第2章 園外訓練最終日Ⅱ
スッーー
音もなくまるでマジックで人が消える様にその場から音を立てずに消え次の瞬間にはカイトの目の前にまで現れ、それに反射で両手を前に出すも、両手は空を切り、気がつくと再び元の位置に戻っていたヴァイス。
「はっや...」
(いや落ち着け、いくら早くても瞬間移動の様な点から点への移動より速いものはない...何とか罠のある場所まで誘い込んで一瞬の隙を作らないと...)
そうこう考えている内にヴァイスは拠点の北側へと走り始める。
「はや!あんなのどうやって追いかけろって言うの?」
「兎に角ひたすら追いかけるしかない、ニューロは得意な岩や泥で行動阻害を、マシューとソロカはさっきの様に師匠の逃げ道を狭める役割で頼む、俺は隙を見てテレポートで先生にタッチする係で行く」
「了解でござる」
「分かったわ」
「りょーかい」
そこからカイト達の必死の鬼ごっこが始まるが、結局触れるどころか、近づく事すらできずに最終的にヴァイスが姿をくらました事で、鬼ごっこは終了を迎えた。
「ぷはぁっ!あ“ぁ〜、マジで容赦なさ過ぎだろ師匠」
「はぁ...はぁ...はぁ....全くでござる」
「もう動けねぇぞ俺は...こんなに走ったの生まれて....初めて...」
「...はぁ〜疲れた〜」
拠点で水浴びで汗を流しながら嘆くカイトの近くで、汗を滝の様に流して倒れるチームメイト。
結局カイトの考えた作戦はどれもタッチをする寸前で反応して躱される形で終わりを迎えた。
「あれは多分魔力を節約してたら一生追いつかないぞ...次は最初から俺も2人と同じ様に追いかける役割でいこう、ニューロあのままで良いい」
それから今度はアルベルトの拠点で大きな音が鳴るのが聞こえ、10分ほど休憩した後に当初の予定通り少し早めに軽めの昼食を取る事にする一同。
「ひかひ(しかし)...んむぅ...今日で川魚とこの燻製肉とはお別れかー」
「何だか長い様で短かったわ、私達強くなったかなー」
「そりゃあ弱くなる事ないし強くなったに決まってんべタリカ、初日なんてみんな魔物に結構ビビってたのに今じゃあ普通に1人でも狩れるようになっただろ」
「まぁ確かに魔物を克服できた事に関しては拙者も大いに成長したと思うでござるよ」
「偉そうに聞こえたら悪りぃけどニューロに関しては結構妨害系の技の精度と速度が目に見えて上がってるぞ、マシューも感知系の魔法や状況判断能力が高くなってるのと剣術での無駄な動きがなくなってきてるし、ソロカなんて完全に剣術の腕が来た時より鋭さと正確さが上昇してるし、俺が教えた料理のおかげで女子力も少し上がったんじゃ無いのか?ははっ」
「正直俺最初は剣術の1つも知らなかったカイトがクラスのトップに入るなんて思いもしなかったよ」
「ねー、私も」
「まぁ人間誰だって強くなろうと思えば強くなれる、違いは才能でも努力でもなく掲げる目標だよ」
「良い事いうね〜」
「ねぇみんなは卒業したら何するの?」
「拙者は実家が運営してる農業連の手伝いをしに行く予定でござる」
「そういえばニューロも一応貴族だったもんな、マシューは?」
「俺はー、んーと、まだ何も考えてないな〜、王国騎士団に入るか、町の自警団にでもなろうかな」
「ふふっ、マシューの自警団姿は想像しただけで面白いね」
「今のうちに俺に媚び売っといた方がいいぞ〜、そのうちお前らを捕まえる事になるかも知んないからな〜、てかそういうソロカはどうすんだよ」
「私はギルドに入ろうかなって思う、姉さんが所属してる『鈴色の千蝶』に入って色々やりたいかな、カイトは?」
「俺は槍術科の親友と旅に出る、このヴァルトイス大陸を全部旅して、中央のフルフニカ大陸、東のアゴン大陸を全部制覇してこの世界を色々見て回りたい」
「わーお、それは凄く大変そうね....」
「かの有名なシシリアン・ワンワールドの様でござる」
「あぁ〜あの世界一周したって言う旅人ね」
有名な『ワールドウォーク』の著者シシリアン・ワンワールドはカイトも知っている程、世界的に有名な人物であり、幼少期の頃ルフトと共にこの本見て育ったと言っても過言では無い程、カイトの世界を旅するという目標に影響を与えた程の人物だった。
「お前らも旅じゃなくても旅行くらいは絶対しといた方がいいと思うぞ?生きてるうちに自分の知らない世界を見れるってのはめちゃくちゃ良い経験になると思う」
「それもそうね〜、ラパダイス島とエルグランドとかホントあそこまで心動かされた場所は初めてだったな〜」
「ラパダイス島はともかく、エルグランドは確かに凄かったな〜、ホントに別世界に迷い込んだのかってくらい壮大な景色だったな」
....
........
そんなこんなで気がつくとアルベルト達の縄張りから激しい音は徐々に静まっていったので、休憩を終えジュラン達の縄張りへと侵入し始めるカイト達。
「目指すは4点分の魔石、4点取れれば14点だから5点持ってるアルベルト以外のチームが10点取ってもほぼ俺たちの勝ちみたいなもんだ」
「問題はジュランチームが全員もしくは1人残しで10点を狙うかでござるな」
「そうね、それが分かればセニカ達の時と同じ様に動く感じでいいよね?」
「あぁ、それと俺たちがこの前攻めた位置とは別の場所に拠点を移した可能性もあるから、あの場所に拠点がなければ、すぐさま全員で拠点を探しに行こう」
「「「了解」」」
それからもう暫く待っていると激しい衝撃音がカイト達が待機している場所の真反対の東側から聞こえたので、急いでジュラン達の拠点を探しに向かうカイトチーム。
しかしカイトの予想通り前回訪れた拠点には誰もいなく、且つ生活していた痕跡もなかったもなかったためすぐさま拠点探しに行動を移す。
それから数分後いくら探しても拠点は見つからなかったので、やむおえず先ほどからずっと聞こえている轟音付近のエリアで探すことにしたカイト達。
そして少しすると山間を流れる小川を見つけ、川の側を歩いていると...
「はぁ...一旦ストップ、お前達はタイミングを見計らってきてくれ」
山と山の間に流れている小川の真ん中に水面から僅かに飛び出した岩の上で鍛え抜かれた上半身をあらわにし、瞑想をしていたジュランを見るなりため息を吐くカイト。
「来たか、ん?なんだお前だけか?」
「俺だけで十分だろお前くらい、ったくなんでお前は先生の事追ってねぇんだよ」
「そらぁ先生追ってる間は拠点が手薄になるから、クラスで1番強い俺がなんとかするのが普通だろ?」
あっけらかんとした悪気のない表情で傲慢さを感じさせる会話の内容に額から少し血管が浮き上がるカイト。
「まぁいい、よくも俺らの拠点から魔石を取った挙句、報告しやがらなかったな」
「へっ、やっと気付いたか!どうだ?これでイーブンだな」
「なーにがイーブンだよ、返してもらうぞっ!」
『紫電』
「そっくりそのまま返してやるよっ!」
『灰燼』
キィンッ!
『焔浄刀』
話終わる瞬間に10メートル離れた地点から一瞬でジュランの目の前まで距離を詰め、刀をふるうも右手から放たれた手刀によって刀を止められ、その後闘気を纏い刀身を力強く握られ、燃え上がる左手に生成した炎の刃でカイトに斬りかかるジュラン。
パシッ!
『烈拳』
『灰燼』
振り下ろされた手刀をカイトは刀を握っていた反対の手で迎え撃つと見せかけて手首を掴み、同時に刀を離し、闘気を纏った右フックを放つも、構直して再び放たれたジュランの手刀に威力を相殺される。
しかしカイトはすぐさま相殺してきた手刀を掴み、両手を離れない様に闘気でコーティングしたのち、空中から地面に落ちる寸前の刀を右脇腹から生やした闘気の腕で掴み、そのままジュランに斬りかかる。
「腕は1人2本までだろっ!」
斬りかかってくる腕を蹴り上げ、それに反応する様にカイトも足でジュランの胸を踏みつける様に蹴り飛ばす。
「ふぅ...やるじゃねか、腕を増やす事で戦いのバリエーションを増やすなんて、そうそうできる事じゃねぇのにな」
「テメェは天然で人を舐め過ぎなんだよ、そろそろ泣かしてやろうか?んん!?」
「へっ、冗談は良いから本気でこいよ」
「最初から行ってんだよっ!」
再び始まるカイトとジュランの攻防に付け入る隙を窺う3人はタリカを筆頭に一旦作戦を立て直す。
「良い?2人の攻防に下手に入ればカイトの負担になるかもしれないから、ジュランの妨害とカイトのサポートを主にした方がいいから、マシューと私でカイトの援護をして、ニューロは妨害に徹して、ジュランがこっちに来る様なら私がひとまず止めるから安心して」
「「了解」」
『皆剡』
『四臂』
ソロカによる作戦会議の一方でカイトとジュランはそれぞれの持ちうる全力を出し始めていた。
右手に握る炎剣から振り下ろして放たれた炎を正面に見据えたカイトは走り出すと共に4本の腕に握る闘気の刀を振り下ろす。
ブォンッ!
(このまま..ん?影?...っ!)
ブォォォッ
斬撃から放たれた風圧で炎を切り裂きそのままの勢いでジュランに向かって一歩前に出ようとしたところ、足元の影が徐々に伸びていくのが見え、顔を上げると大きさが初撃の炎の3倍ほどの炎が襲いかかっていた。
『千切り星』
4本の腕に魔力を集中させ、剣伝いに闘気を放出し、襲いかかる炎を押し返す。
パシッ「燃えろ」
闘気の斬撃で炎を押し返したと同時に足首を掴まれた感覚を感じ、目線を落とそうとするが一瞬で視界が炎に染まり、火傷による痛みが足元から頭上を駆け抜けた。
「ふんっ!」
燃える皮膚の内側から闘気を放出して炎を吹き飛ばし、足元に一太刀放つも手応えはなく、すぐさまその場から離れて回復魔法で全身を癒す。
『八斬夜蠎』
カイトの回復を阻止する様に地中から8本の大蛇が一斉にカイトの全身を噛みつき、体を固定させたところを遅れて地面から飛んできたジュランが手刀で一閃。
カイトの首元に当てられた手刀はやがて炎を吹き出し、再びカイトの全身を瞬く間に炎で閉じ込めた。
パシュンッ
手刀を当てた瞬間から違和感を感じていたジュランは吹き飛ばしたカイトからまるで訓練の際に使う風船を割ったときの様な音が聞こえ、即座に空中で警戒し始めると、地中から闘気の腕が4本ジュランに向かって真っ直ぐ伸びた。
「捕まるかよっ!」
空中から今まさに地面へと落ちる段階の中、天歩を利用して華麗に4本の腕を全て手刀で退けるも、頭上からは2本の腕を生やし、それぞれの手には闘気の刀と愛剣を握ったカイトがテレポートでジュランの頭上に現れた。
「ぶっ飛べぇ!」
「あめぇよ!」
『皆剡』
キィンッ!!
しかし間一髪でジュランが体勢を立て直し、カイトの4本の剣を一本の炎剣で受け止める。
「甘くねぇよカスッ!」
カイトは事前に背中に生成した風魔法の刻印を起動させると、背中から突風が巻き起こりカイトの攻撃にもう一段階衝撃が追加され、空中というのもあり耐えきれなくなったジュランは地面へと吹き飛ばされる。
ズガァンッ!!!
「幕引きだ!」
『刹界』
地面に着地すると同時に生成した2本の腕を解除して、両脇に刀を構え砂煙から立ち上がる人影に一閃。
キィンッ!
両腕の刀を振り払おうとしたその瞬間、愛剣と闘気の刀がクロスして重なり合うそのタイミングで剣の勢いが止まると同時に甲高い金属音が鼓膜に響く。
「くっ...」
「やっぱ、剣を使ってる方がしっくりくんな!」
焔剣エニス、緋剣イグニの2本の剣に突きによる攻撃でカイトの刹界は見事止められ、驚くカイトの一瞬の隙にジュランが仕掛ける。
「お前の言うとおり幕を引いてやるよっ」
『漂水』
「ソロカっ!うぉっ!」
『寄手』
目の前に現れたソロカがジュランの剣をいなし、バランスを崩させたのを見て、瞬時に闘気の腕をジュランの後頭部に回し転ばせる。
『ボグフィールド』×『ロックバインド』
転ぶ身体に対し反射で両手を前に出し、四つん這いの状態になった瞬間、今度はニューロが地面を泥に変換させ、両手両足が沼へと沈んでいき最終的に沼地を岩に変換させジュランの身動きを封じる事に成功。
「うっし、俺の出番は必要なかったみたいだね」
「ナイスニューロ!そのまま拘束しといて...よいしょー!」
四つ這いの状態で拘束されているジュランの背中にニヤニヤした表情でカイトが座り込む。
「んがっ..なにしやがるカイトっ!」
「おいおい、椅子が喋んなよっとぉ!」
抵抗を試みるジュランに今度は力強く座り直すカイトにタリカがジュランからカイトを引っ張り上げる。
「もういいでしょ?ほら、ジュランも魔石の場所を吐いて、じゃないとカイトにずーーーっと屈辱的な目に合わせられるよ?」
「へっ、結局は交渉を試みる感じか...」
「ほらほら今の内に吐かねぇと痛い目みんぞ?」
「吐くわけねぇだろ?」
「そっかそっか、じゃあ新しく覚えた魔法の実験台になってもらうか〜」
吐こうとしないジュランに対しカイトはジュランの背中に手を当て静かに目を閉じて魔力を練り始める。
『ディスチャージ』
「んぐっ...なんだっ、魔力がっ...」
「俺は魔力の感知が下手だから本来なら吸収したいところだが、それができないからお前の体内の魔力を排出してやる」
((どうだ?こいつの魔力後何パーセントだ?))
((今で半分無くなったとこだ))
((じゃあ残り20になったら教えてくれ))
((ったくお前で感知しやがれってんだ、俺様は感知用精霊じゃねぇんだぞ?))
((まぁまぁ普段よくしてやってるじゃないのアッシュ君))
((オラ、20切ったぞ))
「うし、こんなもんかぁ〜これでお前は他の奴とはもう戦えませーん」
「はぁ...はぁ...くそっ」
「よく耐えた方だよジュラン、俺なんて試しでその技味わってみたけど身体中痛いのなんの」
「ねー、耐えれてるだけ凄いよ」
マシューが思い出したかの様に全身を摩る傍らでソロカも同じ様に摩り始める。
「さてさて〜、話す気になったかなジュラン君?」
「...ふぅ...こんなもんかぁ?これくらい屁でもねぇよ」
「はぁ...ニューロ」
「拙者の出番でござるな!」
「じゃあ私は見張っておくね」
「ジュラン、、悪いことは言わねぇ、本当に今の内に吐いた方が色んなダメージを負わなくて済む」
カイトの合図でニューロが何やら準備を始め、ソロカが呆れた顔で何処かへと行き、マシューが青ざめた表情でジュランに耳打ちするも、耳をかさないジュラン。
「ダメージって事は拷問か何かする気なんだろ?へっ、こちとら特別な訓練を受けてるから痛みや苦痛系には強ぇんだよ」
「はぁ...俺は警告したからなジュラン...ゴホンッ...えー、汝にアネア神のご加護が在らんことを」
最後にお祈りを捧げるマシューにジュランは鼻で笑い、そこから数分するとニューロが準備を終え、カイトが笑みを浮かべながらジュランの元へと歩み寄る。
「お前は何秒耐えられるかな?ニューロ改め、油神・ニューロの登場です!」
「何度見ても吐きそうだぜぇ!」
岩陰の後ろから現れたニューロにジュランが息を呑む。
普段の制服越しや、訓練時に着用する夏用の半袖半ズボンの運動着からもニューロのたっぷりとした体型は分かってはいたがいざそれが海パンの様な下着一枚のみの着用となると、改めて色んな物を感じるジュラン。
まずは重力に負けて地面に引っ張られている二の腕に目がいき、その次に脇の位置から垂れ下がった胸、そして海パンが隠れるほどにボテった腹、何故普段のキツい訓練をほぼ毎日受けて逆にこの体型を維持できているのかが逆に恐怖を感じさせるその体型は眼前まで近づいてきた。
「ち...近くで見るとす、すげぇなこりゃあ」
太陽の光を反射させた油まみれのニューロ改め油神と名乗るその人物は徐々にジュランの周りを歩いて一周し、耳元で小さく囁いた。
「鍛え抜かれた身体...抱き心地良さそうでござるね」
スゥーーーッ
その言葉を聞いた瞬間、ジュランの全身に虫唾が走り出すと同時に一瞬にして締められたイカの様に顔から色味が消えた。
そして四つん這いのジュランの上に油神が静かに抱くつく形でのしかかる。
そこからはまさに地獄絵図だった。
油まみれの全身を擦りに擦られ尽くされた後、顔を含む全身を油まみれにされ、その後カイトの口から「ショータイム」と掛け声が掛かると、役5分間程ポールダンスや際どいポージングを目の前で見せられたジュラン。
「ぶぅぇぇぇぇ...もう...うぷっ......やめてくれっ...気持ち悪すぎる..うぅ....」
「じゃあ魔石の居場所吐くか?」
「....」
「ニュー...油神様、お尻を出してこの物の顔にっ」
「皆まで言わなくて良い、勝負に勝つ為、我はどんな恥でも捨てようぞっ!」
「もう皆まで言ってんだろ...うぷっ」
たからかにジャンプし、空中で一回転するとニューロの穿いていたパンツが宙を舞った。
「分かった言う!...言うからもう頼むから辞めてくれっ!」
とうとう限界を感じたジュランは空中でパンツを脱いだニューロのアレが目に映る前に目を閉じて、降参を口にした。
「嘘1つでもついたら人気の居ないところまで移動してこれを2時間するから、覚悟しろよ?」
「分かってる...くそ、こんな苦痛は流石に味わった事がねぇし初めてだ...うぷっ...思い出そうとしただけで...」
それからカイトはジュランから3つの魔石の情情報を聞き出し、ソロカ、ニューロ、マシューを置いて単独で取りに向かい、5分程で息を切らしながら戻ってきた。
「ふぅ...よし、もう此処には用はない、帰るぞみんな」
「おいっ!せめて拘束くらい解いてくれよカイト!油まみれで気持ち悪りぃって!」
「仲間に助けて貰えー、それとももう一度油神様呼んで拘束といてもらうか?」
「うぅ...」
「じゃあな〜」
こうしてカイト達はセニカチームに続き、ジュランチームの魔石の奪還に成功したのであった。
そこから結局訓練が終了するまでヴァイスから魔石を奪う事ができたチームはおらず、結果カイトチームの優勝が決まった。
「以上で今回の園外訓練の優勝はカイトチームだ」
「「「「いぇーーーい」」」」
「ふあっはは〜!!セニカ以外跪けお前らぁぁああああああ!!!!」
「あーあ、完全に今回は負けたぜ」
「だってあんな事されるなんて普通思いつく?」
「...ちっ」
カイトチームの優勝宣言に素直に素直に負けを認めるジュランとその隣で静かに不服な表情でカイトを睨みつけるアルベルト。
ジュランチームから3点の魔石を奪還した後、カイトは訓練開始直後に思い付いていた作戦を実行する事にした。
その作戦というのがヴァイスを追いかけるチームへの妨害というシンプルな作戦であった。
元々この作戦を思い付いた時は邪魔をするのにも魔力やら体力を消費するのと、ヴァイスの周る縄張りがランダムということもあって、下手をするとノンストップで妨害しなければいけなくなるので一度削除したが、ジュランの魔力を排出した事で、ジュランチームの番でヴァイスに触れれる可能性は格段に下がった事により、自分達のチームに回ってくる時と、ジュランチームに回る際に休憩ができる時間ができる為、2組に分かれる事でローテーションができる事に気がついたカイトはすぐさま実行に移し、各チームの鬼ごっこの妨害に専念し始め、それが見事に刺さり結果どのチームもヴァイスを3回触れられたチームを0に抑え、カイト達が見事優勝した。
「俺ってまじ軍師〜、天才戦略家と呼んでくれても構わないぜセニカ」
「本当カイトほど敵に回したくない人間はこの先現れそうにないな〜」
「ふんっ、実力に不安がある凡人ほど策に頼ろうとする傾向にあるがな」
「あぁん?実力もあるし頭も良い俺は両刀なんだよ?そんなん言ってからテメェはこの前の地学の小テストでEマイナスなんだよ!」
「記憶を自分の都合の良い様に変えるとは流石だ、あれはEマイナスじゃなくて、Eプラスだ!それに貴様は地学のみでしか俺に勝てなかっただろ?俺は地学以外は全てAプラスだが?平均Dマイナス君?」
「くんのやろぉ...今すぐに油神様の制裁が必要みたいだな負け犬七光...ぐぬぬっ」
「正々堂々と勝負もできぬ貴様に俺が負ける訳がないだろっ...ふんぬぬっ」
互いに鼻が捻じ曲がるまでに顔を押し付け合い、いつも通りセニカが2人の間に割って入り宥める。
「はいはい、それで先生、この後はもう帰るだけですよね」
「いや、お前達が帰るのは明日だ」
「え?じゃあなんで昼過ぎに訓練を終わらせたんですか?」
「実はもう一つお前達に訓練を用意してある」
ヴァイスの口から放たれた言葉に既に気の抜けた生徒達の顔から笑顔が消えた。
「えー、まだあるんですか先生〜、俺らもうクッタクタですよ〜」
真っ先に抗議をするメルトに口角を少し上げ、言葉を続けるヴァイス。
「訓練と言ってもお前達の度胸を試すテストだ、説明はカイトからしてもらう」
「うっす!」
「ん?なんでカイトが?」
「オルグ君静粛に...えー、取り敢えず皆さん訓練お疲れ様でした〜、実は園外訓練の2日目に何やらコソコソ準備をしていた師匠を見つけて、色々聞いた所訓練最終日でみんなの気が緩んでいる所に、何かサプライズを用意したいという事で、僕から案を提案させて頂きました!その名も...」
「「「その名も?」」」
「今夜にカップル誕生か!?片思いのあの子と距離を近づけるチャンス!ドキドキ肝試しぃぃぃ!!」
「...」
「ん?」
「「「うぉおおおおおお!!!」」」
数秒経ってから上がった男性陣の歓声を宥めるカイト。
「肝試しと聞いてだいたい理解できたと思うが、一応ビビリなお前達の度胸を鍛える訓練の一環でもある!一応な!では早速ルールを説明するぞ!」
そう言ってカイトはポケットルームから大きな紙を取り出し、クラスメイトに広げて見せる。
紙にはカイト達の現在地と、そこから上に伸びる線が少し左右を行き来した後、木々に囲まれた大きな岩の箇所で線が止められていた。
「まず此処が俺たちの現在地であるキャンプ場だろ?此処からこの木々に囲まれた岩の上に置いてある魔石を回収してもらうのがルールだ!そしてこのゲーム...じゃなくて肝試しに参加する最低条件は男女でペアになる事だ、それじゃあ各自ペアを探してくれい!」
カイトの号令で一目散に男子が散らばりペアとなる女子生徒を探し始めた。
そして少し時間が経った後、続々とペアが生まれ始め、くじ引きで順番が決まった。
①ソロカ×グレイル
②メウィン×ジュラン
③メイダ×アルベルト
④ルシータ×オーロン
⑤モルス×オルグ
⑥タリカ×メルト
「おやおやおや〜、これはこれは、意外な結果のペアが幾つも誕生しましたな〜」
幾つかのペアを物不思議そうに見つめるカイトとなぜかその隣でソワソワしているセニカ。
「ん?どうしたセニカ?」
「いや...なんだかこの中からカップルができるかもって考えたらちょっと恥ずかしくなってきちゃって...」
「ハハッ、面白い反応だな。よし、じゃあペアの売れ残りのマシューとニューロはこっちに来て準備を手伝ってくれ、売れ残ったお前らの怨念は道中で気絶するほど脅かして報復してやれ」
「いや、俺は別に彼女がいるからペアを組まなかっただけdっ....」
「シッ、何もいうなマシュー、今ニューロを刺激するとあまり良くない、てかお前彼女居たのかよ、流石クラス1のイケメン、おめでとう」
隣で虚な目をしながら何やらブツブツ口にしているニューロを刺激しない様にマシューの口を塞ぎ、小さい声でマシューを祝うカイト。
「ひとまず肝試しの開始は日が十分に落ちて食事を終えた後に行う、食事は訓練も終わった事だし各チームではなくクラス全員で食べる事を許可する、食事を摂り終えたら先ほど売れ残ったメンバーとカイト、セニカは肝試しなるものの準備を手伝え」
「「「はーい」」」
こうして食事はカイトがいつも通り料理担当をし、料理が得意な生徒はカイトの補助をしつつ、そのほかの生徒はいつも通り片付けや皿洗いなどを担当し、無事食事を取り終え、その後約1時間程休憩した後、肝試しの時間となった。
「うっしゃあああ!!始まりましたウルミスト学園園外訓練最終日!第一回剣術科肝試し大会〜!」
「待ってました〜!」
「うぉおおおお!」
「えー、始める前にですねまずはもう少し詳しくルール説明をしたいと思います。えーっと、まず先ほどのこの紙に書かれている線の通りのルートで進んでもらい、最終地点のの木々に囲まれた岩の上に置いてある魔石を取るのが主なルールで、もし仮にこのルートとズレた方向に行けば失格、それと魔法も武器の所持も禁止、使用すれば失格とする。後はリタイヤしたい場合は大きい声で叫べば俺か師匠が助けに行く。それと道中幾つか課題を用意してるからそれも一つ残らずクリアする事、以上だ!後の進行役はセニカに任せからよろしくぅ!」
「それじゃあくじ引きで1番を引いたペアから順に行ってもらうね、ソロカとグレイルだよね」
「うぅ...あたし本当こういう系ダメだからしっかりしてよねグレイル」
「おう、任せてくれ!」
「それじゃあルートの書かれた紙と、松明を一本、それじゃあ無事に帰ってきてね2人とも」
こうしてグレイルとソロカペアの目印となる松明の明かりは暗い森の中を進むたびに目視できなくなった。




