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第2章 赤肌の巨人


ガキィン!!!

「セニカ!今だ!」


巨大な棍棒を剣でガードし、横に受け流した後、背後にいるセニカに合図をする。


「セイアッ!」


シュパンッ


「シャアア!」


突如気配を潜んでいたゴブリンがセニカの左右から2体が現れ、挟み撃ちにする。


『蒼燈』


2本の火柱がゴブリンの足元から噴き出し、すぐさま灰となった。


「ありがとうジュラン」


「おうよ!」


「ないすぅ」


現在カイト達は1層のボスであるアサシンゴブリンを倒し終えた後、2層目の中間地点まで進んでいる。


「この調子なら20層までは大丈夫そうだな」


ヴァイスが背後の物影から現れる。


「それじゃあ20層までは護衛なしで大丈夫ですよ師匠」


「その分みんなのサポートに回ってください」


「こんくらいヨユーヨユー」


「そうか、それなら厳しくなってきたら全力で引いて逃げろ、常に余力は残しておけ」


「「「はい!」」」


ヴァイスは来た方向を歩いていき、消えていった。


「いやー話が早くて助かるなぁ師匠は」


元々放任主義者であるヴァイス。それでいてもし何かあった時はしっかりと責任は負う人間という、カイト的にはとても出来過ぎている先生。


「行きましょ、今日は3層まで攻略するんだから」


「よし、行くか、、おいジュラン?」


「なんか見られてる感じしねぇか?」


「見られている感じ?」


辺りを見渡すジュランにカイト達が警戒する。


「ダンジョン内だからな、そういった感じは基本感じで終わらないからな、フラグは回収しねぇぞ」


「フラグ?」


聴き慣れない単語に、セニカが首を傾げる。


「無視してくれ、それより目を閉じるんだ2人とも」


「うん」

「おう」


『フラッシュ』


目を焼き尽くす程の光が、辺り一面に広がる。


「キシャアアアア!!」

「シャアアア!!」

「ガァアアアア!!」


すると天井にへばり付いていたアサシンゴブリンが次々と地面に落ちていった。


「ナイス報告ジュラン、やっおあこいつらずっと潜んでやがったな」


「今度は俺にやらせてくれよ」


「うん、順番ずつだからね」


そう言ってジュランが剣を抜き、7体のアサシンゴブリンに向かって走っていった。


『火走り』


一気に距離を詰め、まずは手前の2体を亡き者にした後、襲いかかってきた3体の攻撃を華麗に躱し、その隙を狙って背後をとった1体を見向きもせず蹴り飛ばし、3体を細切れにした。


最後の1体が逃げようと背中をみせた瞬間、その目の前にはジュランが先回りして立っていた。


「逃すと面倒だからな、、てか逃した方がやりがいがあるんじゃねぇか?」


と言っている内にアサシンゴブリンは素早い動きで逃げていった。


「おいおい、次は順番的に俺だろ?面倒かけんなよ」


「ギブか?だったら飯はカイトの奢りだな」


「ばーか、ギブらねぇよ、こちとら俺が動けなくなっても、精霊様がいんだよ、よって消耗戦になった時はお前が先にバテるんだよ」


「へっ!どうだかな」


「それより今は目先の心配でしょ?大丈夫なのカイト?もし危なくなったらさっき助けてもらった様に」


途中で遮るカイト。


「セニカ、これは男と男の戦いだ、女が口を出しちゃあ野暮ってもんだ」


「ごめん、ちょっとどう言う意味かわからない」


「とにかく俺らがセニカを助けるのはいいけど、俺らが助けられたら、助けられたら方は飯を奢らないといけなくなってしまう、それだけは勘弁だ!」


「わ、わかった、、」


そう言って先に進むと、前日見た様な待ち伏せされている光景が目の前に広がっていた。


「昨日よりヤバそうなのが何体か増えてんな」


ざっと目視で15体近くいて、殆どがアサシンゴブリンで、3体程ゴブリンロードも含まれていた。


「おぉ〜、本当に大丈夫なのかカイト〜?」


「うっざ、、10秒だ」


「ほぉこれは大きく出たなぁ!」


そう言って剣に雷を纏わせ、新たに完成させた技を披露する。


『紫電』


ビュンッと音がした後、一本の雷が待ち伏せしていたゴブリンの群れに入って行っていき、次々とゴブリン達が倒されていき、、


ビュンッ

「ふぅ、、こんなもんか」


目の前で起きた状況が余りにも早すぎた為、セニカ達は理解できていなかった。


「なに、、今の?」


「これ新しい技だよ、雷走でトップスピードを維持した状態で、足を止めることなく天歩で軌道修正しながら斬り倒していく技」


「早すぎてなにも見えなかったよ」


「まぁな、、俺も正直雷走で走っている最中の景色に目が追いつけていなかったからな、何百回も練習してようやく雷走中に目が慣れていったんだ、後はノンストップで走り回りながら斬っていくだけ」


「すごぉーい!それじゃあ次は私が見せる番ね」


そう言って奥の方へと進んでいくと、カイトの時と同じ様な陣形でゴブリン達が待ち伏せしていた。


『七ノ劔』


7本の魔法剣を生成し、その内の1本の刀身の上にセニカが乗る。


「ん?何するんだセニカ?」


「とっとと、、よし」


セニカの乗った魔法剣が徐々に浮かび上がる。


「おぉ〜!なるほどな!それで移動するって訳か!」


「そうそう、凄い技って程じゃないけど、見せたかったんだこれ!」


やがてホバーボードの様に滑らかに滑空し、御劔の舞で次々とゴブリンを薙ぎ倒していくセニカ。


「ふぅ、、こんなものかな」


魔法剣から飛び降り、額の汗を拭き取るセニカ。


「やっぱり体重が重い分消費魔力が激しいのか?」


耳打ちでカイトがセニカに質問すると、不機嫌に頬を膨らませ、顔を赤くするセニカ。


「もうっ、、大っ嫌い」


「アッハハ!冗談だってば!その可愛いハリセンボンみたいな顔が久しぶりに見たかっただけだよ」


「フンッ」


「おいお前ら、俺の目の前でイチャイチャしてると置いてくぞったく、ダンジョン内でよくもそんな余裕がぶっこけるもんだね」


「あーん?羨ましいのか?おぉ?」


「心配してんだよ、、ほら足元」


ザスッ


足元に敷かれたトラップを踏み、中から現れたマキビシの様な物を踏みつけてしまうカイト。


「いってええええ!!」


「だから言わんこっちゃない」


「アッハハ、バチが当たったんだよ、レディーに体重の話なんかするからよ」


「やっぱりさっきの魔法、体重で使う魔力変わんのか?セニカちゃん?」


察しの良いジュランと天然で口を滑らせるセニカであった。



「つつ、、いってぇ、なんで俺まで、、」


「フンッ」


「回復してやろうかジュラ公?」


『霊気解放』

ファァァァン


「お前の手を借りるなんてゴメンだね」


「もったいねぇ魔力の使い方しやがって」


「あ!着いたよ2人とも!」


先頭を歩くセニカが下へと続く階段を見つける。


「よし、次は3層目だな、どんな魔物が出てくるのやら」


「お、じゃあ誰が1番早く4層目の階段を見つけられるか勝負だな」


「いいぜ!負けた奴が今日のお昼奢りな」


「いいねぇ〜、それじゃあ私が先行ってるね〜」


そう言い残し、セニカが魔法剣に飛び乗り、そのまま飛翔していった。


「おっ!ずりぃぞセニカ!」

「待ちやがれってんだぁ!」


ジュランもセニカに続き走り出し、カイトが少し遅れて後を追う。


するとほんの少し走ったくらいで3つの穴が空いた分かれ道の前に先頭を走っていたセニカが佇んでいた。


「分かれ道か、、」


「三すくみで誰がどの穴に入るか順番決めよ」


「オーケー!」


一箇所に集まり、互いを見据えて、号令と共にポーズを決めるジャンケンの様なゲームをする。


「せーのっ!ゲロッ!」

「シャーッ!」

「シャーッ!」


全員で目を閉じた後、カイトは四つん這いになりカエルのポーズでゲロっと一言。


それに続きセニカとジュランは手首を九十度に曲げ、カンフー映画である蛇拳のポーズを取りシャーと蛇のポーズを取り一言。


全員で目を開け各々のポーズを確認する。


「あぁーくそっ!」


「カイトの1人負けー」

「っし!どんなもんよ」


カエルは蛇に食べられてしまう為、カイトの負けとなった。


続いての三すくみでの勝負はジュランがニュルっと一言発しながら気を付けのポーズをしながら右に傾き、なめくじのポーズ。


セニカはシャーと発し、先ほどと同じ様に蛇のポーズを取り、なめくじは粘液で蛇を溶かしてしまう為セニカの負けとなった。


「俺の勝ちだな、それじゃあ真ん中に行くぜ!」


真ん中の穴に走り込むジュラン。


「それじゃあわたしは右で!」


魔法剣に再び乗り、右の穴の中へと消えていくセニカ。


「残り物には福があります様に」


祈る様に左の穴の中へと入っていくカイト。


少し進むと突然アサシンゴブリンの奇襲に襲われるカイト。


「っと!易々と喰らうかよ!」


頭上から短剣を振り下ろしながら現れたゴブリンの攻撃を後ろにステップして避けるカイト。


「シャアアッ!」


『闘刃』


斬撃をアサシンゴブリンに向け飛ばすと突如アサシンゴブリンの背後からカイトの等身大の盾を持った肥満型のゴブリンが現れ、カイトの刃を打ち消した。


「グアアアアッ!」


「んっ!?なんだこの感覚!?」


何故か分からないが盾を持ったゴブリンに対して無性に腹立たしさを覚える。


((タウントだ!あいつの叫び声がトリガーになってる!))


有り難い事に、アッシュが今感じている違和感の正体をすぐさま分析し、カイトに伝える。


「これは攻撃したくなるな、、」


頭を左右に振り、目を覚まさせるも、無駄なので、盾のゴブリンから倒す事にするカイト。


ズィンッ!


雷走で背後に回り、首を取りに行くカイト。


ガキィン!!


まるで背後を取るのをわかっていた様に背後を取ったカイトの背後から襲い掛かろうとするアサシンゴブリンの攻撃を防ぐカイト。


「めんどくせー!デカブツに注意引き付けられてるから、コイツの潜伏が余計に分かりにきぃな」


((手貸してやろうか?))


「まだ余裕だよ!」


ドンドンドンッ


地鳴りを起こしながら、正面に盾を構えて、カイトに突進してくる盾ゴブリン。


「下がガラ空きだぜ!」


盾ゴブリンに向かって走っていき、構えている盾と地面の間にスライディングし、両足を斬り落とす。


『雷貫』


「ギャアアアッ!!」


叫び声に似た悲鳴の様な声を上げながら消滅していく盾ゴブリン。


「シャアアアッ!」

ザスッ


カイトの背後から襲い掛かかるアサシンゴブリンの背後を残身でブレさせ、雷走で背後を取り、背中を突き刺す。


「ふぅ、、こんなもんかな」


((結構危なかったじゃねーの?))


「全然?」


その後も何度か盾ゴブリンとアサシンゴブリンのコンビに出会すも1回目の戦闘でだいぶ慣れた為、簡単に凌いでいくカイト。


そして数分後...


「下の層に続いている階段はまだか?」


((焦んなよ、もう少しだろ))


「あ、影が見えるぞ」


少し先に2体の影が見えるカイト。


「あー、おっそーいカイト」


「足おせーぞカイトー!」


「2人ともいつからいたんだ?」


円形の広場で息を一つもあげない2人を見て質問するカイト。


「10分前からいたよ」


「俺は8分前くらいだぜ」


「んじゃあセニカが1着か、、ちくしょー!あの盾野郎さえいなければー!」


「盾野郎?」


「もしかして魔物に出会ったの?」


「そうだけど、その様子だともし貸して出て来なかったのか?」


「俺のとこは軽い罠が仕掛けられていたぐらいだな」


「わたしはなーんにも無かったよ」


「って事はハズレくじを引いたって事だな」


「フフッ、そうだね、ってことで今日の昼食はカイトの奢りで決定〜」


「いや、待て待て、下の階層を見つけるまでが勝負だろ?目の前壁じゃねーか?」


カイトが周りを見渡すも下層へ続く階段らしきものは見当たらない。


「つっても道中なんも無かったぞ俺んとこ?」


「右に同じ〜」


「俺も無かったし、なら消去法でここになるかー」


「あぁ」

「そうね」


ガコンッ

ゴゴゴゴゴゴゴッ!


突如来た道の穴が全て塞がれた。


「なんだ?」

「ん?」

「警戒しよ、みんな!」


セニカの一声で全員が武器を構える。


ガコンッ!


再び何かがハマる音が聞こえた後、突如床全体がエレベーターの様に下へと降下していく。


「おぉー!」


「下に向かってるのか?」


「そう見たいね」


興奮するカイトをよそに、冷静に分析するジュランとセニカ。


ウゥゥゥゥゥン


「結構下まで下がるんだな、このまま40層あたりまで行ってくれればいいものだな」


ガコンッ


そう言っている内に床が突然止まりだし、来た道と逆の壁が上に昇っていくと、目の前には大きな広間と、その先には扉が閉まっていた。


ズッ!!


突如凄まじいプレッシャーと共に体が重くなるカイト達。


「目の前のあの扉、、ボス部屋だろ?多分?」


「うん、こんなプレッシャー人から感じた事ない」


「どうするんだ?4層到達したら帰るって約束だったが、一回戻って先生に報告するか?」


ジュランが戻って報告しに行こうとするも、周りを見渡したセニカが答える。


「でも戻る方法分かんないよ、見た感じ他の道はないしテレポートも使えないみたいだし」


「倒すしか無さそうだな」


カイトが張り切って前に進み扉の方へと向かう。


「やるしかねぇみたいだな」


「えぇ、気を引き締めて行かないとね」


ジュランとセニカがカイトの後を追う。


「こっからは勝負とか関係なしに、連携とって倒すぞ」


「あぁ」

「うん」


扉の前でジュランが2人に声をかけ、扉を開ける。


ギィイイイイイイ

バタンッ!


目の前は真っ暗で何も見えない。


「カイト、お願い」


「あぁ」


『ルーメンライト』


扉の中全体を照らす光の玉が部屋の上空に滞空する。


するとドーム状の部屋の奥にゴブリンとは違った薄いピンク色の肌で座り込んで何かモゾモゾしている生き物の背中が見えた。


「でかい、、座ってる状態で3メートルはあるね」


「ん?こっちに気づいてないのか?」


「だったら話は早いんじゃないか?このまま後ろから、、」


『闘刃』


座り込んんでいるボスの背後から、カイトが首に向け刃を飛ばす。


ザスッ!


斬撃はボスの首どころか、表皮に当たった瞬間弾き消された。


「動いたよ!」


目の前の生き物が突如腕を伸ばし、カイトが斬撃を当てた部分を指でなぞった後、掻いた。


「おいおい、、岩ですら真っ二つに斬れる技だぞ!?」


「見た感じ効いていないみたいだね、、」


「だったら一気に畳み掛けるぞ、こいつは流石にヤベェ気がする!」


「わかった!」

「うん!」


カイトに続き、セニカ魔法剣を生成しながら答えると...


「グゥ!?」


目の前に置いていたであろう尖った骨が何十本も突き刺さった棍棒を突如後ろに振り回す。


「避けろ!」


ジュランが後ろへステップバックし、カイトが上空に飛び、セニカは片足を後ろに引いて姿勢を低くして避ける。


ブォンッ!!


強烈な風圧が振り終わった棍棒の後からドーム全体を回る。


「セニカの魔法に反応した!魔力感知持ちだ!」


「てことは!」


「うん!授業で言ってた通常種の中でもごく稀に魔力磁場や環境によって現れるとされる上位種だね!」


セニカが全員に解釈した後、魔法剣を3本生成し、剣先を目の前のボスに向ける。


『八十八夜』


ズザザザッ!!


3本の魔法剣が高速で放たれるも、飛翔してくる魔法剣を腕で顔を覆い、ガードした後再びセニカに向け巨大な棍棒を今度は縦に振り下ろす。


「させるかよ!」

『緋焔流刃』


「オラァ!!」

『撫雷』


緋剣エニスと焔剣エニスを両手に構えたジュランとバチバチと音をたてながら剣に雷を纏わせたカイトが互いにボスの頭部の左右から現れる。


スッ


ボスがしゃがんで避けるも、2人が天歩で真下に飛びかかる。


ズガァン!!


「くそっ!大きいくせに、ちょっとすばしっこいぞ!」


ボスは後ろへステップで避けた後、すぐさま前にステップでカイトとジュランに近づく。


「次来るぞカイト!文句は後にしやがれ!」

『青壁』


ブゥンッ!

ガァン!


ジュランが目の前に展開した蒼炎の壁は、横に振り払われた棍棒の勢いを少しだけ止めるので精一杯で、青壁が破壊された瞬間、カイトがジュランに駆け寄り、なんとか棍棒を受け止めた。


「重てぇ、、今だセニカ!」


『御劔ノ舞・集』


5本の魔法剣がボスの左側にいたセニカから飛翔し、やがて5本の魔法剣は1つに収束していき、巨大な魔法剣がボスの横腹目掛けて飛翔する。


「グアァ!!」


ボスは左手で横腹を守るように、飛翔してきた魔法剣を掴みかかる。


スゥンッ!

『星回不天』

ズザザザザザッ!


巨大な魔法剣がボスに握られ、そのまま握り潰されそうになった瞬間、手の中で5つに再び分散し、後から飛ばされた1本の魔法剣が合流した後、手裏剣の様に回転し、横腹削り出す。


「そのまま離すなよカイト!」


『霊装・凰剣イグニス』


カイトの肩を台にしてジャンプし、ボスの正面から大剣を構えるジュラン。


『凰火一閃』


豪火を放ちながら、ボスの顔目掛けて突進するジュラン。


『ガァアアアッ!!!』


ジュランの剣がこめかみあたりに届く寸前、ボスはけたたましい咆哮を上げ、ジュランとカイト、そしてセニカの魔法剣を吹き飛ばした。


「キャッ!」

「ヌオッ!」

バフッ

「んぁっ!」


飛ばされたジュランが背後で受け身をとったカイトにぶつかる。


「いって〜、おいバカジュラン、一丁前に俺の肩踏んづけたんだからトドメ刺しやがれよな!」


「ハハッ、悪りぃ悪りぃ!ちょうど良いところにお前の肩があったからな」


「グルゥアッ!!」


ボスの方を見ると、薄いピンクだった肌が真っ赤に変色しており、僅かながら熱気でボスの周りの空間が僅かに揺れている。


「見るからに怒ってるな、、」


『雷走』


カイトがジュランの左側、ボスの右側に高速で移動し、剣を構え、声を上げる。


「襲われた奴はガードして、残りの2人で攻撃を仕掛けんぞ!」


「わかった!」

「りょーかいっ!」


しかし次の瞬間、カイトの狙いは外れる事となる。


ボスは3人の誰も狙う事なく、真上に飛び、天井に向かってありったけの力で棍棒を振ると、轟音と共に、天井が崩落する。


なんとか全員が崩落した天井を避けるが、舞い上がった砂煙で、辺りが見えなくなる。


ガキィン!!!

「こっちよ!」


セニカの方から金属音が聞こえると同時に、セニカが敵の位置を叫び、カイトとジュランが声のする方向に走り出す。


『ウィンドプレス』


セニカの方向に突風を発生させ、視界をクリアにすると、セニカの目の前で、棍棒を振り下ろすボスの姿を捉えるカイト。


ダァンッ


地面を強く蹴り、ボスに向かって背後から斬りかかる。


(魔力が感知されるなら、これしかない!)


『黒闘閃』


空中で天歩を使い勢いをつけて一閃。


ズシュッ


闘気で更に貫通力が上がった黒閃は、ボスの右側肋あたりに突き刺さる。


「ガァアアアアア!!!」

ガシッ


ボスは剣が突き刺さった肋に力を入れて剣を抜けなくし、カイトが戸惑うほんの一瞬のタイミングを逃さず左腕を背面の右肋まで持っていき掴み、セニカの方に放り投げる。


『ウォーターシールド』


3枚の水壁がセニカの目の前に出現し、壁の強度もカイトの勢いを止めるためにクッションの様になるくらいに調整した後、カイトをお姫様抱っこでキャッチする。


「ふぅ〜恥ずかし〜」


カイトが生まれて初めてのお姫様抱っこに照れながら言うと、セニカが慌てた様に下す。


「ありがとうな!愛してるぜ!」


助けてもらったお礼に素早く頬にキスをし、今度は魔闘術で構えるカイト。


「もうっ!集中してよカイト!、、、嫌じゃないけどさ、、その」


後半ごにゃごにゃ言いながら、顔を赤らめるセニカ。


「随分仲の良い事でお二人さん!」


セニカの左側からジュランがジャンプしながら現れる。


「そろそろボスも消耗しているはず、一気に畳み掛けるよみんな」


「あぁ」

「おうよ!」


カイトが闘気による身体能力の限界突破で、爆速でボスに近づき、拳を構える。


『烈拳』


「グラァアア!!」


棍棒を豪速で振り下ろし、カイトの拳とぶつかり合う。


「ふんぐっ!」


何とか押しつぶされずに済んだが、膝の辺りまで地面にめり込むカイト。


『凰炎火』


カイトの奥から1本の巨大な炎がボスに命中する。


「借りるよジュラン!」


『漆ノ劔・陽炎』


ドリルの様に回転する7本の魔法剣が、ジュランの発した一筋の炎の周りを飛翔しながら炎を吸収し、赤く燃え上がる。


ズシュン!!


3メートル近くある巨体に7本の穴が貫通する。


「ガァアアアアア!!」


再びボスが咆哮を発し、ジュランの炎と、セニカの魔法剣を弾き飛ばす。


ガシッ!


ボスの咆哮が発されたタイミングで、カイトは寄手でボスの足首を掴み、吹き飛ばされるのを回避する。


スッ!!


『烈脚』


ボスの右膝の裏を勢い良く蹴り上げ、態勢を崩し、ジュランがセニカの魔法剣に乗った状態で、空中から飛び降りる。


『凰火一閃』

スパァン


ジュランの大剣がボスの首を跳ね落とす。


「どうだ?」


「ジュラン危ない!!」


セニカの叫びでジュランが背後を見ると、首を落とされたボスの体が棍棒を真下にいるジュランに振りかぶっていた。


「任せろ!」

『天烈拳』


ズパァン!!


ジュランが慌てて霊気を解放しようとした刹那、ジュランの背後から拳の形をした闘気が魔物の腹部を捉え、大きく吹き飛ばした。


警戒は解かず、ボスを見ていると、起き上がろうと手を前に伸ばすも、ゆっくりと脱力していき、そのまま動かなくなっていった。


「ふぅ、、」


「はぁ、、疲れた、、」


「、、必要なかったみたいだな」


カイトが右手をぶらぶらさせ、セニカがその場に座り込み、ジュランも体から発する淡い光を抑える。


ゴゴゴゴゴッ!!


突如地鳴りが響き、すぐにまた警戒する3人。


「出口が現れただけか」


「びっくりさせんなよマジで」


「ね、本当に焦った」


ボスが最初にいた位置より奥の方の壁がゆっくりと上がっていった。


「先生に早く報告しないとね」


「だな」


カイトたちは開いた壁の中に入ると、小さな部屋になっていて、奥の壁に石碑が置いてあった。


「どれどれ〜、見事ジャイアントオーガを討ち破り10層を突破した褒美に、10層のこの部屋に直接テレポート出来る魔道具を進呈しよう、合言葉は『赤肌の巨人』、出口は一応この小部屋だけテレポートが出来るよう空間魔法をかけている。会得していない者はこの石碑の右にある出っ張りを押すと、出口までの道が開かれる、、だって」


「て事はさっきのでかいのは10層を守るボスだったって事ね、本当にボスだったんだね」


「ったく、何で急にあんな仕掛け用意したんだ?」


「まぁどっちみち倒したんだから一件落着だ、帰るぞ、掴まれ」


カイトの肩に手を合わせるセニカとジュラン。


『テレポート』


3人はダンジョンの入り口まで瞬間移動すると、ちょうどヴァイス達がダンジョンの中から戻ってきた。


「おっ?カイト達じゃん!いつの間に俺らより先に帰ってきたんだ?」


先頭を歩いていたメルトがカイト達を見るなり声を掛ける。


「いや〜これが話すと長いんだよメルト〜」


カイトが自慢げにメルトにダンジョン内で起きた出来事を話し出す。


「先生!」


やがて最後列にいたヴァイスが入り口から出てきて、セニカが事情を説明した。


「なるほど、ダンジョン内の仕掛けで10層まで飛ばされたか、、聞いた事ない話だな」


セニカ達の話に首を傾げるヴァイス。


「取り敢えず今日の授業はここまでだ、みんな休みをしっかりと取って明日に備えるんだ」


「「「「はぁーい!」」」」


「お前達3人は俺と一緒に学園長の所まで行くぞ」


「「「はい」」」


そう言ってヴァイスはカイト達と共に学園長へと向かった。


「失礼します学園長!」


「おぉ〜ヴァイスか、後ろにいた3人の生徒は?昼食時だからてっきり駒でも刺しに来たんかと思うたよ」


「すいません、今日はお聞きしたことがありまして、まずは3人が学園内のダンジョン10層目を到達しまして、その件で一つ引っかかる点がありましたので報告を」


「何かあったのか?取り敢えず座りたまえ」


「失礼します」

「また会いましたね学園長」

「おぉ〜これが学園で一番偉い人の部屋か〜」


セニカ以外が部屋に入るなり一言喋り学園長室に入っていく。


「何があったのか聞かせてもらえんかの?」


セニカ達はヴァイスにした説明をもう一度し、合言葉も伝えた。


「ほぉ、合言葉もボスの特徴も間違っておらん、それにダンジョンを潜って出るまでの時間を考えれば嘘ではないようじゃの、、」


両肘を机についた状態で考えるノイド。


「うーむ、、わからん!さっぱりじゃ、唯一言える事は気をつけるんじゃ、ダンジョン内ではそういった何かの行動をトリガーに動く仕掛けは偶にある、今までワシらが気づかんかっただけでそんな大した事ではない思われる、オーガを倒したんじゃ、それくらいどうって事ない!オッホッホッホ!」


陽気に笑い出すノイドに少し困惑するセニカとヴァイス。


「ですが今後下層域ではそういった仕掛けが出ると生徒達の安全は保証されません」


「まぁ一応後でワシが一人で潜って確かめてくるわい、話は以上かな?」


ヴァイスの話を遮りノイドが終わらせる。


「はい」


「よし、それじゃあほれ!3人共!」


ノイドが空間魔法から掌サイズの青色に光る球を取り出し、カイト達に渡す。


「これが10層目に直接移動できる魔道具、、」


カイトが物珍しそうに青い球を観察する。


「それを迷宮内で魔力を込めると10層へと移動できるように仕組されとる」


「へぇー、なるほど〜」


「よし!それじゃあ昼食を食べておいでなさい、ワシこれからお主達の先生と真剣勝負をするんじゃ、それとこれからも精進するのじゃよ?」


「「「はい!」」」


「ホッホッホ、元気でよろしい」


3人はヴァイスを残し、学園長室から出て行き食堂へと向かった。


「今日は俺の奢りかー、、」


「わたしはいつものハーブティーとサラダ定食で」


「俺はビッグボムライスと、ベリーシャーペットだな」


「あ、シャーペットわたしも食べたい!追加で」


「ほんと容赦ねーなお前ら」


食堂に着いてジュランに並ぶ係をしてもらい、その間に席を見つけるカイトとセニカは突然背後から声をかけられる。


*「あのー、、剣術科の皆さんですよね、、」


後ろを振り向くとおどおど感じのおかっぱ頭の男子生徒が立っていた。


「そうだけどどうした?見た感じ1年生だな、道にでも迷ったか?」


*「いえ!違います!あのー、、サインを、、ほしくて、、その、、」


「お!?サインか!?どれどれー?俺こういうのはじめてだからどうやって書いて」


と嬉々として男子生徒が差し出した紙とペンを受け取りカイトが喋っていると途中で遮られる。


*「あの!、、セニカさんのが欲しいです!」


ピタッ


カイトのペンの動きが止まる。


*「前回の闘技大会で戦った姿とてもカッコ良かったです!ファンになりました!というかす、好きです!」


おどおどした感じとは裏腹に何とも大胆な事を口にした男子生徒。


カイトは何も言わず、後ろにいたセニカの腕を取り、男子生徒の目の前に引っ張り背後に立つ。


「ありがとう、嬉しいわ、お名前なんていうの?」


「ロマー・クルスタスと申します!」


『三面・修羅の顔』


(おいおいクソガキ、人が折角優しく接してやってるんだからそこは嘘でも俺にしやがれや、てか何人の彼女の告白してくれちゃってんだよクソガキ?やっちまうぞお前なんか?)


「あら!オリバー・クルスタス叔父さんのもしかして知り合い?」


「え?父上をご存じですか?」


「父上だったのね!オリバーさんはわたしが子供の頃によく父との仕事関係でよくお屋敷に遊びにきていてね、当時色々と良くしてもらっていたの!」


何故か会話が弾んでいる事に、更に腹を立てたカイトは、セニカの腕を引っ張り一言。


「腹減ったぞセニカー」


「あ、ごめんカイト!また今度お話し聞かせてオリバーくん!」


「分かりました、ありがとうございますセニカさん」


手慣れた手つきで、ささっとサインをした後カイトと共に並んで待っているジュランの元へと戻る。


「、、、、」


「やきもち焼いたでしょカイト」


「、、全然?あんなおかっぱ屁でもねぇよ」


「そう?まぁ一応言っておくけど、わたしはカイトが1番大好きだからね」


耳打ちで言われ、耳が幸せになり、頭上から足元まで幸福が走るも、それだけじゃ足りないカイト。


(あいつともう話して欲しくない、、けど束縛すんのすごく嫌、もどかしいこの気持ち、どうしたらいいんだ俺はーーーーー!!!)


*「お前達、、」


またも背後から声をかけられ、今度は修羅の顔を前面に押し出し、振り向くと...


「アルベルトじゃねーか!、、久しぶりだなバカベルト」


「帰ってきたんだねアルベルト!」


そこには当時1年生の時の様な派手な装飾ではなく、普通の制服で、パーマで首まであった髪も7:3でスタイリッシュに分けられていて、雰囲気がかなり変わっていたアルベルトが立っていた。



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