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第1章 満天の思い出



「此処の近くに診療所は御座いませんが、ワシの2番目の娘なら昔医療関係の仕事に就いていた時期がございましたので、すぐに手配させましょう」


「お願いします」


ルドガーが昼食を運んできてくれたトメコに頭を下げて礼をする。


「てかなんでセニカとラゼッタもいるんだよ」


「家族旅行で来たのよ」


「あたしもいっしょー」


「この旅館にじゃなくて、なんで俺らの部屋にいるんだよ」


「パパと喧嘩して」


「弟の世話がめんどくさいから」


「はぁ、ご飯は食べたのか?」


「うん、朝ごろに着いたからね」


「私は此処にくる途中にレストランで」


「てかよくこんな2、3年も予約がいっぱいな店を同じ日に予約したな」


「カイト達は2、3年前から予約してたの?」


「うん、そうだけど」


「私は此処の宿毎年来てて、予約は聞いた時結構空いてたよ」


「あたしは今年初めて来たけど、予約は結構空いてたわよ」


「、、、なんで?」


「貴族優遇だと思う」


「あー、出たよ、その優遇制度、どうせ泊まりに来ないんだから、平民にその空き使わせてくれたらいいのに、別に手が出せない程の宿泊費でもないんだからよ〜」


「もともとここの宿は沢山の貴族の莫大な投資によってできた宿で、そのご縁から貴族優遇らしいの」


「莫大な投資って、失礼だけどそこまで金のかかる作りっぽくは見えないけどな」


「ふふっ、みんな今日泊まるのが初めてなんでしょ?今日の夜と明日の朝には理由が分かるわ」


「ふーん、夜景が綺麗とかだろうな」


「まぁそんな感じよ」


「そう言えば、この山には魔物が出るって看板で書いてたぞ、今晩時間があったら探索してみようと思うんだけど行く人?」


「「、、、、」」


「あんただけだよ?休みの日にも修行したがる脳筋は」


「んでどうなんだ?来ないのか?」


「カイト1人じゃ心配だし行こうかな」


「俺は今日ゆっくり休みたいから勝手にどうぞ〜」


「あたしは弟の面倒みるのめんどいから、ルフトと行くわ」


「ちょ、なんで勝手に決めてるんだよ!」


「いいじゃんいいじゃん!あんたも付き合いなさいよ」


「お前達魔物ってどれだけ危ないか分かってんのか?学園の2年でやる授業を何で今?」


「俺はファミル先生が里に帰る前から魔物狩りやってたぞ?」


「私は10歳の時にパパと魔物を倒す訓練をさせられてたよ」


「あたしは竜狩りの家系だから魔物なんて」


「あー!馬鹿だこいつらー!なにー?最後の子、竜狩りの家系だからってー、関係なくなーい?俺の身近にいる奴らってほんと頭のネジ緩いよねー」


「取り敢えずそれまでは遊んどこうぜ」


「さんせーい!」


こうして夜の探索まで時間を潰すカイト達。


「んじゃあちょっと宿の外で遊んでくる」


「気を付けなさいよ貴方達、魔物が出るかもしれないんだから」


「大丈夫!そう遠くまで行かないって!」


「行くぞルフト!セニカ達呼びに行くぞ」


「分かったから急かすなって」


「夕食までには帰ってくるんだぞ」


「「ほーい」」


セニカ達を呼びに事前に教えてもらった部屋まで向かう。


「まずは近いラゼッタの方から行こうか」


「なぁ本当に行くのか?」


「当たり前だろ、どんな魔物がいるか分かんねーけど、修行にはなるって」


「はぁ、、、」


カイトの目を見るからに説得は無駄だと悟ったルフト。


コンコンッ


「誰だー?」


ガラガラ


「あ、さっき廊下で俺にぶつかって来たやつじゃんか、何のようだよ」


「ぶつかって来たのはお前の方だろ?姉ちゃんいる?」


「いねぇよ」


ボコッ


「準備できてるわ、行きましょ」


「どこ行くんだよ姉ちゃん!」


「あんたは大人しく母さん達に遊んできてもらいなさい」


バタン


「ふぅ、全く」


「弟と仲良くないのか?」


「そんなんじゃないわよ、ただめんどくさいだけ、子供の癖にあたしの事守ろうとして、他人にキツく当たる所があるの」


「なんだ、可愛い弟じゃん」


「度が過ぎるのよ、いいからセニカの所にいきましょ」


3人はセニカのいる部屋へと向かい、セニカと合流した。開けた扉からセニカの母がこっちを見て微笑んできたので微笑み返して軽くお辞儀をする。


(こういう些細なアピールも大事だ)


「行こうか」


「「おう」」


「セニカたん!パパに内緒でっ」バタンッ


「どこに行くというんだい!?」


(ドア閉めたのにまだ喋ってるよ)


宿を出て、すぐ近くの森へと4人で入る。


「ていうか武器も無いのにどうやって戦うんだよ」


「俺は空間収納が使えるから剣はストックで持ってる、ラゼッタとルフトは魔法で頑張れ」


「適当だな」


「大丈夫だよ、俺たちには精霊もいるんだし、まぁ俺のは何故か声を掛けても起きないんだけどな」


「アッシュとまた喧嘩したの?」


「喧嘩じゃないって、なんかこう、俺の中にいない感じがするんだ」


「もしかしてカイトに愛想尽かして自分から契約切ったんじゃない〜?」


「おいおい、マジでそうだったら笑えねぇって」


「普段から優しくしとくんだったね〜」


「おーい!アッシュ聞こえてるかー?エルフの美女紹介するまで地の果てまで追いかけ回してやるからなー!」


「うるせぇよ!何で俺の耳元に喋り掛けんだよ!」


ガサガサッ


「シッ!」


草むらから物音が聞こえ、すぐさま警戒する。武器を持っているカイトとセニカがルフトとラゼッタを挟む陣形を取る。


ガサッ


今度は後ろの方から物音が聞こえる。


「セニカとルフトは後ろを頼む」


「おいカイト、ますいぞ」


「これ、前と後ろだけじゃなく、左右も上も囲まれてる」


「マジか、大きい声出すからだぞ馬鹿ルフト」


「俺の所為かよ」


「グルゥゥゥッ!!!」


2つの頭を持つ狼がカイトの首を目掛けて襲いかかってくる。


「お、ツインウルフ!」


スパンッ


「コイツは首を目掛けて噛みついてくるだけの単細胞だ、狙われてる場所が分かってればカウンターが入れやすい」


カイトに襲いかかって来たツインウルフを筆頭に次々と魔物達が襲いかかってくる。


「うぉっ!」


『エレクトロ』


バチンッ


「あっぶねー」


「しっかりしなさいルフト」


「こっちは魔物を見るのも初めてなんだぞ?」


『オルフォルト流・乱舞剣』


目の前にいる魔物を次々倒していくセニカに圧倒される3人。


「おぉ〜、また新しい技覚えたんだな」


「ふぅ、うん、実戦でやるのは今日が初めてなの」


「あたしも負けてられないよ!」


『炎槍』


炎で槍を形作り、レイゼンに教えてもらった薙ぎ払い系統の槍術で目の前の魔物を一払いで殲滅するラゼッタ。


「ガゥ!!」


「危ない!」


ガッ!


ラゼッタは背後から襲いかかって来たツインウルフの噛みつきを片腕で受け止める。


「やばい!」


スッ


ラゼッタは心配して向かってこようとするルフトを手で制する。よく見ると噛みつかれたラゼッタの腕にはモヤがかかっていた。


「お前!それ闘気じゃんか!」


「にっしっし〜、エルグランドから帰って来てから出て来たんだよね〜、本当は大会とかでビビらせようと思ったんだけどね〜」


「騙されたじゃねーかよ」


「やり〜!ほら!次はあんたの番よルフト」


「分かった分かった!引っ張るなって」


『風魔手裏剣』


二枚の巨大な手裏剣を投げ飛ばす。


「それ見たことあるわよー」


「まぁ見てろって」


魔物目掛けて飛んでいく手裏剣が突如空中で止まる。


「セイッ!」


ルフトが両腕を後ろに引くと、手裏剣も同時に後ろへ飛んでいく。


「へぇ〜、魔力の糸で手裏剣と自分の手を繋げたんだ〜」


「俺がアイデアあげたんだぜ〜」


自慢げにサムズアップし、セニカにドヤ顔するカイト。


「カイトは何か新しく覚えた技はないの?」


「あるに決まってるだろ?とっておきを見せてやる」


バチンバチンッ!!


カイトの足から電気が現れる。


『雷走』


ズィンッ!!


直後、カイトの体が突如消える。


スパパパパパン


「ふぅ〜」


残りの魔物を全て片付け、セニカ達の前に現れる。


「すご〜い!早すぎて全然見えなかった〜」


「これが新しい技、雷走だ」


「めちゃくちゃ移動早かったね、どうやったの?」


「これは体の一部を属性変化させたんだ」


「うーわ、また訳の分かんない、、」


「わかりやすく言うと、体の一部を雷に変えて移動したんだ」


「体の一部を雷に変えるって、そんな事可能なの?」


「間違いなく先生がいなかったら一生無理だったと思う、これもたまたま聞いて、先生と色々実験を繰り返して出来る様になったんだ」


「色んな魔法を発見してるよねカイトって」


「俺の魔法のアイデアも殆どカイトが教えてくれたし、頭悪いのに」


「天才とは1%のひらめきと、99%の努力なんだよ」


(ふっふっふ、前世の名言も、ここでは全部俺のもんだぜ)


かけらの悪びれた様子を感じさせないドヤ顔で有名人の名言を丸パクリするカイト。


「意味がわかんなーい」


「勉強ができないには変わりないだろ」


「私もわかんないや」


「何で誰も心打たれねぇんだよ、もういい奥に進むぞ」


こうして奥へと進んでいき、魔力が切れたあたりでテレポートを使い宿に戻る。


バタンッ


「もう無理だー!しんどー!」


「ふぇ〜」


「いい汗かいたねー」


「おい、疲れた後にいきなり寝転ぶと体に悪いぞ、ほらコンディションヒールかけてやるから」


ブゥゥンッ


「ふぅ〜、いいねぇ〜」


「カイト、あたしもお願〜い」


「こら、カイトも魔力切れが近いんだから無茶させちゃダメでしょ?」


「いいじゃんいいじゃん、本人は魔力切れを技と起こして魔力量の上げるのが目的なんだから!」


「遠慮すんなって、セニカもどうだ?」


「じゃ、じゃあ私もやってもらおうかな」


全員の疲れを少しだけ取って自身にも掛けておく。


「銭湯に入るんだからこのくらいでいいだろ、後の疲れは風呂場で取れるから」


「そろそろご飯の時間ね、あたしは一足先に戻るね」


「おう、セニカ部屋まで送ろうか?」


「いいよ、パパに見つかったら面倒だし」


「んじゃあまたな」


「うん、じゃあ行くね」


「おう!」

「ばいばーい」


セニカと別れ、自分達の部屋に行く途中。


「なぁ?」


「なんだよ」


「まだセニカちゃんに告白しないのか?」


「だから言ったろ?卒業するまではしないって」


「でもあんな可愛い子ヘタしたら他の男に持っていかれるぞ?」


「大丈夫だってー」


「大丈夫だぁ?世の中の男の何人がそういう余裕ぶっこいてチャンスを逃したか分かってるのか!?」


「き、急にどうしたんだよ」


「いいか?俺たちの学園には六華と言われる学園の男たちが勝手に選定した美女上位6名がいる」


「何やってんだよ」


「因みにやりだしたのは俺だ」


「だろうな」


「俺が全クラスの生徒の男子から集めた表によるとだな、セニカは7位だ。六華には入らなかったが、獲得票数68票だ」


「、、、多いな」


「因みに」


6位:弓術科レヤーナ・ファミニカ77票


5位:魔術科リリア・クラーネル82票


4位:文学科スカーレット・カーマイン92票


「ちょっと待て、なんだ文学科って?」


「知らないのか?うちの学校って五武三学で、カイトの知ってる5つの学科の他に文学科、医学科、法学科があって、俺達と別の敷地で勉強してるんだ」


「でも、そのスカーレットって子、第2学科の魔術の教室にいたよな」


「そりゃあ同じ学園だからな」


「別の敷地にあるんだろ?なんでわざわざ」


「なんの心配?今はそんな事どうでもいいから次行くぞ」


3位:法学科エイン・ウィスタリア99票


2位:拳術科エイナ・ロータス119票


1位:槍術科カティナ・シルヴァイン133票


「1位2位って確か五星だったよな」


「エイナさんは僅か2年で五星に上り詰めた実力者で、カティナさんは俺の直の先輩であり、由緒あるシルヴァイン家の淑女だ」


「ふーん」


「ふーんじゃねぇよ、俺が言いたいのはセニカちゃんを狙ってる奴が俺らの学園には68人もいるって事だよ!」


「まぁそうだな」


「この68人の内、もし誰かがセニカちゃんにアタックして万が一セニカちゃんの心が動いて、そいつに持っていかれたらどうすんだよ」


「、、、、やっぱりやばいかな?」


「あぁ、俺にもお前とセニカちゃんがいかに仲良いかは分かっている、でも幾ら仲良くても女の子の気持ちってのはふとした瞬間にガラッと変わるもんだ」


「んーーー、いや、俺も正直すげぇ付き合いたいよ?3年しかない学生生活じゃん?付き合ったら毎日がハッピーじゃんそんなの、でもお互いこの3年に掛けてるんだ、俺はセニカの邪魔したくないし、セニカも俺の邪魔したくないんだって」


「この3年にかけてるってそれは初耳だな」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「うん、いつもなんでまだ付き合わないんだって聞いたら、まだそういうタイミングじゃないって返してくるし」


「悪かったなそりゃ、それよりやっぱり早めに自分の物にした方がいいかな?」


「んー、多分大丈夫だろ、最初はカイトがただ向こうを待たせてるだけだと思ってたけど、そんな事なかったし大丈夫」


「よく分かんねーけど、大丈夫そうなんですかね、先生?」


「あぁ、安心したまえカイトくん」


ガラガラ


「あ、ちょうど帰ってき、って何でそんなにボロボロなのよ」


シュリカに言われ、自分達の格好を見ると服が破けていたり、魔物の飛び血が付着していた。


「あんた達それ血!?」


「ち、ちがうってシュリカおばさん!これはそのさっき宿の外で魔法使って遊んでたら、それが付いただけで、血ではないよ!なぁルフト?」


コクッコクッ


二回うなずきすぐさま宿にあるこれまた懐かしい浴衣にトイレで着替える。


「この服どうする?」


「貸してみろ」


シュルルルルルッ


パンッ


カイト考案洗濯魔法を使いすぐに汚れを洗い落とし、乾かす。汚れの溜まった水球は窓の外に適当に飛ばしておく。


「お、お前達も着替えたか!見てみろ!凄い豪華な食事だぞ!」


「うぉおおおお!白米じゃん!」


「おいおい、そんな白い豆じゃなくて見てみろ、この青い6本足の生き物に、魚のこれは肉なのか?焼けて無いが大丈夫なのか?」


「蟹っぽい奴に、刺身!松茸っぽい奴に、これはすき焼きか!?」


「カイトったら、珍しくはしゃいでるわね、フフッ」


「この2つの棒は?」


「それは箸って言って、それで物を挟んで食べるんだよ」


「むずかしー!」


「おこらないのエリー」


「エリーやミアミルには難しいかもな、兄ちゃん達がとってやるから食べたい奴あったらいいな」


「はーい」

「はーい」


こうしてこの世界に来て初めての日本食を堪能したカイト達であった。


「ぷふぅーっ、グァー」


「こら、行儀良くしなさいカイト、みっともないわよ」


「今日だけ許してくれ母さん、久しぶりすぎてもうっ、、グプゥ」


ガラガラ


*「失礼します、遅くなりました事大変申し訳ございません、トメコに代わり私フジコがルドガー御一行様のお世話を務めさせて頂きます」


「あ、やっと来ましたか、娘は奥にいます」


エリーゼのもとにルドガーがフジコを連れて行く。


「それでは診させていただきます」


ブォーンッ


術式の様な物を空中に展開させ、問診を少しした後、エリーゼの両目に光を当てる。


「体に異常はありません、もう一つ試したい事があります、エリーゼちゃん、少し変な感じするけど我慢してね」


「いたいの?」


少し涙ぐみ、震えるエリーゼの手をカイトが握る。


「大丈夫だよエリー」


「うん」


「それではいきます」


エリーゼの両耳に手を当てるフジコ。


『共感覚』


ぐてんっ


フジコとエリーゼの体が突如糸の切れた操り人形の様に倒れ込もうとした所をルドガーとカイト、ルフトで支える。


そして僅か1分で2人の意識が戻る。


「今は私が発動させたのは自身の感覚を閉じ、相手の感覚に入り込む異能です、そのおかげでエリーゼ様の身に何が起きてるのか理解できました」


「娘に何が起こってるのですか?」


「おめでとうございます、エリーゼ様は魔力の流れや、色を見分けられる魔力眼に目覚められました」


「えっ!?」


「まりょくがん?」


「はい、魔力眼です」


「なぜ娘に魔力眼が?」


「皆様異能などはご存知でしょうか?」


「学校ではまだ習っていませんが何となく分かります」


「では皆さまに分かる様に説明させて頂きます。本来人間の体の中には魔力を貯める器の様な物があります。魔力が許容量の限界まで貯まれば自然に体は魔力を体に取り込むのを辞めます」


「しかしごく稀に吸収できる魔力量が限界に到達しても体が魔力を吸収し続ける場合がございます。多くの方は魔力量過剰症となり、適切な治療を受けなければ命を落とす可能性のある病気なのですが、そんな中でもごく稀に体の何処かの部位がその魔力過多に適応し、吸収する場合がございます。その適応した力が異能とは呼ばれる力でございます。適応した体の部位によって扱える異能の種類は変わります」


「例えば、今回の様にエリーゼ様は溢れ出た魔力に目が適応し、魔力眼となりました。エルフが持つとされる識眼、そして更に上位の聖眼、魔族が持つといわれる魔眼、更に上位の邪眼などは目の部位による魔力過多に適応した異能です」


「なるほど、つまり異能はそもそも体の起こす異常によって偶然生まれた物なのですね」


「はい、今回は奇跡が起き、魔力過多に目が適応し見事魔力眼に目覚めましたが、しかし元は病気による物なので定期的な検診をお勧めいたします」


「分かりました、ありがとうございます」


「それでは私は失礼させていただきます」


「んん〜」


「あ、エリーゼが起きたな」


「エリーゼも大丈夫みたいだし俺らもおんせんに入るか」


「そうだな、それじゃあ俺たち先に入ってくるー」


「まってー!」

「まってー!」


ミルミアがカイト達を追っかけようとするが、一緒には入れない為シュリカが引き止める。


ガラガラ


脱衣所で浴衣を脱ぎ、ルフトとシャワーを浴び、温泉に浸かる。


ザブーンッ


「ふぅうううう、あぁー」


チョンッ


「っつ」


「入らないのか?」


「熱いってこの水!」


「ふふっ、まだまだ子どもだなー」


「なっ」


ザブーンッ


「よ、余裕」


「勢い良く入ったのはいいけど、足だけ入れて言われてもな、せいっ」


ルフトの両足を掴み、手間に引っ張ると、勢いよく倒れる。


ザバァンッ


「あっちー!!」


「ハハッ!」


「おい貴様!」


ビクッ


「は、はい」


背後から突如声をかけられ、聞き覚えのある声とは少し違うが瞬時に誰か分かったため後ろを振り向くと。


(やべ、セニカの親父さんだ)


背後に立っていた筋骨隆々の男の名はルベルト・ルーストリア。カイトが想いを寄せる同級生セニカの父にして、大の娘好きである。


「知り合いか?カイト?」


「うちの娘と知り合いか?」


「い、一応同級生です」


「同級生か、、、ただの同級生なんだな!?」


「は、はい!」


「娘の同級生全員に伝えておけ、手を出せば、全員ブチ殺すと」


「はい」


(マジでなんだこの圧迫感は…)


そのままカイトの横で湯船に浸かるルベルト。


(早く来てくれー父さんー)


「おい」


「はい」


「お前じゃない、そこの坊主のぼせてないか?」


「え?」


横を見るとルフトが顔を真っ赤にして明後日の方向を見ていた。


「やばっ!」


すぐさまルフトを引き上げ、脱衣所の椅子で横にさせ氷と風魔法で手首を冷やす。


「馬鹿野郎、なんで言わなかったんだよ!」


「だって、、喋れる雰囲気っぽくなかったし、、」


「まぁ確かにそうだけど」


「取り敢えず、ただの湯当たりみたいなもんだ、5分くらいしたら治る、今はジッとしとけ、俺はなんか飲み物でも買ってくる」


「おう」


体を拭き、急いで着替えて宿の中にある小売店で飲み物を買いに行く。


「カイトー」


遠くからカイトを呼ぶ声がして振り向くと、浴衣を着たセニカとラゼッタが立っていた。


「急いでどこ行くのー?」


「ルフトがちょっと湯当たりしてな、飲み物買いに行くんだ」


「なっさけないわねー」


「セニカ達はもう入ったのか?」


「今から入るところ」


「そうかそうか、んじゃ急いでるからまた後でな」


「あ、カイト!パパ見なかった?」


「あ!そうだそうだ!」


カイトは温泉で起きた事をセニカに伝える。


「って事があってルフトが湯当たりしちまったんだよ〜、マジで怖かったぜ」


「、、、、」


「ん?どうしたのセニカ?」


「ちょっとパパを探しに」


ビキッ


笑顔で額に血管を浮かべながら男湯の中へと入っていくセニカ。


「ん?セニカちゃん?」


今のセニカにルフトの声は届かない。少し遅れてカイト達も現れる。


「おいルフト!セニカ見なかったか!?」


「セニカならさっき笑顔を浮かべながら温泉のほうブフッ!」

「ギャーーー!!ルフトが遂に馬鹿を通り越して変態になったわ!!」


「いやいや、そもそもここ男湯だし、間違ってんのはお前だし、気絶したし」


「そ、そんな事よりセニカの後を追うわよ」


ガラガラ


「なっ!!」


ブクブクッ


温泉に続く引き戸を開けると、セニカが作業を終え手をパンパンしていて、温泉には死体の様にお尻を出してルベルトが浮いていた。


「やっ、やっぱりあたし先入りに行くね」


「セ、セニカ?何をしたんだ?」


「パパ?この際だから言っておくけど、カイトとルフトは私の大事な友達で、カイトとは学園生活が終わったら付き合うつもりだから!」


「ちょっ、セニカ、改めて嬉しいけど、タイミングがー、あれ?なんか暑くないか?」


ザバァン!


「オ”ォイ小僧、今の話本当か?」


「あのー、それはあくまで口約束でー」


「だからこれからは私の事情に口出ししないで!」


「おのれぇクソガキぃぃぃぃぃ!!」


温泉の湯がルベルトを中心に渦巻き始める。


「ちょっ!セニカ、これ以上火に油注いだら!」


「それにこれからはお見合いのセッティングしないでね、もうカイト以外考えられないから」


プスんッ


「ん?」


バタンッ


「おい!親父さんが倒れたぞ!」


「ただのいつもの湯当たりよカイト、放っておいたら治るよ、行こ」


「でもまだ話は、、」


「いいから行こ」


温泉から出て、ルフトを自分達の部屋に連れ戻す。


「うしっ、どうだ?まだ気分悪いか?」


「だいぶ良くなった、ありがとうな」


「おう、、にしても見事だったなセニカの口撃」


「うちのパパは私が産まれた時から凄い過保護でね、小さい頃から私に近づいて来た男の子達を裏で動いて色々してきたから女友達しかできなくてさ、学園生活でママの説得もあって私の事には口出ししないって約束したのに、ちっとも変わってないの」


「まぁまぁ、セニカの事を思っての行動だし、あまり責めるのもな?」


「それは分かってるけど、流石に度を越してるよ」


「まぁそれは否めないかな〜」


「でしょ?だからルフトがパパの所為で倒れたって聞いた時はここぞとばかりに言ってやったわ、これでもう邪魔しないでしょ」


「俺の経験上そういう人達の諦めの悪さたるや、、」

「あっ!そう言えばラゼッタ待たせてるんだった!じゃあねカイト!」


「お、おう!またな!」


暫くすると、温泉からみんなが帰って来る。


「フゥ〜気持ちよかったなーアルト!」


「よかったー!」


「ねぇシュリカ!腕触ってみて!」


「お!スベスベね!凄いわね温泉って、疲れとかも吹っ飛んだし」


「エリーねぇねもすべすべー!」

「すべすべー」


「こしょばいよ〜ふたりともー」


「おかえり〜」


「どうだったお前達良かったか?」


「ルフトが途中のぼせちゃって大変だったよ」


「まーったくだらしないわね〜、それでもあたしの息子なのかい?え?」


「ちょっ!母さん!やっぱりちょっと酔ってるだろ」


「そりゃ夕食で久しぶりにお酒飲んだかね〜、今日は母さんと寝るかい?」


「やめろって恥ずかしいから〜」


「ふあ〜、、そろそろ眠たくなってきた」


「そろそろ寝る準備するか」


「うん、みんなで準備しましょ」


全員で協力し、布団を敷く。


「地べたに寝るのはギルドの仕事以来だな」


「てかなんで天井のガラスの外見えないんだろ」


「分からないわ、多分朝起きると明るいからじゃないの?」


「でも日の光は特殊な加工で反射して通さないって」


「気にする事じゃないさ、明日は朝早いから早めに起きるんだぞみんな」


「「「はぁーい」」」


明日に備え、早めに布団に入るが、先程まで寝ていたアルトとエリーゼが無茶苦茶元気なのでその相手をしていた。



暫くすると…


ガコンッ


「ん?」


「なんだ?なんだ?」


「キャッハハッ!!ルフトにぃもっとー!」


「もっともっとー」

「おにぃもっとー」


風魔法でエリーゼ達とミルミアを浮かし遊んでいたルフトも音のなる方へと見る。


ブゥーーーーー


天井のガラスに覆いかぶさっていた蓋の様な物が右に流れていく。


「うぉおおおおお!!すっ、、、、げぇ」


「綺麗、、」


「うわーきれいなほしだー!」


「ほしー!」


「きれー」

「きれー」


蓋が全て流れていき、ガラスの天井には満天の星空が現れた。


「こんな綺麗な星空初めてかも、、」


「30年近く生きてきて、私達も初めてよカイト」


「こんなに綺麗な星空を家族と見れて幸せだぜ俺は」


「まったく、ルドガーったら、何を言ってるのよ」


「愛してるよ、カミラ」

「私もよ」


「ヴェスター、、」


シュリカが寂しそうな表情を浮かべ、この世にはいない最愛の人物の名前をボソッと呟くのを、ルフトが聞こえ、そっとシュリカの手を握る。


「星が綺麗に見える様に、わざとこんな山奥に建てたんだな」


「贅沢よね、こんな綺麗な星を眺めながら寝れるなんて」


「なぁ母さん、自分が今見ている光景とかを紙とかに写す魔法とか知らない」


「聞いた事ないわね、もしそんな魔法があれば凄い素敵だね」


「ないのか、、」

(今度ファミル先生にでも聞いてみるか、今はとにかくこの景色を楽しもう)


(セニカもこの景色見てるんだろうな、、)


(やべー、、なんか会いたくなってきた)


ソワソワし始めるカイト。やがて落ち着かなくなり部屋の外に出る。


(クソッ、ルフトが変な事言うからますます意識しちゃうし、風呂場で言われた事も思い出して、、あーー!!もう告白してー!!)


(もうダメだ!頭ん中からセニカが離れねぇ!クソッ!あー!)


「何してんの?」


「#$*^っ!!な、なんだよラゼッタかよビックリさせんなよ」


「こんな所で1人悶えてたから何か変な物でも食べたのかなって、それよりなんでそんなに顔が赤いのよ?」


「べっ、別になんもねぇよ!」


「あらそう?んじゃあたしは外に出て綺麗な星空見てこよっかなー」


ガシッ


「なぁラゼッタ、実は」


カイトは今思っている事を全てラゼッタにぶちまけた。


「ぷふっ!」


「笑うんじゃねーよ!」


「ふふっ、、ごめんごめん、なんか可愛くなっちゃってね、それで?なんであたしにその事話したの?」


「もう我慢できねぇからお前に重要な事を頼みたい」


「重要な事って?」


コンコンッ


「すいませーん、セニカちゃん居ますかー?」


ガラガラ


「ん?君は確かセニカたんの友達だったね、どうしたんだい?」


「セニカちゃんとお話がしたくて」


「そうか、セニカたーん!友達が来てるよー!」


「もうっ!大きい声で恥ずかしい事言わないで!ラゼッタ!どうしたの?」


「ちょっと話したくなっちゃって」


「いいよ、行こ!」


セニカを連れて宿のロビーに向かう。


「あ、カイト、、」


「あばっ!よ、よぉセニカ、悪いなラゼッタ使って呼び出して」


「ど、どうしたの?」


いつもみたいにカイトに目を合わせないセニカ。


(あれ?全然目を合わせてくんない!てかこっちにすら顔を向けてくんない!)


「あ、あのさー、そのー、、ほら俺達もう知り合ってだいぶ長いじゃん?」


「うん」


(いやいやちょっと待て!全部振り返るつもりか!?こう言うのはストレートに気持ちを伝えればいいんだ!)


「じゃなくてっ、、ごめんっ!俺やっぱり約束守れないかも」


「約束?」


「ほらっ、その、、学園生活が終わるまでに付き合うのはやめておこうって言う、あれは約束なのかな?まぁいいけど、、とりあえずっ、やっぱり無理だ!」


「って事は、、もう、グスッ、、私の事好きじゃなくなっ」


(ええええぇぇぇぇぇ!!大きな誤解されたあああ!!最近治ったと思ったらまた天然発動してるよぉおおお!!)


「ちっちがうって!その逆だよ!」


「グスッ、、」


「その、、好きすぎて学園生活が終わるまで付き合うの我慢できないっていうか、今すぐ付き合いたいなぁって」


「えっ、、」


「俺と今すぐ付き合ってください!」


お決まりの90度で右手を差し出すポーズで決めるカイト。


「実はね、、」


(実はねって事はまさか!?「実はね、他に好きな人ができたの」とかなのか!?)


「私も、何だか学園生活が終わるまで我慢できなくなるくらいカイトの事好きになっちゃった」


(え!)


「だから」


カイトの手を握り、カイトがセニカを見上げる。


「宜しくお願いします」


頬を真っ赤にしながらカイトの目を真っ直ぐみてカイトの告白を承諾する。


その瞬間カイトの中で溜まっていたセニカに対する気持ちが爆発する。


グッ


カイトの手を掴んでいるセニカの両手を自分の方向に引き寄せ、バランスを崩したセニカの勢いを利用し、唇を奪いにいったカイト。


『テレポート』


何故かカイトの中にあったロマンチストの部分が勝手にテレポートを使い、満天の星空の下に移動した2人。


少し時間が経ち、唇を離す。


ヒューッ


「さぶっ!」


「寒いね」


「でも不思議とあったかい感じもする」


「私も、ありがとうカイト、私の事好きになってくれて」


余りに可愛すぎるためもう1度キスをしておく。


こうして家族旅行の1日目は2人の甘いキスで幕を閉じたのであった。

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