもそれに気を使いコンビネーションがぐちゃぐちゃになってしまったので、今の形がベストだと思いカイトはオルグを利用するという形でコンビネーションを取る事になった。


『まぁ、カイトと比べりゃ闘気の厚みは紙と鎧の差だが、それでも初級魔法を喰らっても痛みは半減される筈だ』


「難しいな闘気って、、もっと簡単に扱える感じだと思ってたわ」


「維持したぐらいで満足すんなよオルグ、お前には最強の盾役になって貰うからな、残り3日でお前の闘気を無茶苦茶引き上げるから覚悟しろよ!」


「あー、、今になってお前と組んで後悔したわー」


「へへっ!残念だったな!もう返品は受け付けてないからな、ほら!少し休憩したら12層に1人で潜って貰うぞ!」


「えー!?この間13層をみんなと攻略したばかりだぜ?」


「なーに甘えてんだよ!冷静になれば俺より剣術うめぇんだからびびんな!バッといなしてシャキンで1発だよ」


「バカっぽい説明ありがとさん」


それから少しの休憩を入れ、13層へと潜るカイトとオルグ。


「グゥゥゥゥゥゥゥ」


薄暗い一本道に、下級のオーガ種一体を見つける。


「こっちに気付いてない、行ってやれ」


「お、おう」


オルグが静かに2メートル程の図体をした下級オーガ種の背後から距離を詰め、間合いに入った途端に剣を抜き足元を一閃。


ズシュッ!


左から右に払った剣は、左脚を斬り落とす事に成功したが、思った以上に硬く、勢いが殺され、右脚に突き刺さったまま剣が止まる。


「グアアアアアアッ!」


「うおっ!」


「バカ!何ビビってんだよ!剣を離して一旦立て直せ!」


力を入れられ抜けなくなった剣を見て焦り、慌てるオルグに大声で指示するカイト。


『砕岩脚』


ズガァンッ


片足を斬り落とされ、倒れながら棍棒を真下にいるオルグに振り下ろすも、直前でもう片方の足が踏んでいる足場を崩し、棍棒の軌道をズラす。


「今だ!トドメ刺せー!」


『なんでお前が熱くなってんだよ、、』


倒れるオーガに飛び込み、斬撃を飛ばし首を斬り落とし、その場に座り込みオルグ。


「ふあああ、、危なかったー!」


「よかったぞオルグ!」


『ほんの少しだが闘気の量も増えてんな、よし、次行くぞ』


「えー!今終わったとこだろ?」


「俺らに休んでる暇なんてないからなオルグ、ほら早く立てよ!」


「はぁ、、やっぱ後悔しかねーわ」


ため息を吐きながらカイト達に付いていくオルグ。


この日は13層の中盤までをオルグ1人に戦わせ、途中からカイトと連携をしながら15層まで突破した。


『よし、今日はここまでだ』


「ああああああ、、、もう動けねぇ」


オルグが息を切らしながら地面に寝転ぶ。


『テレポート』


魔道具を使い迷宮の入り口へと瞬間移動する。


「それじゃあ入り口まで送ったから後は1人で帰れよな、俺は今から用事あるから!じゃあな!」


急いで走っていくカイトを見ながら手をふるオルグ。


カイトが足早に向かった場所は、学園の敷地内にある古い廃墟にあるテレポーターだった。


最新の技術で獲得した流し込む属性の魔力順で、行き先を変えられる様に改良され、水の魔力、次に火、土、火の順でパスワードみたいに魔力を流し込むとテレポーターが光出した。


行き先はエルグランド、今日はファミルと忙しい中約束をしていたカイト。


エルグランドのテレポーターから出現し、護衛の人達に身分証を提示し、挨拶をした後、ファミルの執務室に向かうカイト。


コンコンッ


「、、、、」


(ん?いないのかな?いや、でもさっき護衛の人がここって言ってたし、、)


恐る恐るドアノブをひねり、ドアを前に押し、顔を覗かせると大量に積まれた資料や契約書の中に見慣れた艶のある白い髪が、山積みにされた資料からはみ出ていた。


「失礼しまーす、、あーあ、こりゃあ寝てるな」


積まれた資料の内側を見ると羽ペンを立てながら楝色の瞳を半目開きながらファミルが寝ていた。


(起こすのもなんだし、起きるまで待っとくか、、)


そう言ってカイトが待っていると、数分後にレイゼンが部屋に入ってきた。


「カイトか、、、、寝ていたのか」


「はい、起こすのもなんだし、待っていようかなと」


レイゼンが目の前の資料を確認すると、分かりやすく不機嫌な顔つきになるレイゼン。


ドスッ


「起きろ、、、おい」


「ん?何〜?もうご飯の時間?」


「、、、ファミル、、、、仕事全然進んでないぞ」


「あ、レイゼン、、あははー、ごめん寝ちゃったー」


起きて早々説教を始めるレイゼンをなだめるカイト。


「まぁまぁレイゼンさん、ファミルさんも忙しそうなので今日くらいは許してあげて下さい」


「そうよそうよ、今日くらいいいよねカイトくん」


「、、、1週間、、、、子供の様な仮病や他の仕事が入ったと嘘をついて仕事をサボった結果溜まった資料だ」


「え?そうなんですか!?」


驚きの事実に思わず声を上げるカイト。


「カイトくんや生徒の前では言わない約束だったのにーもう!」


「、、、、カイトはお前が起きるのをずっと待っていた、お前がサボりではなく忙しさの余り、寝たのと勘違いしてな」


「この資料はそうやってたまった物だったんですね、、、レイゼンさんが来てなかったら、結構心に打撃を負う所でした、ありがとうございます!」


「、、、礼はいい、しっかりと客人を迎えるのも女王の務めだ、後は俺がやっておくから」


「やったー!それじゃああっちでいい話そカイトくん!じゃあ任せたわよレイゼン!」


「、、、」


再び不機嫌な顔になるレイゼンをよそに、上機嫌に執務室から出て行くファミルに、レイゼンの苦労を心中で労うカイト。


ファミルの家に着き、高そうな紅茶と洋菓子でもてなされ、ソファに座るカイトとファミル。


「さっきはごめんなさいねカイトくん」


「いえいえ、忙しそうなのは事実なので、なんとも思ってないですよ!」


「優しいわねカイトくんは、、レイゼンにも見習って欲しいわ」


「ファミル先生ってなんかその、、レイゼンさんといる時だけ子供っぽくなりすよね、、もしかしてレイゼンさんのこと、、」


「えっ?まさかそんなに態度に出てかしらぁ?」


いつもの様に物腰柔らかい感じで取り繕うも、顔が一気に真っ赤になり、わかりやすいほど目が泳いだ事にカイトが確信する。


「へぇ〜、、なんか可愛いですねファミル先生〜絶世の美女ってくらいファミル先生も綺麗なのになんでレイゼンさんはあんなに冷静なんでしょうね」


「カイト君もそう思うよね!もう10年近くの付き合いなのに、何でもっとこう、、向こうから何かあってもいいじゃないってカイト君も思うよね!」


「もしかしたらレイゼンさんってすんごい鈍感なんじゃないですか!?ただファミル先生の気持ちに気付いてないからあんなに冷静なんだと思います」


「成る程、、それだったら納得がいくわねぇ、、」


「一回分かりやすくアプローチしてみましょうよ!」


「アプローチ?何をすればいいのかしら?」


「常に護衛にレイゼンさんが付いている訳ですから、、、んー、、手とか繋いで歩いてみればいいんじゃないですか?」


「なななっ!手!?いきなり繋いだらその、ふ、不自然じゃない!?」


「護衛を名目に手を繋いで歩いてもらうのですよ、足場の悪い所とかでも見つけて、さりげなく手を握れば何とかなりますよ」


「そ、そう言われたら確かにそうかもしれないわね」


卯の花色の髪を指で捻りながら答えるファミルに、鼓動が速くなり、少し危なげを感じたカイトはすぐさま話題を変える。


「そ、そういえば今日は違う話で来たんでした!」


「あ、ごめんなさいね!ついつい私のどうでも良い事に巻き込んじゃって」


穏やかな空気が一変、シリアスな空気と表情になるカイト。


「シグニカ王国の動きなんですけど、どうですか?やっぱり魔族と繋がってましたか?」


「今シグニカ王国は穏健派と強硬派の派閥に分かれていて、内乱が起きかけているわ」


「それって良い事じゃないですか?」


「そうね、、でも私達の目的は悪神の来たるべき日に備えて戦力を温存する事、無闇な戦争は避けたいし、穏健派を内乱で潰させるよりは迎え入れたいけど、穏健派の一派はみんな頭が硬くてね、、敵国に付いて国を裏切るなら正々堂々と内乱で散った方が良いって言うのよ」


「成る程、、」


「そしてさっきの魔族との関連についてだけど、関連している言って良いわ」


「やっぱりそうでしたか、、」


「魔族の目的は悪神の復活だとキリエちゃんの話で分かったけど、シグニカ王国を助ける事でそれとどう関係するかは未だに謎だけど、裏に魔族が関わっている以上は戦争ってなったら油断できないわ」


「そうですね、そもそもシグニカとエリュードは何故敵対関係になっているのですか?」


「これは言っちゃいけないって言われてるけどカイト君になら言っちゃっても良いわね」


「そう言われるとますます聞きたいです」


ファミルがカイトの耳元に口を近づけ小さい声で呟く。


「エリュードとシグニカは元々1つの国だったの」


「え!?」


カイトの反応を見て嬉しそうな表情になるファミル。


「正確にはエリュードが元々シグニカ王国の一部だったのよ」


「へぇ〜!そんな事知らなかったー、歴史の教科書にも記されていない事ですよね」


「まぁ国が抱えている秘密だよ、それで本題だけどどうしてシグニカがエリュードを固執するか」


「元々1つの国だからってだけじゃないんですね」


「うん、それはシグニカ王の半身がエリュードの何処かに眠っているからよ」


「ん?どういう事ですか?」


「私も聞いた時はびっくりしちゃったけど、シグニカの王様ってシグニカ王国が建国された300年以上も昔の人間なんですって」


「え?ちょっと待って下さい、人間ですよね?」


「そうよ、シグニカ王の正体は謎で、噂では古代人の末裔だから人間でありながらも、エルフよりも長い寿命があるらしいの」


「古代人、、」


(確か歴史書では、不思議な力で人間を超越した存在で、今はその末裔がこの世に散らばっているだとか、もしかしたら転生の事とか知ってるかもしれない、、)


「まぁあくまでも噂だからね」


「そのさっき引っ掛かったんですけど、その半身というのはどういう意味なんでしょうか?」


「半身は、昔エリュード王の先祖が、シグニカ王に反旗を翻した時に、シグニカ王の力が強大過ぎて、半身を封印したのをエリュードのとある場所に隠したのよ」


「それを明け渡せば解決って事には、、」


「半身を返されれば勿論魔族と組んで更に凶悪になるだけだわ、勿論シグニカ王を説得出来れば話は変わるけど、何せ裏切ったのはエリュード側だからね」


「ですよね〜、、じゃあもう戦争するしかないって事ですね」


「今のところはね、だけど先生はあきらめないで、別の解決策を探すわ、戦争が始まるまでね」


「ありがとうございます先生、僕も出来る限りの事はするつもりなので、何もないですけど、いつでも頼って下さい」


「カイト君にはいっぱい助けられてるから良いのよ、その気持ちだけでもありがたく受け取っておくわ」


聞きたい事は全部聞けたので、後はカイトとルフトの家族分のエルグランド通行書を発行してもらい、近々家族で遊びに来る約束をし、エルグランドを後にした。


「あーあ、、なんか話がスッゲェ大きくなり過ぎてついていけねぇや」


『今はしっかりと力を身につける時だ、面倒ごとは大人達に任せてりゃ大丈夫だよ』


「そういえばお前本当はムッチャクチャ強いんだろ?実際どのくらい強いんだ?」


『へっ、この世界の全員がかかってきても負けねぇくらいだ』


「はっ、、相変わらず馬鹿だなー、まぁ学園長があんだけびびるくらいだから、魔族のトップよりかは強そうだな」


『あんなのは雑魚だぜ?俺様の世界に住んでる阿獣と比べりゃ、どうって事ねぇよ』


「はいはい、、いつか行ってみたいもんですね」


『それだけはやめておけ、俺様の王国に近づく前にお陀仏だ』


「もういっそ信じるから力取り戻して、シグニカ王国を破壊しちゃってくれ」


『お前、さっきからまともに俺様と会話してないだろ?』


「何?プリンがなんだって?」


『現実逃避してんじゃねぇっ!とうっ!』


かかと全力で上げ、カイトの脳天に振り下ろす。


「あべふっ!何しやがんだ!」


『じゃあな、独り言すんだったら呼ぶんじゃねぇよ』


「いたた、、ったく、俺が何をしたって、、あ、そう言えば夜のトレーニングまだだった!」


家に着いた瞬間に夜のトレーニングの存在を思い出し、急いでスレイムの街をランニングするカイトだった。



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