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第2章 園外訓練Ⅱ



「全員集まったな...よし、ではまず縄張りをクジで決めてもらう、チームから1人代表者を選んだら、前に出てこい」


朝まだ日が登り切っていない時間帯に、集合の号令が掛かり、急いで服に着替えて焚き火前に集合するクラスメイト。


それぞれのチームから代表者が選ばれ、先端に色が付いたクジを引かされる。


カイトチームは黄色、アルベルトチームは青、セニカチームは緑、ジュランチームは赤。


「黄色は西、青は南、緑は東、赤は北だ」


焚き火の背後には2つのコテージ、コテージの奥には小川が流れており、小川より向こう側が北で、焚き火の後にある2つのコテージのうち、左は男子生徒用コテージ。男用より左の部分が西側となっていて、反対の女子生徒用コテージが側が東。そして此処まで来た道の方向が南となっている。


「これから各自準備が整い次第、各々の縄張り地点へと入ってもらう。制限時間は日が暮れる迄だ。魔物に襲われて危ない感じれば発煙筒で位置を知らせろ、直ぐに向かう。ただし一回の救助で1つ減点するから留意しておけ。日が暮れ次第爆音弾で知らせるので、それまではこのキャンプには出入り禁止だ。見つけ次第減点とする、分かったな?」


「「「はい!」」」


「では準備に取り掛かれ、5分で開始する」


それから直ぐに各々のバックパックをコテージから持ち出し、いつ出発しても良いように準備運動を始める一同。


「うっし!なんだかソワソワするな」


「はぁ...なんでカイトは怖くならないの?魔物もいるしやらないと行けない事いっぱいあるしで、生きていける自信が...」


「ビビリ過ぎだってソロカ、此処ら一帯の魔物くらいお前だったら大丈夫だよ」


「作戦はどうするでござるかリーダー?」


「そうだね、色々作戦を決めて行かないとダメだろうね」


「ん〜取り敢えずまずは拠点となる場所を決めよう、勿論ダミーを幾つか作って錯乱もさせる、他の作戦は歩きながら考えようか」


「分かったわ」


「了解でござる」


「了解」


「よっしゃ、目指すは1位だ、頑張るぞお前ら」


そしていよいよ訓練開始の時間となり、各地自分達の縄張りの入り口で開始の合図を待つ。


「各自配置についたな」


「それではこれから園外訓練を始める、死ぬなよお前ら!始めぇ!!」


スタートの合図が放たれ、各チーム一斉に森の中へと入っていく。


「まずは広まろう、俺を中心に左にソロカ、右にマシュー、マシューの右にニューロだ。互いに位置を確認できる位置まで離れて、なるべく広範囲で魔石を探そう、魔物を見つけてやれそうだったら各自で撃破、無理だったら叫んでもいいから助けを呼べ」


「「「了解」」」


それからチームで歩きながら、色んな作戦を考える。まずは互いに別行動をとる時に敵チームが縄張りに入ってきたのを目視したら魔法を使っても良いので空に向かって火球の後に水球を放つ事に決めた。


そして見つけた魔石は誰かが持つのではなく、決めた場所へ埋める事にする。




ーー開始から数十分後


「ん?あったぞ!これが魔石だろ?」


今の所魔物の姿もなく、順調に魔石探しに専念できていた一同は、漸く一つ目の魔石をマシューが見つけた。


落ち葉と共に地面に無造作に捨てられた魔石らしき物に、見つけたマシューが近づこうとした瞬間、地面が僅かに膨れ上がったように見えたカイトが、咄嗟に叫ぶ。


「待てマシュー!罠だ!」


ズゾォォォッ


しかしカイトの忠告は一足遅く、地面が蟻地獄の様に魔石を中心に、周りを吸い寄せ始めた。


「マシュー殿!」


「土に足がはまって動けない!」


『寄手』


すぐさま闘気の腕を伸ばしマシューを蟻地獄の中から自分の方向に引き寄せ、助け出した。


「くっ!すまねぇカイト」


「気にすんな」


「マシュー!?大丈夫ー!?」


カイトの左の位置にいたソロカが遅れて到着し、どうにか魔石を取り出そうと案を考える。


「魔法が使えねぇんなら無理やりやるしか無いな」


ダァンッ!


「カイト殿!?」


蟻地獄の真ん中にある魔石に向かって飛びかかるカイト。


ドサッ!


ガシ ガシ!


真ん中に着地するなり何者かが土の下からカイトの両足を掴み離さない。


「ふんっ!」


すぐさま目の前の魔石を取ってマシューの方へと投げ出し、拳を振り上げるカイト。


『烈拳』


ドパァン!!


力強く地面を叩くと、波のように土が揺れた後蟻地獄が止まり、地面が隆起してカイトの足を掴んでいた者が土の中から正体を表した。


「ん?モグラ?」


茶色の薄い毛皮に、4本の長くて鋭利な爪が生えた手、目が見当たらなく長く伸びた豚の様な鼻も相まって、何処からどう見てもモグラにしか見え無かったが、驚いたのはその頭と手の数だった。そして見た目も2メートル程の巨体だ。


「サンフルド!それも頭が2つに4本の腕...亜種よ!鼻から吐き出す毒砂に気をつけてカイト!」


「了解!」


ズザザザザッ


地面に再び潜ろうとしたのを見て、急いで止めようとするも、一瞬で土の中へと消えてしまった。


モゴッ


「へっ?...うおぉ!」


今度はマシューの目の前から顔を出し、そのまま鋭利な爪が生えた2本の手をマシューの胸元突き刺そうとワニの様に半身を土に埋めながらもう2本ので土を掻き分けながら突進する。


「マシュー殿、拙者に任せろ!」


『岩斬破』


マシューの後ろから走ってきていたニューロが地を這う岩の斬撃をマシューの横から放つ。


ザザザザザザッ


目の前から迫り来る斬撃を見たサンフルドは、すぐさま地面に再び潜り、斬撃を回避した後、今度は地中から飛び出してマシューに襲いかかった。


グワッ!


しかし飛びかかった瞬間、背後から何かに引っ張られ、マシューに爪先が迫る前に地面に引き戻された。


『寄手』


引っ張っていた物正体はカイトが伸ばした闘気の腕で、本来引き寄せる為の技だが、相手の質量の方が上回っており、逆にそれを利用して引っ張る力で自分から跳躍して近づく。


『天烈拳』


闘気の拳がカイトの腕から放たれ、そのままサンフルドの腹部に命中し、衝撃で土埃が舞い上がる。


「まだ死んでいない!ニューロ!」


「任せるでござる!」


『岩昇破剣』


岩を纏った剣で力一杯斬り上げ、サンフルドの体をカイトの方向に飛ばすニューロ。


『烈拳』


ボコォッ!  ズドォンッ!


空中で再び再び引き寄せて、そのままの勢いを利用して渾身の一撃を片方の顔にめり込ませて、再び地面に殴り飛ばした。


「ナイスパス!」


「あぶな〜、なんで俺だけ狙われたんだ?これの所為か?」


マシューが手に持っている魔石に目をやる。


「そうだろうな、魔物は魔力に引き寄せられるって話だし、って言っても魔力総量なら俺ら人間の方が上なのにな」


「よく分かんねぇな、見た感じ普通だけど...」


「ちょっと貸してくれ!」


手に持った魔石を頭上に掲げて色々見ていると、何やら文字の様な物を見つけ、カイトが手に取った。


「これは刻印の文字羅列...なるほどな魔石自体に魔物を引き寄せる刻印が施されてる」


「となると地面に埋める作戦は消えるわね、どうする?」


「そうだな一旦俺が持って、他の魔石を探しながら考えようか」


グゥ〜


突然ニューロのお腹が鳴り出し、空腹を訴える。


「朝飯もまだ食べてないし、食材も見つけないといけないしやる事が多いな」


「かたじけないでござる」


「俺も腹空いてたとこだし気にすんなニューロ」


「そうだな、道中で食べられそうな植物とかあったら採取しよう」


「そうね」


それから引き続きカイトが魔石を持ち、最初と同じように4人で横一列になりながら、進み始める。


「ん?...何か聞こえない?」


少し歩き出すとソロカが何か耳を澄ましながらカイト達とは反対の方向である南の方角を指さした。


「なんも聞こえないな...そっちからだと何か聞こえるのか?」


一同は足を止めて、カイトがソロカの方へと向かうと、小川のせせらぎが僅かに聞こえてきた。


「この音は川だな!魚が取れるかも知れない!行ってみるぞみんな...っとっと!マーカーを刺しとかねーと...よっと!」


道中まで赤色のマーカーを木の幹に刺して迷わないように来ていたカイトは、方向を変えた為違う色である黄色のマーカーを刺し始めながら、川の音がする方へと向かう。


「おぉ〜、これはコテージの背後で流れていた小川とは別の川か?掬った感じ透明で水質も良いし飲めるかも知れない...一旦ここで休憩するか、俺は魚が居ないか川に沿って歩いて確認してくるから何かあったらすぐに知らせてくれ、大声が聞こえる範囲にいるし」


そしてカイトは1人で北に続く横幅が2メートル程の小川を見つめながら、沿って歩いていると、太陽の光を反射した眩しい何かが水中にあるのを見つけた。


「おっ!魚いるじゃん!んぉ?何だあれは?」


もう少し川に近づき凝視すると反射していた物の正体は魔石だった。


あたりを警戒し闘気の腕を水中に沈んだ魔石に伸ばす。


「んん“?硬いな...んよぉっと!」


捻ったりして左右に倒しながら引っ張ると何とか取ることが出来た。


「思わぬ収穫も手に入ったし一旦戻るか」


((闘気だけでの操作にも慣れてきたな))


((まぁな、実戦に使えるまでには出来ねーと意味ないけどな))


ヒュードォン!ドォン!


「っ!」


帰り道の方を振り返りアッシュと年話を交わしていると突然火球が2つ上空に飛ばされ、空中で2度爆音が鳴り響いた。それを見たカイトはすぐさま走り出しチームの所へ戻ると...


「カイト殿!アルベルトのチームでござる!」


チームが休憩していた所に着くと、アルベルトチームのオルグ、ルシータ、メルトがマシューとソロカを2人相手に戦っていた。


ニューロはカイトを呼び戻そうと離れた位置から火球を放った後、中距離から魔法で援護している。


「やべカイトだ!しくじったぞ!」


「落ち着いてメルト!カイトなら任せればいいよ!」


ルシータがそう言った瞬間、樹冠の中からアルベルトがカイトに向かって飛び掛かった。


キィン!!


「あぁん?いきなり奇襲とか正面からやり合うのがこえーのか?」


「魔石は何処にある?素直に教えれば足の一本で許してやる?」


「ほざけよ!」


剣を受け止めながら、挨拶の代わりにいつもの如く互いを挑発し終えると、カイトが両肩から闘気の腕を2本伸ばす。


ドッ!

『黙想六花』


空中で体勢を変え、カイトの胸部を蹴り付けて勢いをつけた後、背後にジャンプして腕を回避するも、追って来る様に伸びてきた為斬り伏せる。


『闘斬破』


地を這う斬撃を放ち、斬撃と同じ速度で斬撃の背後を走る。


『流刃閃』


ズォンッ!

ビュオンッ


地を這う斬撃を呑み込むほどの巨大な斬撃を放ち、背後で走っているカイトごと狙うも、横に雷走で避けられ、ジグザグに走ってきた後震残を使って体をぶれさせ、次の瞬間カイトの剣が顎まで迫っていた。


ガキィン!!


スッ

ガシッ

ブォンッ


ギリギリ攻撃を見切って、カイトの剣の側面を叩き軌道を横に逸らした後、アルベルトは左手をカイトの胸に伸ばし服を力強く掴んだ後、片手で投げ飛ばした。


『闘刃』

シュインッ


空中に身を投げ出されながらアルベルトに向けて斬撃を放つが、姿が見当たらない事に嫌な予感がし、直後にその予感はカイトの頭上から鬼気迫る圧力で剣を振り下ろす。


『鬼威』


何とか天歩を使い空中で向かい合い、剣を受け止めるが、不利な体制もあり一瞬で地面に吹き飛ばされる。


ガバッ!


「上等だよ、んのやろぉ」


身体の背後を全て闘気で覆いガードするも、僅かな衝撃が体に走った為、僅かによろける。


赤と黒のオーラを纏いながらゆっくりカイトに近寄るアルベルト。


『鬼卸し』


『回天』


バキキキキィン!!


地面に剣を刺し込み、斬りあげると4つの地を這う斬撃が一斉にカイトに向かって襲いかかるも、左手に闘気の剣を生成して二刀流でその場で回転し全ての斬撃を斬り伏せる。


ダァンッ!


全ての斬撃を斬り伏せるも、今度は5メートル程の距離を瞬きをしたその一瞬で目の前に移動してきたアルベルト。


『五月雨闘閃』


アルベルトが近づいて来るのは分かっていたカイトは、両腕を脇へと持っていき、一斉に連続の突きを放つ。


『鬼踊り』


2本の剣で放つ高速の突きを全て避けながら距離を近づけて来るアルベルト。


「くっ!」

スタッ


このままでは間合いまで詰められる為、技を中断し背後へとジャンプする。


ダァン!


しかしジャンプしたカイトへと地面を蹴って間合いまで入る。


「悪い人にはついて行ったらダメだって言われなかったか?」


回転斬りを放つ前に事前に仕掛けていた雷のトラップが作動し、身動きを一瞬封じられるアルベルト。


ザッザッ


『天烈脚』


空中で2本の剣を地面に伸ばして身体を支え、足から闘気の蹴りを放つ。


スッ!

ドォォォンッ!


「重っ!」


突如アルベルトの前に現れたオルグは、全開の闘気両腕に、顔の前でクロスさせカイトの蹴りを受け止めるが、アルベルトと身体ごと吹き飛ばされる。


「一旦引こうアルベルト!これ以上消耗した所でお互い不利だ!」


「ちっ...分かった」


吹き飛ばされるアルベルトとオルグの元にメルトとルシータが駆け寄る、そのまま2人を起こし草むらの中へと消えて行く。


「追いかけないと!」


「待てソロカ!大丈夫だ」


追撃を試みようと草むらに飛び込もうとするもソロカを制し、そのまま行かせるカイト。


「追いかけないでいいのでござるか?」


「あぁ、大丈夫だ、見た感じアイツらは魔石が無さそうだったしな、これ以上追いかけて他のチームに来られると逆に不利になるかもしれないからな、それとアイツらと接触できたおかげでその間魔法も使えたし、色々と細工もさせて貰ったしもう十分だ」


「リーダーがそう言うならいいか」


「あぁ、それとさっき川を見てきた収穫なんだけど、魔石と魚の姿もあったぞ!」


「おぉ〜それは良いでござるな!早速魚を捕らえて朝食にしようでござる」


「さっきの戦いでお腹も空いたし早速向かいましょ」


それからチームでカイトが魔石を見つけた位置に向い、授業で教わった原始的な魚の取り方を試す。


ジャバジャバジャバ!!


「そっち行ったぞマシュー!ソロカ!」


「任せろ!」


数メートル離れた先からわざと音を立てて、逆側で両端の網を持ってスタンバイするマシューとソロカ。


透き通る小川の水からしっかりと一匹の魚が、カイト達の音に反応して逃げきてくる魚を2人は捉えており、魚が網に当たった瞬間川から引き上げる。


ピチピチッ!


勢い余って引き上げた網から地面に飛ばされ、地面で元気に跳ね上がる魚を見て、ガッツポーズする一同。


それからコツを掴んだ4人は人数分と晩飯分の魚を捕らえる事ができ、枝をかき集めて小さな焚き火と、丸焼き台を作り焼き始めた。


「やっと一息つけるでござるよぉ」


「水の中って結構体力持っていかれるわマジで」


洗濯魔法でパンツをすぐに乾かす事もできず、ズボンと服を着てパンツを、丸焼き台から少し離れた位置に作った小さな焚き火で乾かしながら話す。


「この後どうするかも決めないとね、正直ちょっと舐めてたけどしんどいな」


「此処を休憩地点の1つに加えてもいいんじゃない?魚も取れるし、場所が開けているから奇襲の心配も少ないからさ」


「そうだな、それじゃあ此処を一個目の拠点としようか」


それから先程起きた戦闘での注意を踏まえながら、今後の戦闘時における各自の注意点を話しながら、一同は食事を始めた。


「まだ日没まで時間はあるしこのまま西を進もうか」


「分かったわ」


「それにしてもアルベルト殿は何故拙者らを攻撃してきたのでござるかな?」


「そうだな...あらかた向こうも川を見つけたから、食料の魚がいないか川沿いを歩いてたんじゃね?」


「そんな偶然に?」


「いや、カイトの言っている事は間違ってはないだろ、実際アルベルトチームと鉢合わせたのも川沿いから向こうが歩いてきたのを俺らが先に見つけたんだし」


「確か先生の授業では、食料のある場所は大抵取り合いになるとおっしゃっていたでござる」


「そうだな、次からはそう言った場所を見つけたらまずは警戒をした方がいいな」


ガサガサッ!


サッ!


カイトの背後にある少し離れた位置の茂みが突如音を立て、咄嗟に振り向いて警戒する一同。


ガサガサッ ガサガサッ パキッ ガサガサッ


今度は最初に音がした茂みより少し離れた位置の茂みから音が聞こえ、連鎖するように他の場所からも同じような音や、枝を踏む音が聞こえ多数であると判断し、姿を表すまで様子を伺う。


「ニューロとマシューは背後を、俺とソロカは茂みを見ておく」


カイトの対面に座っていたマシューとニューロに茂みとは反対の位置を見張らせて奇襲に備えさせ、カイトと近くに座っていたソロカは引き続き茂みの様子を見る。


ガサッ ピョコン


そして物音が立ってから1分後、最初の茂みから1体の赤いウサギの様な毛深く可愛らしい生き物が飛び出してきた。


「うん?何だあれ?」


「特徴のある長い耳、、クペラよ!それも赤い毛皮の変異種、魔物よ!群れで行動するから気を付けて」


ソロカがそう叫ぶと、次々と茂みの中から赤い毛皮の変異種であるクペラが現れてきた。


「取り敢えず俺が引きつけるから援護よろしくっ!マシューはソロカと一緒にサポートしてくれ!ニューロは引き続き監視を」


そう言ってクペラの群れへと突進していくカイト。


ピョンッ!

「まずは一匹!」


ブゥンッ!

ヒュイッ


カイトの首を目掛けて飛んできたクペラに、剣を迎える様にして斬り払うも、空中で天歩の様な動きで空気を蹴り2段ジャンプし、カイトの剣を避ける。


ザシュッ!


しかし避けられ驚くも、すぐさま2撃目を放ち胴体を縦に斬り裂く。


ピョンピョンピョンッ!


しかしひと息つく暇もなく次々と茂みから出てくるクペラがカイトに飛びかかる。


クルッ

ブゥンッ!


一斉に全方向から飛びかかってくるクペラに対し左足を頭ひとつ分後ろに引き、左足を軸に一回転しながら剣を払う。


しかし飛びかかってきた半数はカイトの払った剣を掻い潜り可愛い顔からは想像できないノコギリ状の歯を大きく開き、噛み付いた。


ブゥンッ!


「どうだ?歯が通んねぇだろ...フンッ!」


全身に闘気を纏い、鋭い歯から身を守るカイト。一方噛み付いたクペラ達は筋肉に力を入れられ針が抜けなくなった蚊の様に、闘気にめり込んだ歯が挟まり引き抜こうと必死に両手両足でもがく。


「ちっ、魔法が使えたら一気に焼き焦せるのに」


一匹一匹体についた引っ付き虫を取る様に剣で突き刺しトドメを刺していくカイト。


「まずいでござる!こっちからも別の魔物が!」


「何で急に?クッ!」


ニューロが見張っていた反対方向からは、六足と二本に分かれたムチのような尻尾を地面に引き摺る黒い豹が1体現れた。


「やばいな、、ニューロとマシューはクペラの対応に移れ、その豹は任せろ!」


黒い豹に対応しているニューロに近くにいたマシューが手助けするも、素早い動きで2人が翻弄されているのを見て、急いで体についた残りのクペラを倒し、闘気の腕でマシューとニューロを引き寄せ、カイトが黒い豹の対応に当たった。


『三刃』


まずは牽制で斬撃を放ち様子を見る。


シュンッ


あたかもその場から瞬間移動で消え去ったかの様に素早く斬撃を避けた黒い豹は、一瞬でカイトの背後に距離を一定の保ちながら周り込み、しならせた鞭の様な尻尾を振り放った。


バシンッ!

「ぐっ!はえーな」


雷走で鍛え抜かれた動体視力で何とか背後に回ったのを捉えれたものの、振り向いた時には既に尻尾が目の前まで来ていた為、闘気を纏った右手でガードし、尻尾を掴もうとするも失敗する。


「ぬおっ!」


「ニューロ!少し堪えて!」

『閃双』


シュババッ!


「...助かったでござるソロカ殿」


「カイト!提案なんだが引かねぇか!?ちょっと数が多すぎる!」


次々と群れ始める魔物に苦戦し始める自分を含めたチームメイトにマシューが撤退をカイトに提案する。


「隙があったら3人で纏って川の向こう側に行け!殿は俺がやる!」


マシューの提案を聞き、周りを見ると様々な魔物が増えている事に気がついたカイトは、マシュー達のいる方へ黒い豹にわざと背を向け走り出し、殆どの魔物のヘイトを自身に向けさせた。


「今だ行け!


『大円斬』

「ソロカ!ニューロ!」


「行くわよニューロ!」


「分かったでござる!」


カイトを置いて川へと走り出し、身体能力魔法によって強化された3人は、カバンを背負いながら横幅4メートル程の川を一っ飛びで飛び越えた。


「カイト!行けたぞ!」


「おけい!」


マシューの声を聞いた後すぐさまカイトも川の方へと走り出す。


ブゥンッ!

「っ!」


キィン!


数十体程の魔物を背に走り出そうとした途端、警戒していた黒い豹のいる左側ではなく、右側から高速で接近してきた何かに、姿勢を落として避ける。


「まずいわ...」


「どうしたソロカ?」


カイトの右側から飛翔してきた正体を見て、ソロカが血の気の引いた顔で口から恐怖が漏れる。


「あっぶねー今の...カマキリ?」


ネオン色に光るトンボの様な目に、前屈みの体勢のまま3本指の左手を地面に付け、右手はカマキリの様なカマを掲げながら頭を右に傾けたのは全身が深緑の魔物だった。


「なんだ?今ので何故殺れなかったか疑問に感じてるみたいだな」


カイトの言葉どおり死角から完全に虚をついた一撃が避けられた事に頭を傾げる魔物は、地面に付いていた左手を掲げる。


シュインッ!!


「ほほっ!仕込み鎌的な奴か」


掲げた左腕の前腕から右手と同じような鎌が姿を表しそれを見て興奮するカイト。


「カイト!早くこっちに逃げて!エギネスよ!」


「あれがエギネスでござるのか!?」


「このゾルカナ森林の主がなんでこんな所に!?」


エギネスと呼ばれるその魔物は、両腕の鎌を振り上げると今度は背中の殻から透明の羽を出現させた後、残像を残す程の速さで羽ばたかせ、次の瞬間その場から消えた。


ブァンッ!


キィン!!

「ぬおっ!おっも!」


川から見ていた3人からは突然姿を消したエギネスだが、カイトにはしっかりと此方に飛んできたのを捉えており、振り下ろされた両腕の鎌を一本の剣を横に構え受け止める。


しかし重った以上のスピードによって上乗せされた力に受け止めたと同時に膝をつく。


シュインッ!


スッ!


キィンキィン!ガキィン!


膝を付いた姿勢から、剣ごと両断せんとするエギネスの力を利用し、一瞬で力を抜くと同時に左へと転がり回避する。


それから今度はカイトから攻撃を仕掛けるも、特殊な目の所為か、太刀筋が読まれて、僅か3合目で剣を受け止められる。


『ギシャア!!』

ズリュンッ


突如音になっていない叫びでカイトを至近距離で威嚇した後、突然エギネスの脇腹辺りから剣を受け止められている2本の鎌とは別の鎌が左右からカイトの下半身目掛けて切り裂こうとした。


「一か八かだ!ふんっ!」


ブワンッ!

パシンッ!


エギネスと同じようにカイトも脇腹から2本の闘気の腕の様な物が伸びて、2本の鎌を弾いた。


((へっ、下手くそだな))


「くそ、腕をイメージして掴もうとしたつもりなんだがな」


気分を逆撫でする様な軽い嘲笑がわざわざ丁寧に念話越しで聞こえるも無視して、正直に反省する。


「隠し球はもうなしか?」

『天烈脚』


ズボォッ!!ブォンッ


決まり手を初見で見破られた事に驚いたのか、慌てた様子で鎌をしまおうとするも、一瞬早くカイトの前蹴りから放たれた闘気がエギネスの腹部に放たれ、大きく吹き飛ばされる。


『ギシィィアアア!!!』


地面に倒れた瞬間、再び音になっていない叫び声を上げた途端、主の邪魔をしないようにか、おとなしくしていた魔物群が再びカイトに向かって襲いかかってきた。


「うわやべっ!走れみんな!」


急いで振り向いて川を渡りきり、西に向かって走り出す一同。


「はぁ、はぁ、はぁ、、もうここまでくれば大丈夫でござるか?」


「はぁ...にしてもよくエギネスを倒せたわねカイト」


「ほんとに...俺はてっきりもうダメかと思って、発煙筒の準備してたもん」


「ふぅ...いやぁ、なかなか危なかったわ」


魔物群から逃げ始めて数分後、生い茂った樹々が特徴的だった場所から一変、突如辺り一面木々が倒木している倒木群を見つけ、倒れていた木々の中から1番太くて大きい木の幹に身を隠して、息を整える4人。


「エギネス相手によく勝ったなカイト」


「いや、あれは勝負って言うより何だろう言葉がでねぇぞ...とりあえずあいつの殻見ただろ?戦闘態勢の時は真っ赤に染まるって聞いたしそうだろソロカ?」


「確かにそうね、緑色の殻だったからエギネスだと判断するのに一瞬遅れたけど、あれは

まだ戦闘態勢には入ってないわ、カイトの事を捕食対象として見ていた感じだったわ」


「あ、そうそうそれだ!捕食対象!」


「いや、捕食対象として見られてんのに何テンション上がってんだよ」


「本当にそうでござる...あんなの魔法が使えたって勝てるかどうか分からないでござるのに」


「にしてもこの魔石...中々に面倒だな、持っているだけで今後あんな感じで魔物に襲われるかもしれないんだろ?作戦を見直した方がいいかな?どう思うお前ら?」


魔石に刻印された魔物を引きよせる効果に今後の作戦変更を余儀なくされる。


「そうだな...ずっとカイトが持っておく訳にもいかないしな、かと言って俺らが持てば他のチームに取られてしまう可能性もあるしな...」


「そうねぇ...やっぱりいっその事こと埋めてしまわない?そうすればカイトも自由に動けるし、奪われる可能性も無くなるしね」


「ソロカの作戦も良いが、なにせ魔物を引き寄せるからな、俺らが埋めている間に取られる可能性も出て来る、そうなれば誰かが見張らなくちゃいけなくなる、俺は1人で大丈夫だけど、他のみんなは流石にそれだとキツイだろ?だからこうしよう」


そう言ってカイトが提案した作戦は、2:1:1で動く作戦だった。2は埋めた魔石を監視する係、そして1:1はそれぞれ分かれて魔石の探索を行なう様にする。何故探索係を2つに分けたのは単純に効率的に動く為だった。


一旦魔石が合計4つ見つけるまでは探索係を2つに分け、それから2:2で分かれる事にした。


それをローテーションしていき、カイトが1人で守る時は、探索係は1:2で分かれ、5つ目の魔石の探索時は3人で動くといった形で作戦会議は終了した。


そして残る問題は...


「後は埋める場所か...なるべく見つけにくい所に加えて魔物から防衛しやすい場所がいいな」


「あっ、そういえばさっき逃げて来る途中で洞窟みたいなの見つけたんだけど、隠し場所を見つけるついでに行って見ない?」


「息も整ってきたし行ってみるか、どっちか覚えてるか?」


「うん、青色の目印付けて置いたから大丈夫だとは思う」


「さっすが〜、それじゃあ行こうか」


「ふぅ、行くでござるか」


逃げながら付けていたマーカーを辿ると幹の中枢に青色の目印が付いた木を見つけ、木の後ろの景色に目を凝らすと、アーチ状に穴が空いた巨大な岩を発見した。


「あれは...洞窟なのか?」


「見た感じただの石で出来たトンネルの様にも見えるでござるが...」


一同は巨大な岩へと近づいていくとその正体が露わになった。


「ほぉ〜遺跡群か〜」


「凄いでござるな」


「見るからに人工的に作られた感じがするよな」


様々な形の大きな岩石があちこちに埋まっており、中には半分木と同化している石柱や、台座の様な建造があちこちに点在している。


「こういうとこに魔石が隠されてるんじゃない?探して見ましょうよ」


「なんだかお宝探しみたいになってきたな」


「ここだと障害物も多いし守りに適してるから埋める所はここで良いんじゃないかなカイト?」


「ん〜どうだろう、、森の中にある遺跡ってだけで結構な的になるんじゃね?」


「私はマシューに賛成よ、確かにこんな遺跡が森にあったら目に付くけど、色んな建造物があるお陰で隠し場所の候補が増えるし、何よりあのアーチ状に穴が空いた大きい岩から、この辺りの殆どが見渡せれるのが魅力的だわ」


「拙者も良いと思うでござる」


「なら決まりだな、埋める場所と第2拠点としようか、そんであえて此処にある建造物じゃなくて、近くのなんの変哲もない木の下に埋めようぜ、それと罠もいっぱい仕掛けておこう、それもカモフラージュとして埋めた場所にはあまり設置せず、建造物付近に多めに設置しておこう」


「了解、それじゃあ俺は罠の設置をしようかな〜」


「拙者は魔石を埋める候補地を探してくるでござる」


「私はもうちょっとここの付近を探索してくるわ、あまり遠くには行かないわ」


「おーけー、そいじゃあ俺もマシューの罠設置手伝うわ」


それから4人は各自作業に入り、魔物の襲撃もなく順調に作業を終えると時刻は夕方になっていた。


「よしっ!これでラストだ」


「見て見てみんな〜!あそこの近くで山菜がいっぱい取れたよ!」


最後の罠の設置を終えると、タイミングよくソロカが麻袋いっぱいに詰め込んだ山菜を持って帰ってきた。


「おぉ〜、ロリセ、ニョリカにスパイスに使える香草とキノコ、結構見つけたな」


「ちょっと北に上がると一杯いっぱい生えてたの」


「これだけあれば、焼き魚だけってのは回避できたな、よっしゃあそれじゃあ今日はもう直ぐ時間だし今日はここまでにしてこうか、後は爆音弾が鳴るまで此処で待機しておこう」


こうしてヴァイスが爆音弾を鳴らすまで待機し、爆音弾が鳴った瞬間、コテージへと向かったカイト達。


「あぁ〜、結構疲れたな〜」


コテージへ着くと焚き火前に他のチーム全員が集合していた。


「よし、これで全員集合したな、ではまず今日それぞれのチームが持ち帰った魔石を見せてもらう、まずはジュランのチームからだ」


それから回収した魔石の結果を発表していくヴァイス。


ジュランチーム: 1


アルベルトチーム: 0


セニカチーム: 2


カイトチーム: 2


という結果になった。


「ぶふっ...アルベルトんとこ0だって...俺らのチーム襲うからだろ」


ゴッ

「いて」


「もうっ」


笑いを堪えるカイトを小突くセニカ。


「結果はセニカとカイトのチームが1番回収した魔石が多かったな、では報酬だ、目を瞑ったままこの皮袋に手を伸ばして、中にある紙を玉を一つ取れ」


「お先にどうぞぅ」


「それじゃあ...これっ!」


そう言って袋から取り出して掲げたビー玉ぐらいの玉を見ると、銅色に光っていた。


「銅玉だな」


そう言ってヴァイスはポケットルームから大きな麻袋を取り出した。


「銅玉が出た場合の報酬はこの麻袋に入っている食料を好きに1つ選んで取れ、左から肉、魚、パン、果物、野菜だ」


「どーするみんな?」


「そりゃあもう肉一択でしょ!」

「にーく!にーく!にーく!」


チームの熱いコールを聞き、肉の入った麻袋を取るセニカ。


「いいなぁ〜、俺も肉が食べて〜、一口だけ分けてくれよ〜」


「あげなーい、ほら次カイトだよ」


「頼む俺も肉をお願いしま〜す」


ゴソゴソ


「これだー!」


そう言って勢いよく取り出したのは銀色に光った玉だった。


「銀玉は自分達のチームだけにルールを1つ追加できる、追加できるのは」


そう言ってヴァイスは指を3本立てた。


①次の日だけ制限無しでの魔法の使用許可。


②無期限で魔物との戦闘中に魔法の使用許可。


③2日間自分達のチームの縄張りへの侵入を禁止。


「これは一択でしょ!魔物との戦闘中に魔法の使用許可だ!良いよなお前ら?」


「それしかないわね!」

「当たり前っしょ」

「ナイスでござる」


「しかし制限を掛けさせてもらう」


「なっ...選んでから言うなんて詐欺師まがいな事しますね師匠も、見損ないました!」


「落ち着け、制限と言っても1つだけ、テレポートの使用は禁止するだけだ」


「うわ〜嫌なとこ突いてきますねぇ、折角色々考えていたのに...」


「以上で今日の訓練は終了だ、各チームそれぞれで食事を取った後、後は自由に過ごせ」


それから各チームに分かれて食事を取った後、それぞれ自由時間を楽しんでいた。


「訓練中はずっと気を張っとかないいけないからマジでしんどいけど、今この瞬間は楽しいなぁ〜、まるで修学旅行にでも来たみたいだな〜」


修学旅行と言っても過言では無いが、カイトの想像しているのは勿論、日中魔物に襲われる恐怖などが無い前世での修学旅行だ。


「エギネスに出くわしたって聞いたけど大丈夫だったの?」


焚き火を囲って遊んでいるクラスメイトから少し外れた位置で、倒した丸太で作った椅子に横たわって見ながら独り言を呟くカイト、そこへセニカが横に座り今日の出来事を聞いた。


「うん、まぁ大した事無さそうだったけど、周りの魔物の数がとんでもなく多くてな、最初から一斉に襲われてたら終わってたかもな〜」


「ふ〜ん、ちょっとだけやられてたら良かったのに〜」


「おぉ?このやろ〜、一応彼氏なんだぞー、心配しろよ、ホラッ参ったか?あぁん?」


横たわっていたカイトの膝のあたりに座っていたセニカの腰を足でガッチリ足でホールドし、自分の所に引き寄せた後、脇腹突きを軽くお見舞いする。


「キャッ!あっはは、ごめんごめん!」


「ったく、可愛くなかったら許してなかったからな」


「ふふっ、さいてー」


そんな何気ないいつもの2人だけの世界に没頭している内に就寝時間が迫り、すぐに入浴を済ませた後コテージのシュラフに似た寝具に入るとすぐに眠りについた。



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