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第1章 王種


「んぅ、、」


朝日に顔を照らされ、目を開けるカイト。


「なんか、、日光強くないか、、んむぅ」


目を擦り、布団から体を起こしルーフバルコニーに向かい全身で日光を浴びる。


「んん〜っ!!気持ちいな!空気もうまいし」


「あれ?旅館の周りにあった木がなくなってる、、ってなんだこれ、、」


ルーフバルコニーから見える景色に思わず声が漏れる。


「雲の上?、、、」


「なんて綺麗な景色なんだよ、マジで凄いな」


高校の時に修学旅行で初めてオーストラリアに行く時、飛行機の窓から見える雲の上の絶景をずっと見られたらどれだけ素晴らしいだろうかと考えた事があったカイトは、今まさに自身が思っていた幻想が現実で起こっている事に感嘆する。


「それにしても、何がどうなって雲の上に居るんだ?魔法の力か?」


「うぅん、、うぇーーん」


「アルトが起きたか!」


急いで泣いているアルトの方へと駆け寄り、抱き抱えあやすカイト。


「ほら見てみろアルト、綺麗だろ?」


「、、ぐすっ」


「まだアルトには分からないかー、、みんなが起きたらビックリするだろうな」


「にーに」


「んー?」


「にーに!」


「ふふっ、どうしたんだよそんなににーにの事呼んで」


「うんちー」


「げっ!漏らしたのかよお前!」


シュビッ


「ドヤ顔でサムズアップしてんじゃねーよ!、、うーっわくっせ〜!」


アルトの履いている布オムツをめくると澄み渡る綺麗な空気の中に、糞便の匂いが漂う。


「このやろ〜、よくも人が最高の景色を堪能してる途中にクソの匂いで邪魔してくれたな〜」


手際良くアルトのオムツを替えてやると、目を閉じて寝ようとしていた。


「何気持ち良く二度寝に入ろうとしてんだこのっ!」


アルトの柔らかくてぷっくりしたカイトお気に入りのお腹に顔を埋めて甘噛みする。何故かは分からないがこの行為がとてもストレス解消になるのだ。


「キャッキャッ!!」


「このこのっ!お漏らしする弟にはこうだっ!」


「キャッキャッ!!」


「んふぅ〜〜!!」

バタンッ


「っ!いって〜」


シュリカが起き上がり、勢い良く伸ばした手を下ろすと寝ているルフトの顔面に直撃した。


「起こしちゃったかな、、」


「んぅ?あら、カイト起きてたの」


「いてーよ母さん」


「ほら、あんたも起きなさいルフト」


バサッ


ルフトの布団を勢い良くめくり上げ、カイトの開けたルーフバルコニーの窓から風が、寝ているルフトの体に直撃する。


「うぅーーー、寒いよぉ〜」


「いい天気ねー」


「シュリカおばさん、そこのルーフバルコニー見える景色すっげー綺麗だから見てみて!」


「ん?確か周り森のはずだろ、、うぉぉぉぉ!凄い何これ〜!!」


「なになに!?」


シュリカがルーフバルコニーから見える絶景に驚愕しているとルフトがそれに反応し起き上がって見に行く。


「やっば〜!すっげぇえええ!!」


やがてシュリカ景色を見終わった後、急いでカミラとルドガーを叩き起こし、2人にも見せると、驚きの余りルドガーが大きい声を出し、残りのミルミアとエリーゼも同時に起きた。


コンコンッ


「お食事をお持ち致しました」


「あ、どうぞ!」


ガラガラ


「失礼します」


運ばれたのは前世ではスタンダードなご飯に焼き魚、お吸い物、漬物、デザートがある定食だった。


「昨夜はどうでしたか?景色は気に入られましたかな?」


トメコが卓に朝食を並べながら昨晩の景色について伺う。


「はいとても綺麗でした!まさかあんなサプライズがあるなんて、伊達に店名に星が付いてるだけの事はありますね!」


「ヨッホッホ、有難う御座います」


「それより昨日の宿の高さが違うのはどうしてですか?」


「ここの山の地下はですね、魔力の力場が不安定でして、一月に1回たまった魔力が限界に達しこの山の真下の地殻を押し上げこの様になるのです」


「って事は一ヶ月に1度しか見られない貴重な景色を今見れているんですね!」


「さようで御座います、それでは御食事の邪魔にならない様これで失礼致します」




「やっぱりうめぇな定食は」


「にーに、あーんして〜」


「ほれ、焼き魚だ」


「おいし〜!」


「今日の予定はどうするの父さん」


「ここの近くの街にバハラ行商団が来ていてな、滅多に現れる行商団じゃないから見ていきたいなと思ってな」


「バハラ行商団!?あのダハブ商業一の行商団じゃん!」


「そうだ、何だルフト?バハラ行商団に偉く食い付いたな!」


「いや、ただ教科書にも載っている様な人達だったからさ、つい声が大きくなっちゃった」


「凄い行商団なのか?そのバハラってのは?」


「凄いも何も、そこの行商で売られている物はどれも各地方でしか手に入れる事が出来ない特産品や、一級品、珍品などがいっぱいあって、何よりその全部が物凄い安値で売られているから、30分も経たないうちに品物が全部売り切れるから幻の行商とまで言われてるのよ」


「ふーん、それで何が御目当ての物とかあるの?」


「婆ちゃん達にあげるお土産と古くなった装備の更新くらいかな」


「まだ仕事続けんの?」


「当たり前だろ?腕一本無くなったくらいでできなくなる仕事じゃないしな」


「母さんは反対しなかったの?」


「父さんは一度決めたら頑固だからね」


「そっか、まぁ母さんが良いって言うなら仕方ないな、程々にしてくれよな」


「あぁ」


ご飯を食べ終え、チャックアウトの時間まで暇なので、セニカに会いに行く事にした。


(どうしよ、、セニカの両親に言っておいた方がいいかな、セニカのお母さんなら許してくれそうだけど、問題は親父さんの方なんだよな〜)


「どうしたんだよ、今から彼女に会うに行くってのにそんなしかめっ面して」


「なぁ、付き合った時って両親に報告した方がいいのかな?ほら俺たちって平民だろ?一般的には貴族と平民の恋事って煙たがれるじゃん?それに貴族のルールとか色々っ」


カイトが話を終える前にルフトがカイトの肩に腕を乗せる。


「そんなに考えなくて良いんだよ、結婚するわけじゃないんだから。今はただ楽しみラブラブする事だけを考えろ!」


「お、おう」


コンコンッ


ガラガラ


「むっ、貴様!」


バタンッ


カイトの姿を見るや扉を閉めるルベルト。


「あっ」


ガラガラ


「どうしたのカイト?」


ルベルトが扉を閉めた途端、扉の奥から鈍い音が聞こえ、中からセニカが現れた。


「チェックアウトまで時間があるからちょっとだべらないか?」


「いいよ、いこ」


「グフッ、セニカたっ」

ドスッ


「ふぅ、、行きましょ」


「容赦ないな」


こうしてセニカを連れ出した後、ラゼッタも連れ出し、旅館のロビーでいつもの様にだべる4人組。


「にしてもやっぱり我慢できなかったのねー」


「こいつが変なこと言うからだぜ?折角人が断食してたのに、横から俺の好きな食べ物をチラつかせるからよ」


「って事はその場合好きな食べ物ってのはセニカちゃんになる訳だな〜」


「ちょっとやめてよルフト!」


「痛い痛いっ!ごめんってセニカちゃん!」


「それよりお前らはどうなんだ?」


「お前らって?」


「いやお前とラゼッタだよ、見た感じお似合いだけどな」


「俺とラゼッタ!?、、、」


「、、、ないない」


ルフトとラゼッタが少し見合ってラゼッタが答える。


「そうか?お似合いだと思うけどな」


「俺にはスカーレットちゃんと言う高嶺の花が!」


「あんたまだ諦めてなかったの?元八星の坊主の人が痛い事に彼女とかって言ってたのに」


「ふっ、恋というのは険しい山なのだ、見ろ!カイトとセニカちゃんの場合はその険しい山というのがあのムキムキパパだ!」


「はぁー、一応最初に言っておくけど、私のお兄ちゃんもパパとおんなじなの」


「げっ、マジかよ〜」


「あんたまさか今更うちのセニカと付き合った事後悔した訳じゃないわよね?」


「後悔はしてないけど、はぁーって感じだわ」


「まぁもし何かされたら私に言ってねカイト」


「う、うん」


その後も色々と話し込み、カイト達一家は予定より少し早めにチェックアウトを済ませ、セニカ達と別れた後、次の目的地であるマトルトの南西に位置するレウィックへと向かう。


「うぅぷっ、カイト、、酔い止めの魔法頼む」


『コンディションヒール』


「うぅ、、効かなくなってる、、」


「魔法を上回る勢いでお前の酔いが強いんだよ」


「お前達、此処からは魔物も出てくる、何があっても馬車からは出るなよ」


「「「はーい」」」


「魔物出てくるんだな、他に道はなかったの?」


「あるけど、それだと宿のあったマトルトの町の前に来る時通りすぎた前の町まで戻らないと行けなくて、戻るのに1時間かかるんだけど、マトルトからでも直接行く方法があってね」


カイトの疑問にカミラが答える。


「それがここの峡谷沿い?」


「そう、魔物は出てくるけど父さんがいるから安心よ」


「父さんは一度ここに来たことがあるの?」


「あぁ、仕事でな、ここの魔物はギルド連合が難易度設定しなかったくらい脅威ではないからな」


「そうなんだ」


「大丈夫だ、父さんがシッカリと付いてる」


「ヒヒーンッ!」


「んお?早速お出ましだな」


馬車の横の崖の上から3体の獣型の魔物が現れた。


「あれはー、、」


「牙獣ノシシよ、ルドガー!」


「分かってる!せりゃ!」


ルドガーが空間から剣を出し、一瞬で3体の魔物を倒す。


「おじさんすごー!」

「すごー!」


「フッ!」


「絶対家族の前でカッコつけるために”あえて“ここの道選んだよな」


「カイト、それは叔父さんの為にも声に出さない方がいい」


それから次々と魔物が現れるが、全てルドガー1人に完全に抑えられ、カイト達は無事目的地であるレウィックに到着する。


「街並みは綺麗だけど人が少ないのは気のせいかな?」


「本当ね、昔来た時は行商人もよく通る町で賑やかな町で有名だったのに」


「へぇ〜」


町の壁にある門をくぐり馬車を降りながら、町の活気のなさに気付く。そして丁度いいタイミングでカイト達の近くを通った男性にルドガーが話を聞こうと呼び止める。


「あ、すいません!ここってレウィックで間違い無いですよね?」


「そうですが、、旅人の方ですか?」


「家族旅行のついでにここの町にバハラ行商団が来るってのを耳にしまして」


「バハラ行商団の噂を聞いてでしたか」


バハラ行商団と聞き男の表情が険しくなる。


「何かあったのですか?」


「実はこの町の近くでゴンドルの群れが活性化し始めて、もしかすると行商団が来られないかも知れないのです」


「そういえばこの時期はこの町ではそういうのがありましたな、そうでしたか、足止めしてすみませんありがとう御座いました」


「ゴンドルに襲われ無いように気を付けてください」


「ゴンドルってなに父さん?」


「怪鳥ゴンドルだ、魔物ではなく怪獣で、ここレウィックの近くにある山脈はゴンドルの縄張りでな、毎年冬前になるとゴンドル達が冬眠に向けて餌を求めて群れで縄張りから離れるんだ」


「だからみんなそれを怖がってあんまり家から出ないんだな」


「あいつらはとても獰猛でな、間違っても出くわしたら戦っちゃダメだぞ?何十体って数のでっかい鳥が束になって襲いかかって来るからな」


「怖いっていうより、めんどくさそうだなぁ」


「て事は町に何かあったわけじゃないんだね」


「まだな、ゴンドル達の動きが分からない以上町の人達も行商団も好きに動けない、俺達も同じだ、単独行動をしない様に、特にエリー、アルト、ミルとミアからは目を離さない様に」


「えぇ、分かったわ」


一同は事態を深刻に受け止め、宿へと向かう。大部屋を取ろうとしたがあいにくこの状況なので大部屋は満席状態、仕方なく3つに分けて部屋を取る。


「どうする?外は危ないしなんもする事ないぞ」


「んーじゃあ修行でもしとくか?」


「まぁする事ないしな」


自分達の部屋で魔力を練る修行をやり始めるカイト達、隣の部屋にはシュリカとミアミル、シュリカ達の部屋の正面にルドガー、アルト、エリーゼ、カミラとなっている。


少し修行をした後休憩を入れ、そのタイミングでルドガーが部屋に入ってきた。


「町の住人と冒険者で討伐隊が組まれる事になった、俺もその中に入ろうと思っている、お前達には母さん達の見張りを任せる」


「え?叔父さん行っちゃうの?」


「どれだけ強いのか分かんないけど、本当に大丈夫なの父さん?」


「あぁ、俺を信じろ2人とも、俺が行っている間みんなを頼んだぞ」


こうしてルドガーは急遽町の討伐隊と共に町を出て行った。


コンコンッ


「母さん」


「あらカイト、どうしたの?お腹空いた?」


「それもあるけど、行っちゃったな父さん」


「そうね、遅くても夕方には帰ってくるって言ってたわ」


「ほんと参るよな、父さんのお人好しには」


「昔からそうだったからね、カイトにも受け継がれてるから将来のお嫁さんに同情しちゃうわね」


「なんで急にそんな話を、、それに俺はそこまでお人好しじゃないよ」


「ふふっ、お人好しの人は自分では気付かないものよ」


その後もルドガーの帰りを心配させない様にカミラの話し相手をしていた。


そして討伐隊帰還の鐘が町中に響き渡り、シュリカに寝ているエリーゼとアルトを任せ、急いでその場に向かう。


「1人、、だけ?」


討伐隊を囲う人混みをかき分けると軽傷の男が座りながらガタガタ震えていた。


急いで回復魔法をかけ、落ち着いて話を聞く。


「す、すまない、助かった」


「なにがあったか詳しく、討伐隊の中には父もいるので」


「王種、、そいつが来るまではこっちが有利だったが、そいつが現れた瞬間討伐隊の半分くらいが壊滅したんだ、目の前の光景に唖然としていたら、片腕がない人にお前は町に戻ってこの事を伝えて、ギルドに緊急討伐の依頼をしろって任されて」


「取り敢えず傷はこれで治りました」


人混みを再度かき分け外に出る。


魔力を集中させ、あらかじめ刻印でマーキングしておいたルドガーを探知する。


(距離は大体家から学校までの3往復分)


別で魔力を集中させ先にテレポートでルドガーの元へと飛ぶ。


シュンッ


周りには大漁の魔物の死体と人の死体があった。血生臭い匂いに嘔吐感をもよおしながら目の前で戦っている集団へと目をやる。


そこには負傷者を入れた8人の討伐隊が協力し合い巨大な鳥と交戦していた。


その中に片腕のない見覚えのある背中が見えホッとするも事態は良くなく、負傷者も出ている。


魔力を練り上げ巨大な鳥に近づこうとした途端、カイトの魔力に反応し、コンビニ1つ分程の大きな2対の翼を羽ばたかせ、勢い良く此方に飛んでくる。


「あれは?、、カイト!!!」


ルドガーが飛んでいく怪鳥の先にいる人物が自分の息子と気付き大声で叫ぶ。


(効くかどうかは賭けだが俺が現時点で使える最強の魔法だ)


光る両手を握りしめ、広げていた腕を勢い良くぶつける。


『ケオボルト』


ズバァンッ!!


白く輝く雷撃が巨大な怪鳥に命中する。


「ギエエエエエエッ!!」


(見た感じダメージは入ってないが、感電で動けていない、今のうちだ!)


テレポートでルドガーの元へと飛ぶ。


「時間がない!飛ぶよ!」


「待て!あいつらを置いてはいけない!」


「でも、俺の魔力量じゃ1人が限界だって」


「俺はいい!他の奴を!」


「父さん!聞き分けない事言うなよ!そもそも仕事に来たんじゃないだろ!?」


「しかしこのまま見捨てるのは、、」


「だったら、、」


ルドガーの後ろにいる討伐隊達の方へと歩く。


「ここは俺たちが時間を稼ぐので出来るだけ早く町に逃げてください」


*「分かった、、すまない」


「早くいけお前ら!」


「俺はここに残って父さんと足止めする、父さんが選んだ事だからな」


「馬鹿野郎相手を見ろ!お前が成長したのは分かるが相手が相手だ!ここは俺が殿になるから早く行け!」


「それで父さんが死んだら母さんにどう言えばいいんだよ、あの人達がここを逃げ切るまでここで時間を稼ぐ」


「、、分かった、だが俺の前には必ず出るな、それだけは守れよ、お前の身に何かあったら母さんに顔向けできん」


「お互い様だよ父さん」


死体から剣を取り上げ構える。


「いいか、あいつは王種と呼ばれる怪鳥種の頂点だ、攻撃はどれも大振りで避けられるが、お前が当たったら一巻の終りだ」


「うん」


「運がよければ直ぐにギルドから助けにくる、10分耐えれれば後はテレポートで逃げる、分かったな」


「分かった」


怪鳥の体から電気が消え、ゆっくりと立ち上がる。


「来るぞ!」


『フルエンチャント』


ルドガーと自身に攻撃力、防御力、スピードのバフをかける。


((アッシュ!!))


((、、、、))


「くそっ!」


自身の頼れる相棒に声を掛けるも返事は返ってこず。


「そっちへ行った!」


怪鳥がルドガーを無視し、巨大な鉤爪でカイトを鷲掴みしようとする。


『雷走』


足に雷に変換させ、ルドガーの背後へと回る。


「流石俺の子だ!」


「嬉しいけど次来るよ!」


『シールドバッシュ』


ルドガーは正面からクチバシを用いて突撃してくる怪鳥の攻撃を剣を捨て、地面に落ちていた盾を使い受け止める。


ガンッ!!


怪鳥の攻撃を受け切ったものの、後ろへ大きく吹き飛ばされるルドガー。


「ぐっ、、強化魔法でいけると思ったんだけどなっ、やっぱ片腕だとやりにきぃな」


すぐさま近くにあった剣を拾い雷走で避けるカイトの元へと向かう。


『風斬破』


飛翔する斬撃に斬属性との相性が良い風属性を纏わせ斬撃と同時に飛ばすルドガー。


ズガァッ


(傷が?俺の最高威力の魔法でさえびくともしてなかったのに、、)


改めて自身の父の凄さに驚くカイト。


『八炎刃』


今度は八つの燃える刃が怪鳥の翼目掛けて飛んでいく。しかし命中する前に翼を羽ばたかせ、風で斬撃ごと消した飛ばす。


「キェェェェェ!!」


怪鳥の体から魔力を感じるカイト。


「魔法を使うのか!?」


「これだから王種はめんどくせー、でかいのが来るぞ!備えろ!」


『ロックドーム』


岩でできたドームに闘気を纏わせる。


「父さん、今聞くけど魔物って魔力を探知して獲物を捕らえてるの?」


「普通の魔物でも魔力で獲物を捕らえる奴もいるが大抵は視覚だ、あの化け物は視覚も魔力探知も両方使っているだろうな」


「おっけー、、」


『クローン』


通常より魔力を多く使う事でクローンの体に魔力を纏わせる。


「これで勘違いしてくれたら良いんだけど、父さん、これ以上戦ったらもう帰れる魔力も無くなる、逃げていった人達の体にマーキング付けておいたからそっちに飛ぶよ」


「2分と耐えれなかったか、仕方ない」


『テレポート』


シュンッ


*「うぉっ!ハァハァ、、どうだ?」


逃げていた内の1人の目の前にテレポートし、走りだす。


「全然耐えられなかった、ちくしょー」


*「いや、よくやってくれたよあんたら」


「まだ気を抜くのは早いぞお前ら」


*「あぁ」


少しすると怪鳥のいる方角から轟音が聞こえ、同時にクローンが消えた事を感知するカイト。


「父さん!町まで後何分!?」


「このペースなら、後3分くらいで町が見える!」


(結構かかるな、、くそっ、アッシュさえいれば魔力をもらって一斉に町に飛べるのに)


((おい!返事しろバカ野郎!なんで大事な時に消えてんだよ!契約でも切れたのか!?))


((、、、、))


ブワッ


ゾッ


背後からとんでもない圧を感じる。


「バレたな、、」


「俺のクローンも反応がない」


「まだ行けるか?」


「うん、出来れば他の人にも助けてもらお」


「まだ戦える奴はいるか?」


8人の内男と女の2人が挙手をする。


*「俺たちは後衛にいたからあまり攻撃は喰らっていない、余りにも早く壊滅されたものだから魔力も半分以上は残っている」


*「私も、同じようなものです」


後の人達は負傷で足で纏になるかもしれないので手を挙げた2人とカイト、ルドガーの4人で再編成し、怪鳥を足止めする事となった。


「一応聞くんですけど、魔力譲渡とかって出来る人います?」


「ごめんなさい、分からないわ」


「すまない俺もだ」


「そうですか、一応言っておきますがテレポート分の魔力は残してありますが、俺と父さんを飛ばす分しかないんで、いざとなったら取り残します」


「君たちは親子だったのか、俺たちも冒険者の端くれ、それくらい覚悟はしているつもりだ」


「えぇ、もし危なくなったらお父さんと2人で逃げなさい、もう十分助けてもらったわ」


「そう言って頂けるとありがたいです」


あくまでも自分はルドガーを助けに来ただけ、他人の為に命をかけるつもりはない事をハッキリと伝えるカイト。なのに返ってきた2つ返事と、その覚悟に少し心打たれるカイト。


(死ぬかもしれないってのに肝が据わってる、立派だな)


昔アニメや漫画で死ぬと分かっていて戦うキャラクターとかを作品内で称賛したり美談として語るキャラクターやファン達の気持ちを前世のカイトには意味がわからなかった。


誰かが死なければ、戦わなければ行けない状況で自分がたまたま適しているだけで死地に投げ出され、抵抗し、抗う姿。覚悟というものをカイトには理解が出来なかった。


決して漫画のようなカッコいい死に方ではないにしろ、1人の冒険者としての覚悟、初めて死を覚悟をしている人間を見て、縁起が悪いながらもカッコいいと思ってしまったカイト。


「見えてきたぞ!」


ルドガーの一言で、我にかえるカイト。剣を強く握りしめる。


「陣形は俺が引きつけ役を、カイトは俺のサポートで2人が襲われたら頼む。2人は全力で支援するんだ!」


「「はい!」」

「うん!」


怪鳥は遠方から勢いよく翼を伸ばし、猛スピードで突進してくる。


『セイントドーム』


女の人が杖を掲げ、ドーム状の淡い光を展開する。


『誓約に従い、我が助けとなれ』


男の胸が光だし、中から2メートル台の亀らしき生物が現れた。


『ロックシェル』


甲羅が光り輝き、セイントドームの外側にもう一枚結界を張る。


「せめて勢いだけでも、、」


バキィンッ!!


男の小さな願いも虚しく、1枚目の結界を容易く破る怪鳥は勢いを殺す事なく2枚目の結界に突進する。


パキィンッ!!


同じく2枚目の結界も砕かれるも、すぐさま2人は2枚目の結界を張り直す。


『セイントドーム』

『ロックシェル』


パキンッ!!


ガキィンッ!!


「止まった!!」


何と最後の4枚目のロックシェルで勢いを止める事に成功した。


バキィン!!


「4枚目も壊されたが、勢いは止まった、ここからだぞ!」


「キェェェェ!!」


『岩鉄流し』


怪鳥のクチバシによる攻撃を、ルドガーは受け流そうとするも、体格差と片腕がない状態だと流し切れず、すぐさまカイト目掛けて一直線にクチバシを広げ襲いかかろうとする。


自身に狙いが来たのを察したカイトは雷走で後衛の2人から遠ざかり、怪鳥の真下を潜りルドガーの方へと走ろうとするが、真下を通り過ぎたあたりで、翼による風圧で地面に押しつぶされる。


「うぐっ!、、動けっ」


怪鳥が体勢を変え、カイトに追撃する。


『ウィンドプレス』


ブオッ!!


男の後衛が風魔法をカイトに放ち、間一髪でカイトを押し飛ばした。


「うぉっ!あっぶね!」


「俺の息子から、、離れやがれっ!!」


『オルフォルト流・裂海斬』


怪鳥の頭上からルドガーが現れ、渾身の一撃を後頭部に斬り込む。


ザスッ!!


『エンチャント・パワーブースト』


ブシャッ!!


後衛の女がルドガーに筋力増強の魔法を付与した瞬間、怪鳥の後頭部から勢い良く血が吹き出る。


「ギエエエ!!」


「こっちに目を向けやがれ!!」


ルドガーの挑発通り怪鳥の標的がカイトからルドガーに変わる。


「父さん!!」


怪鳥の体から風が吹き荒れ、ルドガーが吹き飛ばされる。


「んなっ!!」


「グアアアアア!!」


翼に風を纏わせ、勢いよく空中に身を投げ出されたルドガーに放つ。


『ライジングボルト』


カイトは地面から雷を怪鳥に放つが、びくともしない怪鳥。


「このままじゃ父さんが」


『フォースシールド』

『シェルシールド』


後衛の2人がルドガーの目の前に、魔法の盾を2枚張る。


バキキィン!!


ズガァンッ!!


剣で風撃をガードするも、空中での不安定な体勢や片腕だけというのもあり防ぎ切れず、剣を落としてしまう。


ブゥンッ!!


怪鳥が再び翼に風を纏い、ルドガーへと飛ばす。


(ダメだ!もうやるしかない!)


『テレポート』


ルドガーの方へとテレポートで飛び、すぐさま町に飛んでいく。


シュンッ


先程の死闘が嘘のように、静かな町へと戻ったルドガーとカイト。


グラッ


「カイト!、、魔力切れで殆ど動けなく」


とりあえずルドガーはカイトを休ませる為、抱えて宿に連れて行く。


バタンッ


「ルド、、カイト!?」


「大丈夫だ、ただの魔力切れだ」


「魔力切れって、何でカイトが!?」


「情けねぇ話だが、息子に助けられちまった」


「あなたもボロボロじゃない、、」


「取り敢えず宿から出るな、魔物の討伐は失敗した、王種が現れてな、町の様子を見に行ってくる」


「そ、そう」


「カイトのそばにいてやってくれ」


「分かったわ、気をつけてね」


カミラは何処か悲哀の表情を浮かべ、それを見たルドガーがカミラに近寄り抱き寄せる。


「悪いな、いつも心配かけて、町の様子を見に行くだけだから大丈夫だ」


「うん、行っておいで」


ルドガーはカイト達の部屋を後にし、ギルドへと向かうと、ギルドの建物の前で女性と男性が話し合っていた。


*「あっ!!ルドガーさんじゃないですか!!」


「ん?誰だおまえ、、ん?お!ミオンにソーマじゃねーか」


*「あ、先輩、久しぶりっす」


朱色の髪をした女性がルドガーを見るなり挨拶をし、その女性の挨拶で若緑の髪をした青年もルドガーに気付き挨拶をする。一瞬誰か分からなかったがルドガーだったが、すぐさま自身が現役で冒険者をしていた頃の後輩だと気付き返事をする。


「お前達こんな所で何してるんだ?」


「ギルドで王種緊急討伐があると聞いて、たまたま近くにいたもんで直ぐに駆けつけてきました」


「今から討伐しに行くのか?」


「えぇ、2人で今から行こうと、、」


「2人でだと!?」


「18年前の子供だった時の俺達とはもう違うっすルドガーさん」


「こう見えて私今では最強ギルド、『黎明の剱』のサブマスターの次に偉い、リーダーを任せられてるんですから!」


「黎明の剱だと!?あのひょろっちいガキだったお前らが!?」


冒険者ギルドの中で1、2を争うギルド『黎明の剱』のそれも結構な役職でもあるリーダーにまでなったと聞き、ルドガーは疑いの目でミオンの体を舐め回すように見つつ、筋肉のチェックと称し体を全体触る。


「ほう、、確かに立派になったもんだな」


ボヨンボヨン


2つの柔らかい宝玉を掌で重みを感じさせながら持ち上げては落とし持ち上げては落「って何やってるんですか!このエロじじぃ!」


「ブフォッ!」


顔面に強烈な拳がめり込み吹き飛ばされるルドガー。


「アッハハ、ルドガーさん相変わらずっすね」


吹き飛ばされるルドガーを見たソーマは腹抱え笑っている。


「もうっ、失礼にも程があるわ」


「いやいやすまんすまん、ほんのジョークのつもりだ、それにしても本当の2人で行くのか?」


昔の様に軽くじゃれあった後、真剣な眼差しでルドガーは2人に再度確認する。


「「はい」」


「相手は怪鳥類の王だ、一筋縄ではいかない、お前達がどれだけ強くなったかは分からないがでけぇ鳥の強さは分かる、俺の攻撃じゃあびくともしなかった」


「大丈夫っす、相変わらず自分より人の心配するのも変わってないっすね」


「先輩の教えのおかげで私達は強くなる事が出来ました、安心して任せてジュースでも飲んどけ!」


「ははっ、、まさかお前に俺がよく言ってたセリフを言われるとはな、覚悟を決めたってんなら止めるのは同業者として失礼にあたるからな、無事に帰って来いよ、帰ってきたら俺のガキ達を紹介してやるから」


「え!?やっぱりあの村の女性と結婚したんですね!」


「先輩に子供、、信じられないっす」


「早く行って来いって、この町に逃げてきてる連中もいるから、そいつらの事助けてやってくれ」


「分かりました、行ってきます」

「うっす」


こうしてギルド黎明の剱のリーダー格であるミオンとその下の階級のエキスパートであるソーマはギルド緊急討伐指定、怪鳥王ゴルゴンドルの討伐に向かった。

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