第2章 新たな目標
---卒業式から数ヶ月後---
季節はロンブの木々が浅葱色の花を咲かせる春。
「にーに、今日から学校が始まるのー?」
食卓でご飯を食べている最中に妹のエリーゼが寂しそうな眼差しで、カイトに質問した。
「そうだよ、もうエリーゼとはもう毎日お家で遊べないけど、家に帰ったらいっぱい遊んであげるからそんな顔しないでくれ、心が痛む」
「にーに!ねーねさびしいって!」
大分言葉が喋れるようになったアルトが、エリーゼの気持ちを代弁する。
「さみしくなんかないもん!ちょっとだけだから!」
「おうおう、アルトにもエリーの気持ちが分かるようになったか〜」
少しばかりツンデレな感じ垣間見えるエリーゼに少しばかりキュンとするカイト。
「パパー、きょうもしごとー?」
「あぁ、そうだ、寂しいだろ?」
「ぜんぜん!」
無表情で元気に答えるアルトに、苦い表情になるルドガー。
「義手の方はどう?もう慣れたの父さん?」
「あぁ!バッチしだぜ!さすが天才発明家イヴェン・マルコスだ!」
今では自分の体の一部のように動かせるまで慣れたルドガーが、ガチャガチャ動かすたびに鳴る鉄製の義手を見せてくる。
「その義手代で家計は圧迫されてるけどね」
コトン!
嫌味っぽく、コーヒーの様な飲み物をルドガーの前に力強くおくカミラ。
「うっ、こほん!まぁなんだ?お前達も学校とか頑張って、将来パパみたいに可愛い奥さんやカッコいい旦那さんを困らせない様にするんだぞ?」
「「はーい!」」
アルトとエリーゼは何の事言っているのか分からないけど返事する。
「よし、んじゃあそろそろ学校行ってくる、行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
「にーにばいばーい!」
「アッシュー、バイバーイ」
『おう』
カイトの背中からちょこんと顔だけを出して挨拶するアッシュ。
「んー!久しぶりの学校だー!」
『この数ヶ月で大分力を付けたな、にしてもこの休みの期間中、誰にも会わずに修行なんて、良かったのか?』
「まぁみんなそれぞれ忙しいらしかったからな、いいんだよ」
『ほぉー、もしかするとセニカが他の男に取られたりしてたらおもしれーな、クックック』
「おい、滅多な事口にすんなよ」
『なんだ?心配してんのか?』
「別にするわけねーだろ?俺とセニカは固ーい固ーい!愛情によって結ばれているんだぞ?」
『よくそんな恥ずかしい事大きい声で言えるなお前』
「まぁ精霊様には人間のやる事なんかわかんねーよなぁー」
『とか言いつつ、ちょっと歩くペース早くなってんじゃねーか、やっぱ心配なんだろ?』
「うるせーよ!、、べ、べつにただ早く会いたいだけだし、、」
そう言って足早に学校へと向かうカイト。
「ふぅ、、着いたぜ」
見慣れた校門の前に着くと、1年生の校舎の前で男子生徒2人に絡まれている少し伸びた黒に近い紺色のボブヘアーの少女を発見する。
「おいお前ら!」
*「ん?誰だアンタ?」
「カイトさん!」
ボブヘアーの少女の正体はシエルだった。困った表情のシエルがカイトを見るなり明るい表情になる。
*「カイトってあの闘技大会の優勝者の!?」
絡んできた生徒の後ろにいた生徒がカイトの名前に聞き覚えがあった様な顔をし、すぐさま思い出して血の気の引いた様な顔をし、カイトに絡んでいる生徒に説明をする。
*「ホントか!?俺前々回の闘技大会でファンになってこの学園を志望したんです!握手してもらっていいですか!?」
「ん?あ、あぁ、、」
差し出された手を条件反射で握り、軽い握手を交わす。
*「うぉおお!本物だぞコール!お前も握手してもらえ!」
「い、いいんですか?」
(尊敬されてる俺が、、ふふっ、、いや待て待て!落ち着け俺!こいつらはシエルに絡んでた奴らだ、ここはビシッと先輩らしく!)
「いいけど、その前になんでこの子に絡んでたんだ?」
*「あぁ、、この子が校舎の前であたふたして迷ってる感じだったので声を掛けただけなんですけど、、迷惑でしたらすいません」
「え?そうだったの?」
シエルの方を向いて確認を取ると気まずそうにうなづいた。そして最悪のタイミングで後ろから声をかけられる。
「よおカイト!こんなとこで何してんだ?」
「あ、シエルちゃん久しぶりー!」
「カイトじゃん!あぁー!カイトが後輩虐めてるよー!」
「それは違うと思うよラゼッタ」
ラゼッタの勘違いされそうになる言葉をスカーレットがフォローする。
「な、ならいいんだ、これからもシエルと仲良くしてやってくれ!」
焦ってコールと呼ばれる後輩と素早く握手を済ませ、全員の所に駆け足で向かうカイト。
「何してたの?」
「ん?なんか闘技大会で俺のファンって言って近寄ってきた後輩達に握手を求められてな、、」
「へぇ〜、有名人だねカイト!それよりちょっと身長伸びた?」
「ん?そうか?」
そう言われるとセニカが小さい様にも感じるカイト。
「そう言えば今日いよいよ発表だよ!」
「まぁ俺は関係ないと思うけど見に行くだけ行ってみようかな」
ルフトが後頭部で両手で組んで関係のなさそうに喋る。
「なんの事かしら?」
「そっかスカーレットは今年からこっちの校舎に来たもんね、えっと手短っていうかそのまま説明すると、年に一度の六星選出会が開かれるのよ」
そう言っている内に始業式の時間が迫り、急いで会場へと入るカイト達。
開会の挨拶が終わり、学業での注意や上級生としての自覚など色々喋り終わった後、本題へと移る。
『えーそれでは、話が長くなりましたが、ここで学園長から、本年度の六星選出を執り行って頂きたいと思います!』
拍手と共に、ノイド学園長が舞台袖から登場し、挨拶をする。
『今回厳選なる各学科の先生との審査、そして個人の活躍や成績などを考慮した結果、新たに4名の新しい星が選ばれる事になりました』
『まず1人目は!元八星でもあり、そして前大陸大会では1人で他学園の生徒をストレート勝ちを成し遂げた、拳術科バラン君!君に3番星の称号を与える』
名前を呼ばれたバランが舞台へと上がり、3つの星のマークが描かれたバッジを胸に付けられた。
すると拍手が起こり、バランは舞台上で男泣きをし始めた。
「おうおう、泣いてやがるぜ、今の心境をお聞かせください、彼女さん」
カイトはエアマイクを握り、スカーレットの口元に当てる。
「ぶっ飛ばすわよ」
勿論ブチギレられ、シュンとするカイト。
『続いて前闘技大会では2年生の部で2位。大陸大会で相手の大将選手を最多で倒した、魔術科ミレイ!』
黒いストレートのロングヘアーの女性が舞台へと上がり、4番星が授与される。
『続いては元五星ガルハートの影に埋もれるもその実力は兄に引けを取らない、1年間の留学から戻ってきた男!剣術科エリオルド・クインス』
舞台に薄い水色の髪をした短髪の美少年が舞台へと上がり5番星が授与された。
『そして最後は!六星エイナと同じく、わずか2年でその座を勝ち取り、大陸大会では見事な活躍を見せ、前闘技大会では優勝者であるカイトを打ち破ったこの男!剣術科ジュラン!』
「やっぱジュランかー!」
「惜しかったなーカイトー」
「どんまいどんまい!」
ジュランが舞台へと上がり、5番星を授与された後、カイトの方へ振り向きガッツポーズした。
「んのぉやろぉ〜!くやじぃ、、」
「まぁまぁ今年闘技大会でジュランに勝てればカイトも六星になれるよ!」
「あいつの座は欲しくねぇ!狙うわ一番星じゃぁい!」
「よっ!そのいきだぜカイト!みしてやれー!」
こうして始業式が終わり、教室へと全員が向かう。
「よしみんな揃ったわね、それじゃあ新しいカリキュラムを発表するわ」
そう言って魔導ペンで黒いボードに、文字を書いていくジル。
=====================
〜新カリキュラム〜
・闘気
・愛剣
・実践訓練
=====================
「大きく分けてこの3つよ」
「実践訓練と愛剣ってなんですか先生?」
クラス一の真面目、タリカが手をあげ、ジルに質問する。
「ゆっくり一つ一つ説明するから落ち着いてね、まずは最初の闘気だけど、これは後から説明する実践訓練とも関係しているの」
「まずこのクラスには闘気が扱える生徒がカイト君とアルベルト君だけだよね?」
(そういやアルベルトのやつまだ休学してるのか?)
「多分そうです」
「2年生の大きな目標でもあり、課題なのが一定レベルまで闘気を仕上げる事よ、進級テストはこれになるからみんな各自頑張ってね」
そして黒板の『愛剣』という文字を棒でさすジル。
「次は愛剣で、これはざっくりいうと各々で自分自身に合った剣を制作してもらうの、材料などはなんの決まりもないけど、剣である事が必須条件で、これも進級課題として提出してもらうから年末までには完成出来る様にしておきなさい」
「へぇー、この学校そんなのがあったんだな」
「確か3年生からは自分愛用する剣で訓練やら色々するから、今学園から支給されている剣ではその内ガタが来るの、だからその為の前準備らしいよ」
「そして最後の実践訓練は、みんなにはこれから校内ではなく、校外で魔物を狩る実践訓練に出てもらうわ」
「え?魔物と戦うんですか?」
不安な顔付きでジルに質問するメウィン。
「安心しなさい、これまで校外学習で怪我人は出たものの重傷者はいないくらいきっちり学園側が安全を考慮しているわ」
「怪我人は出るのかよ」
グレイルも不安な顔つきになる。
「まぁこれからの授業は多少荒くなるから頑張ってね、、あぁ、それとさっき言ってた闘気との関係は、慣れたら実践訓練で1人で魔物の討伐に向かってもらってギリギリの死ぬ直前まで担当の先生は助けないから覚悟しておきなさい!」
最後に鋭い目つきで生徒全員を睨みつけて後、高笑いをしながら教室を去っていくジル。
そして数分後、いつものように運動着に着替えた後、修練場へと向かう。
「欠席はアルベルトだけで、、よし全員きたな」
ヴァイスがアップし終わった後のクラスメイト全員の出席を取った後、全員に集合をかける。
「担任の先生から聞いていると思うが今日から校外での訓練が主になる。各自俺が用意した荷物を持ち出発の準備をしろ」
そう言ってカイト達はヴァイスが決めた4人1組で集まり陣形の説明や、緊急事態での適切な逃げ方などの様々な説明を聞いた後、学園の裏門へと向かった。
「師、、先生!どこに行って魔物を狩るんですか?」
「学校の裏側に学園で管理している迷宮がある、そこだ」
「迷宮って事は、え!?、学園にダンジョンとかあるんですか!?」
「何を興奮しているのだ?知らなかったのか?」
「はい!ダンジョンというものがある事自体!」
「てかお前達なんでそんなに死にかけた顔してんだ?」
チームとなったメルト、タリカ、オーロンに声をかけるカイト。
「だって迷宮って、、あんな怖いところ、、ひぇっ!」
「お、俺は別にだだだだだ大丈夫だけんどな」
「いやいや、途中でマシンガンと赤髪の大御所声優が混ざってるくらい焦ってるじゃねーか」
『いざっていう時は俺様が守ってやるから安心しろオメーら!』
「た、頼もしいけど、やっぱり怖いわ私」
「だーいじょうぶだって!一応俺も魔物の討伐した事あるけど、ほんと大した事ない奴らばっかだぜ?実戦で戦ったお前達の方が数倍つえーから安心しろって、そんな調子じゃお前達が想像している最悪の事が起きるぞ?ダァーハッハッハ!」
「緊張をほぐすかさせるのかどっちなんだよおめーはよ」
「もうホント最低」
「更に緊張してきた、、」
「ヌッフッフ、セニカたん、やっとこういう場で同じチームに慣れましたな!安心してください!このニューロが貴方の盾となって魔物の攻撃から守って差し上げましょう!」
「どうぞ御自由にー」
「てかニューロお前笑い方統一しろよ、この前はデュフフだったのに、なんだよ」
同じくセニカと同じ班のマシューがニューロに突っかかる。
そしてそうこうしている間にカイト達は迷宮の入り口に到達した。
見た目はただの地下に通じる階段の様な物で、看板がありそこには『学園の所有土地、立ち入り厳禁』と書いてあった。
「よし、点呼を取ったら休憩だ、休憩が終わり次第俺と一緒に迷宮に入ってもらう。
「いよいよかー、早く入りたくてうずうずするぜ」
数分後休憩が終わり再び点呼を取った後、1列になりダンジョンの中に入る。
「おっしゃ!いくぜぇ野郎ども!」
「「「おぉー」」」
覇気のない状態でカイトの後ろをついていこうとする3人。因みにカイト達の組が1番最後の列だ。
「おいおい、お前らは俺より先を歩けよ、俺が後ろ守ってやるから」
「急に頼もしい」
「それじゃあ俺が1番前で」
「私はカイトの前でいいよ」
そう言ってその場で陣営を決めて、前へと歩き出すカイト達。少し前を歩いていくと2体の影が見える。
「止まれ、まずは俺が見本を見せるからしっかり見ておけ、カイトは後ろの警戒をしっかりするんだ」
「うっす」
そう言ってヴァイスは剣を鞘から取り出し、前方の二つの影に見えやすいように光を当てる。
「グア?」
姿を現したのは横に長く尖った耳に、二足歩行、薄緑の肌色でRPGではスライムに次いで最初の関門である討伐レベル3の魔物、ミニゴブリンだった。
「おぉ〜初めて見た」
「ゴブリン種は魔物の中でも知能が発達している為慎重だ、しかし中でもミニゴブリンはまだ発達途中で恐れを知らないまま飛びかかってくる」
光を照らされた直後、二足歩行から四足歩行になり、ヴァイスに向かって走り出し、飛びかかった。
「こいつらのベタな倒し方は飛びかかって来たところを落ち着いてゴブリンの右胸、俺らから見て左胸の位置を突き刺すだけだ」
そう言ってヴァイスは同時に飛びかかって来たゴブリンの右胸を見向きもせずにクラスメイトに説明しながら的確に突き刺す。
「それでは最初にセニカ達の組からやってもらう、俺は直接介入しないから何かあった時は最初に言った通りお前達だけでなんとかしろ」
「「「「はい!」」」」
セニカ達の班を先頭に前へと進んでいく。
少し歩くと今度は3体のミニゴブリン達を発見した。
「みんな落ち着いて陣形を整えて」
「セニカたんは拙者が守る」
「任せたぜタンク」
「頑張ってねニューロ、、ふぅ、緊張するなー」
マシューに続き、ルシータもニューロを鼓舞する。
「くるよ!」
光でミニゴブリン達を照らした瞬間、前方にいるニューロに3体が一斉に飛びかかった。
ガキィン!!
「どぉりゃ!」
ニューロは飛びかかって来たミニゴブリン達を剣で受け止め、弾き返す。
「セニカたん!皆!今だ!」
宙に投げ出されたミニゴブリン3体を1人1体ずつトドメを刺しにいく。
グサッ
「ぐぎゃあ!」
ドスッ!
「がぁあ!」
ザスッ
「んがぁあああ!!」
最後に攻撃したルシータの剣が浅くトドメを刺しきれなかったミニゴブリンが暴れ出し、剣を抜き逃走していった。
「大丈夫ルシータ?」
すぐにセニカが駆け寄ると、強張った表情のルシータが頭を縦に振る。
「連携は悪くは無かったが中途半端に終わったな、いいかルシータ?恐怖するのはいいがそのせいでみんなの命を危険に晒した、次からは気を付けるんだ」
「危険に晒したというのはどういう事ですか?」
セニカがヴァイスに質問をする。
先程取り逃がしたミニゴブリンが奥の方に逃げていったのは見えたな?あいつは一度命の危機にさらされた挙句仲間が殺されたのを目撃した。後は言わなくても分かるだろ」
「仲間に応援を要請したんですね」
カイトが後ろの方から答える。
「そうだ、ここから先では当分今までの様に道の真ん中に無警戒のミニゴブリンはいないと思え、あいつらは取り逃がすと1番厄介な生き物で、討伐レベルが10に引き上がる、そしてその中にゴブリンやハイゴブリンなどがいれば更に討伐レベルは上がっていくだろう」
全クラスメイトの顔が更にこわばる。
「ここからは警戒しながら進むぞ」
そしてヴァイスの警戒通り、奥へと進んでいくにつれ罠などが仕掛けられていた。
数分後大きな広場が姿を現し、ヴァイスは更に警戒するよう注意した。
「先生、ここは俺が行ってもいいですか?」
「いいが、ここから先はお前1人だと俺も命の保証は出来ないが大丈夫か?」
広場の前でカイトが先頭を歩いているヴァイスに声をかける。
「それだったら俺も行きてぇな」
ジュランも立候補する。
「私も!」
何故かセニカも負けじと立候補する。
「ならお前達剣術科上位がみんなに見本を見せてやれ、いいな?」
「いいですけど、連携みたいなんは取れないと思いますよ?各々自由にやると思うんで」
「それでもいい、ただこの雰囲気をお前ら3人が払拭してくれ、俺の役目はダンジョンや魔物の厳しさを教える事だ」
と3人に小声で耳打ちする。
「最初からそのつもりですよ」
カイトはそう答えた後、ジュラとセニカと共に広場の中へと入っていった。
「自分の背中は自分で守る、いいな皆?」
「お前こそ守られねぇ様にしろよ?」
「当たり前でしょ?」
「っしゃ!それじゃあ、、姿を見せやがれお前ら!」
『ルーメンライト』
大声で叫んだ後、光魔法で発光する球体を広場の真ん中の上に停滞させた。
すると目の前に、ざっと40体近くいるミニゴブリンと10数体のゴブリンが待ち構えていた。
「おぉ〜、結構集まってるな〜!」
「っし!んじゃあ誰が多く倒せるか勝負だ」
「楽しそうね、負けた人が食堂のご飯奢りで」
「乗るぜ」
そう言ってカイトは剣を柄から抜いた直後闘気を纏わせ、斬撃を飛ばした。
『八闘刃』
ズドドドドドドッ!!
8本の斬撃がゴブリン達を次々と真っ二つにしていき、数えられる程度迄に減少した。
「半分やったから、どっちかの奢りで確定だな」
「そんな事無いと思うけどね」
何体かがジャンプで飛んで避けており、それをジュランが迎えるように斬りかかった所でジュランの背後から3本の魔法剣が高速で飛翔し、次々と宙にいるゴブリン達をなぎ倒していく。
「速度と精度が上達してるなセニカ」
「まぁね」
「おい、ゴブリンはまだ残ってんぞお前ら」
『灼蛇』
蛇の形をした蒼炎が奥に逃げようとしていたゴブリン達を焼き尽くしていく。
「ざっと今ので半分だろ」
「何言ってんだよ、俺が最初にやった奴らで半分だぞ!」
「何言ってるのよカイト、わたしが魔法剣で斬ったので半分だよ!」
「いいや俺が焼き尽くした奴らで半分だ」
「あーあ、なんかあいつらとどんどん距離が離れていったな」
「凄いよね、あんなにいたゴブリン達が一瞬で倒されていったもん」
メルトとタリカが遠くを見るような目でカイト達の口論を見ている。
それから誰が1番倒したかを言い合っていると、突然地鳴りがした。
ドスンッドスンッ
「ちょっと待て、地震か?」
「奥の方からだ」
「何かが近づいてくるよ2人とも」
「足音か、、」
奥から3メートル程の身の丈をしたゴブリンが腰につけた無数の髑髏と左手に巨大な棍棒をぶら下げて現れた。
「カイト!ジュラン!セニカ!そいつは討伐レベル14のゴブリンロードだ!気を付けろ!」
「気を付けろって先生は助けに行かないんですか?」
「あいつらなら問題ない、それに先程の40体近くのゴブリンだが、お前達の今の実力なら全然問題ない、緊張と恐怖でいつもの本調子が出ていないだけだ」
カイト達の戦いとヴァイスの励ましで、少しだけ緊張がほぐされてきた一同。
「ちょうど良いところに来やがったな、ルール変更だ!あいつを倒した奴が勝ちって事でお先!」
最後の方を早口で喋り、すぐさまゴブリンロードに走り出すカイト。
「なっ!ずりぃぞテメェ!」
『御劔ノ舞』
5本の魔法剣がカイトを抜かし、ゴブリンロードに飛んでいく。
ブンッ
その巨体に見合わない速度で2メートル程の棍棒を一振りし、風圧だけで魔法剣を吹き飛ばす。
「おもった以上に強そうだぞコイツは」
『闘刃』
試しに闘気を纏った刃を飛ばすと、棍棒によって弾き飛ばされる。
ズンッ
身体能力を更に上げ、一気にトップスピードで目の前まで距離を詰める。
スッ
ドォン!
カイトのいる位置に棍棒が振り下ろされるが、横にステップで避けた後、腕を伝い顔に近づく。
『兜割』
ザスッ
首を狙い斬るも、おもった以上に肉が分厚く、刀身が半分隠れた所で剣が止まる。
「硬っ!」
すぐに剣を抜きゴブリンロードの肩から降りると、今度はジュランが首を目掛けて斬りかかった。
「貰ったぜ!」
『烈火斬』
ドゴォン!!
しかしゴブリンロードは棍棒を持っていない方の手で向かってくるジュランを払い飛ばす。
「今度は私が貰うよ!」
『九十九夜』
刀身がゴブリンロードに向けられた3本の魔法剣と共に、セニカが懐に潜り込み、真下から腹部に剣を突き刺した。
ブシュッ
貫通とまではいかなかったものの、100センチ以上の大きさの魔法剣が半分以上突き刺さり血が吹き出る。
「ぐああああうっ、、」
よろけるゴブリンロード。
「悪りぃけどトドメは貰うぜセニカ!」
少しばかり悪い気もするが、勝負なので心を鬼にして、セニカが弱らせた所をカイトが剣を柄にしまった状態でゴブリンロードの足元に移動する。
『外旋脚』
勢い良く右足を時計振りに回し、足払いをかけると、ゴブリンロードの右足が左足にぶつかり空中で涅槃像の様な体勢になり、セニカが突き刺した魔法剣の位置、腹部を目掛けて拳を構える。
『天烈拳』
拳の形をした闘気が魔力に押し出され、ゴブリンロードの腹部に命中した後、壁に吹き飛ばした。
ザシュッ
ゴブリンロードが壁に叩きつけられる寸前、ジュランがちょうどゴブリンロードが吹き飛んだ先に立っており、吹き飛ばされた勢いを利用しながら焔剣エニスで首を斬り落した。
「へへっ!俺の勝ちー!」
「あっ!お前ずりーぞそれは!今のはお前が攻撃してなくても倒せたんだからな!」
「いーや、吹き飛んでいる間はまだ生きていたから、その間に倒しちまえば俺が倒したと言っても過言ではないぞ」
「ちょっと2人ともずるいよ!わたしが弱らせたのにー!」
「そうだぞ!セニカが弱らせたんだからセニカの勝ちだぞ!」
「そんな彼女が弱らせた獲物をいいとこ取りしようとしてた奴がよく言うぜ」
「なっ!この野郎ぉ、よしじゃあここで決闘して勝ったやつが!」
「そこまでだ、よくやったお前達」
「あ、先生ー!先生が決めてくださいよ!」
「知らんそんなもの、それよりお前達のおかげであいつらの緊張も解れたみたいだ、今日はここまでだ、帰るぞ」
「え、もう帰るんすか?」
カイトがまだ物足りなさそうな顔でヴァイスに尋ねる。
「あぁ、当初予定していた最初の目的地がここだからな、まずは全員が安定してここを攻略出来れば次に行く」
「なるほど、んじゃあしゃあねーか」
これ以上先に行く事を諦め、そのまま一同は帰路に着く。
「それとみんなに伝える事がある、2年生からは上位生とお前らとで悪いが授業を進み具合を変えさせてもらう」
「それってどう言うことですか?」
迷宮の入り口に着いて点呼が終わった後、ヴァイスが言った一言にクラス全員が疑問に思い、メルトが口を開ける。
上位生徒はヴァイスが独自の判断と、クラスのトーナメントや闘技大会での戦績を見て、メンバーを決めている生徒達であり、ジュラン、カイト、セニカ、アルベルトがこの中に入っている。
「正直お前達と上位生とでは明らかな差が付いている、お前達にコイツらが合わせていたらその分コイツらの成長が遅くなるだけだ、厳しい事を言う様だが理解してくれ」
「あぁ〜、そういう事ですね、むしろ俺はそっちの方が嬉しいです」
「わたしもです」
とクラスメイトから帰ってきた言葉はヴァイスの予想外のものだった。
「正直俺達にレベルを合わせて授業をされているのに薄々勘付いていました。自分達があいつらの足引っ張てるんだなって、頑張ってはいるんですけど、上位生程の死ぬ気の努力が自分達には足りていない事は承知なのでそれで良いです、てかそうして欲しいです」
「お前ら、、」
「みんな、、」
「そうか、それを自分の口から言えるだけお前達は偉い、てっきり反発されるのかと俺は思っていた、その為に準備していた説得の言葉も全て言われてしまったな」
「ハハッ、先生にはよくしていただいてますよ!だからこれからは分けて進めて貰っても構わないので遠慮しないで下さい!俺達は俺達のスピード強くなって行きますから!」
「フッ、分かった、ではそうさせて貰うぞ、明日からはカイト、セニカ、ジュランのチームでダンジョンを更に深くまで貰い、迷宮の攻略を目指して貰う」
「え?」
「え?」
「うっす」
「いや、なんでお前はそんなスッと受け入れられるんだよカイト」
「そりゃあダンジョンは潜るだけじゃなくて攻略するものだろ?おかしい事言ってたか?」
「あのねカイト、、ここの迷宮は未だに在学中に攻略をした生徒はゼロなのよ?あの五星ですら87層で断念したんだよ?」
「それを俺らが塗り替えるんだよ、やったじゃねーか!この学園に五星がいなくなった事で超えるべき目標が無くなったのに、今こうして、それも分かりやすい様に数字で記してくれてるんだぜ?」
「はぁー、、ちょっと疲れて来ちゃったー」
諦めた様にその場に座るセニカ。
「おうおうあんまし彼女を困らせんじゃねーよカイト」
「んじゃあ明日は一層突破を目指して頑張るぞお前らー!」
「おぉう!」
「はぁ、、」
こうして新たに越えるべき目標が別の形として現われた事で喜びを感じるカイトとは別に、これから辛くなるであろう授業に少しナイーブな気持ちになるセニカであった。




