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第2章 運命の子



アルベルトと久しぶりの再会を果たし、カイト、セニカ、ジュラン、アルベルトの4人でご飯を共に食べる事になった。


「てか急に休学してどこほっつき歩いてたんだ?」


「この数ヶ月、祖父の元で剣術を教わっていた」


「アルベルトの祖父って凄い人なの?」


「あぁ、お前達には隠しておく必要もないが、うちの祖父は元々剣鬼と呼ばれていた人で、クレイン家を剣一つで成り上がらせた偉大な人なんだ」


「その人の元で修行したって事はかなり強くなっている筈だな!」


「いや、、」


アルベルトの表情が曇る。


「そんな事なかったのか?数ヶ月もそんな人の元で学んで?」


ジュランがアルベルトの表情を読み取り質問をする。


「多少は強くなれたとは思うが、まだまだだ、ある技を教えて貰ったのだが、その技の基礎すらも満たす事は出来なかった」


「プフッ、、じゃあ俺達とはかなり差ができてしまったな、今ならニューロにも負けんじゃねーのか?プフッ」


「そうやってすぐ冷やかしちゃダメカイト」


いつものようにセニカのお叱りを受け、少ししょぼくれるカイト。


「そういえば今は確か迷宮に潜る授業を進んでいるようだな」


「そうそう、カイトとジュランの3人のグループで一緒に潜ってるの!」


「よかったらお前も入れよ、実力的にはそこまで大差ないだろ?わかるぜ?俺にはな」


「検討してみる、先ほど復学の手続きを終えた所だ、明日には授業が受けられる」


そうこう話している内に、全員が昼食を完食し、次の授業の準備を始める。


「うっし、ご馳走さん!そんじゃあ午後の修行に出かけて来るわ」


「おつかれ〜」

「また明日ー」

「俺もそろそろ行かないとな」


ジュランが両手を合わせ、昼食を完食した後、食堂から出ていき、そのタイミングでアルベルトも食堂を出て行った。


「それじゃあわたしも授業に行って来るね、あんまり迷宮内で無茶しちゃダメだよ?」


「おう、セニカも頑張れよ」


「うん!」


食堂の外でセニカと別れ、カイトは迷宮内へと向かっていく。


そしてこの日は10層を目標に潜ったものの、8層目から魔法を操るメイジゴブリンと盾ゴブリンなどの連携でかなり手こずり、9層目でリタイヤしたカイト。


迷宮から出ると夕日が沈んでいた。


「はぁ、、魔力の調整ミスったなー」


((まぁ、あいつらが5層目から連携を取り出したってのもあるな))


「まぁな、結構いい連携取りやがるから、何度か力ずくで突破したのがいけないな、もっとこうスマートに、最小限の動きでなんとかやっていかないとな」


((今後の課題を見つけられただけでも大きいんじゃね?))


「そうだな!うっし!家まで負荷トレーニングするかー」


((お?俺もやるぜ!))


「それじゃあどっちが早く家に着けるか勝負だ」


『負けた方は食後のデザートな』


「いいぜ!」


互いに土魔法で生成した岩石を担ぎ、家まで競争する。



場面は変わり、カイトの家の近くにある秘密の特訓場の森の中。


.....


「....うぅ」


目を覚ますとそこは薄暗い木々で覆われた場所、湿った木々の落葉を頬に引きつけながら、体を起こす。


ズキンッ


脳内に突如電撃が走り、痛みが生じる。


*「なっ、、、どこ、、ここは?」


肘の辺りまである長い黒髪についた枯れ葉を落とし、全身を払って立ち上がる女性。


一度落ち着いて記憶を整理する。


自身の名前と経歴、所属ギルド、そして今ここで本当は何をしていたか、何故ここで目を覚したのか。目を覚してから何故か落ち着かない違和感と戦いながら冷静に思い返す。


*「っ!」


突如再び脳内に電撃が走り女性は自身の過去の記憶がフラッシュバックする。


*「わたしがここに来たって事は、上の世界、私達の世界、ルグドラが破滅したって事、、」


*「ヴリエが私にかけた時空間魔法の座標と時間が正しければ、ここはアグシュカで、時間はアグシュカ暦1534年、後6年って事ね」


状況を整理した後、普段のジブンnの落ち着きを取り戻し、再び地面に膝から崩れ落ち、その場で涙を流す女性。


「みんな、、みんないなくなっちゃったのね、ヴリエ、ロイス、エマ、ラド、、、フ、、、」


どうしても最後の人物を思い出せない女性、思い出そうとするも何故か記憶の中でモヤの様な物がかかっており、その人物に関連する全ての事がうまく思い出せない。


そのまま泣いていると突如、背後から地鳴りと共に、叫び声が聞こえ始める。


「ぬがかあああああ!!!」

『ぬぉおおおおおお!!!』


肩に岩石を担いだ男の子と、その隣で不思議な魔力を持った精霊の様な生き物がこちらに向かって走って来る。


慌てて涙を拭い、警戒する。


「おねぇえええさぁあああん!!!どいてくださぁあああい!!!」

『邪魔だぁあああああ!!』


*「えっ?」


2人は座り込んでいる自身の真上をジャンプで飛んでいく。


ズルンッ!

ズドォン!!


『へっへへー!!おっさき〜!!』


しっかりと着地精霊と違い、着地した場所が悪かったのか、着地と同時に滑り、ずっこける少年。


「いってて、、クソ!なんでこんなに滑るんだよ!」


*「だ、大丈夫僕?」


「ん?僕?あぁ!、、っていうかなんでこんな時間とこんな所に人が?」


*「ん?」


見るからに男の子だったので、僕と呼んだが、何故かおかしな空気になる。


「お姉さん、ここ魔物が出没するので、早めに家に帰った方がいいですよ」


男の子が話を逸らすように会話をするが、転んだ時にすりむいたのか、肘の辺りに血が滲んでいた。


*「私の心配より自分の心配をした方がいいんじゃない?」


肘をすりむいている男の子に治療魔法を施そうとした途端、男の子は自分が差し出した手の先の怪我を見た後、手をかざし、自分で治癒魔法を施した。


*「え!?君魔法が使えるの!?」


「え?一応、、まぁ、学園で教えてもらっているので」


自身の記憶をもう一度振り返るも、学び舎で自身が魔法を教えてもらうなどそんな大層な授業は自分の学園では無かった。というよりこの年で魔法が使えるのは間違いなく神童扱いされていた。


もしかすると今目の前に現れたこの男の子がその神童と思い立ったが吉。この子を計画の一部に入れようと考える。


*「君、年はいくつ?」


「今年で14です」


*「その魔法以外に後何の魔法が使えるの?」


「全属性の中級と光と無属性魔法の上級、、」


*「凄い!!間違いなく神童!あのさお姉さんのお話聞いて行かないかな!?」


「すいません、今はちょっと競争しているので、また今度お会いした時に、、」


*「今じゃないとダメ!お願い聞いて!星の命がかかっているの!」


男の子は見るからに胡散臭そうな顔で女性の顔を見始めた。


「すいません、本当に急いでいるのでまた今度!」


『テレポート』


咄嗟に男の子の腕を捕まえると、次の瞬間知らない場所に飛ばされていた。


*「テレポートも使えるの!?凄い!」


「あのねお姉さん、俺急いでんの、、流石にしつこすぎる女の人はモテないですよ」


*「なっ!、、まぁいいわ、今のレディーに対する失礼な発言はその才能に免じて許してあげる」


男の子の発言にプライベートな内容があったため少し額に筋が広がったが、何とか喉まで上がってきた怒りを飲み込み、もう一度スカウトを続ける。


「それよりお姉さん、なんでそんなボロボロなの?」


*「ん?、、ほんとだね、多分ルグドラからアグシュカに時間を掛けて飛んで、あそこの森で寝転んでたからでしょ?」


男の子が今度は自分を胡散臭そうに見る表情から、少し引いた感じでこちらを見て来た。


「よ、よかったら知り合いのお医者さん紹介しますよ?」


*「わ、悪いけど脳には何の異常もないし、そんな目で私を見るのやめなさい、、」


男の子が何も言わずその場から立ち去ろうとする。


*「ねぇっ!ちょっと話ぐらい聞いていきなさいよ!本当にこの世界の事何も知らないんだってば!」


「、、、、」


*「お金もないし、、、グスッ、、誰も頼れる人いないし、、グスッ、、うへぇーーん!!」


大人気なくその場で座り込み、泣きじゃくる。


すると男の子はその場で止まり、こちらを振り向く。


「、、、名前は?」


*「グスッ、、キリエ、、グスッ」


「本当の一文無しで困ってるなら一晩だけなら家に泊めてあげますけど来ます?」


「うへぇーーーん!ありがとう僕ー!」


「ちょっ!離れてください!」


男の子に抱きつきながら、感謝するキリエ。



(はぁ、、変な人に絡まれてしまったー)


アッシュとの競争中、普段なら誰もいない森の中にボロボロになりながら、涙を拭いていた女性を見かけ、その後飛び越えようとジャンプしたものの、濡れた枯れ葉に足を滑らせ、胡散臭い話を聞かされた後、今度は大泣きし始めて、一晩だけ自分の家に泊めてあげる事にしたカイト。


「いいですか?家に入ったら大人しくして下さいね、特に妹と弟にはさっき見たいな胡散臭い話はしない事、いいですか?」


「別に胡散臭くないもん、本当の話だもん」


小声でおちょぼ口になりながら文句を垂れるキリエ。


「そうですか、じゃあ今晩はうちではなくどこか他の方の家で」

「うぅっ、、」


またも泣き出しそうな顔をしたのでため息をつきながら、家の扉を開けるカイト。


「にーにおかえりー!、、後ろの人誰ー?」


「ただいまエリー、この人は道で拾った可哀想な人だよ?」


「ペットー?」


「そうだよ」


優しい口調で答えるカイトにキリエが流石にツッコむ。


「あらお客さん?こんばんわ」


「こ、こんばんわ、今日一日だけお世話になります、この御恩は一生忘れません」


「あっはは、そんなに畏まらなくてもいいのよ、それよりお洋服が傷んでるね、お着替え用意しておくから、シャワーで体を流して来なさい」


「す、すいません、、では失礼します」


キリエは申し訳なさそうに、タオルを渡され、シャワー室へと入っていった。


「随分とボロボロだったね、あの子」


「なんか森の中で倒れてたからさ、魔物も出るし、見たところ一文無しだし、年上の癖に泣きついてくるからさ」


「ウフフ、それで放っておけなくなったのね、嬉しいわ」


「それより父さんは帰ってきてないの?今日仕事の手伝いしに行こかなって思ってたけど、片付いたのかな?」


「ダメよカイト!父さんのお手伝いは危ないからダメ!」


「いいじゃん別にー、だって俺もう学校で迷宮に潜って今日10層目の強い魔物倒したんだよ?」


「それでもダメなものはダメなの!母さんの心配を増やさないでちょうだい、良い?」


「んぅーー、、、はぁ、分かったよ」

ガチャ


『うーっしゃ!俺の勝ちだな、、って何でいんだよオメェ!』


「あら、アッシュちゃんおかえりー」


「よっ!」


『よっ!じゃねーよ!何でお前が俺より先に着いてんだよ?さてはお前ズルしたな?とうとう勝てなくなったからって卑怯な手使い始めやがったなこの野郎!』


「待て待て、事情があったんだよ!ほら!森で見かけて女いただろ?」


今にも殴りかかってきそうなアッシュを抑え、先程までの事情を説明するカイト。


『へっ!聞くからに胡散臭い奴だなそりゃあ』


「だろ?俺もしょうがなかったんだよ」


『だが勝負は勝負だ!今回は俺様の勝ち、カミラ!今日のデザートは何だ?』


「そうだ!今日はシュリカが具合悪くてね、私がケーキ焼いたの!ご飯の後に出すから楽しみにしててね!」


その言葉を聞いた途端立場が瞬時に逆転し、机の下で小さくカイトがガッツポーズをする。


『なっ!お前、それは早く、、ゴホン、次からはちゃんと事前報告しとけよな、それよりカイト!お前にも事情があったのはよぉーくわかった!仕方がねぇから今回は無効試合としよう!』


シュイン


カイトの中に戻るアッシュ。


((だからお前も食えって、な?一人であの量食っちまったら間違いなく死ぬぞ?))


((いーや!潔く負けを認める時は認めなきゃいけねぇ!助けてやりたい気持ちはあるが、それじゃあ自分に甘える事になる、それだけはしたくねぇ))


((ちくしょーが!!))


そうこう会話している内に晩ご飯が完成し、カイトがエリーゼの部屋に向かい、アルトとエリーゼを呼びに向かう。


「おーいアルトー、エリーゼ、ご飯だぞー」


「「はーい」」


勢いよく部屋から飛び出し、リビングに向かう2人。


ご飯を食べ始め少しするとキリエが風呂から上がった。


「いやー、申し訳ないです奥様、こんな可愛らしいワンピースまで用意していただいて」


頬を紅潮させながら、申し訳なさそうにカミラに礼を言うキリエ。


「ご飯が出来たしカイトの横に座って一緒に食べましょ」


グゥゥゥゥ


「すいません、頂きます、、」


パクッ


一口食べた瞬間、キリエの目から涙が溢れ出した。


「あれ??、、おかしい、、何でだろう、グスッ」


「おねーちゃん泣いてるー、どこか痛いのー?」

「いたいのー?」


「ううん、、ちょっとね、カミラさんでしたっけ、本当にありがとうございます!こんな美味しくて、優しくて、そして温かいご飯食べたの母の手料理以来です、、」


(母さんの料理普通に美味しいのに何でデザートとか作るのはあんなに下手なんだろうな)


泣いているキリエの横で、首を傾げるカイト。


「どう言う事情があったのか聞かせて貰える?」


「はい、少し長くなるけど大丈夫ですか?」


「うん」


「そうですね何処から話したら良いんでしょうかね、まずは自己紹介からですね、私はクロムバート国第一王女、キリエ・クロムバートです」


「王女様だったの!?あらやだ私ったらタメ口でお話しなんかしちゃって、、」


キリエの口から聞いた正体に、慌て始めるカミラ。


「そんなに慌てなくていいです!第一王女と言っても国と身分を捨てた身なので、普通の町娘と変わりはありませんので、お邪魔した時と同じ態度で大丈夫です!」


「だいいちおうじょ?」


エリーゼが聞いたことのない単語に首を傾げ、カイトがわかりやすく教える。


「お姫様だよ、大きなお城に住んでいるキラキラした人」


((そんなんで伝わんのかよ、、))


((大体でいいんだよ))


「お姫様ー!!エリーゼもお姫様がいい!」


「あぁ、そう、、それよりクロムバートって聞き覚えのない国ねー、中央大陸のフルフニカは国が1つだけだし、アゴン大陸かなー?」


「あまり信じて貰えないかと思いますが、その国はもう存在しません」


「て事は侵略されて、無くなったって事?」


「それも違います、私は上の世界、ルグドラから転移してきた者です」


キリエの放った一言に驚くカミラ。


「て、転移!?それってつまり上の世界からこちらに!?」


「はい」


「アルトとエリーは部屋で遊んでこい、後でにーにも遊びに行くから」


「わかったー!いこー!アルちゃん」

「いこー!ねーね!」


アルトとエリーを部屋に戻し、カミラとキリエの話を聞くカイト。


「でも、上の世界はかなり昔に無くなった筈よ?何で今の時代に?」


「ちょっと待って母さん、この人の話信じるの?」


目の前で行なわれている胡散臭い話を鵜呑みにしていくカミラに、とうとうカイトが痺れを切らす。


「だって家に来る前はボロボロで森の中に居たんでしょ?それにお金がなくて困ってるんでしょ?普通に生きていればお金が無いことなんてないし、森で寝転んでいたのも不自然だし」


「それをこの人が仕組んだって可能性は?申し訳ないけど、家の中にまで連れてきた以上、家族に危害は絶対に加えさせないし、何か危ない事を企んでるんだったら、、」


言葉の最後でカミラがカイトを厳しい眼差しで見つめる。


「カイト?家族を守ってくれるのは嬉しいし、貴方の言いたい事は何一つ間違って居ないけど、いくら素性が怪しくても貴方が連れてきた客人でしょ?失礼な事は言っちゃダメでしょ?」


「、、、だって俺はただ」


シュインッ

『まぁまぁ落ち着け2人とも、互いに言いたい事は分かるが、ここは俺様に任せろ』


「アッシュちゃん、、」


アッシュが雰囲気が悪くなっていくのを感じ取り、慌ててカイトの中から現れる。


『キリエって言ったか?あんたの言ってる転移が本当の事だったら何個か質問させてもらう』


「えぇ、、いいわよ」


『まずはそうだな、、俺が知っている限りだと、あの世界には亜人がいたよな』


「うん」


『亜人の奴らが大事に守っていた、お宝といえば?』


「不死の霊薬だろ?そんなもん教科書にも載ってるし、文献を漁れば、、」


カイトが歴史の授業で習った答えを呆れながらアッシュに答えるが、アッシュは何も返事する事なく、キリエを見つめている。


「正確には不死の霊薬でも正しいけど、その霊薬を作っている存在、1年に一滴のみ滴るその形から女神の乳房とも呼ばれる、秘境でしょ?名前は最後の最後まで亜人達が口にしなかった為、未だに亜人達の中で何で呼ばれてたか知らないけど」


『、、結構知ってやがるな、むしろ俺より知らない情報まで知ってやがる、、だがまだ完全に信用にはたらねぇ』


「いくらでも質問して、私が知っている範囲なら全て答える」


『バルキア王国陥落は誰によって引き起こされた?』


「ルグドラ暦1774年の話でしょ?聖王を王とした白の王国バートピア聖王国が、黒の国であるバルキア王国との休戦協定を突如破棄して、究極魔導兵器アンセムによって陥落させられた話で、当時のバートピア聖王は死後に上級階層内で明らかになった虚言癖で、神からバルキアが休戦を突如破棄すると神託を受けたと虚言をし、ムーストピア聖王の嘘によって引き起こされた事よ」


「ひどい国ね、、」


『そのバートピア聖王国は後に、虚言で一国を滅ぼした責任を問われ、秘密裏に世襲制と王族の排除を他国に追及されて、何て国に改名された?』


「、、表向きには世界統一を目指す第一歩としてクロムバート王国という名前に、、」


キリエが答えた瞬間、空気がピリつく。


『俺は直接お前らの世界には干渉は出来なかったが、見る事は出来ていた、バルキア王国は慈愛に満ち溢れていて、他国からの信頼も厚い国だった、そんな平和の象徴の様な国をお前らは消したんだ、、』


どこか悔しそうな表情で、拳を握るアッシュ。


「当時のムーストピア聖王が起こした悲劇を私たちクロムバートが一生を掛けて償い続けると誓い、バルキアが平和の象徴として掲げた黒の色を私達の国名に入れたけど、やっぱり過去に犯した罪は一生掛かっても、償いきれない、だから私は別の方法で償う事を決めたの、バルキア王国が成し遂げようとした世界平和を再び、英雄アハトの様に」


『カイト、こいつが話している事に一切の偽りはねぇ、ムーストピア聖王が行った非道はルグドラが崩壊されるまで、外には漏れなかった出来事だ、それを知り得る人間は国内の王族もしくは、貴族連中だけだ』


「本当にいいのか?」


『あぁ、だから言わなきゃいけねぇ事あんだろ?』


「、、、キリエさん、、申し訳ありませんでした」


カイトがキリエに頭を下げて謝罪する。


「いいのいいの!頭を下げないで!誰も悪い事はないんだからね!」


「そう言って頂けると助かります、、、」


「それじゃあ話を戻しましょ?」


カミラが暖かい紅茶を用意し、再びキリエの目的の話に戻る。


「何故今の時代に私が転移した話ですよね、、それはこの先の未来に起きる惨劇を止める為です」


「惨劇?何か起こるの?」


「はい、胡散臭い話に聞こえるかと思いますけど、このままではアグシュカはルグドラと同じ事態に遭遇します」


『ルグドラと同じ事態って事は、アグシュカも消滅するのか?』


「何もしなければそうなります、だけどそれを止めるために私が出来るだけの事をします!」


「具体的に何が起きるか教えて頂けますか?」


「それをいうにはまず、聞いておかなければいけません」


『今度はこっちが質問される番か』


「この世界に転生者は来ましたでしょうか?」


『転生者?あんな奴が来た時点で、この世界は終わりだろ』


「多分ですけど、はい」


「え?カイト君はその転生者に会ったことが!?」


『なっ!本当か!?お前!?』


「そんなにやばい事なのか?とりあえず、それらしき人物には出会った事があります、今日キリエさんと同じあの森で、顔は認識阻害で隠されていましたし、感じた事のない異様な雰囲気を持っていて、後ヘルトラの魔物が一瞬で殺されたので、間違い無いかと、、自分から転生者とも言っていましたし、、」


「やはりあの時一緒に、、分かりました、もう一つお聞きします、悪神に関する話は何かこの世界で知っている事はありますか?」


「悪神ってあの御伽噺の?」


「それに関しては聞いた事は無いですけど、確か僕の学園の卒業生でメシア六柱って自分で名乗ってた人はいました」


『そうだなメシア六柱の1人はいたな、リスクなしの聖剣召喚を目のあたりにしたからあれは間違い無いぜ』


「ちょっとお母さんお話についていけないわ、、」


カミラが頭を押さえながら自室に戻る。


「メシア六柱が!?て事はやっぱりヴリエの言った通り、、その人が現れたのはいつなの!?」


「去年の夏くらいですかね」


「て事は後5年で全員が揃い、1年であいつが、、」


「さっきから何を1人でぶつぶつと、、」


「それじゃあ本題に入ろうか、転生者の話は忘れていいわ、悪神が今回私が転移した理由」


そこからキリエの目的が明らかになった。


ルグドラ暦2141年、当時アグシュカ暦では540年。ルグドラが消滅する前、彼女は仲間と共に悪神を復活させて、転生者を殺そうと復讐の権化となった魔族を止める為に戦っていた事。その時キリエの仲間が転生者をアグシュカに転移させルグドラを救う方法を考えたが、それに反対したキリエ一派が身内で抗争を始めるが、事態は最悪な方向に進み、悪神は復活させられ、転生者は転移でアグシュカに飛ばされる。それからキリエ達は悪神と戦うも、圧倒的な力と、メシア六柱の未熟さにより、なす術がなくなり、世界は崩壊。そのほんの少し前に、1000年後に復活するかもしれない悪神を止めるためにキリエはアグシュカに転移した。


つまり、ルグドラをその手で崩壊させたのは転生者ではなく、悪神によるもの。その悪神が1000年の時を得て復活するのを聞いたカイトとアッシュは事態の深刻さに気付く。


「つまり後6年もしない内に悪神が復活すると、、1つ引っ掛かったのですが、話を聞いていると悪神も、転移も、何もかもその転生者と繋がるのですが、その転生者とは一体?それにその転生者を忘れていいというのはどういう意味ですか?」


『それは俺様も気になった所だ』


「転生者については、実は私達も知らない事ばかりなの。私が生まれる前から転生者は存在していて。悪神より凶悪、神を超越した人間、人外、本当の悪神など様々な呼ばれ方をされていたわ。私もあの人と対峙した事があったけど、正直強いというレベルじゃないの。世界最強の人間達が相手しても、傷一つ負わせる事が出来なかったぐらいだからね、その人物をなぜか世界は忌み嫌い、何処かへと追いやろうとしていたの」


「確かに俺が初めて会った時は負の感情とか、オーラがえげつなかったもん、でもそれだけの理由で嫌われるのはな、流石に可哀想すぎだろ」


「理由は何であれ、転生者が私達に危害を与える事はなかったの。だから忘れてもいいって言ったのよ」


「そうですか、、それと一応言い忘れてましたけど、話に出てきた魔族と対峙した事もあります僕は」


「そこまで巻き込まれてるとしたら、もしかするとカイト君も私達と同じ運命の子なのかもね」


「運命の子?どういう意味です?」


「そのままの意味よ、世界の命運を握る事柄の渦中に居る中心人物達の事で、私達はそういう人達を運命の子って呼んでいたの。運命の子は、1人1人が世界の運命を変えてしまう程の力を持っているの」


「凄いめんどくさそうな立ち位置ですね、、」


「ハハハッ!普通はみんな喜ぶのにね、物語とかに出てくる主人公や、その重要人物になれた気分でみんな良い気持ちだって」


「キリエさんみたいな経験するかも知れないって事ですよね?俺は今いる友達とかとずっと離れ離れになるのは耐えがたいかな、それなのにこうやって後ろを振り返らず、前に突き進んでるキリエさんは凄いと思いますよ」


「、、、、」


キリエの目頭に涙が溜まり、やがて堪えられなくなったのか、一気に爆発する。


「うわぁああああん!!!何ていい事言うのカイトくーん!!!もう!一生離さなーい!!」


それから20分弱泣き続けるキリエを宥めながら、話を戻すカイト。


「それじゃあこれからどうするのですかキリエさんは?」


「これからは2年以内で世界を見て回りながら魔族達の動きを見て回ろうかな。それとメシア六柱の人達を探し出して、私達の時みたいにならない様に、今度こそは世界を守れる様に強くなってもらわないとね」


「それじゃあキリエさんにぴったりの人物を紹介しますよ、敵は魔族ですよね?さっき僕が魔族と戦った話で、一緒に戦った魔族と正反対の種族であるエルフ達を」


それから話はトントン拍子で進んでいき、次の日カイトはキリエにファミルを紹介し、彼女の身柄はエルグランドで引き取る形となった。




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