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第1章 家族旅行



ジリリリリリリッ


授業終了の鐘が学校中に響き渡る。


「なぁカイト、放課後運動しにいこうぜ」


メルトがカイトの座る机へと向かいながら声を掛ける。


「明後日にはテストが控えてんだぞ?勉強しなくていいのかよ」


「しなくてもなんとかなるんだよテストってのは」


「お前それ勉強してない奴のセリフじゃねーか、人の事巻き込むんじゃねーよ」


「もーいけずー!」


「カイト、さっき先生がプリントを取りに来てって言ってたよー!」


「おう、分かったー」


プリントを取りに行き終わり、校門へと急ぎ足で向かう。


「悪り〜!先生に呼ばれて少し遅れた」


「あたし達も今着いたばっかよ、それじゃあいきましょ!」


「今日は確かルフトの家だったよね」


「今日はうちの親が出かけているから先にうちの妹達を迎えに行こうか」


ルフトの家に向かう途中、ミルとミアを迎えに行き、ルフトの家へと着いた。


「よし、それじゃあミルとミア?今日はおにい達は大事な勉強をしなくちゃいけないから大人しく2人で遊んでおくんだぞ?」


「カイトー!もっかいたかいたかいしてー!」

「ミルもー!」


「聞いてませんね、はい、もういいです、俺は頭良いんで勉強しなくても余裕なんで、もう落第すればいいんだよ」


((おいカイト!プリンの匂いがするぞ!))


カイトの中からアッシュが現れる。


「うぉっ、アッシュ出てきたよ、さてはうちのプリンを狙いに現れやがったな!」


『おいルフト、いくらカイトの親友だからって俺様からプリンを遠ざけようとするなら容赦はしねーぜ?』


「これは俺達4人とミアミルの分だ、お前の分はねぇんだよ!」


『美女1人』


「どういう事だ」


『美女1人お前に紹介してやる、お前の分を俺様に寄越せ』


「いつもカイトの中でインドア生活してるお前が美女とお知り合いな訳ないだろ?」


『ふっ、エルフのたくさんの美女と俺様は知り合いなんだぜ?お前が学園でのこのこ生活している間に俺様はエルフの里でそれはもう精霊ってだけで美女に囲まれてだな』


「6人分のプリンをお前に渡す、だから6人紹介しろ、それで手を打つ」


『交渉成立だな』


ルフトが魔導冷蔵庫の前から退く。


ガチャ


「あ!ダメだよアッシュ!あたしも楽しみにしてたんだから!」


「私も楽しみにしてた!」


「ミアもー!」

「ミルもー!」


『よーく冷蔵庫ん中見てみろ』


ルフトが冷蔵庫の中に入っていた紙を取り出し読み上げる。


「ん?なになに?プリンみんなで分けて食べるんだよ、アッシュには5人分作っておいたから取り合いするんじゃないよ?」


冷蔵庫を見ると、プリンが11個置いてあった。


「らしい、つっても食っていいのはアッシュとミルとミアだけだからな!他は勉強が終わってからだ!」


「えー!」

「食べてからでもいいじゃないーケチー!」


「うるさい!早く勉強に取りかからないとお前達の分のプリンを食ってやる!」


「今日のお前なんだか張り切ってるな」


「お前らが危機感持たなさすぎて、こっちが見てて焦ってるパターンだよ!」


「ただのお人好しじゃねーかよ」


「いいからさっさと座って勉強しろ?」


「お、おう」


こうしてその後ルフトとセニカから徹底的に勉強を叩き込まれ、おかげで何とかギリギリ試験の合格判定を貰い、一先ずは目先の峠は何とか越えるカイト達であった。


そしてそこから時が経ち10月、1年生の後期へと突入する。




「あ〜!今日の訓練疲れたー!」


訓練場のシャワーから出て、いつもの様に外でセニカを待つ。


「いつもごめんね〜」


「んじゃあ行くか」


「やっと今日教えてくれるのよね」


「まぁな」


セニカとカイトは学長室へと足を運んだ。


コンコンッ


「入ってよいぞ」


「失礼しまーす」


「おぉ、来たか来たか」


「いよいよですね」


「そうじゃな」


「ラゼッタ達はまだ来てないのですか?」


コンコンコンコンッ!


「どうぞ〜」


「失礼しまーってカイト達も早めに来てたんだね」


「やっと教えてもらえるんだよな?ずっと俺とセニカちゃんは気になってたんだぞ?」


「取り敢えず場所を移動しようか、カイト君?いつもの場所で」


「はい」


『テレポート』

シュンッ


スタッ


カイト達がテレポートで飛んだ場所は、廃墟であった。


「廃墟?ここに何が?」


「付いてきなさい」


ノイドに言われるままに付いていくルフトとセニカ。奥へと進むと布がかぶせられた大きな物体が佇んでいた。


「これは?」


セニカがカイトに質問をする。


「テレポーターだ」


「テレポーター?」


「うん、わかりやすく説明すると」

バサッ


覆いかぶさっていた布を剥がすと、中から巨大な扉の様な形で中心に空洞がある物が現れ、説明を続ける。


「テレポートの魔法を引用した場所と場所を繋いでくれるゲートだ、これがあればテレポーター同士繋がっている場所であればどこにでも行ける」


「取り敢えずなんかすごい物ってのいうのは分かったけど、何処と繋がってるの?」


「それを今日教えてあげるんだけど、俺の口からじゃないのがいいんだこれがー」


「そろそろ時間が来るぞ?」


ブワァッ


ゲートの中心が少しずつ光出す。


「すげぇ」


思わず声を漏らすルフト。


「そろそろ開くぞ、下がっておるのじゃ」


ブワァンッ


更に光が強くなり、風が吹く。


そして僅かだが光の中から2つの影がこちらの方へと歩いて来る。


「久しぶりねセニカちゃん、ルフト君」


中から現れたのはファミルとレイゼンだった。


「先生!」

「せんせ〜い!」


セニカがファミルを見るなり抱きつきに行き、ルフトも違う意味で抱きつきに行ったが風魔法で飛ばされる。


「ラゼッタと2人で隠れてこそこそしてたのってこれの事?」


「そうそう、2人にはファミル先生が帰ってくる事を事前にサプライズの為に伏せておいたんだ」


「まったく、何であたしもこんな事に付き合わされたのか、教えてあげればいいじゃない」


「分かってないなラゼッタは、サプライズってのはされた方はすげぇ嬉しいんだぜ?」


「どうじゃファミル?里の復興は?」


「えぇ、もう元通りだし、ムン婆達も外交であちこち大陸内を回っているわ」


「うちの学園はいつでもお前達の助けをする方針で決まったさかい、エルフの子達にも勉強する場を与えてもいいんじゃぞ?」


「有難いけど、私達は私達の教育方針があるから、留学という形でお世話になろうかしら」


「そうじゃな、うちの生徒からももしよかったら留学させようかの」


「えぇ、それが良いわね」


「ファミル先生はもう戻って来れるんですか?」


セニカが心配そうにファミルに伺う。


「前みたいに毎日は出来ないけど、2日に1回のペースなら時間を割いて貴方達を教えるわ」


「よっし!これでまた一歩強くなれる!」


「でもでも、2日に1回って事は1日分はー?」


「その為にレイゼンを連れてきたのよ」


「あ!第3の隊長だ!」


「確かランザード隊長曰く、ファミル先生の次に里の実力者らしい、頼もしい〜」


「、、、、よろしく頼む」


「良かったわねレイゼン、歓迎してもらえて」


「そうだnっ、ですね」


「にしても何でこんな廃墟にテレポーターを置いたのかしら」


「臨時じゃ、カイト君達の意見を汲んでやって人目のつかない所がいいと思ってな」


「そう?ホコリ臭いのは苦手だわ、さぁ久しぶりに授業にしましょ!」


「「はい!」」


「それじゃあ久しぶりにみんなの魔力量を見せてもらうわね」


ファミルが魔力眼でラゼッタ、セニカ、カイト、ルフトの順番で見ていく。


「うん、みんなどれも前より上がってるわね」


ラゼッタ: 魔力量 228→341


セニカ: 魔力量 316→452


ルフト: 魔力量 473→611


カイト: 魔力量 296→412


「こんな感じね」


「ルフトお前すげぇな」


「毎日ちゃんと言われた通りの練習して来たからなー」


「ルフトの癖にえらい真面目だね」


「すごいねルフト」


「それじゃあ今日教える魔法は上級ね」


「え?」


「上級?」


「えぇ、みんなの魔力量が300越えれば教えてあげようと思ってたんだけど、私がいない間に随分と成長してたから、もうやっちゃおうかなって」


「でも私達中級魔法もまだろくに、、」


「良いのよ、中級魔法はざっくりいうと基本的にどれも初級魔法より多く魔力を使うってだけだからね、あんまりそこまで大事じゃないし、戦闘に使うなら上級か初級で足りるわ」


「て事は上級魔法には中級魔法では使わない技術みたいなのが必要になるんですか?」


「良いとこを突くわねルフト君、初級魔法は魔力を変換させる工程だけで魔法を発現させる事ができるのが殆どで、中級はその初級魔法でやる工程を数多く出せれば中級魔法として成立するの、そして今日教える上級は…」


「「「上級は?」」」


「想像力よ」


全員の頭に?が浮かぶ。


「そもそも初級、中級、上級、極級の概念は教える人によってそれぞれ異なるの、何処からが初級魔法で、何処までが極級何て教える人によって人それぞれよ、威力が高いだけや難易度が高いだけでは上級とは限らないわ。威力だけなら中級魔法に魔力を多く込めればいい話だし、難易度が高いだけでも威力が無いって場合も多いわ。そこで私が提唱する上級魔法の概念で最も大事だと思うのが想像力よ」


「それってつまり想像で魔法を生み出すって事ですか?」


「簡単に言えばそうよ、上級からは基本的に初級と中級で使う技術を応用して、オリジナルの魔法を生み出すの、威力や難易度何て難しくてお堅い考えは中級まで、これからは自由に魔法を使いましょ」


「例えばどんなのが上級に入るんですかね」


「一応セニカちゃんに教えた魔法操剣は上級魔法に入るわよ」


「え!?そうだったんですか?」


「自分でも知らずに使ってたのか?」


「まったく知らなかったー」


「これからは見本も見せていくけど、なるべく自分で思いついた魔法を練習してもらうわ、魔法はこれからが面白いからね!」


こうして付き添いのレイゼンと共に実践授業が始まった。


「レイゼン先生!」


「、、、、先生は慣れない、さん付けでいい」


「何でレイゼンさんはいつも喋るとき間があるんですか?」


(いきなりぶっ込んだ質問しやがるなラゼッタ)


「、、、、人と話すのに慣れないのと、何を返すか考えているからだ」


「そうなんですね、でもファミル先生と話している時はスラスラ喋れるんですね」


「あいつとは付き合いが長いからな」


「あ、ほらすぐに返事返ってきた!」


「おいラゼッタ、思いついたのかよベラベラ喋ってるけど」


「だって思いつかないんだもんー、会話の中から思いつくかもしれないでしょー?そう言うカイトはどうなのよ?」


「ふっ、俺はもう10個くらい軽く浮かんでいる」


(前世の知識から持ってきたもんばっかだぜ)


「それじゃあ、見せてもらおうかしら」


「ふっ、驚くなよみんな」


(魔力の属性は雷、右手を前に出し、闘気を腕に纏い、闘気の外側に大量の雷の魔力を加速させる)


(そして岩魔法で球を作って、、)


「セイッ!!」


ビュンッ


バゴォンッ!!


「腕ぶっ飛びそうにっ、、」


目の前を見ると廃墟の壁に穴が空いていた。


「「「うおおおお」」」


「思わず声を漏らす3人」


「凄いわね、初めて見る魔法だわ」


「今のはどうやって編み出したのかしら?」


「えーっと、これも最初の雷魔法と一緒でたまたま見つけたんです」


「磁気の力で物体を飛ばすとは面白い考えね」


「溜めに時間がかかるのであまり実戦向きとはいきませんが、ただ使ってみたかっただけです」


「それを実戦で使える様にこれから工夫しましょう」


「はい!」


「ほかのみんなも思いついたらレイゼンに声を掛けてね、私はカイト君と2人きりでお楽しみを」


「ぬぉおおお!カイトめ!先生と2人きりでぇええ!」


「じゃあな〜」



「先生、一つ聞いていいですか?」


「なんでも聞きなさい?」


「俺たち、ひょっとしたら授業のスピード早すぎませんか?1年生で上級魔法を習うなんて正直普通のスピードじゃ無いって思って」


「そうね、、もしかしたらそうかも知れないけど、気にする必要あるかしら?三賢王の私が教えるんだから、早くて当然でしょ?」


「そうっすね、気にしたらダメですよね、あ!そういえば色々教えてもらいたい事いっぱいあったんで聞いてもいいですか?」


「改まってどうしたのよ、先生なんだから教えるのは当たり前でしょ」


「えーっと光魔法のアレについてなんですが、、」



こうしてエルグランドとウルミスト学園を繋ぐテレポーターを設置した事により、ファミルとレイゼンの交代で行う授業が再開された。



季節は過ぎていき11月。


「うぅ〜、さみぃ〜」


「にーに!ごはんできたよ〜!」

「にーに!」


「すぐ行く〜ズズッ!」


「カイト!準備は出来たか?」


「おうよ!ばっちしだぜ父さん!」


「それじゃあ行くぞ〜!」


「「「おぉー!」」」


「あまりはしゃぎ過ぎて怪我しない様にね」


今日は国の指定した祝日ファミリーデイ。その名の通り、1年に1度家族全員揃って休日を過ごす。カイト一家はこの日は決まって外泊するのである。


「父さん待って!先にルフト達と合流するんだろ?」


「おぉそうだそうだ、忘れてたぞ」


「ママァだっこー」


アルトがカミラに甘えて抱っこを要求する。


「アルト、もう歩ける年で、家から出てまだ少しなんだからママを困らせないでちゃんと自分で歩くんだぞ?」


「じゃあにぃにがだっこー」


両手を前に出しながらチョコチョコ歩く姿に心奪われるが、心を鬼にして抱っこを拒否する。


「代わりに魔法をかけてあげようかアルト?」


「あほー?」


「アホじゃない、ま!ほ!う!」


「まほー!」


「そうそう!行くぞ〜」


『エンチャント』


「おーーー!」


驚いた様子で足を動かすアルト。かけた魔法はエンチャント魔法で、自分以外を対象に身体強化をかける無属性上級魔法。


(この世界にバフを相手に掛ける事が滅多にないって聞いてマジで驚いたわ)


このエンチャント魔法の凄さは、相手自身がかけた強化魔法を更に上乗せ出来るのだ。それをファミル先生に掛けてもらってから身体強化をするといつもよりパワーとスピードが出て、そこで初めて効果を重複できる事についてお互い知る。


「どうだアルト?軽くなったろ?」


ビョンッ!


「うぉっ!」


アルトがカイトの胸の位置までジャンプしてきた。そしてそのままカイトの胸を腕で抱きつき離さなくなってしまった。


「ぐぬぬぬっ!身体強化で元々力強い癖に、力が更に強くなってやがる!」


こうしてルフトの家まで胸に弟を装備した状態で向かう事となった。


コンコンッ


「シュリカおばさーん!」


ガチャ


「あらエリー迎えに来てくれたのかい?」


「むかえにきたよー!」


「準備終わった?シュリカ?」


「ちょうど今からやろうかなって、、」


「もう!なんであなたはいつも時間にルーズなのよ!」


カミラがシュリカに口を尖らせながら、部屋へ入っていく。


「てか、誰も起きてないじゃないのよー!!」


「えっへへー、全員の準備は終わらせたんだけど、みんながまだ起きてくれないんだよねー」


「またいつものやつですねシュリカおばさん、任せてください!」


ルフトの部屋に入るカイト。


「あ!スカーレットちゃんがどうしてここに!?」


大きい声で叫んだのは、ルフトがナンパし痛い目を見た苦い思い出の学園に来て初恋の相手だ。


「ごぉ〜」


「美女の名前を叫んでも起きないだと!?」


ルフトは寝起きがとても悪く、ちゃんと起こしても起きた事が今までで1度もないのだ。


「じゃあこうするしかないな」


人差し指をルフトの脇腹にあて。


『エレクトロ』


バチンッ!

「ふぎゃあ!!」


ベッドから飛び跳ねるルフト。


「何だ!!誰だ!!何処だ!奇襲か!?何奴!」


「おいおい、落ち着け俺だよ俺」


「何だカイトか、グゴォ〜」


「寝るんじゃねーよ!」


『エレクトロ』

バチンッ!!


「ぷぎゃっ!!」


「おい、これ以上起きねーとうちの母親が直々にお前の相手をする事になるぞ?起きるよな?」


コクンッ


「よし、んじゃあ次はあの*天姉妹だな」


*天使と姉妹をかけてカイトがミアとミルを纏めて呼ぶときの名称。


ガチャ


「ミアー、ミルー」


「スゥー」

「スゥー」


「寝息まで息ぴったしじゃねーか」


「俺みたいに優しく起こしても意味ないぞ、こういうのはな、トォウッ」


「おらぁ〜、起きろーミルミアー!」


コチョコチョ〜


「スゥー」

「スゥー」


「仕方ない、可愛い天使達だが、今回ばかりは起きてもらわないと」


バチンッ


「ちょ!馬鹿!俺の可愛い妹達に何すんだよ!」


「起きねーと出発出来ねーだろーが!」


「にぃにー!」


「ん?エリー?」


「ミアちゃんとミルちゃんまだおきないのー?」


「これから起こすよ」


バチンッ


「馬鹿っ!」


「こほん」


「きりーつ!!」


エリーゼが起立と叫び出した途端。ベッドにいたミアとミルの姿が消えていた。


「てんこ!!」


「1!」

「2!」


「きょうはなんのひかおぼえてるかー!」


「かぞくみんなとおでかけー!」

「おでかけー!」


うとうとしながらもエリーゼの質問に答える姉妹。


「しゅうごうのじかんはすぎてるぞー!」


「すみませーん!」

「すみませーん!」


「ばつとしてかおをあらってきがえろー!」


「可愛い罰だな」

「うん」


「イェッサー!」

「イェッサー!」


「うちの妹に何を仕込んでんだよエリーは」


「学校じゃ、連中を束ねてるって噂だ、この前学校まで迎えに行ったら荷物持ちの男の子がいたんだぞ?」


「お前の妹こえーよもう」


「これでだいじょうぶだねー」


「お、おう、ありがとなエリー」


ようやくルフト一家を全員叩き起こし、出発するのであった。


「今年は何処いくの父さん?」


「ふっ!よく聞いてくれた息子、今年はなんとずっと予約が取れなかった極上の宿屋、星ノ宿で1泊2日の旅行だ!」


「なっ!あの予約が2年以上は埋まっていると言われるあの超高級宿じゃねーか!」


「3年前に予約したんだ、ようやく順番が回ってきたぜ」


「流石叔父さんだぜ!」


「もっと褒めるんだお前ら!ガァーッハッハ!!」


そして3時間かけて、エリュードの北西側に位置する、マトルトへと馬車で移動し、山の奥深くの上に位置する星ノ宿へと到着した。


「到着しました、ここが星ノ宿です」


馬車から降りると、目の前にはエルグランドにも見劣りしない大きな木に囲まれた大自然の中に大きな宿が建っていた。


「おぉ〜、見るからに豪華そうだな〜」


「うぅ、馬車酔で気持ち悪い…」


「おにぃ、つかれた!抱っこ!」


「悪いミア、今はちょっと勘弁してくれ、うっぷ」


「アルト、ねぇねが手を繋いであげるからね」


「ねぇね!」


ミルがアルトの手を引き宿の方へ歩く。カミラが寝ているエリーゼを抱きながら馬車から降り、後にシュリカ、ルドガーと続く。


「よし、宿に入るか」


宿の目の前まで向かうと、大きな看板に前世ではお馴染みの湯のマークが書かれてあった。


「これって、、もしかして温泉があんの!?」


*「よくお気付きになりましたねぇ」


カイトの背後から老婆が突如現れる。


「っ!!びっくりしたー!」


*「遥々ご足労おかけしました。ようこそ星ノ宿へ、私女将のトメコと申します、お客様は確か予約にあった…」


「ルドガーで予約してます」


*「おぉ、そうじゃルドガー御一行でいらっしゃいましたか、どうぞどうぞこちらへ」


トメコと名乗る着物を着た老婆が、カイト達を宿泊先の部屋へと案内する。


「創業450年って聞いたのですが、従業員はトメコさんお1人何ですか?」


「わしのほかに娘2人と、孫3人でこの宿を切り盛りしております」


「それだけの人数で2年先の予約まで切り盛り出来るんですかね、今日の客とか僕達だけじゃない筈だし」


「わたくしを含めた従業員6名が各御一行のお世話を1人で行いますので、心配いりません」


「それより着物を着ているなんて珍しいですね」


「おぉ、お客様、よくぞこれが着物だとお分かりで」


「あぁー!その、学校でー、教科書で見た事あったんで!」


「あったか?教科書にキモノとか?」


「ほ、ほら!教科書の最後から4番目のページの右端に!」


「この着物という服はこの宿の創業主であるワシのご先祖様が、中央大陸のフルフニカから仕入れてきた工芸品でございます」


(着物を作ってる国があるって事か、一応覚えておこう)


そうこう話していると、自分達が泊まる部屋へと着いた。


「此方が本日お客様にお泊り頂く部屋となっております」


案内された部屋にルドガー達は思わず感嘆するが、カイトには見慣れた和室で、広いルーフバルコニーには2つの木にハンモックが吊るされてある。そして極め付けは…


「天井が、、」


「凄いわね、全部ガラスよ」


「朝まぶしくね?」


「そのガラスは特殊な鉱石で作られておりまして、日光だけを反射します」


「なんで天井をガラス張りに?」


「それは後程のお楽しみという事で」


それぞれ思った事を質問していくなか、カイトだけがぼーっと立っている。


(やっぱり1つの部屋なんだな)


年に1度の家族旅行はこうしてルフト一家と共にするのが決まりになっていて、宿泊する部屋もいつも全員同室という事に少しだけ未だに違和感があるカイト。


「疲れたー!」


ドサッ


荷物を部屋に置き、その場で寝転ぶルフト。


「長いお時間馬車での移動はさぞかし大変でしたでしょうな、宜しければ昼食の方をお持ちいたしましょうか?」


「たべるー!」

「たべるー!」


ミルが勢いよく小さな腕を振り上げながらする返事をアルトも真似をする。


「それではお持ち致しますので少々お待ち下さいまし」


ガラガラ


「にしても広い部屋だな、それになんだこの地面、ツルツル滑るな」


「本当だツルツル滑る」

(畳か、知らないフリしとこ)


「あら、この部屋お風呂がないわ」


「ん?そんな事ないだろ」


カミラがルドガーに部屋に風呂がない事を伝える。


「さっきトメコさんが説明してたじゃん、お風呂は温泉だって」


「「オンセン?」」


「えーっと、でっかいプールみたいな感じで、暖かいお湯に全身浸かってリラックスするんだよ、ここのお湯には美肌効果や疲れを落とす効果もあるらしい」


「詳しいねカイト」


「誰も話聞いてなかったから俺が聞いてたんだよシュリカおばさん」


「取り敢えずご飯が来るまで待っとくか」


「んぅ、、」


「起きたかエリー、ほらパパが予約した部屋どうだ?綺麗だろ〜」


「おなかすいた〜」


「もうすぐご飯だからミアミル達と遊んどきなさい」


「ルフト、館内、、じゃなくて建物の中見て回ろうぜ」


「おっけー!」


「ミアもいくー!」

「ミルもー!」


「エリーもいきたい!」


「ちょっ、、お前達は母さん達とご飯食べ終わってから連れてってもらえよ!」


「いいじゃんにーに!」


「はあへお、ふはひほほ(離せよ、2人とも)」


「いくのー!」

「いくのー!」


「いいじゃない連れて行ってあげても、迷子にならない様にお兄ちゃん達と手を繋いでなさいよ!」


「え〜」


「え〜じゃない!ほら!行きな!」


シュリカに強引に手を繋がされて妹達を連れていく事になった。ちなみにアルトはエリーゼが起きた後、眠りに着いた。


「んじゃ行ってくる〜」


ルフトとお互いの妹達を連れて星ノ宿の館内を探索し回る途中、エリーゼが足を止めた。


「どうしたんだエリー?」


「にーに、エリーおきてからへんなのー」


「何処か具合悪いのか?」


「どうしたんだカイト?」


「エリーが調子悪いみたいなんだ」


エリーゼの額に手を添えるが熱は感じない。


『キュア』


「どうだ?まだ変な感じするか?」


「うん」


「具体的に何を感じるんだエリー?」


「なにかいろがみえるの」


「色?」


「うん、ルフトにぃからはみどりいろがみえる」


「みどり?」


「ミアちゃんはくろでミルちゃんはしろ」


「それでにぃにはしろいろみたいなのとしろいろ」


「何だその色ってのは」


「そのひとのからだからもやもや〜って、ずっとみえてへんなかんじ」


「一旦部屋に戻って、母さん達に言いに行こうか」


「そうだな、ミルミア!部屋に戻るぞ」


エリーゼの目の原因を親達に報告するため、部屋へと戻る途中。


バタンッ


*「もうパパなんか嫌い!」


バタンッ


*「姉貴のバーカ!!」


*「あっ!リヒト!止まりなさい!」


ドスッ


「おっ!」


*「いてて、何だオメー?邪魔だなー!」


*「すいません!コラ!リヒト!人にぶつかっておいて失礼じゃない!すみませんでした!」


オレンジ色の髪をした男の子がルフトにぶつかり、それを姉らしき人物が慌てて謝りに頭を下げる。


*「待ってくれ!パパが悪かったよ!」


*「知らない!」


「あっ!」


*「ん?」


カイトの左の廊下から怒りを露わにしながらほっぺを膨らませて現れた女の子に見覚えがあり思わず声を上げてしまうカイト。


「セニカ!?」


「ん?カイト!!」


「ほらいくよ!」


「え!?ラゼッタ?」


「どうしてあたしの、ってルフトじゃん!」


思いがけない人達と出会したカイト達であった。




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