第2章 世界情勢
シュゥゥゥンッ
テレポーターの光が消えると同時に、目の前にはウルミストの郊外にある廃墟の光景が広がっていた。
「よし、ファミル先生もそろそろ授業終わるだろ」
テレポーターの前で待つ事5分...
コツンコツン
聴き慣れたヒールの音の方へ見るとファミルが現れた。
「ファミル先生ー!」
「そういえば聞きたい事があるって言ってたわね」
「あ、その感じ絶対忘れてましたよね?」
「フフッ、ちょっとからかってみただけよ」
「俺はどうしたらいい?」
「さぁ?別にどっちでもいいわよ」
レイゼンの質問をあやふやに返すファミル。
「なら先に戻ってる、あんまり長居はしない様にな、後は頼んだぞカイト」
「あ!はい!お疲れ様でしたレイゼンさん!」
そう言った後レイゼンはテレポーターの中へと消えていった。
「もうっ!別にちょっとぐらいいてくれたっていいのに!」
いつもの妖艶な雰囲気ではないファミルの怒りっぷりを見て、カイトが吹き出す。
「ハハハッ、ファミル先生っていつも大人っぽくて、艶やかなイメージがあったんですけど、何故かレイゼンさんの前では可愛い女の子みたいですね、ハハッ」
「ま、まぁ、誰にでもそういう時はあるのよぉ」
恥ずかしそうに目を泳がせながら、頬を赤らめて答えるファミルを見て、恋人がいるカイトですら少しばかり心が跳ね動く。
「ま、まぁ、その聞きたい事と言うのがですね、、」
そんな可愛いファミルを見て、ちょっとときめきそうなのをごまかす様に話題を変えるカイト。
「精霊についてなんですけど」
「精霊術の事かしら?」
「多分それと関係はあるんですけど、大陸大会で戦った相手が、武器に精霊を一体化させてたんですけど、そういう事は精霊術の一種何ですか?」
「多分そうね、精霊術は本来知能を持たない下級精霊を一時的に使役するもので、他国ではエレメントって呼ばれる事もあるの」
「エレメント、、色んなとこで聞いた事はありますね」
「カイト君が精霊と一体化させる技術も多分精霊術の一種かもしれないわね、こればかりは私も自分の精霊を持った事ないから分からないから研究のしようもないの」
「なるほど、因みにその人は最上級精霊を一体化させていましたね」
「だとしたらとんでもない信頼を互いに持ってたに違いないわね、精霊術は扱う難易度によって前提に必要とされる精霊との信頼度が跳ね上がるっていう話を聞いた事があるわ、一体化に関しては多分精霊術の中でもかなり難しい部類に入ると思うわぁ」
「なるほど、、精霊との信頼かぁ、まぁそこら辺は何とも言えないけど、主に何ができるのかが気になるなぁ」
「私の知り合いに精霊使いがいるけど連絡とって教えてもらう?」
「い、いえ!大丈夫です、、今はまだもう少し剣の腕を上達させたいので、また今度魔法教室に帰ってきてからお願いします!今日はただそれが聞きたかったのと、後そう!もう一つ大事な事だ!」
「いいわよ、何でも聞きなさい」
「魔族の動きというより、、今の世界の動きをお聞きしたくて、、」
「んーー、、話してもいいけどこればかりはかなり長くなるわよ?」
「いいんですか!?俺まだ子供っすよ!?」
断られる前提で聞いた事がまさかの2つ返事で驚くカイト。
「カイト君は大丈夫よ、私が信頼している人間だし、子供って言ってもかなり大人レベルの会話も出来る子だし、偉いし、賢いし、頑張り屋さんだからね」
褒められ過ぎて、むず痒い気持ちになるカイト。
「大丈夫です、時間はたっぷりあるんで」
「そうね、それじゃあまずは魔族の今の動きから話しましょうか」
そこからファミルから世界情勢と魔物の事について全て話してもらった。
今現在魔族は東の大陸アゴンを拠点に動いている事。そして近々その魔族がヴァルトイス大陸内の国を掻き乱し、国家間の戦争を引き起こそうとしている事。
現時点ではエリュードの左に位置するシグニカ王国がシグニカの真上に位置するルマリア王国と領土関係で揉めている事。
大陸の真ん中に位置するモルバトが魔導兵器を開発し、他国に売り付けている事。
エリュードの右上に位置するゾムルス連邦内で魔剣製造に関して内部分裂が起き、その裏に魔族が関与している事。
エリュード王が近々現役退位し、長男と次男が王位継承を巡って争っている事。
そして魔物の活性化が各地で起こっていて、冒険者ギルドの間では、依頼の割り込みや、横取りの問題で、ギルド同士でも小競り合いが頻繁に起こっている事。
結果的にいうと、世界は今、魔族の出現に伴い、荒れ始めた事。それが直接魔族と関係があるかどうかはまだ分からないが、いつ戦争が起こってもおかしくなく、もし一箇所でも起これば確実に連鎖して他国でも戦争が起き長引く戦争になるという事。
「聞いてるだけでお腹が痛いですね、、」
「そうね、勿論そうならない為にも各国に協力を仰いでいるの、今現時点ではカイト君のお陰でルマリア王国との同盟は結べたし、モルバトではダハブ商業都市のソクラス一派の協力も仰ぐ事が出来たし、エリュードでは王位継承権2位であるエリュード王の次男アウラン・エリュードの王位継承を約束に、協力を得ようとしている所よ」
「そしてルマリアの右に位置する、中央大陸であるフルフニカと唯一国交が取れる国、ガルナロート国とも知り合いを通じて同盟を結んだの」
「じゃあ結構幅は効かせられますね」
「そうね、、でも後一歩踏み外している気がするのよねぇ〜」
「というと?」
「これだけじゃ他国間の戦争を止める抑止力にはならないのよ」
「なるほど、、、」
カイトは前世の知識を精一杯思い出し、数多のの案を提案した。
「大陸捜査機関のアイに協力を仰ぐ事は可能ですか?」
「アイの人達はどうも胡散臭いのよねぇ」
「何か裏がある感じの組織なんですか?」
「まぁそうね、アイが裏金で捜査内容を改竄したって噂も何個か報告に挙がってきたから、エルグランドの捜査員を何人か送ったんだけど、誰一人として情報を掴める事はできなかったの、それにそのうちの何人かは無残に殺されてしまったの、、」
「そうですかすいません、、」
「いいのよ、もう過ぎた話なんだから」
「後抑止力なんですけど、ソクラス一派に協力を仰いで、魔導兵器を開発するんです」
「どう言った魔導兵器かしら?」
「ファミル先生の魔力じゃ多分限界があると思いますので、僕が考えたイメージとしては射程範囲は大陸内の全国家で、一発で国家ごと破壊する兵器を作るんです。ユグドラの魔力とファミル先生の英知が有れば実現は十分に可能です。武力による抑止は一番効果的だと思います。勿論兵器を作製する過程で、少人数且つ、外部には絶対に漏れない様に工夫する必要もあります」
「武力による抑止ね、そういうのは嫌いじゃないけど、その兵器を使えば関係のない人を巻き込む可能性も、生態系を壊すかもしれない可能性も出て来るわ、、」
「もしそれが嫌でしたら、ルマリア、ガルナロート、エルグランドで同盟国を一時的に宣言して、他国の戦争行為をこの3国、エリュードの次男を説得できれば4国で連合組織を作って、戦争している国の間に4国が介入すれば、下手に戦争なんかできませんし、存在自体が抑止力になります」
「それもそれで実用的ね、、よしそれじゃあこの2つを纏めてやっちゃおうか!」
「、、、え?」
ファミルからまさかの返事が来て、困惑するカイト。
「あの、何方かでも実現できれば事足りると思いますよ?」
「2つやる事によって更に誰も逆らえなくなる様にすればいいんじゃない?」
「それはそれでヤバいですって、力を持ち過ぎると、誰しもが恐れます。そこを敵が狙って内側から崩してくる可能性があります。それに戦争が起きてない段階でそれをしてしまうと、敵国側で逆に同盟を組んで、戦争を止めるのが目的なのに、更に大きい戦争を起こす引き金になりかねません」
「そ、そう?」
ムン婆が言っていたファミルはまだ未熟と言う言葉が少しばかり理解できたカイト。間違いなくファミルは脳筋だ。
「なので力を持つんでしたら程々にですよ、こういうのはバランス、均衡が大事です。とまぁそれくらいですかね、話したかった事って言うのは」
「あらそう?先生はまだカイト君とお話ししときたいけどねぇ」
「とか言って本当は女王のお仕事がしたくないだけなんじゃないですかぁ?」
分かりやすいくらいに目が泳ぐファミル。
「ま、まぁ、時間も時間だしそろそろカイト君も帰らないといけない時間よね!よし今日はもうお終いよぉ、それじゃあまた今度時間があったらお喋りしましょ」
「ハハッ、そう言う事にしときますよ、それじゃあお疲れ様でした先生、それとこれからもシエルの事頼みました、、ってちょっと俺が頼むのは変だな、、」
ファミルがテレポーターへと消えていったのを見送り、家まで重りを付けて、アッシュと共にランニングで帰るカイト。
家の前に着くと、慌てた様子のカミラとルドガーが話をしていた。
「おーい!どうしたの2人ともー!」
「おぉカイト!なんで今日に限って帰りが遅いんっ、、そんな事言っている場合じゃない!この町の森で魔物が突如変異して湧き出したんだ!今冒険者ギルドで緊急依頼を出してきたんだが、もうそこまで魔物達がっ!」
そう話しているルドガーの背後にいたカミラの背後から、赤い目を光らせた灰色のゴブリンが襲い掛かった。
『寄手』
ズィン!
『刀旋脚』
スパァン
カイトがカミラの服を掴み引き寄せた後、アッシュが地面を蹴り、ゴブリンの目に前で止まった後、回し蹴りでゴブリンの首を落とす。
「取り敢えず状況はわかった!弟達は!?」
「まだ家の中にいるわ!」
「俺とアッシュで家の周りの魔物は片付けておく!カイトは母さんを連れて家の中で2人を見つけて、安全な所に避難させろ!」
「わかった!」
「あぁ!」
カイトとアッシュが返事し、家の中に入るカイトとカミラ。
「エリーゼ!アルト!」
「にーに!!」
「ママァー!!」
エリーゼとアルトがトイレの中から叫びながら走り込んできた。
「おいおい鍋の蓋なんか持ってどうしたんだ!?」
「エリーがアルちゃん守ろうとしたけどやっぱり怖かったよぉ〜」
「大丈夫よエリー、ママとにーにが来たからもう安心していいわよ」
エリーゼから鍋の蓋を取り上げた後、3人をスレイムでも比較的町の中心寄に位置するルフトの家に連れて行く。
「ぶふぉ!びっくりした!!」
「エリーねぇだ!」
「エリーねぇ!」
「どうしたのあんた達急に!?」
「ごめんシュリカ、さっき家の付近の森で魔物が変異と活性化し始めて、今大変なの!」
「シュリカさん!危ない目には遭わせないのでこいつ借りていきます!」
「いいわよ、やわな育て方してないから盾にでもなんでもしてって!」
「ちょっ!母さん親として」シュン
「それはないん、、じゃ、ないかな?」
話終わる前にカイトにテレポートでカイトの家の前に連れて行かれるルフト。
「取り敢えずみんなシュリカさん家に避難させた!それと助っ人1人連れてきた」
「おぉルフトか!心強いな!結界が多分また破られているから、それを張りなおしに行く!付いてくるんだお前達」
それぞれ武器を携え、ルドガーを先頭に森の中へと入って行くカイト達。
「おっちゃん!右前方に10体近くの魔力反応!」
「わかった!」
ルフトが感知魔法で魔物の位置を正確にルドガーに伝える。
「この速度だと後7秒で出会うよ!」
そして7秒後、、草木をかき分けると、木々が倒れており、下敷きになった人間がこの前エリーゼを襲ったのと色が違う2つ頭がある灰色の狼の様な魔物に食べられていて、酷い姿になっており、悪臭が漂っていた。
「うぅっ!」
初めてこの様な臭いを嗅いだルフトが、逆流しそうになった晩飯を、ギリギリ抑える。
「大丈夫か?」
一応酔い止めの魔法をルフトにかける。
「こっちに気がつく前に仕留める、俺の合図で一斉に仕留めろ、、せーのっ!」
『天烈拳』
『風斬破』
『五月雨烈風』
『撫雷』
一体も余す事なく、見事全ての魔物を仕留めたカイト達。
「そこら中に魔物の死体が転がってたし、色々抵抗したんだろうな、、」
「ん?何か右手に、、」
ルフトが握り拳になっていた右手の不自然な形に気が付き、拳を開けると、中には『ジョルド×レイミ 1533年』と彫られていた銀の鉱石でできたブレスレットが落ちた。
「これって?」
ルフトが手に取りルドガーに見せると、ルドガーが悲しい表情で、ルフトが手にしたものは結婚する時に作るブレスレットで、書かれている年号は結婚した年だとルフトに説明した。
「そっか、、大事な物をすいません、しっかり奥さんに届けます」
先を急ぐようルドガーが提案し、すぐさま移動する一同。
「どうだルフト?」
「うん、、多分魔物が多い所に結界を結び直す所があるんだよね?」
「あぁ、一応方角的には左斜め辺りだな」
「それじゃあ多分あそこだね!魔力反応が1番多い!」
残り50メートルあたりで、瘴気が見え始めた。
「くそ、これじゃあ近づく事すら出来ねぇ、、」
「任せて」
『ホーリーガスト』
光の突風で目の前の瘴気を全て消したカイト。すると瘴気の中から、これまた同じく灰色の魔物数十体が地面に半分埋れて黒紫の光を放つ鉱石を守るように配置されていた。
「あれは魔瘴石!?なんでこんな所に、、」
『今の突風でこっちに気付きやがった!くるぞ!』
何種類もの魔物が一斉にカイト達に向かって走り出してくる。
「俺が道を切り開くから、お前達は隙を狙ってあの鉱石を破壊しろ!いいか?あの魔石は簡単に説明すると魔物を召喚する石だ、あれを破壊しない限り永遠2魔物が湧いてくる、いいな?」
「わかった!」
「うん!」
『三面・喜』
アッシュが喜色の面を装着し、魔物の大群の中へとジャンプで入っていき、楽しそうに暴れ始める。
『ハッハハ〜!!どんどん来いやぁ!!』
「コホンッ、、やっぱり俺も隙を見てあの魔石を破壊しよう、、」
アッシュに仕事を取られたルドガーが隙を見て魔石を狙う。
『フレイムランス』
槍の形をした炎が、猛スピードで魔石に飛んでいくが、当たる寸前で、魔物達が身代わりになり、魔石には届かなかった。
「やっぱり魔物達を先に殲滅した方が、、」
と考えるカイトだったが、アッシュが倒していけばいくほど、その分魔物が増えているのが見えたカイト。
「一回あの魔石がどれだけのペースで魔物を作りだすのか見てみようか」
ルフトがカイト達に提案し、魔力を集中させる。
『ニルヴァーナ』
夜空から暴風を纏って振り降りてくる槍が魔物の大軍に直撃し、数十体が肉片と化した。
直後魔石が光だし、死んだ数十体を再び召喚した。
「全員復活かぁ、、」
「でも召喚するまでにちょっとだけ時間があった、そこを狙おう」
今度はカイトがルフトに提案し、ルフトのニルヴァーナに合わせて、カイトが魔石を狙う作戦に出る。
そんな2人を傍に、ルドガーが昔のヴェスターと自分を重ねて、込み上げてくるものを必死に抑える。
(ヴェスター、、お前の息子も俺の息子も立派に育ったぞ、俺らみたいにって言ったら立派かどうかはしらねぇけど、昔の俺らにそっくりだ)
「父さん?今の作戦で大丈夫だと思う?」
「ん!?あぁ!だがさっきのルフトの魔法にどうやって突っ込むんだ?下手したらカイトまで肉片になるだろ?」
「そこはテレポートで近づくさ」
「そ、そうか、それだったらいいな」
「絶対他の事考えてただろ父さん」
「後でカミラおばさんにチクっちゃおうかなー、1番しっかりしないといけないおじさんがボーッとしてたって」
「ま、待て!俺はしっかりしているぞー!カイトが肉片になったら困るって心配しただけだ!うん!俺は悪くない!」
『お喋りは終わったか!?俺もタイミング見計らって、突撃するぞ!』
『ニルヴァーナ』
「2秒後に突撃だ!」
カイトがルドガーの肩を持ち、2秒後に備える。
ドォォォォン!!
「今だ!」
ルフトの合図にカイトがテレポートで魔石の目の前に瞬間移動し、その前にアッシュは闘気でニルヴァーナを防ぎ、魔石の目の前まで近付いた後、2つの拳を縦に構える。
『黒闘閃』
『闘砲』
『天斬』
カイトが真ん中から魔石を攻撃し、右からアッシュ、左からルドガーの攻撃が魔石に直撃する。
ピキッ!
「クソッ!これでも耐えるのか!?」
魔石に少しだけ亀裂が入るも、破壊は出来ていない。
「もう一踏ん張りだお前ら!次で破壊するぞ!」
『っしゃ!』
もう一度技を構え直すが、魔物が既に沸き始め、3人を囲んだ。
『絶風の構え』
そこへ二本の風槍を携えたルフトが、背後から魔物を蹴散らしながら、カイト達に近づく。
「背中は俺に任せてみんなは魔石を!」
『刀旋脚』
『螺旋剣』
『兜割』
パキィンッ!
各々がもう一度魔石に攻撃すると、今度こそしっかりと粉砕された。
「後はこいつらを片付けるだけだ!もう一踏ん張りだぞ!」
『へっ!余裕だぜ!』
パシッ
ズルゥン!!
『ぬおっ!』
突如何者かがアッシュの両足に蔓を伸ばし、アッシュを草むらの中へと引きずり込んだ。
「アッシュ!」
カイトが引きずられるアッシュを助けようと飛び込んだが、間に合わなかった。
『俺様の事は心配すんな!すぐにぶっ殺して戻ってくる!』
「カイト!気を付けろ!」
飛び込んだカイトの背中を狙い、魔物達が襲い掛かる。
バチンッ!
「近付くとこんがり焼き殺してやるぞ?」
雷を自身に落とし、襲いかかってきた魔物を焼き焦がすカイト。
『木枯烈風』
X字の風の刃がカイトの背後から飛んでいき、正面の魔物を蹴散らす。
「襲われてたけど怪我はないか?」
「あぁ、大丈夫だ!」
『皕輪』
闘気の拳による連撃で、魔物を次々と蹴散らし、魔物の数も半分以下になる。
『大炎波』
ブォンッ!!
ルドガーはカイト達の戦いっぷりを見て、負けられないと思い、残りの魔物の中心へジャンプで入り込み、一気に残りの魔物を炎の回転斬りで生じた熱波で焼き尽くした。
「あっつ〜!流石おじさん!」
「ふぅ、、まだまだ若い奴らには負けんぞ?」
ザザッ
背後の草むらから音が聞こえ、構えるルフト。
「大丈夫だよルフト」
『っち!服が汚れちまったじゃねーかよ、、』
そう言って現れたのは緑の液体を身体中に点々と付着させたアッシュだった。
「無事だったみたいだな、よしこれで負傷者はなし!」
全員の無事を確認した後、ルドガーが砕けた魔石をどかし、下敷きになっていた別の鉱石を取り出した。
「それが結界を張り直す為の道具?」
「あぁそうだ、これは結界石と言って、魔力を一定数流し込むと、この石を中心に結界が張られるんだ」
「へぇ〜、そんな石があるんだな世の中には」
「凄いな〜」
カイトとルフトが感心する。
「これは元々魔力を貯めてくれるだけの魔鉱石で、刻印やらなんやら色々やって結界石に加工されたものだ、天然ではこんな物取れないぞ」
「なるほど、加工石なのか」
そうこう話している間に結界の張り直しは終わり、一同は急いでシュリカの家へと戻る。
ガチャ
「ふぅ、、帰ったぞー!」
「怪我はない!?カイト!?」
カミラが返り血を浴びたカイトを心配し駆け寄る。
「だ、大丈夫だって、、怒った時の母さんと比べたら、あんな魔物屁でもないって」
頬を赤らめて、恥ずかしそうに俯くカミラ。
「そ、そう、、無事ならいいわ、お帰りルドガー」
「それよりこれからどうすんの?」
シュリカが顔に付着したルフトの返り血を吹きながら、ルドガーに問いかける。
「まぁ普通に帰るよ、もう結界も張り直したし魔物達が街に入ってくる事は多分ないだろう、その後に冒険者ギルドに行って、依頼の達成を報告してくる」
「その事なんだけど、さっきカミラと話してて、流石に今日は此処で泊まって行くのはどうだい?子供達も寝たし、もう時間も時間だ」
「その方がいいと思うよ父さん、流石に俺もヘトヘトだよ、学校で迷宮のボスと戦って、筋トレしながら帰ってきたら、今度は魔物退治で、、」
リビングのソファーにダイブするカイト。
「、、はぁ、全く、それじゃあ今晩だけ迷惑を掛けさせてもらうようシュリカ」
「あたしらの仲なんだしそんな気にすんなって」
バシンッ
笑顔でルドガーの肩を強めに叩き、カイト一家を引き入れた後、ギルドへ報告しに行くルドガー。
「あ、ルドガーさん!結界の様子はどうでしたか!?」
冒険者ギルドの建物に入るなり、受付の女性が慌てた様子でルドガーに駆け寄る。
「一応結界は張り直したから無事だと思う、ほれ!達成証明だ」
ルドガーが砕けた魔石の一部を取り出し、受付の女性に放り投げる。
「これは魔石?、、なんでこんな物が?」
「さぁな、取り敢えずマスターはいるか?これについて話したい事がある」
「分かりました、少しお待ち下さい」
数分後、ルドガーが二階にあるギルド長室に通される。
「久しぶりだなルドガー、何の様だ?」
装飾もないただの狭い正方形の部屋の中にある机の椅子に座っている、見た目30後半のルドガーよりも、少し老いたオールバックで片目に眼帯をつけた男、国営ギルド『黒百合の蕾』のギルド長であるゾードは部屋に入るルドガーに話しかけた。
「いや〜ついさっきスレイムの郊外にある森で魔物が結界を破って俺の家まで襲って来たんだわ〜」
「、、、、」
「そこで倅を連れてその森を調査したらまぁ何と、さっき受付のお嬢ちゃんがあんたに見せた魔石があったんだよ!」
「落ち着いて喋れルドガー、言いたい事は分かっている」
「なら話は早いなぁじじぃ?この魔石は俺がこの前迷宮で見つけた奴だろ?それを俺はお前らのギルドに達成証明として持っていったんだ。なのにそれが森の奥で見つかったんだ、それに森で木の下敷きになった男がいたんだが、あいつはあんたの側近の内の1人だった男だよな?」
ルドガーが静かに怒りを燃やしながら、ギルド長の目の前まで歩み寄り、胸ぐらを掴んだ。
「家族が危険に晒されたんだ?どういう思惑で魔物を放ったのか説明しやがれや?」
「だから落ち着けと言っている!あいつは敵国のスパイだった男だ!私のいない間に魔石を盗み出し、それを結界を破壊して森に設置したんだろう、、私にも何が起こっているのか分からないんだ!」
「チッ!魔石ぐらいちゃんと管理しやがれってんだ、それで?敵国は何を狙ってやがるんだ?」
「それを今探ってるんだ、私の元側近の男が狙ったのは多分魔石ではない、あれは囮で、他に何が保管庫から消えているのか今調べさせておる」
ガチャ
突如扉が開き、若い男性が入ってきた。
「お忙しいところ失礼致します、先程依頼された保管庫の確認ですが、魔石以外に、宝物一点、キルドラの毒牙一点、パルシア海域の地図一点、奴隷紋書一点、の計5点が盗まれていました。盗んだ者はただいまアイに依頼し、捜索中との事です」
「はぁ、、わかった、下がっていい」
血の気の引いた顔で、椅子にもたれかかった後、机の上で指を組むギルドマスター。
バタン
「何がまずい物でもあったか?」
「2つある、奴隷紋書とパルシア海域の地図だ、奴隷紋書が有れば、血をその紋書に垂らすだけで、相手を障害隷属させれる禁忌の書。まさか、、、」
「それを誰かが悪用しようって画作してるんだな、見当はついてんのか?」
「これに関してはお前には関係の無いことだ、魔石に関しては本当にすまないと思っている」
そう言って頭を下げた後、ルドガーは部屋を出された。
(、、奴隷紋書に海域の地図、、地図については何も聞けなかったが、大事な何かだろうな、これは調べる必要があるな、何だが胸騒ぎがしてならねぇ)
その日は一旦眠りにつき、次の日からルドガーは家族に内緒で仕事を一時休止し、家族を危険に晒した者達が何者かを独自のルートを使い裏で調べ始めた。




