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第2章 貸し一つ


建国祭の騒動から数日が経ち、カイトとルフトは王様を救った事で、その名誉を讃えられ、復興が完了した王城へと学校帰りに招かれた。


「うお〜!改めて見るとやっぱ壮大だな〜お城って」


腰を90度近く反り上げ、城門の前で止まり、改めて壮麗な城の迫力に声が出るカイト。


ガコンッ

ゴォォォォォッン


*「お待ちしておりましたカイト様、ルフト様、ささっ!どうぞこちらへ!国王陛下がお待ちしております!」


城門を開けると、これまた髪の毛に特徴がある男性がカイト達を出迎えた。


(ブフッ!この人の髪型、、あの歴史の教科書に載ってた宣教師のザ○エルそっくりだ、、ダメだ!頭を見るな俺!)


見覚えのある髪型にルフトの背後に隠れて笑いを堪えて歩き出すカイト。


「これはガビエル様、おや?これはこれは、本日の主役ではございませんか!折角のパーティーですのでお客人にお召し物を用意してはどうでしょうか?」


「ブフッ!」

(ガビエルだって!もう五十音の真横じゃんかよ!何でガにしたんだよ!ダメだ!余計おもしれぇ!)


広間の奥からカイト達の来客に気付いたノルハートは、ガビエルと呼ばれるカイト達の案内人に提案をする。


「ん?今誰かの笑い声が?」


(あっ!やべ!)

「ズルッ、、ゴホンッ、、いやーすいません、ちょっと花粉症が酷くて、、病気ではないのでお気になさらず」


思わず名前を聞いて笑ってしまったカイトは、咄嗟に咳払いや鼻水で誤魔化し、なんとかその場を凌いだ。


それからガビエルはカイト達を二階のパーティー会場ではなく、ドレッシングルームへと連れて行った。


「すげぇー、スレイムにある服屋よりも大っきいぞルフト」


現代で大きい服屋の様に、棚が何列もあり、その中に見るからに高そうな洋服が掛けられており。入ってすぐの所で男女の服で左右に分かれていて、カイト達は右の1番奥へと連れて行かれた。


「お二人と同じサイズの服はこちらにこざいます、この中からお好きなお召し物をお選びください」


20〜30着あるであろう大きな棚に飾られた服を一つ一つ吟味するカイトとルフト。


「俺はこれかなー」


そう言ってカイトが選んだのは白の手首と胸にフリルが付いたシャツと、黒の模様入りのパンツ。


「俺はこれにしようかな」


ルフトが選んだのは赤いコートが特徴の貴族服と、黒いパンツ。


「それではこちらの小部屋でお着替えください」


服を選んだ棚のすぐ横にあった別々の小部屋の中に入り、着替える。


「おぉ〜!ファンタスティックです!」


「このファサファサしてる部分が気になるな〜」


「なんかちょっと恥ずかしいな」


カイトが胸と手首についたフリルの様な物に違和感を感じ、ルフトは恥ずかしそうに着替え室から出てくる。


「僭越ながら、カイト様は何か上に一枚羽織った方が宜しいかと思いまして、こちらの方をお持ちしました」


そう言って装飾が施された黒のジャケットを渡され袖を通す。


「おぉ〜!お似合いです!」


「暑くなると思ったけど、案外風通しがいいですね」


「大半の貴族服は暑い季節と寒い季節用にこしらえあります」


「もう金持ちのスケールがデカ過ぎて想像したくないわ」


「それでは改めて参りましょう!」


来た道を戻り、二階のパーティー会場へと向かうカイト達。


「ささ、会場はこの扉の先で御座います!」


ガチャン!


ガビエルが扉を開くとまず1番最初にカイトが感じた事は。


「ま、眩しい!」


部屋の中は豪華に飾られており、招待された数多くの貴族が来ているドレスに付いた宝石などに光が反射し目が眩む。


「カイト!こっちだ!」


「それでは私目は役割を終えましたので、失礼いたします」


ガビエルが会場の扉を閉め、中にいたルドガーがカイト達を見つけ、大きな声でカイト達を呼んだ。


「にーに!見てー!」


「もうみんな来てたのか!おぉ〜これはこれはどこの可愛いプリンセスですか〜?」


カイトに駆け寄り着替えたドレスを披露するエリーゼを片腕で抱き上げる。


「あら〜、ずいぶん男前になったわね2人とも」


「もう傷は平気なのシュリカさん?」


「あんな傷1日2日あればすぐ治るってもんよ、ホラっ!いっ!」


勢いよく足を振り上全快アピールをするも、調子に乗って腰を痛めてしまうシュリカ。


「ほら言ったじゃんもう、母さん腰悪いんだから座ってて」


「婆ちゃんと爺ちゃんも今日は楽しんで行ってね!」


「当たり前じゃ!久しぶりに可愛い孫達が見れて元気いっぱいじゃ!」


「ふんっ!街の郊外も危ないから、当分ワシらの家で預かってもいいんじゃよ?」


「そんなこと言って、母さんが可愛い孫達の面倒を見たいだけなんじゃないの?」


「何言ってんだいカミラ、ワシは孫達を心配しとるだけじゃ!」


「相変わらずだねーおばさん」


なんやかんやぶっきらぼうに心配する婆ちゃんを見て、カミラとシュリカが食いつく。


「そうだ、父さん、結局あれから色々と進捗はあったの?」


「あぁ、、結構いくつか分かった事があった」


カイトはルドガーの横に立ち、他の人達に気付かれないくらいの声で会話をする。


「王様は無事だったの結局?」


「実は建国祭の数日前から、王様には奴隷紋が発動されていたんだ」


「奴隷紋?何それ?」


「俺も詳しい話は知らないが、確か奴隷にしたい奴の血をその紋書に垂らすだけで強制契約されるって言うヤバい奴だ」


「血を垂らしただけで強制的に使役できるのか、、それで王様を操って色々してた訳なんだな、後は?」


「お前とルフトが捕まえた1人の身元がシグニカ人だった。そしてもう1人の身元はエリュードの人間だったが、感じる魔力が人間と異なっていたので検査をした結果」


「した結果?」


「魔族だと言う事が発覚した、奴らは上の世界で死んだ筈だったが生きていたんだ」


(そうか、父さんは魔族の事は何も知らないんだ)


「それで?」


「お前んとこの学園の先生にエルフがいるの知ってるか?今はその人の所に身元を預けられている」


(今はエルグランドに拘束されてるって事か)


「それじゃあ簡単に纏めるとシグニカと魔族が結託してエリュードに戦争を持ち込んだって事?」


「って事で間違い無いがこれがどうも面倒な話でな?シグニカ人の奴は10数年前にこの国に正式な手続きによって亡命してきたんだ。この件をシグニカの奴らに報告した所、知らんの一点張りだったとよ、他にも犯人と思わしき人物の死体が十体近く現場にあったが、どいつも元シグニカ人で、エリュードに亡命して10年以上は経っている」


(エリュード法では亡命してから10年以上経つと、その国で問題を起こしても、出身国とは何も関係ない事になるもんな)


「そんな事がまかり通るの?明らかに結託してるには明白じゃん」


「まぁ上のお偉いさん方は休戦協定に十分に反すると言って、戦争を仕掛けようとしている。まぁそんな事しなくても昨日の話にはびっくらこいちまったもんだぜ」


「何かあったの?」


ルドガーの表情が硬くなり、持っていたグラスの中に入っている酒を一気に飲み干し一言。


「シグニカが休戦協定を破棄した」


「って事は、、」


「あぁ、、すぐにとは言わないが近いうちに戦争が始まる、前回は休戦協定でお互い大きな被害は出さなかったが、今回ばかりはどちらかが滅びるまで続くぞ、既に国交は断絶、国境には警備隊が配置された」


スケールのでかい話に思わずルドガーが手にしている酒を飲んで現実逃避をしたくなるカイト。


「まぁとは行ってもエルフの人が言ってたぜ、戦争は起きるかもしれないが、起きれば一方的な戦いになると、何せシグニカが休戦協定を破棄した事で、エリュードはエルフの国とルミラん所のルマリア、そしてガルナロート国の3国同盟に加入したからな、シグニカも容易には攻められないだろ」


(そう言えばそんな話してたな、、まぁでも一応ファミル先生にも確認を取っておこうか、今は闘技会に集中しないといけないし)


「そっか、まぁ俺は家族が無事ならそれでいいけど、無茶だけはしないでくれよ父さん」


「召集がなければな」


そう言ったルドガーの声は少し弱々しかった。


「ねー!にーに!今日はにーに達がしゅやくなんでしょ?」


「ん?あぁそうだな、凄いだろ〜、にーに達は王様を助けたんだぜ!」


「それじゃあ今日は王様が助けてくれたお礼って事ー?」


「そう言う事だ、だから今日は好きなだけ美味しいもの食べて良いんだぞ!ほらあれ見てみろ、お城の形をした大きなケーキだぞー!」


「わぁー!すごーい!」


カイトがエリーゼを連れて会場の真ん中にある虹色の飴で装飾された、城のケーキに向かってエリーゼを抱き上げ走って行った。


(今日はお姉さんモード発動しないんだなエリー、全く甘えやがって、、、、、んー!可愛いな!)

「ぬおっ!」

「キャッ!」


胸に抱かれて楽しそうにしているエリーゼをよそ見していたら、ケーキの置かれた大きなテーブルの下に土台があるのを見逃し、前にバランスを崩したと同時に、抱えていたエリーゼが前に飛んで行った。


「やばっ!」

ズボンッ!


エリーゼが大きな城のケーキの中に入り、消えた。


ズポンッ!


「えっへへー、このケーキ美味しいよにーに!」


『寄手』


ケーキの穴から現れ、おいしそうに顔に付着したクリームを舐めるエリーゼを、急いで闘気の腕を伸ばして引き寄せる。


*「くぉらぁ!!!何をしとんじゃお前達ぃ!」


「す、すいません!段差に足を滑らせて妹をケーキの中に飛ばしてしまいました!僕の不注意です!すいません!」


潔く一連の事を見ていた年寄りの貴族がカイト達に向かってものすごい剣幕で怒鳴りかかってきた。


*「よくもワシの渾身の力作を台無しにしよっ、、、ん?待てよお主は確か、、おぉそうじゃ!」


年寄りの貴族はカイトの顔を近くで見るなり、再び自分のテーブル席に戻り、1人の男の子を連れてきた。


*「黒髪のお兄ちゃん!」


この世界では逆に珍しい黒髪、慣れない呼ばれ方と見覚えのないエリーゼよりも少し年上の男の子に困惑するカイト。


*「お兄ちゃんは覚えてないかもしれないけど、この前の事件で瓦礫に埋まった僕を助けてくれたのを僕はずっと覚えています!お爺ちゃん、この人で間違いないよ!」


(多分母さん達を探しに行く時に、通りすがりに助けた人かな、、あの時は探すのに必死だから誰を助けたなんか覚えちゃいないけど、、)


*「そうじゃったかそうじゃったか!これは失礼な事を、、孫の恩人とは知らずについ怒鳴ってしまって、、数々の無礼を許していただきたい次第です」


「いえいえ!悪い事をしたのは僕の方ですので怒られて当然ですが!ちゃんと次からは気を付けるよう心がけるので、申し訳ありませんでした」


そう言って照れ臭い感情と、申し訳ない感情の2つに押しつぶされ、その場を逃げるようにエリーゼと去っていくカイト。


「ふぅ〜、全く」


「あらま!エリーゼちゃんやそんなに白くなって!どうしちまったんだい!?」


婆ちゃんがクリームで真っ白になったエリーゼを見て驚いた声に、家族全員がエリーゼを隠すように集まる。


「カイト、洗濯魔法よ!」


「うん、任せて」


エリーゼを囲み、中で着替えさせ、即座に洗濯魔法でエリーゼと服を洗い、ルフトの熱風で乾かす。


「よし!これで大丈夫だ!」


乾いた服を速攻でエリーゼに着せると、会場の四隅に設置された浮遊石が光り出した。


「あー、、あー、、聞こえておるか?大丈夫そうだな、よし!それではこれより王城の復興と建国祭ではお預けを喰らったパーティーの乾杯を、私ルイノルド・エリュードが取り仕切らせてもらう」


いつの間にか会場にいたエリュード王に、会場内の全員の視線がカイト達ではなく、エリュード王へと切り替わってホッとするカイト。


そこからエリュード王の乾杯の音頭が終わり、エリュード王がテーブルを1つずつ回っていき、やがてカイト達の所へと現れた。


「あ!王様ー!」


「おうさまー!」

「おうさまー!」


エリーゼに続き、ミルとミアも王様と叫び、指を指した。


「こら、指を指しちゃダメでしょミルミア!」


シュリカが急いでミルとミアを叱るも、エリュード王は柔らかい表情であった。


「よいよい、子供はそれくらい無邪気じゃないとな、このテーブルに来れた事を嬉しく思う、何せ命の恩人だからな」


「いえいえ、それよりお体は大丈夫でしょうか王様?」


ルドガーが一家を代表してエリュード王と話しているのを傍で聞くカイトとルフト。そして突如話は褒美に切り替わる。


「そういえばまだ礼をしていなかったな、今のうちに決めておこうか!丁度今日は気分が良い!今だと褒美の許容範囲が広いぞぉ?ガッハッハッハ!」


ルドガーがその一言にどう答えていいか分からず、痺れを切らしたカイトが口を開けた。


「王様、父からは色々とこの国の状況は聞いております。なので今の国の状況を考慮してなのですが、トルプアに今ここにいる人数が全員住める別荘の様なものを提供してほしいです」


トルプアはカイト達が現在住んでいるスレイムより南、爺ちゃんと婆ちゃんが住んでいるクウェートよりも更に南東の最果てにある村で、カイトはもし万が一戦争になると真っ先に狙われるのが王城と考え、その王城から1番遠い場所の別荘の提供を考えた。


「トルプアかー、成る程な、家族の安全を考慮しての事だな、分かった!しかし今あの村にはお主達が全員住めるほどの豪勢な住宅はない、なのでこれから新しく建て始めるから、そうだなー、少なくても3週間は待ってもらわないと行けないが構わないか?」


「構いません、それと十分な非常食もお願いします」


「それだけでいいのか?」


「え?これでも結構踏み込んだ方なんですけど、、」


「遠慮はするな!そんなものワシの命と比べたら小さいわい」


(だいぶ酔いが回ってるな、、)

「それじゃあ貸し1つって事でツケておいていいですか?今はまだ思い当たらないので将来僕達が困った時に助けて頂きます」


「ほう、、そう出たか、了解した!それでは貸し1つという事にしておこう!万が一ワシに何かあっても責任は取れぬが本当に良いのだな?」


「はい」


「よかろう!それではワシは他の所へと回ってくる!楽しんでくれたまえ!」


「足元に気を付けて下さい王様」

(あんな一面もあるんだな)


こうしてトルプアに緊急時の避難用別荘と、貸一つという事で褒美が決まり、その日は普段味わえないであろう豪華な料理を楽しんだ一同であった。




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