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第1章 闘技大会6日目 スペシャルマッチ


『さぁ前日の熱い決勝戦も終わり、本日は闘技大会の名物コーナー!!下克上スペシャルマッチだぁ!!』


舞台に1年から3年生の優勝者が入場する。


『それではまず初めに!1年優勝者!!ジュラン選手!対戦する相手をお選び下さい!!』


「ヴェルトーバ先輩でお願いします!」


タッタッタッ!!

「悪りぃ悪りぃ!ちょっと寝坊して遅れちまった!」


「おせーぞカイトー!」

「何してんのよー」


「ちょうどジュランが今対戦相手を選んだところよ」


カイトが額に汗を浮かべながら、急いでセニカの隣に座り、ルフトの持っていた揚げ菓子を一つ勝手につまむ。


「あ!おれの菓子!一つ銅貨1枚だぞ!」


「ケチくせーこと言うなよ、ほら!この前掻っ攫って来たフルーツジュースだ」


「にしてもジュランが選んだのはアルベルトのお兄さんなんてねぇー」


「確か本戦メンバーの選定試験でジュランがヴェルトーバ先輩と戦い終わったとにまた手合わせしてみたいって言ってたっけ?」


「ふーん、、俺ら1年の中で群を抜いて強いあいつがどこまで行けるか見ものだな」


チューッ

「プハァ、やっぱ美味しいな、このフルーツジュース」


『それではスペシャルマッチ第1試合!!初めぇ!!』


『霊気解放』


「お!?いきなり飛ばしたな!」


「魔力を温存して戦うより、切り札に全魔力を回して一気にかたをつける気ね!」


ジュランのいきなりの切り札に、前のめりになって見始めるカイトとラゼッタ。


『灰燼』


ドォン!!


ジュランの渾身の手刀を左手に持っていた鞘で受け止めるヴェルトーバ。


「マジかよ!」


「フンッ、良い技だな」


自身の最強の技を片手で受け止められた事に驚くジュラン。


「殺す気でいくしかねぇな!」


試合なので各選手は皆殺傷能力のある技を使わなかったり、ギリギリの所で手加減をするが、目の前の人物には殺す気で行ってやっと『勝利』に近づくと察し即座に構えを変える。


『焔浄刀』


腕から紅蓮に燃え上がる炎の魔力が剣の形に変わる。


スッ

ジュランが前に一歩踏み出した途端、10メートル離れていたヴェルトーバが目の前まで瞬時に近づいて来た。


『天斬』


至近距離でヴェルトーバが再び剣を抜き、斬りあげる。


ガキィン!!


ジュランは一瞬で目の前に現れたヴェルトーバにコンマ先を取られるも、下から斬り上げてくるヴェルトーバの斬撃を両手をクロスさせ、斬り下ろし、その斬撃を止めた。


「くそっ、、溶解して折ってやろうと思ったが、びくともしやがらねぇ」


「お前も2年生になれば自然に身に着く物だ」


「生憎、こちとらいくら死にかけても闘気のとの字も現れねぇもんでねぇ」


「闘気が身に付かない体質なのか?珍しいな」


「手の力が緩んでるぜぇ、先輩さんよ!」


ほんの少しゆるんだヴェルトーバの斬撃を、自身が回転し背後に受け流すジュラン。


同時に回転の勢いを利用し、首を目掛けて手刀を放つ。


「ユゼルが渡せと煩く言っていた花向けをくれてやろう」


ズォンッ!!


突如ヴェルトーバの体が加速し、ジュランの真後ろに移動した。


「何だよその速度」


再び斬りかかるも、動きの速度が速いヴェルトーバに斬撃が届くことはなかった。


「この魔法のおかげで俺は五星の座を勝ち取った、闇魔法だ」


「今のが闇魔法だと?」


「そうだ、これは俺が自身の力で考案した闇魔法だ、今の一手俺が速くなり、おまえの攻撃を躱したように見えただろうが実際は違う」


「なんだと?」


「俺がお前の全ての速度を落としているのだ」


そう言われて、ジュランは直ぐに観客席を見る。


すると確かに観客の動きが速くなっている、そして頭上を見上げると、会場の周りに立てられた旗が風で高速に靡いている。


「なるほど、そう言うことか」


「厄介な事に直接相手にはかけられなく、相手と接触している時間が長ければ長い程その効果は上積みされていく仕組みだ」


「確かにつえーな、、でも俺が認識している俺の速度はいつもと変わんねぇ、自分の思う様に体が動かせられればどうって事ねぇよ」


「ほぅ?今のを聞いて諦めないのか?」


「へっ!こちとら昔から体が灰になるまで敵とみなした者は倒せって教えられてるんでね!燃えて来たぜ!」


ジュランは霊気を体に閉じ込め、両手に2本の剣を握る。


「聞いた話によると試合開始と同時に使った技がお前の切り札だったと」


「こっちの方が戦い慣れてるからな、話はもういい、こっからは本気で首をとりに行くぜ」


ダッ!!


『蒼燈』


ジュランは一歩前に踏み込んだ瞬間、自身を蒼炎の柱で包み込んだ。


すると、ジュランが一歩踏み出したと同時に、ジュランの頭上に高速で移動したヴェルトーバが火柱を避けるも寸前で顔を掠めた。


空中でそのまま身動きが取れないヴェルトーバに、ジュランが飛びかかる。


『烈火斬』

スルンッ


ジュランが双剣に炎を纏わせ、クロス斬りを放つも、まるで早送りしているかの様な動作で、すぐさまジュランの背後へと回った。


しかし背後を取る事を予め予想していたジュランは、飛びかかる前に放っていた影正を、ヴェルトーバが背後をとった瞬間に、影から解き放った。


ガキィン!


ヴェルトーバが背後からの影の斬撃に気が付き、正面から斬り伏せようとした所でジュランは天歩で空中に足場を作り、再びヴェルトーバに斬りかかる。


『黙想六花』


ヴェルトーバは両サイドから放たれる攻撃を目を閉じ、音速の斬撃で全ていなし返した。


空中で攻撃を弾かれ、大きくのけぞるジュラン。そのままヴェルトーバは早送りした様な動きで、すぐさまジュランに近付き、首に剣を当てた所でヴェルトーバの勝利となった。


「くぅ〜、やっぱジュランでも無理だったかー!」


ルフトが前のめりから椅子にもたれかかる。


「ジュランの動きが鈍かったけど、あれもヴェルトーバさんの力なのかな」


「やっぱ現役の五星には年生が勝つ事はできないんだねー」


「惜しい所までは行ってたけどな」


『さぁ続いて2年生の優勝者、レイン選手!相手をお選びください』


「エイナで頼む」


「お?今回の優勝者もあの人なのか」


「決勝の日カイトはすぐに帰ったから知らないと思うけど、あの人前回よりめちゃくちゃ強くなってて、決勝では汗一つかかず相手を倒したそうよ」


「へぇー、確かグレアモル学園最強の生徒の弟だっけ?」


「そうそう、もしかしたら勝っちゃうかもね」


舞台に五星エイナが登場すると、場内は歓声で満ち溢れた。


『さぁそれではスペシャルマッチ第2試合!!初め!!』


『魔装・イフリート』

『造拳・飛竜の型』


試合開始と同時に瞬殺をするかの如く、全力でいく2人。


先にその場から動いたのは五星エイナ。魔力で成形された翼で目にも止まらない速さでレインに向かって低空を飛翔する。


『エリミネイトレーザー』


赤い光線が銃口から何発も放たれるも、全てかわしてみせるエイナ。


『ファントムバレット』


今度は銃口から見えない弾丸が、エイナに襲いかかる。


「ちょこざいわね!フンッ!」


凄まじい密度の闘気を纏った腕で軽く弾き飛ばす。


『エリミネイトレーザー』


残り数メートルの所までエイナが接近すると、再び最初と同じ技を放つ。


「しつこいわよ!」


ドォンッ!


真正面から魔力で成形された尻尾で吹き飛ばすと、何故か違和感を感じるエイナ。


トンッ!ダッ!


レインの目の前で着地し、前宙を繰り出し、その勢いでかかと落としをするエイナ。


『エアバレット』

ドォン!!


銃口から放たれる空気で自信を押し、後ろに避けるレイン。


『グラビティバレット』


先程エイナが尻尾で赤い光線を吹き飛ばした際に、自身の真上に予め撃っておいた弾が時間差でエイナに放たれる。


『ファントムダンス』


エイナは体を残身の様に体をブレさせた瞬間、3体同じ見た目の分身が出現し、別々の方向に飛んだあと、再び4人一気にレインに飛びかかる。


『リフレクトシールド』


向かってくるエイナの外側に鏡の壁が数枚宙に浮かび上がる。


「あの技は確か、、」


五星の控え室でカティナが驚いた眼差しで口を開ける。


「あぁ、、ロイドの得意技だ」


カティナの言葉に続いたのはガルハートだった。


『プロミネンスレーザー』


炎の魔力が銃口の前で収束し玉となり、連続でレーザーを射出した。


「そんな物当たらなければ意味ないわよ」


4人のエイナが同時に放たれて熱線を避ける、同時に拳を振り上げる。


『双刃』


計八つの竜爪がレインに向かって振り下ろされた所で、レインが地面に向かって銃口を向けた。


『トルネードバレット』


旋風が巻き起こり、真上にいるレインが上空に飛ばされる。


「逃さないわよ!」


すぐさまエイナが振り下げた竜爪を埋まった地面から抜き出し、追いかける。


「残念だが、俺の勝ちだ」


パチンッ!

ズゥン!!


先程展開した鏡の壁がドーム状に、4体のエイナを閉じ込める。


『プロミネンスレーザー』


2つの銃口から放たれる無数の熱線が壁の隙間を通り、中で反射して、次次とエイナの分身を撃ち消す。


「終わりだ」


『エレメントチャージ』

キュイィィィン!!


『デトネイトレーザー』


壁ごと巨大な光線で焼き消すレイン。


「どうだ?勝ったのか?」


カイトが思わず声を上げる。


砂煙が舞い上がり、中からボロボロのエイナが現れる。


「くっ、、やるわね」


「あれを耐えるとは化け物め」


『デトネイトレーザー』

『竜滅砲』


再び魔力エネルギーをチャージし放った巨大な光線が竜の咆哮に呑み込まれる。


「なっ!」


すぐさま横にステップで避けるも、避けた先にはすでにエイナが拳を振りかぶり、待っていた。


『飛竜闘拳』


竜の力を纏った強烈なパンチがレインの銃に直撃する。


ピキッ


銃は破壊されはしなかったが、レインがパンチを受けきれず、吹き飛ぶ。


『飛竜旋脚』

ジャキ


倒れているレインにそのまま追い討ちをかけるも、銃口が自身に向いていた事に気が付きすぐさま手をクロスさせ、ガードする。


『エリミネイトレーザー』


三発放たれた光線の二発は闘気でガードされ、残りの一発は腕を掠めた。


『フルスマッシュ』


エイナは拳を勢いよく地面に打ち付けると、打ち付けた面が下に押され、シーソーの様に反対側の地面が隆起し、レインが空中に身を投げ出される。


『竜滅砲』

『トルネードバレット』


放たれた咆哮をギリギリ真上に風弾で打ち上げ避けるも、エイナは既に次の竜滅砲の構えを取っていた。


『ソニックバレット』


エイナに銃弾を放つも、空中にでは狙いが定まらず、足を掠める。


「くそっ!」


ズドォン!!


竜の咆哮がレインに直撃し、空中からそのまま字面に倒れ、銃が握れないくらいの傷を負おうもすぐさま立ち上がるレイン。


「そのまま倒れていればいい物」


レインに近づき足を振り上げる。


「悪いけど、今度こそ俺の勝ちだ」


レインが口角を上げ、手をエイナに向けると、エイナの動きがピタリと止まる。


グッ

「んっ!な、によこれ!」


「体が持ち上がらないくらい重いだろ?さっきから体を掠めさせた理由はこれの為だ」


「最初の攻撃を真正面から破壊した際に感じた違和感の正体はまさか、、」


「あぁ、お前に撃った全ての魔力弾には重力魔法が重ねがけされてある、体内に魔力が入った分だけ体が重くなる」


「これじゃあ、、くっ!」


「終わりだ」


力を振り絞り、なんとか銃を握りエイナの頭に銃口を向ける。


『勝者レイン!!』


『なぁああああんと!!これは約5年ぶりにスペシャルマッチでの下克上が果たされましたぁああ!!なんという事でしょう!!』


「うぉおおお!すっげぇ!!勝ったぞ!」


「すごい試合だったね!まさか本当に勝っちゃうなんて!」


カイト達が前のめりで感嘆する。


『勝者のレイン・フレイガルにはこの後に開催される称号授与式で正式に五星に任命されるとの事です!!皆様!健闘したレイン選手温かい拍手を!!』


「「「「ワァアアアアア!!!」」」」


会場が史上最高の盛り上がりをみせる。


『さぁさぁ!!それでは引き続きスペシャルマッチ第3試合を始めたいと思います!!』


『3年生の優勝者、ルビウス選手!お相手はどうしましょう!?』


「カティナで」


まさかの下克上をレインが果たし、その後も引き続き最後のスペシャルマッチが始まったが、下克上は達成されず。レインの星の授与式が正大に行われ、五星に1人が加わり名前を六星に改めた。


その後の六星同士の隠しイベントが開催される予定だったが、急遽新たなメンバーが加わったのとプラス、スペシャルマッチでの疲れがエイナとレインの両方が取れきっておらず開催は中止となった。



---そして時は過ぎ3年生の卒業式当日---


「あっ!ガルハートさん!」


式が終わり花束を持って、卒業式会場から出てくるガルハートに声を掛けるカイト。


「来てくれたのかカイト」


「あったりまえっすよガルハートさん!あんまり絡みはないっすけど、一応色々とお世話になったので!受け取って下さい!」


「感謝する、ここは人が多い、あっちに行って喋ろう」


ガルハートの周りにはファンらしき女子生徒がうじゃうじゃいたので、場所を変える。


「どうだ最近?ちゃんと訓練しているか?」


「修行は1日とも欠かした事はないですよ!それよりガルハートさんはこれからどうするんですか?」


「そうだな、、色々と悩んでいる所だ」


「そういえばガルハートさんって名家の出身でしたよね?悩む事なんかあるんすか?」


「その家の事で悩んでいるんだ、、俺は冒険者になりたくてな、だが家を継ぐ様に父様からキツく言われていてな、、」


「あぁ〜、それは大変すね、因みに冒険者になるとしたらどこかのギルドに入るんですか?」


「あぁ、一応『黎明の劔』と『ジャックスペル』から声がかかっているから悩むとしたらどちらを選ぶかという事くらいだ」


「さすがガルハートさん、黎明の劔から声がかけられるなんて」


「大した事ではない、六星より先を目指しているお前にならいずれ声がかかる」


それからガルハートと色々な話をし、日が暮れる。


「最後に1つだけお願い事してもいいですか?」


「急に真面目な顔付きになってどうした?」


「最後に俺と手合わせお願いできますか?」


「そういう事か、、と言うよりそれが目的で俺に会いに来たな?」


「ちょっ!違いますよ!俺はただ純粋に、、」


「フッ、冗談だ、良いだろう!これで会うのが最後になるかもしれないからな、何かひとつでも後輩に残しておかないといけないな」


「よっし!んじゃあルールはどうしましょう?」


「何でもありでいいんじゃないか?」


「そうですね!あ!後ひとつ頼みがあるんすけど、手加減なしで最初から本気で来て下さい!」


カイトの言葉に目を見開くガルハート。その表情が心配の表情にも見えたカイト。


「いいのか?」


「いいんすよ、実力差がどれほど有るのか知れればそれでいいですから」


「そう言うのなら最初から全力で行こう」


「それじゃあ試合開始の合図はこの石が地面に落ちた瞬間でお願いします」


ピッ!


カイトは土魔法で生成した小石をコイントスの様に弾き、構える。


「アッシュ!」


シュインッ

『っしゃあ!いくぜぇ!!』


カイトの声に呼応してアッシュが現れる。


「セリー、おいで」


『まーた性懲りもなくガルに挑むなんてほんとバカよね』


同時にガルハートも自身の精霊を呼び出すと、再び気怠そうに現れる水の最上級精霊。


そして宙に弾いた小石が地面に接触する。


カッ




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