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第2章 先手



「やっと着いたー、、」


カイトの家の前にふわりと着地し、扉を開けようとしたその瞬間...


「待ってろルフト!」

ガチャ!


「あっ」

ガバァン!


「ん?何か鈍い音が、、おっ!ルフトじゃん!戻ってたのか?」


扉を開けようとした瞬間に中からカイトが勢いよく扉を開け、ルフトは顔を思い切りぶつけ、地面に倒れる。


「ば、、馬鹿野郎、、ぐふっ」


「まさか俺がトドメを?、、クソっ!お前のエロ本はちゃんと燃やしといてやるから安心してくれ!」


「いや、冗談はさて置いてそのエロ本とか言う、聞いててワクワクする本の正体が気になるカイト」


「全然冗談置いてねぇじゃねーかよ」


「馬鹿野郎っ!」

ドガッ!


「ブヘッ!」


「俺は至って真剣だ!」


カイトを殴りつけ、神妙な顔付きで仁王立ちするルフト。


「それよりフジコさんは?」


「さっき報酬を払い終わって帰ったよ」


「そっか」


「カイト!ルフト!」


「ん?あ!父さん!今までどこ行ってたんだよ!」


「俺らすっげぇ大変だったんだよ叔父さん!」


ルドガーが遠くからボロボロになりながら、カイト達に駆け寄り抱き抱える。


「すまない、、取り敢えずカミラとルミラ達は無事か!?」


「うん、後王様も無事だよ」


「え?」


「ん?」


「いや、その王様って言ったか?」


「うん、ほらそこのリビングにいるよ」


「なっ!」


ダッ!バタンッ!


ルドガーが家の中のリビングで寝ているエリュード王を見た瞬間焦った様に家にルフトとカイトとその他もろもろを家に放り投げ、家の外をチェックし始めた。


「どうしたんだよ急に」


「何で王様が家の中にいるんだよ!まさか今回の騒動お前らが関係してるんじゃないだろうな!」


小さい声でルフトとカイトに物凄い形相で質問をするルドガー。


「落ち着いてって、こっちもこっちで色々聞きたい事あるから」


「そうだよ、俺らだって叔父さん達が何をしてたか気になるし」


「そ、そうだな、冷静に一個ずつ紐解こう、、」


それからカイト達は互いの状況を説明しあった。


まずルドガー達は建国祭の前日にエリュードにあるシグニカとの国境に一番ちかい位置にあるナルヘムと言う町で魔物が活発になっていた為様々なギルド同士で協力して遠征に行っていた。


そしてその日の内に魔物の活発は抑える事ができたが、帰り道の途中魔物の大群と出会し、一旦体制を立て直してから討伐に向かおうとしたが、ナルヘムの町に戻ると再び魔物が再活性化し、挟み撃ちで身動きが取れなかった状態の為、王都から応援を要請した。


そして建国祭当日、要請した応援より遥かに多い応援が到着し、嫌な予感がしたルドガーと他のギルドの一同は何か裏があると見て、急いで魔物の討伐を急ぎ、王都へと戻った。


そして王都が遠くから見え始め、火の海と化していているのが見え、一同は何者かの策略にハマった事に気が付き、王城へと向かうと、王城は破壊されており(ルフトによって)王の姿も家臣の姿も見えなくなっていた為、国の一大事だったが、家族のことが心配になったルドガーは真っ先に帰ってきて今の状況になったのだ。


「成る程ね、まぁでも一応重要参考人は2人捕まえたし、大人達が戻って来たんだったら良かったよ」


「お前達、、本当に子供か疑いたくなるぐらいにしっかりとした判断能力だ、本当に誇りに思う」


ルドガーがルフトとカイトを力強く抱きしめる。


「父さん、、汗臭いってー」


「それに何か返り血の臭いも混じって吐き気がするよ叔父さん」


「すまない、父として家族の一大事にいつもそばにいてやれなくて、、取り敢えず風呂に入ったら王様を返しにいくぞ」


「うん」


ルドガーが風呂浴び終わるのをカイトとルフトが待っていると、カミラが寝室から現れる。


「ちょっ!カミラおばさん!起きちゃダメだって!」


ルフトが感知でいち早く気付き、カミラの体を支える。


「みんな無事だよ母さん、父さんもさっき帰って来た所だし」


「ちょっとルドガーと話してくるわ」


「うん、気を付けてね」


ルフトとカイトでカミラを支えながら、浴室へと向かい、カイトとルフトは空気を読み家の外に出た。


「なぁカイト、今日って建国祭だよな」


ドアを出てすぐ右にあった積み木に座りルフトが口を開く。


「うん、信じられないよな、平和の祭典が一瞬で地獄みたいに変わっちまったし」


時刻はすっかり夕暮れが過ぎ、各家の中の明かりが、暗い夜を点々と照らしていた。


「学校の先生は何をやってるんだろうな」


「さぁな、国の上層部が全く機能してなかったし、先生達も休みだから王都から離れた所か、父さんが言ってた様にギルドの応援に駆けつけてたんじゃないか?」


「絶対裏で誰かが手を引いてるよね」


「それで間違いないだろ」


「こんだけの事引き起こせる人間、、父さんと何か関係があるのかな」


「、、、、」


ルフトの放った言葉に沈黙を続けるカイト。


ルフトの双子の妹であるミルとミアが生まれた直後、ルドガーを除いたカイト達の家族全員とルフトで双子の女の子の誕生を祝福している中、届いた1つの訃報だった。


祝福がされたシュリカの家に明らか場違いな血だらけで帰ってきたルドガーが生気をなくした顔で、ヴェスターの剣をシュリカに渡し一言。


「ヴェスターが戦死した、俺が応援に駆けつけた時には剣と魔物だけが残っていた、すまないシュリカ」


その場でルドガーは土下座をしながら泣き崩れ、シュリカは娘達と1人になりたいと言い、カイト達は家を出た。


その時に聞いた生に対し喜びに満ちた泣き声とその中に混じった、死に対する悲しみの泣き声を今でも頭の中から離れないルフト。


そしてルドガーはカミラに相談し、大金を払って捜査機関であるアイにヴェスターの捜査をしてもらい、捜査の結果、現場の大気中に残存していたヴェスターとは別の人間の魔力が見つかり、ヴェスターは魔物に殺されたものではなく、殺害もしくは行方不明とされた。


「まだ、、て言うよりかは忘れられないよな、そりゃ」


こう言う話をルフトとする時は、決まってルフトの顔を直視できず、ただ下を俯く事しかできないカイト。


「うん、、こればかりは人生の目標にしたから、ちゃんと父さんの死体を確認するまでは諦めないって」


「だから俺が成人の歳になったら世界中を旅するって言った時あんなに強い目で付いてくるって言ったのか、、」


「誤解するなよカイト、お前との冒険は本気で一緒にしたいし、父さんの事が目的で利用してる訳じゃ無いからな!ただ冒険しながらでもそれは出来るからな、ついでだぞ!ついで!」


少しばかり焦り感じながら、口早にカイトの説明する。


「ハハッ、何焦ってんだよただ確認したかっただけだ、お前が復讐なんかに囚われてないか」


「そこんとこは大丈夫だ!俺はそんな事で今いる大事な人を傷付ける程、視界は狭まっちゃあいねぇぜ?」


「急に江戸っ子だすなって、そろそろ父さんが来るから、行くぞ!」


「なんだったっけあのカイトが言ってたセリフ」


「てやんでぃだろ?ちっさい頃何かある度に言ってたよな俺たち」


「あぁ!それだ!てやんでぃ!なっつかしいな!ハハッ!」


ガチャ

「すまない待たせたな、行けるか?」


王様を背負いながら、ルドガーが家から出てきて、ドアの奥には目を真っ赤にしたカミラが立っていた。


「うん、てか思ったんだけど俺らも付いていっていいの?」


「あぁ、事情を聞かれるだろうし、今日ばかりはすまないが寝れないと思った方がいい」


「うん、わかった」


「それじゃあ行ってきますねカミラおばさん」


「うん、気を付けていってらっしゃい!」


少し歩き続けて家の方を見ると、ドアを開けたまま、淵にもたれていたカミラを見てカイトが遠くから叫ぶ。


「体が冷えるからもう家の中に入ってよ母さん!」


カイトに言われ、家の中へと入っていくカミラ。


片道を20分かけて、王城へと到着した一同。


道中王兵や、ギルドの団員、冒険者などが早くも街の消火や救助作業をしている様子などが見えた。


「よぉ、どうだ?作業の方は?」


城門の前に人目を引く程の大きな体をした男にルドガーが話しかける。


「おいこらぁルドガー!てめぇこんな忙しい時にどこほっつき歩いてやがったぁ!?」


「まぁまぁ落ち着けってバルアス、、家族の無事を確認しに行ってただけだって」


「むぅ?それなら仕方がないなぁ!」


迫力のある表情でルドガーを睨みつけながら喋る大男に、少しばかり体が硬直するカイト。


(で、でっけぇ〜、、余裕で2メートル半ぐらいあんだろ、、)


「んん!?先程から何をずっとチラチラ見ている小僧ぉ」


カイトの視線に気が付いた2メートル以上の大男は、のそのそとカイトの方へと歩み寄って行き、鋭い眼力でカイトを睨みつけた。


「そいつは俺の息子でその2人は今回の騒動を救った英雄と言ってもいいんだぜ?」


「なにぃ!?この私を差し置いてこの国の英雄とはなぁ!?」


「いや、、そう言うつもりで来た訳ではないんですが、、この人をお返しに来ました、、」


カイトは空間の中から2人の捕虜と、丁重な扱いで王様を抱え出した。


「なっ!我らが国王!おんどれぇ貴様ぁ!まさか此度の騒動お主が立役しておったのかぁ!?子供の身なりで私を騙すとは、今すぐにその化けの皮を剥いでやる!」


『マグニスラッシュ』


「いきなり」

『烈刀』


ガキィン!!


「何すんだっ!」


刀をイメージし、闘気で即座に作り上げ、渾身の勢いで振り下ろされた中華包丁の様なでかい剣を、斬り上げで受け止める。


「馬鹿野郎何してやがるバルアス!そいつは俺の倅だぞ!いくらお前でも!」


ルドガーが剣を抜きバルアスに飛びかかる。


「ぐっ、、、もうこれ以上は、、」


バルアスの剣と体格差が格段にカイトと違いすぎる為、一瞬だけ止めたものの、バルアスの握る剣は着実にカイトの肩にゆっくりと近づき、やがて刃先が肩に入りかけ、ルドガーも剣をバルアスの首のギリギリまで振り下ろした瞬間...


「やめんかぁ!」

ピタッ


全員の動きが止まる。


声のする方を見ると、エリュード王が起き上がっていた。


「王よ!御無事でしたか!今しがたお待ち下さい!このバルアスが!」


「よせと言っておる!貴様のその短絡な思考回路に起こされて腹が立っておる、剣を今すぐ収めろ!貴様ら護衛ではなく、その子達が私を助けたのだぞ!」


「、、、、」


バルアスは何も言い返す事なく剣をしまい、エリュード王の体を支え上げる。


「私の部下がすまない、、君達にはしっかりと今しがたの無礼と、助けていただいた御礼をきっちり合算してさせて欲しい」


「あ、いえ、そのお体が大丈夫でしたらそれでいいですしその、、」


カイトがルフトの方をチラチラと見ると、ルフトが申し訳なさそうにカイトの後ろからエリュード王の前に来る。


「あの、、すいませんでした!、、助けたとはいえ、あそこの窓と玉座や天井とか結構お城を破壊してしまいました!」


腰を丁寧に90度に曲げ、城を破壊した事を謝罪するルフトに、エリュード王が目を見開く。


「あの城は君が破壊したのか?その歳で?」


エリュード王はしばらく何かを考え始め、口を開けた。


「そうだな、、其方らは学園生か?」


「はい」


「何処の学園か聞いても?」


「ウルミスト学園2年です!」


「ウルミストか、学園を卒業したら2人とも私ではなくなるが次期国王の側近に来ないか?報酬はたんまり弾ませる事を約束しよう、勿論城を破壊した修理費はその報酬から引かせてもらうが、、」


エリュード王の出した誰もが喉から手が出るような提案に、ルフトは間髪入れずに口を開く。


「申し訳ありません、学園を卒業したら2人で冒険者になる予定なので、ありがたい提案ではありますが、断らさせて頂きます。城の修理費などは今は無理ですが、学園を卒業した後耳を揃えてお返しします」


「エリュード王よ、一つ宜しいでしょうか?」


「なんだバルアス、また余計な事をしたり、言ったりすると処刑するぞ?」


バルアスが遮る様にルフトとエリュード王の会話に割って入る。


*「流石に悪戯が過ぎますよ、エリュード王」


突如城の方から若々しい声が聞こえ、一同が同じ方向を見る。


「はぁ、あともう少し落せそうな所でお前が来るなんて」


*「玉座の間にて一連の事は見えておりました、貴方達ですか、エリュード王を敵から助けて下さったのは」


「は、はい」

(この人なんか何処となくガルハートさんに似ているな、、)


答えながら、その後頭部で束ねた水色の髪と端正な顔立ちに、何処か懐かしさを感じるカイト。


「申し遅れました、私エリュード王が御右手、宰相ノルハート・クインスで御座います。改めまして此度はエリュード王をお救い頂きまして誠にありがとうございます。先程のバルアス団長の無礼と、我が王の失礼をどうかお許しを」


丁寧に右手を左胸に当て、腰を曲げて例をするノルハート。


「いえいえ、お顔をあげて下さい、一国民として出来る事をしたまでです」


「そのした事がこの国を救って下さったのです。感謝せざる終えません、ここでは不便ですのでどうぞ城内へとどうぞ」


何の違和感も感じさせる事なくその場を収め、カイト達を城内へと案内するノルハート。


一同は地下にある会議室の様な場所に通され、カイト達とエリュード王、バルアス、ノルハートだけとなった。


「第一会議室と第二会議室が破壊された為、少し暗いですがここでお話をお聞かせ願います」


それからカイト達はルドガーに伝えた様に、事の成り行きをノルハートに説明した。


「成る程、、つまり事は私達護衛隊が出発した朝から数時間後だった事ですか」


「貴方達の話に嘘がない事はエリュード王の無事と2人の捕虜を見れば辻褄が合います、取り敢えず今は信じる事しかできません。続きは後日お話ししましょう、此方も何せ一斉に色んな事が起こり過ぎた為状況の整理すら出来ていません。まずは犠牲者の安全、治療と国民の安全が第一ですので、お2人は今日の所は一旦休息をされて下さい」


「分かりました、父さんは帰る?」


「俺はもう少し手伝う、今日は帰れないから母さんに伝えといてくれ」


「分かった」


そう言ってカイト達は地下の会議室を後にし、家へと再び戻っていった。


ドスンッ!ドスンッ!


「あー!色んな事がありすぎてマジで疲れたー!」


家に帰るなり、ベッドへとダイブするカイトとルフト。


「本当だよ、、未だに王様と会話してたのと、次期国王の側近にスカウトされたのが信じられないよ」


カイトの言葉にルフトが天井を見て、カイトにボーッとしながら喋りかける。


「、、、スゥー」


「寝るの早っ」


「なんだかお前の顔を見てたら、、俺まで、、何だか、、、スゥー」





*「どうだった?」


銀色の甲冑が並んだ道の真ん中で平伏す男と、玉座の様な場所で足を組み、両腕を肘置きにつけ座る男が、平伏す男に口を開く。


*「はっ!作戦は無事成功、エリュードの王都を守る結界は見事破壊し、いつでも攻め入る事ができます。それと聖域の場を記したパルシア海域の地図も奪還に成功との報告です」


玉座に座る男は鋭い眼光から一転、まるで笑いを堪えきれなくなったかの様に高笑いした後、平伏す男に命令を下す。


*「エリュードとの休戦協定を破棄しろ、それとエシュロン王に一報入れろ、近々エリュードを落としに行き、貴様らの狙っている聖域を奪還するから協力しろと」


*「はっ!直ちに!」


*「下がって良い」


*「はっ!」


玉座の間に1人となり、玉座から腰を上げ、玉座の背後にあるカーテンを魔法で左右に広げると、一面ガラスで月光が玉座の間を薄く照らした。


*「遂に長年の因縁に終止符が打たれるなぁ、、クックック、うぐっ!、、まぁそう焦るでない半身よ、じきに半身を喰らえば治る事だ、ようやくこの時が来たぜぇ、クックック」


月夜に1人、玉座の間にて声高らかに笑う男の名は初代シグニカ王、ユーズベル・シグニカ。300年以上も歴史のあるシグニカ王国の王を建国当初から役300年、その長い歴史の中でも特に因縁の深いエリュードに先に一歩駒を進めたユーズベルであった。



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