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第1章 昔の友達



ウルミストを出発した後、大陸大会の主催スタッフから国境検問所を通るための通行証である腕輪を付けられた。そして今現在カイト達はエリュードを出発してから1日が経ち馬車の中で寛いでいる。


「はぁー」


「またため息ついてんのカイト?」


ラゼッタが馬車の窓でため息をつくカイトに声をかける。


「もう何がなんやら、こんなんで本当にいいのか!?なぁお前たち!なんで棄権したんだよ!不完全燃焼すぎてずっとソワソワしてんだよこっちは!」


「あ、上がり〜!」


「なっ、またセニカが1位抜けかよ」


「ん〜ルールがさっぱりわかんねぇ!」


「くっ、やるな、セニカ」


馬車の机でトランプの様なカードで遊んでいるセニカ、ルフト、ジュラン、アルベルト。


「聞いてねー、なんで呑気にガードなんかで遊んでられるんだよ」


「文句ばっか言ってねぇでほらお前も混ざれよ!」


「あ、私そういえばお菓子持ってきたら取ってくるね」


ジュランに引っ張られながら強引にガードゲームをやらされるカイト。




「みんな聞いてくれ」


カードで遊んでいる途中、ルフトが突然深妙な顔つきになり、みんなに話しかける。


「どうしたんだよ」


「どーせまたくだらない事考えてんでしょ?」


「違うラゼッタ、俺はいつもにもまして真剣なんだ」


「おー?何するんだよルフト?」


「聞いてくれジュラン、俺はこの学園に入って2回目の授業の時、ある1人の女性に完全に心を射抜かれたんだ」


「お前まさか?」


「だれだ?だれだ?」


「あそこに1人でいるスカーレットちゃんを俺たちの輪の中に入れてあげようと思う」


そう言ってルフトは自分たちが囲んで座っていたテーブル席の後ろにあるソファーで、武器を磨いているスカーレットを見る。


「なんだよ、てっきり告白でもするのかと」


「セアッ!」

「ブフォ!」


突如ルフトがカイトの頬に正拳突きを放つ。


「いいかカイト!知り合って間もない女性にいきなり告白をしたら女たらしだと思われるだろ!?」


「いってて、言ってることは間違ってないけど、お前が言うかよ」


「俺はそんな男じゃない!」


「うーわ、自分の都合のいい様に記憶が改ざんされちゃってるよこいつ」


「だぁーはっはっは!いいぞいいぞ!ルフト!」


「セアッ!」

「ブホォッ!」


今度はジュランに拳が飛んできた。


「いってて、なんで俺なんだよ!」


「笑ってる顔がムカついたからなんとなくだ」


「がーっはっは!笑うからだよジュラン!」


「取り敢えず、行ってくるぜ!」


ルフトは席を離れ、ソファーの方へと向かった。


「あのー」


「ん?あなたはー?」


「改めて槍術家のルフトですマドモアゼル!ダハブまでの道のりはまだまだ長い故、僕達と楽しい事」


『しませんか?』


華麗にスピンを決めて、片膝を地面に付け、手を差し出すルフト。


「プフッ、、なぁラゼッタ、アイツいつもあんな感じで口説いてんの?」


座席から顔を覗かせてルフトの様子を見るラゼッタとカイトとジュラン。


「そうよ、あんたも知らないわけじゃないでしょ?」


「ブフッ、あの口説き方は初めて見たぞ、また何かの本を読んで影響されたんだけど、フフッダメだ、あの口説き方はないわっ」


肩を震わせ、笑いを我慢しながら2人の様子を見るカイト。


「結構です、本戦に向けて準備もありますので」


「え?、、ゴホンッ、よろしければそのお手伝いをさせて頂いても」

「結構です」


ルフトに向かって微笑むも目が笑っていない事に気付く一同だが、恋愛に関してバカと天然を発動させたルフトは照れているのではないかと思い、さらに距離を詰めようとする。


「じゃあせめて紅茶でも」

「結構です」


「じゃあ肩をお揉み」

「結構です」


段々と彼女の眉が釣り上がっているのを見たカイトは嫌われる前にルフトを回収しようと、ソファーの方へと向かう。


「そんなとこにいたのかよ、ほら!みんな待ってるから早くババ抜きするぞ!」


下手な小芝居を打ちながら、ルフトの両脇を肘で掴み抵抗しようとするも・w


「ぐぬぬっ!やんめろぉ、、今いいとこなんだよっ」


「なっ、ばか!気付けよ!顔が笑ってないだろ!えっへへすいませんね!いま連れて行きますんで」


小声でルフトに注意しながら、スカーレットに笑顔で邪魔者を回収する意思を伝える。


「迅速にお願いします」


「ばがぁ!やめろぉおおお!」


床に倒れて抵抗するも虚しくカイトに連れて行かれるルフト。


「何もあんな冷たくしなくてもいいんじゃない?」


「セニカ、まさか貴方の方から私に声をかけてくるなんてね」


「声をかけるつもりなんてなかったけど、友達が理由もなしに冷たくされてるのが見ていられなかったからね」


「貴方の周りには私と違って今でも人が一杯ですね」


「私とリアンナにあんな事する程の人間だもん、誰も寄ってこないわ」


スカーレットの顔つきがしかめっ面になるも、何も言い返せない。


「ルフトは真っ直ぐで良い人で私の大事な友達だから、私の時みたいに傷つけたら許さないから」


セニカが言い放った後、カイトたちの方へと向かう。


「友達、、私にそんなもの必要ないわ」


磨いた武器に移る自分を見つめながら、スカーレットはソファから腰を上げる。そこから宿に到着し2日目の移動が終わった。


「ふあーっ!」


バフンッ!


勢い良くベッドにダイブするカイト。


「なぁカイト、ここの近くにポルプフの丸焼きが売ってるらしいぞ」


「まじ!?こうしてられねぇぞ!セニカとアルベルト達も誘っていくぞ!」


アルベルトとジュランを見つけに部屋を出たが2人を見つけられず、結局いつもの4人で丸焼きのあるレストランへ向かった。


「どんなのかなポルプフって」


「え?食った事ないのかセニカ!?」


「あたしも食べたことなーい」


「まじかよお前たち、、」


ルフトが驚きのあまり言葉を途中で失う。


「いいか?今日から自分の好きな食べ物の順位が全部下がる、それはだけは保証するぜ」


「あぁ〜、この香ばしいスパイスの効いた香りは〜、こっちだみんな」


「流石ルフト!ほら売り切れる前に行くぞ!2人とも!」


「ちょっと引っ張んなくても!」


「落ち着きなさいよあんた達!」


ルフトが匂いの元を辿ると、レストランの外でわざと匂いを放つ様にポルプフの丸焼きを風魔法で煽っていた店員がいた。


「すいませーん!4名で席空いてますかー?」


「ん?あぁ、お客さんね、店内の席はもう満席でな、そこのテントの席でよかったら案内するよ」


「じゃあテントの席でお願いします!」


そう言ってカイト達はお店の手前に設置されたテントにあるテーブル席についた。


「注文はどうするんだい?」


「丸焼き4人前と、ほかにオススメなんかありますか?」


「うちはポルプフを使った料理が主だ、サラダなんかは女性に人気だな、それと丸焼きをそのまま食うんじゃなくて、カリッカリのポルプフ肉をご飯の上に乗せて特製のソースとダシを入れた料理、名付けてポルプフスープがオススメだ」


「だめだ、考えただけでヨダレが止まんない、とりあえず今言ったオススメ全部一人前ずつください」


「あいよ!」


「ちょっと2人ともそんなに注文して大丈夫なの?」


「大丈夫だ、ポルプフに関しちゃ、俺とルフトは1人で5人前まで食った記録があるんだ、食えなくなったら俺たちが食べるから気にするな」


「なぁカイト、ここのお店結構当たりじゃね?バザーのお店は味一つしかない丸焼きだったけど、ここはいろんな味もあって、料理も丸焼きだけじゃない」


「だな、ここのお店の場所はもう記憶した、いつでも来れるぜ」


「本当に便利な魔法だねテレポートって」


「な、俺もまさか学園生活の序盤に使える魔法だと思ってなかったし」


「私も無属性適性が良かったわ〜」


「適性がなかったら殆どの魔法が使えないってほんと不便だよな」


「まぁでも分からないぞ、魔法についての研究は今現状でも2割しか解明されてないからな、いつかファミル先生や他の人がその謎を解き明かして、使える様になるかもしれないぞ」


「そう言う地味な仕事あたしには無理だわ〜」


「そういえばラゼッタって大陸でも有名な貴族の出なんだろ?将来は竜とか倒して回るのか?」


「それが難しい話なのよねー、お家柄の事で縛られるの嫌だけど、パパとママは私に期待してるから、2人の期待を裏切りたくないって気持ちもあるし」


「大変だよな、竜を相手に戦い続けるなんて」


「まぁね」


「四貴族って他にどんなのがいるんだ?」


「あ、それ俺もきになる」


ルフトが質問にカイトが食いつく。


「まずはあたし達竜狩りの一族でしょ?それと剣聖オルフォルトの子孫であるオルフェオン家、魔女王セトラの血を引くセトラ家、そしてこの3家の中でも1番歴史が浅い、アドラス家」


「剣聖オルフォルトの家系とか無茶苦茶強そうじゃん」


「まぁ四貴族が主催するパーティーが毎年あるんだけど、正直当主の人達はみんな化け物よ、近寄り難いし、なんか同じ人間とは思えない雰囲気を醸し出してる」


「その中に親父さんもいるんだろ?」


「普段の生活ではダメダメなパパだけど、そう言う場に行くとやっぱり出してる雰囲気変わるよね、カッコいいって思っちゃったもん」


「とんでもないパーティーによく行けるねラゼッタ」


「あ、もしかしたら当たるかもよ、大陸大会で」


「え?マジで?」


「確か後継ぎが全員揃って同じ年齢だったわ、親達が誰の家の後継ぎが1番強いか、当代本人達が本気で戦えば地形変わるから、子供使って仕組んだんでしょうけど」


「無茶苦茶な親達だな」


「まぁでも結構昔からやってる事みたい、パパ達の代もみんな同い年だし」


「みんなすげぇ強そうだよな、よかったわ辞退して」


「でも強い方がやりがいがあるってものよね」


「だよな、やっぱりセニカとは気が合うよな」


「強いっちゃ多分強いよね、特にオルフェオン家に関してはパパ達の代の四貴族の中でも圧倒的に強かったらしいしね」


「オルフェオン家か、使う流派は当たり前にオルフォルト流だろうな、いつもセニカやアルベルトとやり合ってるから対処しやすいっちゃしやすいな」


「オルフェオン家の使うオルフォルト流は普通の道場とかで教えてもらえる物とは別次元って聞いた事あるし、当たる事があったら吸収しようかな」



「へいお待ち!ポルプフの丸焼き4人前と、サラダに、スープだ!」


「キタキタ!うひょー!この匂いマジでたまらねぇー!」


「頂きまーす!」


突如横から出された香ばしい香りを放つ料理に、すぐさま直前まで話していた事を忘れ、ほうばりつくカイトとルフト。


「んぅーおいしいぃ〜、ラゼッタ、このサラダ本当に美味しいよ!」


「ん〜!お肉も最高ね!」


「あろ?おえほひさいさにくっあけほやっはうめー(だろ?俺も久々に食ったけどやっぱうめー)」


「もー汚いよカイト、ほら口拭いて」


ガッつきすぎて、鼻の先やほっぺに丸焼きの焦げが付き、みかねたセニカがハンカチを取り出してカイトの顔の汚れを拭いてあげる。


「「、、、、」」


ゴクッ

「なんで黙るんだよお前達」


「いやー、なんかねー、あたし達邪魔かなーって」


「チクショー!なんでカイトにできて俺に出来ねーんだよ!」


「まぁまぁ2人ともそんな事言わないで楽しく食べ」

ガシャンッ!!


セニカが言葉を話し終える前に、店内からまるでテーブルがひっくり返り返ったような音がする。


*「おいテメェ!舐めてんのかよ、あぁ!?」


*「いやー、わざとじゃないんだけどねー、参ったなー」


店から出てきたのは上下白色の学生服の格好をした男と、怒りと苛立ちを含んだ声で見慣れた紺色のブレザーを羽織り、店内からガランが現れた。



「うーわ、面倒ごと起こしてるよ五星の人」


「触らぬ神になんとかだ、知らんぷりしとこ」


「あれ?カイトは?」


ラゼッタとルフトが面倒ごととみて、自分達の食事に集中していると、カイトの姿が消えたことに気がつくセニカ。


「おい坊主!店内で暴れんじゃねーよ!やるなら店の外でしやがれ!それとっ」


いかつい店長が店の外からがランを注意しようとするも、弱気な店員に口を塞がれ、店の中へ入れられる。


「おら立て、潰してやるからよ」


「ちょっといいすかー?」


「あん?なんだお前?うちの学生か?」


(闘技大会で俺の事威圧したくせに、忘れてやがる)


「何があったか知らないですけど、先輩、落ち着いてください、あんたも何かあったか教えてください」


2人の間に入り仲裁するカイト。


「いやー、誰か分からないけど助かるよ、難癖つけられて大変だったんだよ〜」


ツーブロックのセンター分けをした学生がカイトの背中を掴み、助けを求める。


「難癖だぁ?テメェがスープを俺の服に溢した挙句、詫びの一つも入れねぇで帰ろうとしやがって」


「本当に気が付かなかったんだって〜」


「黙れ、1発喰らわせろ、じゃなきゃ俺の怒りはおさまらねぇ、それとそれ以上邪魔しようもんならお前もやってやるから身を引くんだったら今のうちだぞ」


「おい、謝ったほうがいいぞ、まぁ俺の経験上謝っても許してもらえるかどうかも怪しいけど」


「はぁ、、先輩達に面倒ごとは起こさないよう言われたのに、、」


「おい!いくら許してもらえるか分からないからってなんで逆にやる気になってんだよお前!」


「素直に謝っとけばいいものの」


「俺の直感が行ってるんだよな〜、あんたは許さないって、スープをかけた事は本当に申し訳ないと思ってる、ただ俺も一学生で学園の看板を背負ってきてる、大人しくやられてやるつもりはない、あんたその制服、ウルミストだろ」


「謝る気もない奴を許す訳ねぇだろ、いいからかかってこいやぁ!」


ガランが学生目掛け大きく飛躍し、拳を振り上げる。


「くたばれぇ!」


ガキィン!!


男は空間から剣を取り出し、ガランの拳を受け止める。


「重っ!」


しかし受け止めた直後、衝撃に地面が耐えきれず、ひびが入り、学生の足が地面に埋もれる。


「ちょっ!先輩!」


カイトが止めに、ガランの目の前まで雷走で近づく。


「どけぇ!」


「いい加減に!」


『闘剣』


ガキン!!


闘気を纏ったカイトの剣がガランの拳を止め…


「しやがれぇ!!」


ズドォン!!


自身の1.5倍近くあるガランの巨体を吹き飛ばした。


「やばっ、つい力が」


「わーお」


「わーおじゃねぇよ!早く逃げるぞ!」


男子生徒の手を掴み、テレポートで宿に逃げるカイト。


「ふぅ、、」


「うぅぷ」


突如男子生徒が口を押さえる。


「なんだ?さっきの衝撃が体に走ったか?」


『コンディションヒール』


「、、危ねぇ、ありがとう、もう少しで出るとこだったわ」


「俺はカイト、お前は?」


「サバトだ、さっきのはただの魔法酔いだ」


「サバトか、珍しい酔いだな」


「ウルミストの生徒の中にもいい人は居るんだな」


「いやいや、うちの学園は寧ろ悪い奴の方がすくねーよ、どんな偏見だよ、てかどこの学園生だよ」


「まぁお前のおかげで偏見が取れたよ、学園はグレアモル剣術学園だ」


「ほー、知らんけどな」


「まぁ取り敢えずありがとう、あんたのおかげで助かったよ」


「いいよいいよ」


「じゃあなー、次会うときは敵同士だ」


「おう」


こうしてカイトはグレアモル学園の生徒サバトを五星から助け出し、礼を言われた後別れた。


『テレポート』


スタッ


テレポートで再びお店に戻るカイト。


「うぉっ、帰って来たね」


「さっき物凄い形相でお前のこと追いかけに行ったぞ」


「大丈夫大丈夫、クローンで今ごまかしてる最中だからこっちには来ねーよ」


「ぷふぅ、ご馳走さま、あー絶対太ったわ〜」


「ゲップするとかマジで四貴族かよお前」


「そんなの気にしたら負けよ」


「んー!美味しかったー!これが大衆の味かー、うちの料理の何倍も美味しいよ!」


「舐めたらいかんぜ大衆の味を、料理や食材は美味いから高いんじゃないんだぞ、使ってる物が希少だから高いんだ」


「正直舐めてたけど、本当に美味しかった」


「よかったよかった、んじゃ宿に戻るか」


途中邪魔が入って来たものの、久しぶりのポルプフをセニカ達と大いに食せたカイトは満足して宿へと帰っていった。



ガチャ


*「どうだった?偵察は?」


「うおっ!なんだよいたのかよ」


薄暗い部屋の中で、月明かりに照らされている男が話しかけて来た。


「灯りつけろよ、なんで不審者みたいな事してんのさ」


ブワッ


部屋の中の灯りをつけるサバト。


*「なっ、せっかく雰囲気を楽しんでいたのに、釣れないやつだなまったくお前は!」


「もういつまでも子供なんだからミドラくんは」


藍白色のツンツン頭の男で右耳に剣の形をしたピアスをつけた男が、空気を読まないサバトを指摘する。


「取り敢えずどうだったんだ?」


「無茶苦茶なイレギュラーはあったものの、なんとか確認できたよ」


「そうか、ならやはりアイツも参加していたんだな!」


「うん、綺麗な菜の花色の髪の毛をした子でしょ?遠目でも目立っていたからね、お陰で持ってたスープ溢しちゃって、それから、、」


「やはり参加していたかラゼッタ!我が想い人よ!」


「おかげで死にそうになったんだからなー」


「知らん、そんな事」


「はぁー、もう良いよ、疲れたし寝るわ」


「待ってろよラゼッタ、今度こそ必ず俺の強さを見せて惚れさせてやる」


灯りを消し眠る2人、そして同時刻カイトは宿の外で日課でもある素振りをしている。


「198…199…200!、、ふぅ」


水分補給をするため、水を取ろうと後ろを振り返るとセニカが立っていた。


「まだ寝てないのか?」


「うん、、ちょっと考え事しててね」


「なんか悩んでるのか?相談ならいつでも乗るぞ?」


「じゃあいいかな、あ!もしまだ素振り続けるなら全然続けてね!」


「素振りしながらでも相談は聞けるよ」


水筒の水を飲み干し、最後の100回を始めるカイト。


「あのさ、スカーレットっているじゃん、ルフトが片思いしてる」


「1…2あぁ」


「実は高等学園に入る前の初、中等学園で同じ学園に私達いてね」


「フンッ!、、そう言えばルフトを連れてった後2人で喋ってたな」


「あ、気付いてたんだ、まぁ話戻すけど、中等3年までは私も普通に仲が良かったんだけどね、ある事件があってそれ以来口を聞いてないの」


「10…11!…何があったんだ?」


「私達はいつも3人組で仲よくてね、もう1人リアンナって子がいたんだけどね…」


=====================



「ねぇセニカ!お昼どうする?」


「やっぱり食堂でしょ!リアンナはどうするの?」


「わたし今日もお金がグフッ」


「もう!またお金何処かに落としたのね!リアンナってばドジっ子なんだから!」


お金がないと言い切る前に、セニカがリアンナのほっぺをつねり最後まで言わせないように、強引にない事を言い出した。


「いいだリアンナ、私達は友達なんだ、お互い助け合うのが友達じゃないか、代わりにいつもダメダメな私達の復習に付き合ってもらってるんだ、貰ってばかりじゃこちらも苦いものを感じる」


「もうっ!せっかく濁してカッコつけたのに、、」


「カッコつけるのが1番似合わんからなセニカは」


「もうスカーレットのバカー!」


「アッハハ!」


「運動神経も悪いのにどうやって私に追いつくんだ?んん?」


バタンッ!


スカーレットを追いかけようと走り出した途端、机に引っかかり勢い良くこけるセニカ。


「いったーい!」


「全く、、ほら」


『ヒール』


「あ、痛くなーい」


「スカーレットすごーい!魔法使えるんだ!」


「ま、まぁ昨日父に教えてもらったばかりだったからな」


「よし、それじゃあ食堂にいこっか!」


「うん」

「えぇ」


3人仲良く食堂に向かうと、ちょうど3つ空いていた席があったのでリアンナに場所取りしてもらって、後の2人で買い出しに行ってくる。


「あれ?」


先程自分達が座っていた場所に他の女子生徒が3人座っていた、そしてその横に尻餅をついたリアンナを見つけた2人はすぐさま駆け寄る。


「ちょっとあなた達?そこは私達が取ってた場所なんですけど?」


*「あら?学校にそんなルールあったかしら?」


座っていた3人の内1番派手な装飾で制服に身を包んだ女子生徒が言い返してくる。その女子生徒の名前はルルナ・バルキア。エリュード国王の家臣である大公の一人娘であり、一言で人物を表すと傲慢であり、かつてリアンナがいじめの標的になっていた所をスカーレットとセニカが助け、それを機に3人で良くいるようになった。


「行こうみんな、偉くて怖ーい大公様の娘には、マナーって言葉が分からないのよ」


「あら、一般常識なんてわたくしには必要のないものですわ」


「やだやだ、これだから七光って怖いよねー、自分じゃ何もできないくせに、困ったらすぐパパー!なんて言っちゃって、リアンナを助けた時もそうだったしねー」


「プフッ」


セニカの反撃に笑いを堪えきれず、吹き出すスカーレット。ただの口撃をしてもルルナにはダメージが入らないと分かっているため、辱めにあった話を掘り返すと、上位貴族は尻尾を掴んだ時の竜の様に怒り出すと父に教えられた事があったセニカは、普段の感じからは信じられない口撃でルルナの心に一つまた一つと反応を楽しむ様に、針を刺していく。


「むぅむぅむぅ〜、、こうなったら武力行使ですわ!」


「上等よ!やりなさいスカーレット!」


「なんで私に頼むんだそういう時は…」


小さき頃から武道の英才教育を施されたスカーレットにバトンを渡し、リアンナと共に後ろで隠れるセニカ。すると瞬く間にルルナはなす術無くしてスカーレットにコテンパにされ、最後の最後にセニカが止めの口撃をしようと前に出た瞬間。


ツルンッ


「きゃっ!」


ガシャン!


大きく滑って、持っていたスープを溢してしまったセニカ。


「いてて、、誰よこんなところに紙なんか捨てたのは」


「、、セニカ?逃げましょ」


「ん?なんで?」


「ほら」


スカーレットの指を指す方に目を向けると、うつ伏せで倒れたルルナの頭にスープがビシャビシャにかかっていた。


「あ、、なた、たち、、絶対に殺してやるぅー!!!」


鬼の形相でスカートの両端を掴みながら普段の1.5杯の速度で追いかけてくるルルナ。


「ギャアアア!!!気持ち悪ーい!!」


何とか振り切り学園の屋上で隠れる3人。


「あー、怖かったー」


「にしてもやり過ぎよセニカ」


「違うって、あんな事するつもりなかったの!」


「ぷふっ、にしてもあんなルルナ初めて見たわね」


「ははははっ!今思い出したら凄い面白いよね!いつもより凄い速さで追いかけてきたのよ?髪の毛ビシャビシャにしながら」


「2人とも本当にすごいね」


「リアンナもいつまでももじもじしてないで、たまには強く出ないとこれから先離れて私達の手の届かない所に行ったらどうしようもなくなるからね!」


「うん、スカーレットに稽古つけてもらおうかな」


「いいじゃないそれ!」


「いいの?」


「遠慮しないで」


「そ、それじゃあ、教えてもらおっかな」


「良かったねリアンナ」



=====================


「こんな感じで私達はいつも一緒で、困ったいたらお互いを助け合う程仲が良かったの」


「59…60、何かあったのか?」


「うん、リアンナがね突如学校に来なくなったの」


「どうしてなんだっ、、62...」



=====================


「あれ?今日もリアンナ休みね」


「何かあったのかな?放課後家まで訪ねてみる?」


「そうね」


リアンナが学校を休み始めて3日目、放課後にセニカとスカーレットは幸い少し前にリアンナの家に遊びに行ってきたばかりだったので、リアンナの家を訪ねる事にした。


コンコンッ


ガチャ


「ん?どちら様かしら」


ドアを開けたのはリアンナと同じ黒い髪の中年女性だった。


「あ、すいません、私達リアンナちゃんの友達なんですが、最近学校に来てなくて、心配で」


「あらそうだったのね、、でもごめんなさいね、折角来てくれたのに申し訳ないのだけどリアンナが誰にも会いたくないって言ってるの」


「何かあったのですか!?せめてリアンナに何があったのかだけ教えてもらえないですか?」


「セニカ、、少し落ち着いて」


リアンナの状態を聞き、声が大きくなるセニカ。


「そうね、、あなた達になら話しても良いわよね」


実はリアンナが学校を休む結構前、リアンナの父が突然仕事をクビにされたのだ、それだけで済む話なら良かったものの、職を新しく見つけようとするも、毎回門前払いをされ、相手にしてもらえなかったのだ、リアンナの父親は誰かの仕業だと思い、探った結果バルキア大公が影で糸を引いていた事が判明した。リアンナの父親は何故自分が嫌がらせをくらっているのか分からなかった。しかしそれを家族の食卓の前で話すとリアンナが青ざめた表情になっていた。そしてリアンナが休み始めた前日。リアンナはルルナを呼び出し、スカーレットに教えてもらった格闘術でコテンパにするも父を更にひどい目に合わせると脅し、それから何もやり返せなくなり返り討ちに遭い、それから学校を休み出した。


「それで責任をあの子が感じちゃってね、部屋に閉じこもっちゃったの」


「そうだったんですね」


「どうしよスカーレット、私達の所為でもあるよね?私達がリアンナを巻き込んで、、」


「そうね、、申し訳ありません、私達がリアンナをしっかりと守れなかった所為で、御迷惑をお掛けしまして、私が父に頼んでリアンナのお父さんの職の確保を責任を持って保障しますので、どうかご安心を」


スカーレットが前へ出てリアンナの母親に貴族特有の謝罪をする。


「頭をお上げください、貴族の方だったのですね、お気持ちは嬉しいですが、相手は大公様でございます、万が一そちらの家にも被害が来ると…」


「守ると決めたのでこれくらいは、それにいくら大公様でも、王族と太いパイプのある私の家には簡単に手出し出来ません」


「もしご助力できるのであれば助かりますし、リアンナも元気になると思います」


「お母さん、最後に一つだけお願いいいですか?」


「はい」


「少しだけ娘さんとお話しさせてもらってもいいですか?」


セニカがどうしても我慢できずにリアンナと少しだけ話が出来る様に母親に頼む。


「、、分かりました」


そう言って家の中に入れてもらい、リアンナの部屋の前まで案内してもらう。


「リアンナ?」


「、、、、」


「ごめんねリアンナ、私達の所為でイジメが酷くなっちゃって、私ただリアンナを守りたかっただけなの、こんな事になるって考えきれてなかった、本当にごめんね」


「、、、、」


「お父さんの件、スカーレットがうまいことやってくれるみたいだから安心してね、私達はいつでもリアンナの味方だから」


「、、、、」


「じゃあそろそろ帰るね、もし学校行くのがまだしんどかったら休んでいいんだよ、無理だけはしないでね」


「それじゃあね、リアンナ、父親の件は私に任せてくれ」


「、、、、」


結局なんの返事もなく、この日は変える事になった。そして次の日…


「ルルナ、ちょっと話があるんだけど」


「あらセニカ、どうしたの?そんなに怖い顔して」


「今日はそんな下らない話をしに来たんじゃないの、リアンナの件だけど」


「ぷふっ、そういえばあの子最近学校に来てないわね、何かあったのかしらぁ?」


「白々しいにも程があるわよ!私達に勝てないからって、父親の権力を使ってリアンナのお父さんをあんな目に合わせて、不登校まで追い込んで、リアンナがあんたに一体何をしたって言うの!」


「何を言ってるのかしら、前半の話に関しては身に覚えはないけど、あの子が今の貴方みたいに物凄い形相で私に襲いかかって来たのは覚えているわ」


バチンッ!


「あなたみたいな人間が大公様の娘なんて、聞いて呆れるわ」


セニカがクラスメイト全員が見ている前で、ルルナの頬に力一杯ビンタし、自分の教室に帰った。すると次の日セニカが学園長室に呼び出される。


「パパ?なんでここに?それに」


学園長室にはセニカの父と学園長、ルルナ、そして上品な装飾に身を包んだ男が、学園長の椅子に座っていた。


「君がルーストリア家の娘か」


「これは、なんですか?」


「まずは自己紹介からだな、ワシの名前はアルガイン・バルキア、バルキア大公現当主じゃ、早速本題に入るが、昨日ルルナがお前にあらぬ罪を着せられて、クラスメイトという人前が沢山いる中で、辱めを合わせられたと聞いたが本当か?」


「それには理由があります。貴方にも話しておきたい事がありました。この前、私達の友達の父親が突如誰かが裏で手を引いた所為で仕事がなくなりました。その人が調査した所、貴方の名前が出ました。貴方が裏で手を引いて友達の父親から仕事を奪っていたと、それで私の友達が激怒し、貴方の娘に襲いかかりました。しかし彼女の勇敢な努力も虚しく、返り討ちに遭い、彼女は心を病んで、学校に来なくなりました。そして昨日私は冷静にはなれず貴方の娘に問いただしましたが、此方と会話をするつもりのない態度に腹が立ち、クラスメイトの前で平手打ちをしたのは事実です」


「哀れじゃのぉ、これだから女というのは感情的で困る。娘が普段学校でどの様に振る舞っているかは知らんが、ワシに学校での小さないざこざでワシの権力を頼って来た事は一度もない。それにここの学園はそういうのに物凄い厳しいからの、今貴様が話したその誰かの父親の仕事を裏で手を引いて陥れた事に関しては全く身に覚えもない。しても得する理由がないし、そんな暇ワシにはない」


「それに返り討ちに遭ったのは、貴様の友人が悪いのではないか?何を勘違いしていたが知らないが、ワシの娘にあらぬ罪を着せて先に向こうから襲いかかって来た所を此方は正当防衛をしたまでだ」


「、、、、」


何も言い返せないセニカ。確かに大公が娘の敵討ちの為に1一般市民を陥れるほど暇じゃないし、した所でバルキア家に泥を塗るだけだ。筋は通っている。しかし大公でなければ誰が?どう考えても大公だと思っていたセニカ。逆に暇ではない立場、しても得をしない立場を利用したのかもしれないと考えるセニカ。貴族は皆頭がいい、その中でも大公という王族の次に偉い爵位が与えられる程の人物で有ればそれくらいの考えは当たり前に持っている。半信半疑で大公の弁明を聞き続けるセニカ。


「そもそもなんの確証があって私達に罪を着せているのだね、場合によっては名誉の毀損にもなるぞ?」


「確証はありません」


「だったら話はここ迄だ、学園長?我々に与えられた損失は計り知れませぬぞ?ワシは筋の通らない話が1番嫌いだ、子供達のいざこざでワシの大事な時間が奪われた、それもあらぬ罪によってな」


「た、大変申し訳ございません!」


「私の方からもキツく申し上げておきますので」


「ルベルト、お前は下級貴族の中でも、ワシは特にお前を可愛がっていたつもりだ、その仕打ちがこんなとは、参ったよ」


「返すお言葉もありません」


「まぁいい、子供同士が勘違いで引き起こした問題だが、貴様の娘にはこの学園から去ってもらう」


「え?」


「それだけで済むだけマシでは?」


「はい、寛大な処置ありがとうございます」


「ではこれでワシらは失礼するぞ」


「お見送り致します!」


「しなくていい」


学園長の見送りを拒否し、セニカは学園から退学処分を言い渡され、別の中等学園へと転校させられた。



=====================


「退学になったのか」


「うん、一時の感情と私の勘違いで転校させられてね、そこでは普通に過ごして卒業したんだけどね」


素振りを終えて、セニカの隣に座るカイト。


「結局その事件って?」


「私が退学した後、リアンナが意識不明の重体になったの」


「まさかルルナって奴がお前がいないことをいいことに?」


「ううん、意識不明の重体にさせたのはルルナじゃなくて、スカーレットだったの」


「え?なんで?」


「私もびっくりしてね、スカーレットの家に訪ねて問いただしたの、そしたらスカーレットがセニカが学園から去った原因がリアンナだったからだって」


「それだけでか?嘘だろ絶対」


「今でも分からない、でも実際意識不明になるまで怪我させたのはスカーレットだし、そんな理由で友達を怪我させたスカーレットが許せなくてね、そこで凄い酷いこといっぱい言って怒って帰ったの、それから私達の関係は終わったの」


「リアンナって子は今も意識が戻らないのか?」


「ううん、風の噂で意識が戻って他の国に引っ越したって、多分私の所為でスカーレットにあんな目に遭わされたから、私にも遭いたくないはず」


「そっか、そんな大変な思いしてたんだな」


「あー、思い出したらなんか泣きそうになっちゃう」


「よく頑張ったよセニカは、優しいじゃんか今と変わらず、それだけで良かったよ、俺はてっきりセニカが不良だったのかと思ったよ」


「不良になるわけないじゃんもう!」


「あ、でも不良のセニカも悪くないな、なんか可愛いじゃん」


「テイッ」


カイトの肩を軽く小突くセニカ。


「いてっ」


「次舐めた口聞くと、骨折ってやるからな」


「ひぃっ!すみませんでしたぁ!」


「アッハハッ!」


「やっぱいつまでも可愛いセニカでいてくれ」


「これからは不良目指そうかな」


「やめろよ、それこそセニカの父さんが発狂するぞ」


「そうだね、もういっぱい迷惑掛けちゃったし、何か恩返しでも考えないとね」


「そういえば1月6日って父の日だったよな、何か送ってあげないと」


「そうね、何がいいかな」


「手作りのペンダントとか?俺がやり方教えるよ」


「あ、いいねそれ」



それからカイトとセニカは夜明けまで話しをしていた。

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