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第1章 欲には線引きを



「ハァ、、、ハァ、、、」


「急げ!町までもうすぐだ!」


「あぁ、、わかってる」


カイト達と別れた後、必死に町まで走る討伐隊の6人。


「あいつら、無事かな」


「わからねぇ、でも俺たちが町まで逃げられなかったらあいつらのした事が無駄になる。それだけは絶対に」


「そうよ、少年にまで助けられるなんて冒険者失格ね、これが無事終わったら冒険者やめようかしら」


「俺もそろそろ引退だな」


偶然とはいえ、王種の魔物の様な実力差のありすぎる魔物と出会して自身の冒険者人生に終止符を打つ冒険者は珍しくない。寧ろ殆どの冒険者は老化、負傷、もしくはこの様な理由で辞めて行くのだ。


「おい、何か聞こえるぞ」


「まさかもうここまで!?」


「シッ!」


…カラッ…カラッ



パカラッ!パカラッ!



「この音は馬だ、それに街の方角から聞こえてくる」


「ギルドの応援?」


「助けか?」


ゾッ


背後から何度も感じた悪寒が走る。


「来やがったぞ」


「ダメだ、間に合わない!隠れるしか」


「隠れるったって、こんな平原の何処に隠れる所が」


「運が良ければギルドの応援が倒してくれる、今から応援の方に駆けつけたとしてもあの怪鳥の方が先に俺らに追いつく、なら少しでも息を殺して隠れて賭けに出るしかない」


『ルーム』


地面に魔法を放つと、階段が現れ中に入る6人。


『カモフラージュ』


入り口を元の状態にして隠し、息を潜める6人。


バサッ!!


遠くから翼をはためかせる音が聞こえ、やがてその音は隠れている6人へと近づいてくる。


バサンッ!


ドスッ


着地した音が聞こえ、口を手で塞ぐ。


ドスン、、ドスン


やがて真上まで怪鳥が来た瞬間足音が止む。


(クソっ、、バレてやがる、だったら!)


「ギエエエエエエッ!!」


ズドォンッ!!


怪鳥が鳴き声をあげた途端、衝撃音と共に地下の真上から衝撃が伝わってくる。


バサンッ!


音を聞くからに飛んでいく音がした。


ズガァンッ!!


「グエエエエエッ!!」


ビュンッ!!


バキィン!!


「上よ!」


「あぁ!」


ザシュッ!!


「グルァアアアアアア!!」


ゴゴゴゴゴゴッ


「撃たせたらやばいよ!」


「撃たせるかよ!」


キュインッ


ズガガガガガガガッ!!


「貰った!」


スパンッ!!


ボトッ



「ふぅ、、結構手強かったな」


「危なかったわね」


「倒したのは俺だから取り分は6:4な」


「何でよ!私の支援魔法がなかったらやられてたのはあんたよ!私が6よ!」


「分かった分かった、5:5でいいよ」


「因みに運ぶのも私だから6:4よ」


「なっ、、それh!」


「私の方が立場は上なんだから、弁えなさい」


「なっ、俺だってなろうと思えばなれるんだよ!めんどくさいのが嫌だからならないだけで」


「へぇ〜、、噂ではマスターに経験不足だからってなれなかったって聞いてるけど〜?」


「うるせーよ!6:4でいいよじゃあ!」


「嘘だよ嘘、5:5でいいよ、ただ取り分に関してまた優位を取ろうとしたら永遠に6:4にするからね」


「お、おう」


「返事がなってない」


「はい、リーダー」


「それじゃあ私は空間収納するから、ソーマは字面に隠れている人達を呼んできて」


「分かった」



「な、なぁ、もしかして倒したのかな」


「多分な、しかも声からして2人でその内1人は女だ」


「取り敢えず、出ようか」


『オープン』


地下から地上に出た6人の目の前に映った光景に全員口が開いたままになる。


巨大な鳥の頭が胴体と切り離された状態で無造作に転がっており、地面には沢山のクレーターが出来ていた。


「あ、でてきた」


「た、助けて頂いて有難うございます」


「この王種は俺たちの手柄にするけどいいか?」


「え?いやいや!手柄を頂くなど滅相も!」


「そっか、じゃあ貰うぞ、ミオン!この人達手柄いらないって」


「はーい」


シュンッ


怪鳥の巨大な体が全てミオンに空間収納された。


「あ、あのー、因みにどちらのギルドの所属でしょうか?」


「ん?ここだ」


ソーマは羽織っていた浅黄色のコートの胸の部分を手でずらし、中の服につけられた円形の白と黒が半々に分かれて、剣が円の中心にあるバッジを見せた。


「黎明の剱!?、、どうりで王種を」


「俺たちは帰るよ、つい来る?」


「あ、はい」


こうして町から怪鳥ゴンドルと怪鳥王ゴルゴンドルの脅威は去り、次の日の朝。



「にーに!」


ドスンッ!


「うっ、、ふぅー」


目を開けると可愛い妹が笑顔でカイトを見ていた。


「おはよにーに!」


「エリーか、、おいで」


「キャッ!」


エリーゼを布団の中に引きずり、力いっぱい抱いた後、起き上がる。


「ふぅぅぅんっ!!あぁー!」


「にーにママがご飯食べに行くよーだってー」


「うーい」


顔を洗い、歯を磨いた後洗面台に写る自身の顔を見る。


ブワンッ


「また闘気が増したな、はぁ、喜んでいいのか悪いのか」


闘気が増した事を確認した後、下の階に向かうと、全員集合していた。


「みんな用意速いな」


「ほら行くぞカイト」


(あんだけ激しい戦いの後だったのに、随分元気だな父さん)


「今日は何処で食べようかしら」


「場所はもう決めてある、あと紹介したい人達もいるんだ」


「紹介したい人達?」


「多分昨日の討伐隊の人達なんじゃない?」


「って言ってもこんな所に私達知り合いはいないわよシュリカ」


「あ、そうだ父さん、昨日のあの2人どうなったの?」


討伐隊と聞いて一緒に戦い、置いてきぼりにした2人を思い出し、ルドガーに2人の安否を確かめる。


「、、駄目だったみたいだ、助けに行ったうちの1人が2人を見つけて、治癒魔法を試みたが駄目だったみたいだ」


「そっか、、」


向こうは覚悟をしていたとはいえ、置いて逃げた事に強く罪悪感を感じるカイト。


(ダメだ、、またこんな力のない自分にイライラしてしまう、、落ち着け)


「カーイトッ、また悲観的な事考えてたろ」


「んっ?顔に出てたか?」


「うん、楽しい家族旅行の日くらいなんだからそういうの考えるの無しだぞ」


「あぁ、悪い」


それからいつもの調子を取り戻そうとくだらない話をルフトと話していると、目的地に着いた。


「よし、着いた、ここだ」


着いたのは冒険者ギルドの酒場であった。


「懐かしいぃなこの雰囲気」


「ここってギルドの酒場よね、私達入っていいのかしら?」


「気にすんな、紹介したい相手の招待と称して特別に入れて貰えることにしたんだ、ここのカーマッポの揚げ物めちゃくちゃ美味いから」


入り口に入るとカイトの想像していたギルドの匂いではなかった。


(もっと酒臭い場所だと思ってたけど結構普通だな)


中には冒険者や普通の住民が仲良く昼から酒を飲みながらご飯を食べていた。テーブルを何台か通り過ぎると、突然横から声が掛かった。


「おぉ!片腕の人!それにニイちゃん!」


声を掛けてきたのは昨日怪鳥から無事逃げ切る事に成功した討伐隊の人達だった。


「こんな所に子供が来るなんて珍しいわね」


「もしよかったら一緒に飲みませんか?昨日のお礼もまだ出来てませんし」


「悪いな、先約がいるんだ、また何処かで会う機会ががあれば一緒に飲もう」


「そうですか、それじゃあせめて、、」


「マスター!この人達のテーブルのお代こっちに付けといてくれ!」


「いいのか?」


「えぇ、助けて頂いたせめてもの御礼よ」


「そうか、じゃあありがたく受け取らせてもらうよ、じゃあな」


そう言ってルドガー一行は奥の個室へと向かった。


「あっ!先輩!こっちこっち!」


「おぉミオン!」


「うわっ!大家族ですね先輩!まさかの一夫多妻ですか?先輩ならもっと多いお嫁さんもらってると思ったんですけどね」


「ちげーよ、こっちが俺の奥さんのカミラで、息子のカイト、アルト、そして愛しの我が娘エリーゼで、この人はカミラの親友のシュリカでヴェスターの嫁さんだ」


「あぁ、貴方がヴェスター先輩の奥さんでしたか、旦那さんの事は残念でした、我々も下積み時代からルドガー先輩と共によくして頂いた仲でした」


「ありがとうね、それよりもヴェスとルドの後輩だったんだね」


「まだ俺たちが現役の冒険者だった時の後輩でな、このミオンが俺に付きっきりで世話してくれて、奥の部屋の中で待ってくれてるソーマって子がヴェスターの付き人だったんだ」


「奥の部屋でソーマが待ってるので早く入ってご飯しましょう!」


「そうだな」


奥の部屋に入ると男の人が椅子に腰掛けて寝ていた。


「こらソーマ!みんな来たよ!」


「うぉっ、、あぁ、うぉっ!こりゃまたびっくりっす!一夫多妻だったんですね先輩!」


「お前達から見て俺どんだけ女たらしなんだよ」


「今はどうか知らないですけど、昔は可愛い人を見つけては声かけてましたからね」


「へぇ、声を知らなかったわ」


カミラの髪が少し宙に浮き、無表情で額に血管を浮かべる。


「む、昔の話だからな!」


「私に声を掛けたのもまさかそんなしょうもない理由じゃないでしょうね」


「そ、それは」


「ふふっ」


(こえー!あの笑顔はもう終わったな父さん、南無阿弥だぜ)


「おなかすいたー!」


「ミアもー!」

「ミルもー!」


「取り敢えず座って注文しましょう!」


長方形のテーブルの椅子に腰掛ける一同。料理を注文した後、ご飯を食べながら大人達が話している中、邪魔にならないようにカイト達は食べ終わった後妹達と一緒にギルドの外へ出て、少し離れた広場へと向かう。


「にーに、ボールごっこしたい!」


「いいぜ、んじゃあエリーゼがボールな」


「うん!」


ボールごっことは球状の風魔法でエリーゼを包み宙に浮かせた後、ボールの様に遠くに投げ、それを遠隔操作で元に戻すという最近カイトがやる魔法操作の修行である。


「ルフトもいるから投げ合いでいこうか」


「えー、やった事無いし分かんねー」


「俺が投げたエリーゼをキャッチして、エリーゼを俺の方に投げるだけでいいんだよ」


「妹に何してんだよお前」


「それじゃあ行くぞ!」


『エアリアルスフィア』


シュルルルルル


「それっ!」


「いけー!」


カイトがエリーゼを中心に球体の風で覆い、ルフトの方へと投げ、エリーゼ気持ちよさそうに叫ぶ。


ボールがルフトの手前あたりで降下していき、急いで前へ出ようとした瞬間…


「うぉっ!やばっ!」


シュウゥゥ


足を滑らせ、ルフトの手前にエリーゼが落ち、エリーゼを包んでいた風が消える。


「おーい!いきなりミスとかダサいぞー!」


「おにぃださー」

「ださー」


ミルとミアが横からヤジを飛ばす。


「なっ、妹達の前で恥をかかせやがって」


『エアリアルスフィア』


シュルルルルル


「おらっ!」


「お!来たな!」


カイトがエリーゼをキャッチする体勢に入った途端、ボールが横にカーブした。


「あぁっ!」


シュウゥゥッ


「にーにも取れなかったー!」


「ださー」

「ださー」


「おいおい、頼むぜ経験者、俺のボールくらい軽く取って見せて欲しいもんだぜ」


右足を前から左足にクロスさせ爪先を立て、両手を上げやれやれと言った様子の体勢でカイトを挑発するルフト。


「の野郎ぅ受けて立ってやるぜ、眉毛吊り上げてるのも腹立つな」


『フォークボール』


「へっ、そんなストレートの球、余裕で」

シュウゥゥ


ボテッ


ボールはルフトの手前で落ち、またもボールをキャッチできなかったルフト。


「ださー」

「ださー」


「おいおい、直球すら取れないなんて、全く」


「いくぜー!!」


今度はストレートにボールが飛んでくる。


「球がどこかに曲がる前にとってしまえば」


カイトが足を一歩踏み出した途端…


ズボッ


「ぬおっ!」


ドテンッ


地面に足が固定された様に感じ、打ち付けた顔を触りながら足元を見ると、地面から岩が生えていてカイトの足を完全にロックしていた。


ブチッ


ズガッ


岩を拳で砕き、エリーゼの方に近寄りエアリアルスフィアで体を纏わせた後、闘気で少し頑丈にする。


『魔球・死にやがれデスフレイムボール』


豪速球で放たれた燃え盛る魔球がルフトに放たれる。


「舐めんじゃねえっ!」


水魔法で壁を作り、魔球を止めようとした途端。


バチンッ


「うぐっ!」


バシャン!!


ボールは水の壁を通過した瞬間勢いが止まり地面に落ちると同時にルフトの真上から電撃が放たれ感電し、痺れて倒れるルフト。


その後も、互いにボールを取らせない小細工の応酬が繰り広げられ、最終的にはエリーゼの目が回り2人の戦いは終わりを迎えた。


「はぁ、はぁ、、やるじゃねぇかルフト」


「ふぅ、、お前もな、、」


最後はスポーツマンシップで握手をし、互いの服がびしょびしょに濡れている姿を見て笑っていたら、ミルとミアも濡れていたのを見て更に2人の間で笑いが起き、親にバレない様に急いで全員の服を乾かす。


「ここにいたか」


少し遠くの方からソーマがカイト達を見つけ、カイトの方へと歩み寄る。


「親父さんの事は本当に残念だ、昔よく世話になっていてな、聞くところによると冒険者になりたいと言っていたな」


「あのー、、ヴェスターおじさんの息子は俺じゃなくてこっちのルフトです」


「、、、すまない失礼した、お前がルフトか?」


「は、はい」


「もし強くなりたければいつでも俺を頼れ、ヴェスターさんに返しきれていない恩だと思ってくれ」


そう言った後ソーマは羽織っていたコートの内ポケットからバッジを渡した。


「これって!、、」


「S級ギルドに入ると支給してもらえるメンバー間での連絡用の魔道具だ」


「やっぱり凄いギルドの人達だったんですね!このギルドはしかも黎明の剱!」


「大事にするんだぞ、俺のバッジとリンクしておいてあるから、魔力を流してくれればいつでも会話ができる、そのバッジの魔力を辿れば暇な時ならいつでもテレポートでそっちに向かえる」


「ありがとうございます!大事にします!」


「あぁ」


最後にソーマがルフトの頭に手を置いた後ギルドの方へと帰っていった。


「よかったな」


「あぁ、やっぱレプリカと違って本物の黎明の剱のバッジって材質がいいなぁ〜」


「まだギルドのバッジ集めなんかしてんのかよお前」


「なんだよ、俺の趣味には口出しさせねーぞ」


「それより気になったのは黎明の剱って凄いのか?ギルドオタクさんよ」


「オタク?」


「今はいいんだよそんな事、教えてくれ」


「黎明の剱はギルド連合の中の数多のギルドの中でも1位2位を争う超、超、ちょーう強いギルドで、あの人達はそこのギルドのメンバーの一員なんだよ」


「まじかよ、、」


「学園の噂では、ギルドメンバーは全員五星クラスもしくはそれ以上の才能がないと入れないそうだ」


「やばいな、て事は無茶苦茶強いよな、どうりでたった2人であの化け物を倒せる筈だ、にしてもいい人に目をつけてもらったな」


「うん、これで俺もお前に少し近づけたな」


「近づけた?ばかやろう、俺らの間に差はねーよ、バカ言ってねーで父さんとこ行くぞー」


「お、おう」


「どうだミルミア、エリーの調子は?」


「エリーねぇまだおきないよー」

「ないよー」


「おーいエリー、大丈夫かー?」


「きもちわるいよ、にぃに」


「流石にやり過ぎたかな」

『コンディションヒール』


「ん、、あ!きもちわるくなーい!」


カイトが回復魔法をかけた瞬間、エリーゼの体調が元通りに戻り、すぐさま立ち上がり、走り回る。


「それじゃあ父さん達の所に行くぞー」


「にぃにだっこしてー」


「ミルもー」

「ミアもー」


「ミルとミアはルフトにやってもらいな」


「おにぃならもうさきいったよー」

「いったよー」


「なっ!あいつ!」


「にーに!はやくー!」


「「カイトにぃ!」」


「んー!こうなったら!」




「やっと帰ってきたわねカイト、、ってその浮いている球は?」


カミラ達ががギルドの前でカイトを待っていると、3つの球を宙に浮かしたカイトが息を切らしながら歩いてきた。


シュゥゥゥゥッ


「たのしー!」


「もういっかーい!」

「もういっかーい!」


「ふぅ、、もうちょっとしんどいからルフトにやってもらえお前たち」


「こら、あんたまためんどくさがってカイトだけに妹達任せたわね?」


シュリカがルフトの耳を引っ張り出す。


「いててて!ごめんって母さん!みんな見てるから」


「罰として、妹達のワガママあんたが聞きなさいよ」


「えーー」


「えー、じゃない、行きなさい!」


シュリカがルフトのお尻を叩き、エリーゼ達のワガママに付き合わされる。


「それじゃあ出発しましょー!」


カイトがルドガーに耳打ちをする。


「あの人達も付いてくるの?」


嫌というわけではないが少し気になったので聞いてみる。


「ミオンとソーマは元々バハラ行商団が目的でこの町の近辺で任務を受けていたんだ」


「そうなんだ」


「いやー、にしても久しぶりのバハラ行商団ですねー」


「お前達は大陸内の色んな国を行ったり来たりしてるんだろ?バハラ行商団の情報とか聞かないのか?」


「そんな私達でも情報が捕まらないほどですからねー、ギルドのみんなに何かいいお土産見つけたら買わないと」


「へぇー、全国周ってるミオンさん達でも情報が掴めないんですね」


「そうよ、ある有名な国が行商団に腕利きの諜報員を行商団に送ろうとしたんだけど、やっとの事で行商団が現れる日付と場所の情報を国が確保し、送り込んだ後日、路端で死亡が確認されてたっていう逸話があるくらいよ」


「ただの行商団じゃなさそうですね」


「えぇ、彼らは何処から現れて、何処へ消えてゆくのかさえ見た者はいないと言われてるの」


「なんか怖いですね」


「まぁ客である限り向こうは何もしてこないわ、何かあったらお姉さんが守ってあげるからね」


「ありがとうございます」


そうこう喋っているとレウィックの中心地の広場へと着く。


「人が多いなぁ」


広場には地面が見えない程の人数の人がバハラ行商団を目当てに集まっていた。


「エリュードの建国祭より人が多いんじゃないの?」


「あぁ、昨日の町の静かさが嘘みたいだ」


ルドガーとカミラが会話をしていると先に様子を見に行っていたソーマが合流し、状況を説明する。


「後1時間くらいで伝令の人に聞くと着くらしいっす」


「今回はどのような形式かわかったかソーマ?」


「分からなかったっす、ただ人が物凄い多いのでオークションと思うっす」


「分かった、ありがとうな」


それから立ち話やらなんやらしながら1時間が半くらいが経過すると…


カーンッ!!カーンッ!!


町の大鐘が鳴り、大越で町人が声を発する。


「行商団が着いたぞー!!!道を開けろー!!」


広場の中心と行商団が通るであろう通路を空けるため一斉に多勢の人達が動き出す。


「うぅ、、」


パシッ


人混みに流されかけたところを、ミオンがカイトの腕を掴み、捕まえてくれた。


「ちゃんとお姉さんに捕まってるのよ」


「ありがとうございます」


やがて移動が終わる何故かカイト達が後方から先頭に立っていた。何故かはソーマとミオンが羽織っているコートが原因だったのは本人達には気付いていない。


「あ、ラッキーですね先輩」


「これでちゃんと目の前で商品が見れるぞ!」


「あまりはしゃがないでねルド」


「ミル、しっかり母さんの手に捕まっとくんだよ、ミアもおにぃの手ちゃんと握っとくのよ」


「はーい」

「はーい」


「エリーゼもママから手を離さないでね」


「うん」


「来ましたよ!先輩!」


ミオンの指の刺す方向に一同が顔を道に傾けて見ると、フードをかぶった人物達が3人、広場の中心へと歩いていく。


*「リア、品を」


真ん中にいた一番小柄な男性の声をした人が、右にいた人物に声をかけると、上空に魔法陣が展開され、中から山積みにされた荷台が落とされる。


ドサンッ!!


トンッ!


小柄の男が荷台の1番上まで軽やかに飛び、フードをバサっと取る。


「よ〜うこそ皆さまおいでくださいました!!本日はわたくしバハラ行商団銀員ソクラスが司会をさせていただきます!!よろしくお願い致します!!」


フードの中から現れたのは身を金品で固めたハゲの小太りの男性だった。


「待ってました〜!!」

「今回は何を売ってくれるんだ〜!?」

「デーライト鉱石が入荷したってのは本当か!?」


自己紹介が終わった後続々と質問が飛び交う。


「まぁまぁ皆さん!少し落ち着いてください、今から全て説明いたしますので、ゴホンッ!リア、リストを」


ソクラスが右にいたフードの人物に合図をすると、フードを取り、魔法で品物のリストを空中に表示させた。


表記されていた品物はどれもカイトの知らない物だったが、1つだけ気になった物があった。


「エルフの血?」


「なになにー?カイトくんエルフの血が気になったの?」


「はい、あれって何に使うんですか?」


「さぁね、聞いたところによると一部の物好きの間では高値で売買されてるみたいだけど」


「そうなんですね、それよりミオンさんは何か欲しいものはありましたか?」


「正直ね、全部欲しいわ!だってどれも普通の市場では出回っていない物ばかりよ!流石ね!」


「父さんは?」


「あぁ、目当ての物はあったぞ、イヴェンの住所だ」


「イヴェンの住所?」


「そうだ、天才発明家イヴェンのお店の住所だ、この人のお店は特別でな、ヴァルトイス大陸の各地のどこかに日ごとに転々としていてな、容易に辿りつけないんだ」


「何か作ってもらうの?」


「あぁ、何を作るかは秘密だけどな」


「ねぇルド、ラパダイス島のゴールドパスだって、あれ買って毎年家族で旅行しましょ?」


「それもいいな」


そして1番下には???と書かれた品物があった。


「1番下にある???の品物はなんなの!?」


すぐさま気付いた客に聞かれるソクラス。


「この下は本日の目玉商品でございます」


(目玉商品、、とにかくすげぇもんいっぱい売ってるんだな、やべーなんか雰囲気といい楽しくなってきたー!)


「販売形式はどうするんだー!?」


「おっとその説明もしないといけませんね、今回はここに集まっていただいた皆様全員に平等にチャンスを与えるためオークション方式で行きたいと思います!それでは早速最初の一品は…」


最初の品が紹介され、その後も次々と便利で使える物から、用途のわからないものまで紹介されたが、全て高値で売られていった。


「さぁ続きましてわぁ!かの天才発明家イヴェン・マルコスの店住所が記された魔道具だ!こちらは銀貨3枚から!」


*「4!」

*「8!」


「20!」


ルドガーが大きい声で値段を引き上げる。


「おっといきなり飛んで20枚!」


*「25!」


背後で更に値段を吊り上げる声が聞こえるが、ルドガーも負けじと同じ値段を吊り上げる。


「30!」


*「32!」


「ふふっ、こ底が見えてきたな、37枚!」


*「、、、38」


「40枚!」


*「、、、、、くそっ」


カン!カン!

「銀貨40枚で落札です!」


もう一人のフードの人がルドガーに紙を渡す。


「父さん、何それ」


「ん?これは所有書だ、あの品物は俺が落札した物っていう事を後で精算するときに渡すんだ」


「ほぉ、、成る程」


それからその後も、カミラの目当てのラパダイス島のゴールドパスを金貨1枚と銀貸32枚で落札。ミオンは世界で1番綺麗な花と言われる珠玉花と、アゴン大陸に生息する珍しい暴獣ラバドンの牙を購入。シュリカが発明家イヴェンの力作、魔導調理器具を購入。


そしていよいよ最後の品となった。


「それではいよいよ最後の品です!!」


ソクラスの背後に高さ1メートル程の綺麗な木箱が現れる。


「私の友人でもある、かの伝説の鍛冶屋イーグスタ・グラニエルが現役最後に打ったとされる最後の剣でございます!」


パカッ


木箱をソクラスが開けると、中から純白の刀身をした、獅子の横顔の柄をした美しい剣が姿を現し、すべての客を魅了した。


「おぉ〜!!カッコいい!!」


思わず声を漏らすカイト。


「値段は金貨10枚からとさせて頂きます!」


*「15!」

*「20!」

*「24!」


(めっちゃくちゃ欲しい!カッコいいしなぁ)


結果金貨40枚まで値段が釣り上がり、競い合う人も残り2人となった。


(どうしよう、、めちゃくちゃ欲しい、、でもお金ないし、もちろん金貨40枚なんて出せるほど金持ちな家庭でもない)


*「48枚でどうだ!?」


*「50枚だ!!」


*「くそー!!もう出せねぇ!」


「おっとここで決着かー!?伝説級の武器を今ここで逃すと、どこにいっても手に入らないぞー!?」


煽りに煽るソクラスの言葉でカイトが手を上げた。


「ん?坊や?」


「60で!」


「ちょっとカイト何言ってるのよ!」


「馬鹿野郎、いくら可愛い息子の願いでも金貨60枚なんて出せる訳ないだろ!」


「「「「アハハハハハハ!!」」」」


広場全体が笑いに包まれる。


(金になるかわからないけど)


『ポケットルーム』


ドスンッ!!


空間からデーライト魔鉱石を取り出した。


「これが金目になる物か分からないですけど」


(しまったー!ついついなんかノリで出してしまったー!)


「なっ!君それは!!」


*「おいなんだあの石?あれであの剣と交換するつもりか?」

*「がっはは!おもしれーガキだなー!」


ソクラスがカイトの出した魔鉱石を見て目を見開き声が漏れるも、すぐさま表情を元に戻し、魔鉱石の前まで移動し、ルーペを装着し、徐に鉱石を触ったりして鑑定し始めた。


「これはまさしくデーライト魔鉱石、混じりのない純度100%、それにこの大きさ、何処で見つけたのだ!?坊や!」


*「なんだと!?あれがデーライトだと!?」

*「なんであんな子供がそんな珍しいものを!」


(食いついた!それにこの石を見たときのこの人の表情、なんの石か分かった途端に周りが変わった感じ、間違いなく無茶苦茶価値のある物)


「場所は教えられません、、ただ今はその剣とこの石が交換できるかどうかを聞いています」


「も、もちろんだとも!是非とも交換しようではないか!」


「ただし全部とは言っていません、金貨60枚と先程僕の父と母、それとおばさんとミオンさんが買った商品の分だけをお渡しします」


「なっ、それは、、」


「ミオンさん、僕はこの石についてあまり詳しくはありませんがどれだけの価値があるかは周りの反応を見れば分かります。大体でいいですのでどれくらいの相場か教えてもらえますか?」


「んー、そうだね、純度100%のデーライトってなると1キロで金貨40は下らないけど、今じゃどこにも出回っていないから希少価値で更に3倍ってとこかしら」


「1キロ役120ですか、それだけで今回の品を全部買い取ることができるな、、それはいいとして、どうですソクラスさん、デーライト1キロと先ほど提示した品物と交換、あ、それともう一つ欲しい物というより、、」


「なにかね?」


「先程伝説の鍛治職人さんとお知り合いと言ってましたね、その人を僕に紹介してください、その人に特注してもらいたい物がありまして、その人と僕の橋渡しをしてください、それで出来によれば1キロではなく半分のデーライト、大体22キロほどをお譲りします」


「たったそれだけでいいのかね!?」


「カイトくん、いくらなんでもそれは損だよ?」


「そうよカイト、貴方がする事に口出しする訳じゃないけど、流石に損な事をさせる訳には」


「心配してくれてありがとうございますミオンさん、母さんもありがとう、でも大丈夫損じゃないから、ちゃんと考えているよ」


「では交渉成立いつという事でよろしいかね?」


「はい、よろしくお願いします!」


カン!カン!カン!


「本日最後の商品を見事落札されたのは誰が予想してたであろうか!なんとこちらの少年に決まりました!」


「「「「ワァァァァ!!!」」」」


こうしてオークションが無事終わり、カイト達と品物を落札した人達は町の高級宿やへと案内され、そこで順番に1人1人お金を払い、書類を書いた後、品物を受け取る。


そしていよいよカイト達の出番。


「おー!これはルドガー様御一行、よくぞおいでくださいました!」


ソクラスが直々に手続きをしに従業員と交代した。


「あのー、調子に乗って1キロと交換と言いましたが、なにせ硬すぎてどうやって1キロ分を分けれるか、、」


「ご安心を、此方の鉱石加工用魔導具であれば1キロくらい容易でございます」


そう言ってソクラスはカウンターの下から大きさ1メートル台の鋸を取り出した。


「少々お時間が掛かりますのでおかけになってお待ちしてください」


「分かりました」


カウンターのすぐ側にあるソファーで腰掛けていたらルドガーが話しかけてきた。


「いやー参ったな、まさか息子にあんな交渉術があったとはなぁ」


「本当よ、母さんびっくりしたわ」


「そんな大した交渉してないって、なんなら少し損したくらいじゃないかな」


「どうしてなんだ?損はあんまりしてないって」


「ミオンさんが言ってた希少価値含めて1キロ金貨120枚ってのをソクラスさんが聞いた時安心したような顔してたんだ」


「ほうほう」


「多分商人達の間ではもっと高値で取引されてたんじゃないかな、それに今日売っていた品物もどれも原価以上もし詳しく買値以上の値段で売られていたかもしれないしね」


「そこまで分かっていたのに何故もっと安くしなかったんだ?」


「それはまぁ、簡単な事だよ、ただでさえ原価よりめちゃくちゃ高くあの石を売れたんだ、人間誰でも儲け話があれば更に欲深くなるからね、ちゃんとそういうの線引きしておかないといつか必ず痛い目を見る、儲け話は程々にしておいた方がいいって、、あの、ギルドの酒場の中でおじさん達が話してたからさ」


「ぬおおおおおおっ!!いつの間に!こんな逞しい男に育ったんだお前は!誇らしいぞ!父さんは今お前が誇らしくて堪らんぞ!!」


「わあああん!!あなたー!カイトが大人になっていってるよー!!もういつまでも可愛い子供じゃなくなってるよー!!」


左右から両親の力強いハグをされ、息苦しさを覚えるカイトであった。


「ほこらしいぞー!」


何故か途中から見ていたエリーゼも楽しくなったのか、カイトのお腹目掛けて突進してきた。


そして30分後…


「ルドガー様、切断が終わりましたので精算の手続きをお願いします」


案内の人に呼ばれてカウンターへ向かうと綺麗に1キロ分と残りのデーライトをソクラスから渡された。


「それと此方の切断した時に出てきた粉末も袋に入れてありますので」


「御丁寧にどうも」


それから着々と精算を進め、ソクラスの住所の書かれた紙と綺麗な鉱石で作られた札を渡され、用がある時はこの札を持って訪ねれば飛んで向かうと説明をされ、カイトはそれらと剣を受け取り宿を後にした。


「いやーめちゃくちゃいい買い物したなー」


「ありがとうねカイトくん!」


「いいですよミオンさん、宿を奢って頂いたお礼と父の今までしたどすけべ行為の清算の一部にでもなればです」


「カイト、お前までも、、」


「それじゃあ私たちはここまでです、またいつかお会いしましょう皆さん」


「あぁまたいつかな、俺達の家の住所無くすなよ、またエリュードにもしよることが有れば家にこいよな」


「はい!ありがとうございます先輩!」


「俺もいつか時間があればシュリカさんとこ遊びに行きますっす」


「うん、いつでも寄っていおいで」


「ばいばーいそーま!」

「ばいばーいそーま!」


「こら、ソーマさんだろ、時間がある時にまた会いましょうソーマさん!」


「あぁ」


「絶対に家に遊びに来るのよミオン!あと珠玉花の種余ったら頂戴ねー!」


「はーい!」


こうしてカイト達はミオンとソーマと別れ、1日遅れで、帰路に就いた。

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