第1章 闘技大会5日目 決勝
朝日の日差しに顔を照らされ起床し、日課であるランニングと筋トレ、そして素振りをした後仕事に向かうルドガーを見送り、昨日の夕食の残りを食べ終える。
「ごちそうさん、んじゃあ行ってきまーす」
「にーにがんばってー!」
「ばってー!」
「気を付けていってらっしゃい」
家を出て即座にテレポートで会場に瞬間移動するカイト。
「っし、アップするかー」
『どうだ?調子の方は?』
「ばっちしよ!後はあいつを倒して今度こそはガルハートさんに卒業祝いで一発入れてやるだけだ」
『まだ勝ってもねぇってのに先を見過ぎだっつーんだ』
決勝の特設舞台へと上がり色々と頭の中でシミュレーションをする。
そして数時間後いよいよ決勝の開会式が始まる。
『さぁいよいよやって参りました!闘技大会決勝当日!1年生の部では何と準決勝から1科のみでの優勝争い!!果たして優勝の座を手にするのは誰だぁ!?』
実況席が観客を煽り、会場全体が歓声で震える。その歓声を聞きながら控え室から舞台へと入る廊下のような場所でジュランと肩を並べながら入場の合図を待つ。
「すげぇ盛り上がりだな」
「前回はここまで盛り上がってはなかったんだけどな」
「いよいよだな」
「あぁ」
『さぁそれでは本日の主役の2人の入場だぁ!!剣術科カイト選手とジュラン選手です!!』
軽い会話がちょうど終わった瞬間、入場の合図がかかり、2人同時に会場へと入場する。
「「「「ワァアアアアア!!!」」」」
歓声と共に舞台上へと上がり、舞台の真ん中で左右に背中を向き合い分かれて進み、ある程度の距離で振り向き互いに剣を抜く。
『それでは闘技大会1年生の部決勝戦!!剣術科カイトvs剣術科ジュラン、、、始め!!』
試合開始の合図と共に互いに向かって前へ走り出す2人。
キィン!!
金属同士がぶつかり合い、火花と剣風が迸る。
キィンキィンキィン!!
更に3回ほどカイトが攻撃を仕掛けるも全て受け止められる。
そして4回目の下段からの攻撃をジュランがジャンプで躱したあと、剣を構える。
『万灼』
至近距離で放たれる蒼炎が瞬く間にカイトの全身を覆う。
スッ
バキィン
炎の中から腕が伸び、ジュランの持っている剣の刀身を握り潰す。
そしてすぐさまジュランから見て剣を粉砕した手の左側から剣の刀身がジュランに向かって伸びてくる。
『天歩』
右足で宙にいる自身の横に出現させた魔力の足場を蹴り、顔に目掛けて伸びる刀身を避けると同時に、焔剣エニスと緋剣イグニを取り出す。
「くっそ〜、今ので行けたと思ったわ」
「へへっ、間一髪だぜ畜生」
炎が消え、カイトが姿を現すと同時に文句を垂れ流す。
それに対しジュランは一笑した後2本の魂装剣を握り締め、腰を深く落とす。
『火走り』
ダァン!!
『雷斬破』
カイトの剣から放たれた斬撃を、横にステップし避ける。
『エレクトロ』
ステップで斬撃を避け、ジュランの燃え盛る足が地面と接触するタイミングで、まるでそこに避けると予言していたレベルの絶妙なタイミングで雷光がジュランを頭上から射抜いた。
『影落ち』
ズプンッ
ジュラン雷撃を直撃し、全身が麻痺しながら力づくで剣を地面に突き刺し、影の中に落ちていった。
(どうせ使うのはあの技だろ)
地面を警戒するカイト。
『八斬夜蠎』
地面が隆起し、中から8体の影で作られた大蛇が現れ、多方向から同時にカイトに襲いかかる。
カイトは真上に数十メートルジャンプし、大蛇の包囲を逃れるも、カイトに向かって大蛇は伸び続ける。
『雷鳴剣・雷貫』
真っすぐに放たれた一本の雷光が下から這い上がろうする8体の大蛇を貫いた。
(どこに行きやがったあいつ、、)
『凰火一閃』
姿が見えないジュランを警戒していると、テレポートでちょうどカイトの真上から現れたジュランが、凰剣イグニスを手に、天歩で勢いをつけカイトに向かって突撃した。
『雷走』×『天歩』
カイトは『く』の字に雷走と天歩を同時に使用し、真上にいたジュランの更に真上へと瞬時に移動した。
「すげぇ!!」
思わず観客席で声を漏らすルフト。
「よくもあんな事思いつくわよね、、」
ルフトに続きラゼッタもカイトのした瞬時の判断に称賛の声を漏らすが、その声や表情には少しばかりの悔しさも垣間見える。
(また成長したね、カイト)
ヴァイスの隣でカイトを優しい笑みで見ながら、心に思う。
(戦ってる姿カッコいいな)
誰しもがカイトの勝ちを予測したが次の瞬間、その考えは打ち破られる。
『く』の字に移動しているほんの少しの間に、雷鳴剣を解除し、武器に闘気と魔力を纏わせる。
『千切り星』
半分の魔力を使い、放った巨大な斬撃に、ジュランはそのまま凰火一閃を地面に放ち、技の勢いだけを利用し着地したと同時に振り向きざまにもう一度凰火一閃を放つ。
「悪いがその技では止められないぜ」
落下しながらカイトは自身の放った斬撃とジュランの鍔迫り合いを傍で見ている。
スタッ
着地したと同時にジュランが斬撃に耐えきれなくなり吹き飛ばされた。
パァン
と同時に聴き慣れた音が聞こえた。
「お前なら俺の攻撃いなしてくると分かってたぜカイト」
背後から現れた異様な圧力に思わず雷走で前に走りだし距離を取ろうとするも、使う前に拳がカイトの腰を直撃し、吹き飛ぶ。
ズザァーッ
「んぐっ!」
霊気を解放したジュランが倒れるカイトに向かって走り出す。
すぐさまヒールで応急処置をし、立ち上がるカイト。
『灰燼』
縦に放たれた手刀を闘剣で防ぐも、膝の位置まで字面にめり込む。
『テレポート』
即座にテレポートを使いその場から脱する。
「くそ、、あの凰剣とやらはクローンでコピー出来ねぇんじゃねーのかよ」
「あぁ、お前のその読みは正しいぜ、だから本物をクローンに持たせて戦わせたんだ」
「なるほどなぁ、それで霊気解放で自分自身と一体化して戻ってくるからああいう戦い方ができたって訳か、、」
「やるだろ?」
「一手上を取られたのは悔しいが、まだ試合は終わっちゃいねぇ」
カイトは剣を正眼に構え、両肩から闘気の腕を生やす。
「互いに全力でいかねぇと死んじまいそうだなこりゃ」
「行くぜ!」
「来い!」
カイトは身体能力の限界突破で一気にジュランとの間の距離を詰める。
後半魔力切れで何もできなくなるカイトは魔力を極力使わない様に戦える方法は何かと考えていた。
そこで思いついたのが剣の上達。剣が下手ではまともに敵と渡り合えない。自身が闘気と魔法のお陰で何とか同じクラスのみんなに追いついているものの、結局剣の腕では未だに学科では真ん中あたりの実力者のメルトにすら負けるカイト。
剣術科の生徒なので剣の上達は当たり前だが、元々剣を志望してウルミストに入ったにも関わらずカイトが熱心に集中して精を出していたのは魔法と闘気の修行だけであった。剣が下手なら魔法と闘気でカバー出来ればいい、アルベルトと初めて実戦訓練で互角に渡り合った後にそう言った感情が徐々に芽生え始めていった。そこから破竹の勢いでクラスの殆どを抜き去り今では剣術科で3本の指に入る程と言われている。
しかしその勢いも虚しく大陸大会でそんなカイトを否定するかの如く敗北を味わった。相手選手の出直せとの言葉。カイトは色々と考えさせられた。そして今の自分が中途半端と認識したカイト。だが今までの自分の考えに対して間違っているとは思わない。足りない実力を他の物でカバーしただけだ。現に今でもその様な戦い方はしている。ただその時の試合ではそこに限界が来ただけ。勿論そのまま闘気や魔法でカバーし続けても自分はまだまだ強くなり成長するが、芯の部分でまた敗北を味わわされる。その時も悔しくてまた同じ様に相手選手が言った醜態を晒す事になる。
あの様な形で負けたのが悔しくて堪らなかったカイト。剣士と剣士の勝負に邪道とも言えるほぼ魔法や闘気を駆使しての戦い。それでも尚潔さもなく戦い続けようとしたのだ。それで試合後に子供みたいに拗ね出して仲間に気を使わせてしまった。死ぬ程ダサい自分を見捨てなかったセニカの為にも、そしてこれから負けない為にも剣の腕はこれからカイトが学園最強を目指す上で必要最低限の力。
自分に足りなかった物、それはいつしか強くなる為に捨てた正面から正々堂々と戦う姿勢と負けた時の潔さだ。正々堂々無くしては潔さなし。
そして今、カイトはまた一つ強くなった。
「参りました」
頭を下げ、自ら降参を申し出たカイト。
魔力を倒れる寸前まで節約しながら戦ったものの、現状持ちうる全ての剣技はジュランに対する決め手に欠ける物だった。ただ自身の剣の腕がまだまだだったと言うことだけ。剣の道はかなり深い物だと感じさせられたカイト。ジュランと自分との間にはすぐには埋められないほどの実力差がある。そんなジュランを正直に認め敬い、それを気付かせて貰った相手に対し、礼を含めての降参。
ジュランは息を切らしながら目を見開き、笑う。
「ハハハハッ!負けたってのに良い目してんな!」
「正直に言っただけだ、お前は強ぇよ、俺の剣の腕ではお前に刃を当てる事すら出来なかった」
「そうかそうか、大事なモンを見つけられたんだな、そんな顔をしてやがるぜ、、」
何故かしっくりこない顔に戻るジュラン。
「ん?どうしたんだ?」
「今試合が終わったから言うが、お前が後何回か俺に仕掛けていたら魔力切れでぶっ倒れていたのは俺の方だったぜ」
「そっか、まぁいいよ、それでも勝ったのはお前だ」
「ちっ、かまかけたつもりだったがやっぱりそうだったか」
「何の話だ?」
「いや、何でもねぇ、ただこれからのお前が化けそうで怖ぇぜ」
「ハハッ、そん時はコテンパにかましてやるよ」
こうして闘技大会の1年の部の優勝者はジュランとなった。
「おつかれカイト」
「ふぅ、、強かったよあいつ」
「うん」
「どうしたんだセニカ?」
「なんか顔付き変わったねカイト、カッコよくなってる」
「そんな事言われると照れるって、、」
「いい試合だったカイト」
「ありがとうございます師匠」
「師としてお前らみたいな教え子を持てて嬉しいぞ」
ヴァイスは素直にカイトを褒めたつもりだがカイトはなぜか他の受け取り方をした。
「ちょっと、そんな事言わないで下さいよ師匠!まるでもう教えて貰えないみたいじゃないですかぁ!」
「ん?俺は純粋にお前たちを褒めただけだぞ?」
「ハハッ、私も一瞬もう教えて貰えないのかと思っちゃった」
こうして冬の闘技大会の幕は閉じられ、後日スペシャルマッチが開催された。




