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第2章 遅れた分



創設記念パーティーから4日後...


「うあああああああん!!!」


「ちょっ!おいっ!昨日散々泣いただろサバト!」


「貴様もちんたらしてないで早く行け!」


号泣しながら獣車に乗ろうとするカイトの下半身にしがみつくサバトと、行けと命令しているのに、しがみつくサバト足を自分の足に引っ掛け、間接的に泣いている顔を見られない様にそっぽを向きながら止めるミドラ。


季節は体感的に3月辺り、僅かに気温も上がり始め、木には新たな花が蕾が僅かに膨らみ、新たな季節の訪れが来るのを待っている中、カイトはエリュードへと帰ろうとしていた。


帰宅前日はクラスメイトで送る会をサプライズでしてもらい、僅かな時間ではあったものの、込み上げて来た物をグッと我慢したものの、送る会が終わった後にミドラとサバトで色々留学当初の話をしていたら、サバトが先に我慢できなくなり、号泣したのに釣られて、ミドラとカイトも滝の様に涙を流しながら3人でハグした。


そして存分に泣きながら思い出話から再起あった話を振り返って花を咲かせ当日になっていざカイトが獣車に乗ろうとした途端に、再びサバトが号泣し始めた。


「あー分かった分かった!はいはいはい!お前らのおかげでこの半年間最高に楽しかったよ、マジで一生の友達だよお前らは、卒業したら俺とルフトが立ち上げる冒険者ギルドに絶対参加しろよな、はい、もう良いだろ、それ以上泣かれるとどうしようもねぇからな、離してくれよ」


「うわああああああん!!ミドラ君ー!カイトが行っちゃうよぉおおお!!僕はどうしていけばあああ!!」


「グスッ!離してやれサバト!そんなやつ行きたければ何処へでも行くがよい!我は知らんぞ!」


「何だかんだお前のその引っ掛けてる脚が1番厄介なんだよツンデレミドラぁ...ぐっ..マジで硬ぇ...クソ、こうなったら!」


「サバト!お前のゴールドカード今から渡してやる!ほらぁっ!」


「ぐすっ...あっキラキラした物が」


タッタッタッタ!!


「ぬっ!サバト!何をしている!カイトを引き止めんかバカ者!」


今度はゴールドカードに向かって走り出したサバトにミドラがしがみつく様な形になった物の、金品に目がいったサバトの欲には、ミドラですら止めることは出来ず、そのまま遠くへと消えていくミドラ達を見て、その隙に急いで獣車へと乗り込み、出発した。


(はぁ...やっと出発できるわー)


「うあああああああん!!!」


「待てぇええええ!カイトを何処へ連れて行こうというのだぁああああ!!」


少しすると再び泣き叫ぶ声と、叫び声が聞こえ、窓から顔を出すと、2人が獣車を全速力で追いかけてきていた。


「ど、どうしましょうか?止まりますか?」


「あ、いえ、あいつらしつこいので、全速力で振り切ってください!」


そしてもう一度窓から顔を出して叫ぶカイト。


「じゃあなあああ!!お前たちぃいいい!!!また大陸大会で会おうなああああ!!バイバァアアアアアイ!!」


こうしてカイトのグレアモル学園での留学生活が終わったのだった。


...


.......


キィィィィッ!!

ガタン!


「ぐおあっ!」


獣車に揺られながら、窓から入ってくる気持ちいい隙間風に、昨日寝れなかった事もあって、寝落ちしていたカイトの体が突然、木製獣車の車輪が擦り切れる音がしたと同時に、対面の席に投げ出されて、慌てて体を起こす。


「何だ急に?」


「すいませんお客様!魔物が突然現れまして、やむをえず急ブレーキをかけました!」


慌てた口調で事情を説明する運転手の言葉に、されたら1番嫌な事現在1位の『気持ちよく寝ている時に乱暴に起こされる』をされて煮え繰り返りそうな腑の、妥当な発散場を見つけたカイトは、獣車から飛び降りる。


「あぁ?結構でけーな」


『グォーッ』


峡谷に沿った舗装されていない道に立つと。川を挟んで4メートル程離れた向かいの道から2メートル大の赤い毛で覆われた二足歩行のゴリラの様な3体の生き物が、こちら側に向かって岩を投げつけていた。


『ガァァァオゥッ』


「ガオウじゃねぇよ」


『紫電』

ズィンッ!!


4メートル程離れた向かいの道に目にも止まらない速さで近づき、3体のゴリラを一瞬で斬り伏せる。


「経験値にもなんねぇのによくもまぁ」


剣を空間にしまい、テレポートで馬車の中に戻るカイト。


「行きましょう」


「はい、すいまぐおあっ!」

ドォォォォン!!


そして獣車が再び発車しようとした瞬間、更に大きな衝撃が獣車を襲い、今度は獣車ごと吹き飛んだ。


「なんだなんだ!?」


横倒れた獣車の扉から顔を出すと、信じられない光景が広がっていた。


『グルルルルルゥ』


「あれは!?」


忘れもしないあの特徴的太くな捻れた2本角に、4足歩行で漆黒の分厚い毛皮を纏った魔物が低く喉を鳴らしながら、目の前の道を遮っていた。


「べへモスか?あん時見た大きさより一回り小さいし、目ん玉も紫色に光ってねぇ、こんなとこに出没すんのか?」


「ひえっ!あれはべへモス!お客様早く私を置いてお逃げください!あの魔物はここら一帯の魔物の主です!1番近い町のギルドで緊急依頼を出さないと!」


「大丈夫です、俺が何とかするので、そこでジッとしてて下さい」


『グルルルルルゥ』


「どうした?来いよ!」


『グラァ!!』


カイトの挑発した動作と叫び声に反応し、2本の角を前に突進してくる。


カイトはポケットルームから鞘に入った刀を取り出し、居合の様な構えを取る。


『闘斬波』


刀を抜くと同時に斬り上げると、地面を這う闘気を纏った斬撃が突進してきたべへモスに放つ。


ガキィン!!


地を這う斬撃とぶつかる直前、べへモスは角を右に振りかぶり、角の側面で闘気を纏った斬波を弾き飛ばす。


ドドドドドッ!!


そして再び突進を始めたものの、目の前にいた標的はいないと気づいたべへモスだが、既に刀は背中に迫っていた。


『雷剛』


斬波を対処している隙に、上空に高く飛んだカイトは、横に高速回転しながら勢いをつけて、胴体を真っ二つにするつもりで、纏雷による身体強化も付け加え力一杯斬りつけた。


「オラァア!!」


ブニッ

ガァン!!


力一杯斬りつけたカイトの刀は、分厚い皮によって威力を軽減された後、突然体に力を入れたべへモスの筋肉によって弾き返される。


「なっ!」


『グルゥア!!』

ブォンッ!!


突然の筋肉の膨張によって弾かれた事に、驚いたカイトに、べへモスの咆哮による衝撃波の追い討ちがかけられ、吹き飛ばされ岩壁に体がめり込む。


「ぐっ...のやろぉ、流石に硬すぎじゃねぇか?」


((俺様の出番かぁ?))


挑発気味に念話を送ってきたアッシュにムカつきながらも、突進をしてきているべへモスの対抗策を考える。


(そのでかい図体支えている支柱一本折ってから倒してやる)


『闘刃』


ドォンッ!


「まじか」


闘気でコーティングした魔力の刃を突進してくるべへモスの右前足目掛け放つと、でかい図体の割に3メートル程跳躍して避けたのを見て、思わず口から感想が漏れる。


「だったら!」


『ロックキャノン』


飛んでくるべへモスより手前に丸い岩石を放出するカイト。そして飛んでくるべへモスの突進を受け止めようと構える。


(こいっ!)


ガキィィィン!!

「おっも!!、、でも俺の勝ちだ」


シュンッ!


べへモスの突進を受け止めた瞬間、体ごと押し潰されそうになるも何とか耐えてみせ、テレポートを使い先程放出した岩の位置にべへモスごと連れて行く。


「じゃあな」


空高くまでべへモスを移動させ、そのまま落下死させようという至極シンプルな倒し方を実践する。


シュンッ


地面に戻り、空中でなす術なく、空高くから落下するべへモス。


「ん〜、倒せなかったら面倒だし、保険も掛けよう」


霞の構えを取り、刀に魔力と闘気を溜めて、着地点から、一気に刀を上空に向かって振り下ろす。


『千切り星』


べへモスの身体サイズの巨大な斬撃が、落下してきたべへモスにぶつかった瞬間、落下の衝撃とカイトの下から放たれた斬撃が同時に襲いかかり、少しべへモスの身体が浮いた直後、斬撃がべへモスの身体を真っ二つに切り裂いた。


ドスンッ ドスン!


裂かれた体が別々に地面に倒れる。


「いやあ、お見事です、まさか学生の方がべへモスを倒すなんて、正直驚きましたぁ」


獣車の運転手が、戻ってきたカイトに駆け寄る。


「それじゃあ、お邪魔もいなくなったところでいきましょうか」


「はい」


といった今のカイトにとっては小さなトラブルがありながらも、無事エリュードのスレイムに着いたカイト。


「はぁ〜〜〜!懐かしいぃ〜」


久々に見るスレイムの町に、帰ってきたと背伸びをしながら実感するカイト。


ガチャ


「た・だ・い・まー」


「あらカイト!帰ってきたの!?」


「カイちゃんか!こりゃ驚いたわ」


帰ってくるタイミングをざっくり半年間とだけ教えていた為、正確にいつ帰るかを知らないカミラが突然家に入るカイトに驚き、偶然その場にお婆ちゃんも来ていた。


「婆ちゃん久しぶり〜、孫に会いたかったでしょ〜」


「どれどれ顔をよく見せておくれ〜カイトちゃんや」


「へへへ〜、白髪増えてきたね婆ちゃん」


「ほっほっほ、まだまだひ孫を見るまでくたばりはせんぞい?」


まずは目の前にいたお婆ちゃんに熱い抱擁を交わし、そばに寄って来た母さんにも同じく熱い抱擁を交わした。


「そういえばアルトはどこに?」


「今ちょうど遊び疲れて寝たところよ」


「ちょっと見てこよ〜」


そう言って久しぶりに可愛い弟を見にエリーゼとの共有部屋へ行くとベッドでぐっすり仰向けに寝ていたアルト。


「んん〜!流石俺の弟〜、いつ見ても可愛いなぁ〜」


起きない程度に両手で頬を掴み、ぐりぐり頬を回す。そして満足した後リビングへと戻る。


「母さん腹減ったよ、久しぶりに料理食べたいな〜」


「そうね、もうすぐエリーゼも帰って来るから、そろそろ準備しないとね」


「あ、じゃあ俺と婆ちゃんで迎えに行くよ、母さんは準備しといて、何か買い足した方がいい物ある?」


「そうね...じゃあ家のオリーブと、塩が少なくなってきたから任せてもいいかしら」


「大丈夫なのかカイトちゃん、長旅で疲れてあろうに」


「ほいほーい、大丈夫だよ婆ちゃん、あ!アッシュ!出てきて母さんの手伝いしとけよー」


『あぁ〜?何で俺様がそんな事』


「アッシュちゃんも帰ってきたのね!お帰り〜寂しくなかった?」


小人サイズで文句を言いながら出てくるアッシュを見て、両手で優しく包んで頬にアッシュを擦り付けるカミラ。


『あぁ?はみひくへーよへふい(さみしくねーよ別に)』


「んじゃあ頼んだぞ、行こっか婆ちゃん」


久しぶりに再会した家族にテンションが上がる、お婆ちゃんの手を握りながらブンブンと振りながらスキップでエリーゼの学園へと向かう。


「婆ちゃんの腕がちぎれちゃうぞ」


「そう言えば爺ちゃんは何で来てないの今日?」


「家で寝ておったからな、1人起きてて暇だったから、カミラの様子でも見に行こうと思ってな」


「そっか、また今度爺ちゃんにも顔を見せないといけないな」


「そうじゃの」


そうこう話している内に2人はエリーゼの学園まで到着し、カイトはエリーゼを驚かせようとお婆ちゃんに提案し、エリーゼにサプライズする事となった。


そして少し待っていると放課後になり、続々と生徒達が校門から出てきて、親と合流する中、エリーゼもお婆ちゃんを見つけて走ってきた。


隣に護衛のような男子生徒が前は2人だったのが4人に増えていた事に、成長を喜んでいいのか分からないなんとも言えない複雑な気持ちになりながらも、人影からゆっくりとお婆ちゃんに今日何があったかを嬉しそうに話すエリーゼの背後に近づき、目を手で覆う。


*「だぁ〜れだ」


「ん〜?だれ〜?」


悪戯でわざと声を低めに変えるが、気づいていない様子なので、今度は素の声で同じ質問をする。


「ごほん、だぁ〜れだ?」


声を聞いた瞬間、即座に手を両手で振り解き満面の笑みで振り返るエリーゼ。


「にぃーに!!」


ガバッ


心地の良い声でにーにと変わらない愛称で呼んだ後、カイトの胸元に飛び込んで、両足と両手でカイトの上半身をホールドしたエリーゼ。


「にぃーにだ!!」


「あぁ〜、相変わらずお前は可愛い過ぎるなぁエリーゼ!お前の声が聞きた過ぎて最初の5日間は幻聴まで聞こえたくらいだぞほんと!」


がっつりホールドしたエリーゼを抱き返し、それから少し経っておろそうとしてもエリーゼが離れようとしない為、しかたなくそのままの体勢で帰宅する。


そして家に着くと、今度はアッシュを見るなり、カイトの様に飛びつき、小人の状態だったアッシュは慌てて、元の大きさに変わりエリーゼを抱いた。


『おい、いきなり飛んでくるから焦ったじゃねーかよチビ、元気してたかぁ?』


「超元気ー!」


『そっか、そりゃあ良かったぜ』


そのまま今度は3分ほどアッシュの身体にホールドしたエリーゼであった。。


それからすぐに少し早いが夕食の準備ができ、久しぶりに家族で夕食の食卓を囲んだカイト。


夕食を食べ終わると、家に残してきたお爺ちゃんが心配なのでお婆ちゃんが帰ると言い、それだったらついでにお爺ちゃんの顔も見ていきたいとカイトはテレポートで家まで送り、家に入る。


リビングで寛いでいたお爺ちゃんは突然現れたカイトを見た瞬間、嬉しそうに立ち上がり軽い抱擁を交わした。それから買ってきたお土産を渡し、その後軽い雑談をした後家に帰る。


ボフッ!


「はぁ〜疲れたぁ〜、やっぱ結局家が1番落ち着くわぁ」


手入れされ、何も変わらない久々の自室のベッドにダイブすると、一気に今日1日の移動の疲れが襲いかかる。


「今日の朝はミドラとサバトに送ってもらってたな〜、そんで今は自室にいる、なんか変な感じ」


コンコンッ


「んぉ?」


「にーに」


「ん?エリーゼかどうした」


パジャマ姿のエリーゼが、何故照れた様子で扉を開ける。


「今日はエリーと一緒にねよ?」


「おふぅ!可愛い!いつそんな男の心を射抜く様な言葉を知ったんだぁ...あぁ、今日は一緒に寝ようか」


そう言った瞬間、照れていたエリーゼが嬉しそうにカイトのベッドへと上がり、布団を広げたカイトの懐に入り込んで、そしてその日はお喋りをしながら気がつくと眠りについていた2人。


こうしてカイトは6ヶ月の留学生活を終えてエリュードに戻ってきたのであった。




...そしてそれから一月が過ぎ、新学期が始まった。


「はぁ〜、、眠みぃな〜」


「よっ!」


家から出てくるルフトと合流し、シュリカに軽く挨拶をした後、一緒に投稿するカイトとルフト。


「どうですかぁ?上学年になった気分は?」


「ん〜、強いて言うなら闘技大会で目指す相手がいなくなった事ぐらい?」


「でも今年は何と、前回の闘技大会でアルベルト選手が優勝したものの、前3年生エリオルドとの対戦に敗れ奇しくも六星の座には手が届かなかったのですが、今現在1番六星に1番近い男はアルベルトと言われておりますが、どうお考えでしょうか?」


「あいつぶっ飛ばして六星の座から引きづりおろすだけ」


「おぉ〜、流石カイトきゅん、留学でかなり力をつけた様ですねぇ」


カイトの周りをぐるぐるしながら、カイトの全身を突くルフト。


「それよりお前はちゃんと練習してんだろうなルフト、前回アルベルトに勝ったくせに何今回の闘技大会で負けてんだよ」


「だってさぁ、賭けるものなにも無いじゃん?だから勝たなくてもいいじゃん?みたいな?」


「久しぶりだからか?ウザさが増したよなお前」


ウインクをしながらサムズアップするルフト。


それから久しぶりのウルミスト学園に到着し、ルフトと分かれた後懐かしみながら教室へと入っていくカイト。


ガラガラガラッ


「モーニング」


「おぉ!カイトー!」


「よっメルト、元気だったかお前ら?」


「俺らは相変わらずだよ、それよりセニカがずぅーっとカイトがいなくていつも心ここに在らずって顔してたぞ〜」


「セニカはまだ来てないのか...かぁー、早くあいてぇ!」


セニカとの再会にお預けを喰らい、凹みながら席に着くカイト。


「いよいよ俺らも3年だぜ?もう最後の学園生活になんのかぁ〜」


ふとオルグの言った言葉に、何故か寂しく感じるカイト。


(最後か...結局毎日悔いのない様に過ごしてても別れを考えると辛いなぁ...それを考えただけで憂鬱な気分だぁ、早く来てくんねぇかなセニカ〜)


ガラガラガラ

(はっ!セニカ!?)


「おっす〜、お!カイトじゃねぇか、帰ってきたのかぁ?」


「んだよお前かよジュラン」


天色の髪が肩に付くまで更に伸ばしたジュランがカイトを見るなり、テンションの上がった感じでカイトの後ろの席に座った。


「どうだったんだグレアモルは?ちゃんと強くなってんだろうなぁ?」


「ったりめーよ、今だったらお前にも引けをとらねぇよ」


「カッカッカ!ならいいやぁ!午後の授業楽しみにしてるぜ!」


それからいくら待てどセニカは来ず、遂に授業開始のベルが鳴り響いた。


(えぇー、今日まさかのお休み〜?)


「それじゃあまずは始業式に行くわよ〜、みんな付いてきなさい」


すると突然廊下の方からバタバタと落ち着きのない足音が聞こえ、教室の扉を勢いよく開けた。


「ぷはぁっ!すいません、遅刻しましたぁー」


膝に手をついてバテ気味で入ってきたのはセニカだった。入学当時と同じくプラチナブロンドの髪の毛を、首のあたりまで切りそろえたボサボサのボブヘアーが、どれだけ慌てて登校したかを物語っていた。


「今から会場に行くから直ぐに荷物を置いて行くわよ」


「セニカー!」


「へっ?..カイト!?」


カイトの声が聞こえた途端即座に見上げ、教室から出た後、すぐにまたボサボサの髪の毛を直して教室に入ってくるセニカ。


「久しぶりー」


直前までの慌てっぷりをなかったかの様に接するセニカに思わず安心して笑うカイト。


「変わってないな相変わらず」


クラスのみんなは先に教室を出て、カイトはセニカが鞄を置くのを待ち、行ける準備が終わった途端抱き寄せて強引に唇を奪った後抱擁するカイト。


「もうっ!遅れるよ?」


「もうちょっとだけ、あぁ〜、幸せだぁ」


「はいはい、ほら行くよ!」


それから会場に向かうクラスメイトの1番後ろでイチャイチャしながらついてく2人。


会場へと着くなり着席するとすぐに始業式が開始された。新学期の挨拶やらを色々済ませた後、今年の六星選出が行われた。


まずは現段階のメンバーであるジュラン、ラゼッタが学園長であるノイドから紹介された後、残りの4名が順番に発表された。


『今回各学科の担当教師との厳選なる審査と個人の活躍、成績などを踏まえ選び抜いた結果、新たな4名の新しい星が選ばれる事になりました』


『それでは早速1人目!前闘技大会では見事優勝を収め、前六星の一番星であるエリオルドとの戦いでは見事な奮闘ぶりを見せ、大陸大会ではMVP選手相手を唯一追い詰めた実績もある、剣術科アルベルト・クレイン君!君に3番星の称号を与える』


「んぐぅぅぅぅ...むっかっつっくぅぅ!俺がいなかったら優勝できたんだぞこの野郎」


『そして2人目!前闘技大会では見事準優勝の座に着き、決勝では優勝者アルベルトを唯一追い詰め、大陸大会でも見事な活躍を見せ、何と学園が保有する迷宮で今いる全生徒の中で単独での最深到達記録62層に到達した実績を保有するセニカ・ルーストリア君!君に4番星の称号を与える』


「嘘!?まじか!?うぉおお!!流石セニカ!」


「えっへへ〜、それじゃあ先に行ってるねカイト〜」


「うわぁ〜、みんなが次々と手の届かないとこに〜、それよりいつの間に迷宮を一人で行ってたんだ?知らない間にやる事やってるなぁセニカも」


『そして3人目!初の闘技大会、前闘技大会共に優勝を果たし、大陸大会では見事チームを2位に引っ張り上げた剣術科シエル君!君に5番星の称号を与える』


「ぬあああああ!!シエルまでもー!それに1年で...」


今度は年下であるシエルの名前が呼ばれ、大きなショックを受けるカイト。


『そして最後の1名じゃが、これは前六星が解散前最後に残した決定事項なのじゃが、今後人が増えれば六星は七星へと呼び名が変わってゆくのではめんどう事になるとの事なので、これからは六星の名前を改めて五星とし、人数の変化は上にも下にも変わらぬ、完全な入れ替わりの制度を導入する学園最高機関とする。との事なので今後この機関の人数は上限5名となりましたので、6人目の選定は無しとさせて頂きます』


ガルハートらの時代では力ある5名が他の3名を、自ら削り五星と名乗っていたが、その時は自分が例えスペシャルマッチで敗北したとしても、新たにメンバーが増えるだけであったのが、今後五星は二度と人数が減ることも増える事もなくなり、完全なる入れ替わり制度となったのであった。


「ほぉ〜、五星になりたければ引きづり下ろせってか?上等だぜ」


新しい五星制度に内心燃え上がるカイト。


こうして六星改めて五星選出は終わり、各自解散し、再び教室へと戻り、今後のカリキュラムの説明が始まった。


「とまぁ3年生のカリキュラムはこのようになっているわ」



・園外訓練


・卒業試験


・進路


黒いボードに書かれたかかられた3つの単語を上から順に説明し始めるジル。


「前年のカリキュラムでみんなは迷宮に潜って魔物と戦った事によって闘気の発生と愛剣の取得を終わらせたと思うんだけど、それは全てこの園外訓練の為の前準備と言っても過言では無いわ」


「学園の外に行って訓練するくらいだったら迷宮でもいいんじゃないですか?」


ジルの説明にタリカが手をあげて質問する。


「確かにそれだけだと迷宮で十分かもしれないけど、それだと外の世界で生きて行くには不十分よ、この中では卒業後ギルドに入って冒険者になる人や、貴族の教育の一環で入った人と様々いるけど、もし今後外の世界で生きていく上で、重要な技術と戦闘訓練が必要になるの、今エリュード王国とシグニカ王国が敵対勢力にある事はみんなも知っているでしょ?」


「今後生きていく上で何が起こるか分からない、そんな万が一の為に、貴方達にはサバイバル技術を身に付けて貰う必要があるの、なので今後は外泊での訓練が増えるから、みんな覚悟しておいてね」


(ほぉ〜ん、外泊でのサバイバル訓練か、俺は冒険者になるから、これは色々大事になっていくだろうから、ちゃんとしないとな)


「でも先生!外泊となれば、午前の座学や、第2科目、武活はどうなるんでしょうか?」


「貴方達は既に2年生の時点で座学に関しては必須科目は一通り教えたから、あまり無いわよ、武活と第二科目に関しては園外訓練の時は前もって、担当顧問に連絡しておく必要があるから、そこは気を付けなさい」


「よっしゃ!座学はないってメルト!」


「よっしゃい」


離れた席から互いにハイタッチをし、喜ぶ座学成績最下位と2位。


ちなみにカイトが1位でメルトが2位だ。


「全く、、次に卒業試験に関しては、大陸大会が終わったあたりかな?その時にまた追々実技担当のヴァイス先生から説明をして貰うから、まぁそこまで気張らなくてもいい、試験だから大丈夫だと思うわ」


「そして最後は進路について、これに関しては卒業後例えば冒険者になりたいのであれば、冒険者ギルドを学園側が幾つか紹介してあげる、進路支援みたいな物よ、これは任意だから行きたい人や今後どうしていいか分からない生徒達は教務室で相談受け付けてるから、相談しにきなさい、、とまぁ以上でカリキュラムの説明は終わりよ、何か質問はあるかしら?」


それから質問もなくカリキュラムの説明が終わり、一同は運動着に着替えて、訓練所へと向かう。


「師匠ぉーーーー!!とうっ!」


「カイトか、久しいな」


「久しぶりっす師匠、元気でしたか?」


訓練所へといち早く向かい、ヴァイスに挨拶するカイト。


「あぁ元気だ、向こうの授業はどうだった?」


「何と驚き、師匠の因縁の相手、ユシカさんに色々と教わりました」


「ユシカがグレアモルに?...変だな、アイツはグレアモルとは因縁があると」


「そうなんすか?今はオルフェオン家でミドラの剣術指南兼、グレアモルの剣術顧問ですよ」


「まぁ色々あったんだな、どうだ?久々に授業後に打ち合うか?」


「いいっすねぇ、結構ヤバい人と戦ったんで、中々成長しましたよ俺も〜!目指すは本気の師匠からの一本!」


「それだと命を奪いかねん、やめておけ」


相変わらずの冗談が通じないところは変わっていない事に安心し、その後他の生徒も到着し実技の授業が始まった。


いつもの準備運動を終え、何人かの生徒と久しぶりの手合わせをし、授業後は本気になってもらったヴァイスと手合わせをし、何回か攻撃を凌いだものの、負けてしまい、地面に倒れたカイトはようやく帰ってきた実感をしたのであった。


そしてこの日の剣術の授業はいつも通り終わり約1年半ぶりのファミルの魔法授業に出るカイト。


ガラガラガラッ


「ごきげん麗しゅう?皆様?」


「えっ!カイトさん!?」


「あら、カイトじゃない」


教室に入るなり、驚くスカーレットとシエル。


「2人とも久しぶり〜、元気〜?俺は超元気〜」


「元気でした!もしかしてカイトさんも今日からファミル先生の授業に参加するんですか?」


「そうだよ〜、剣術はまだまだだけどある程度極まったし、大好きな魔法の勉強再開しよっかなぁって」


「ルフトとラゼッタはまだなのね」


「多分もうすぐ来ると思うよ、これでみんな集まったね」


そして数分後、ラゼッタとルフトが教室に到着し、ルフトから聞かされていないのか、カイトがいる事に驚いたラゼッタ。


「あんたそんなにあたしが驚いたところ見たいわけ?」


「痛い痛い、すいません!そのつもりは」


「あぁ、ラゼッタ、お前に渡しておきたい物があるんだ」


そう言ってカイトは一通の手紙をポケットルームから取り出して、ラゼッタに手渡した。


「何よこれ」


「ミドラからの手紙だ」


「いらな〜い」


「いいのか?デート券に関する内容で、約束守らないと恥ずかしいぞぉ〜」


...パシッ!


「ん〜もう!折角今日レンゼンさんと会えるって聞いて良い気分だったのにぃ!」


「あ、それとみんなにお土産買ってあるから今渡すわ」


ガルナロート中央都市ビレイクで買ったそれぞれにあったお土産をポケットルームから手渡しするカイト。


スカーレットには大食を司ると言われる豚のような生き物の小指サイズの陶器とお菓子。


ラゼッタにはプラスチックの様な素材で作られた竜のフィギュアと汗っかきなのでタオルを。


シエルには訓練の時によくつける髪留めと、酸っぱい物が大好物という事で色んな種類の酸っぱいご当地お菓子。


因みにルフトとセニカにはあった瞬間に渡しており、ルフトには適当に道を歩いていたら見つけたギルドのバッヂと靴を渡し、セニカには洋服と香水をあげた。


そうやってそれぞれが嬉しそうにもらったお土産でテンションが上がる中、ファミルがレイゼンを連れて教室へと入ってきた。


「あらあら、騒がしいと思ったらカイト君が帰ってきたのね」


「なんだかファミル先生に関してはちょくちょく会ってるんで久しぶりって感じがあんまりしないですね、あ、これはファミル先生とレイゼンさんのお土産です」


少しゲスい笑みを浮かべながら、ファミルに赤と金色で装飾されたブレスレットをあげ、レイゼンには青色と銀色に装飾されたブレスレットをあげた後、ファミルに耳打ちするカイト。


「聞いた話だと、これはカップル用のブレスレットで、お互いにこれを付けて1年経つと、その2人は永遠に結ばれるらしいですよ」


それを聞いた途端、いつもは色気漂わせているファミルが顔を紅潮させ、黙ってブレスレットを右腕に着けた。


「あれ?レイゼンさんは着けないんですか?」


「...大事に保管しておこう、今は授業の邪魔に」


シュインッ


突然レイゼンの手元にあったブレスレットが光だし、次の瞬間手元から消え、レイゼンの右手首にがっしり嵌められていた。


「...おい、ファミルこれは」


せ、生徒が付けて欲しいって事ぐらい気付きなさいよ貴方も、全く、ついでに私の◯#%$」


後半ゴニョゴニョ唇をタコに様にふくらませ呟くも、レイゼンは聞こえていない様子だった。


「と、とりあえず、これで魔法教室のみんなが初めて揃ったわね、最初は3人しかいないこの教室も、今では6人になって賑やかになって先生嬉しいわ!」


しかしすぐさま笑顔から突然、悲しげな顔をするファミル。


「でもシエルちゃんには申し訳ないんだけど、今年度いっぱいで里の事で忙しくなっちゃうから、今年度で教師を辞める事になったの」


「「「えぇー!!」」」


「そんなぁ」


他の誰よりもシエルが悲しい気持ちを口からこぼす。


「本当は去年で辞めないといけなかったんだけどね、何とかせめてカイト君達を卒業させるまではっていう約束だったからごめんね」


「...でも安心しろ、普段仕事をサボるファミルがお前達のために色々と訓練方法を考えていたから、シエルも十分に3年と同様の力を付けられる」


「そうよ!みんなの為に色々と考えてきたから、今日はそれを教えるわね」


こうして久しぶりのファミルの分身授業が開始された。


「カイト君はみんなと離れちゃった分を取り返さないと行けないけど、時間が足りないと思うから、今までみんなに教えた大まかな内容を纏めたから、この中から興味興味のある物を教えてあげるわ、残りは申し訳ないけど時間がある時に教科書に纏めるから、分からない所だけを聞いてちょうだい?」


「おぉ〜、教科書に纏めてくれるだけで有り難いです!」


そしてカイトはリストアップされた取り残し授業のリストを渡された。


「この中から好きな3つ選んでちょうだい」


・精霊術

・魔力分散

・魔力吸収

・魔力付与

・上刻印

・複属性魔法

・詠唱魔法

・空間魔法

・光魔法


「へぇ〜、こんなにもあったんですねぇ、、ん〜それじゃあ」


カイトは渡されたリストの中から、『精霊術』『魔力吸収』『光魔法』の3つを選んだ。


「分かったわ、それじゃあ早速精霊術からお話しましょう」


「精霊術と言うのは、簡単に言うと二心同体である精霊と宿主の意識を一心同体にして、精霊を様々な形で放出したり、人型だと共に魔法を唱えて威力を倍にしたりする技よ」


「例えばルフト君に翼が生えた状態を見たことあるかしら?」


「はい、何度か」


「あれはルフト君の精霊フィスと心を1つにしてルフト君のイメージにそのまま精霊が翼となって変化した姿よ、因みにあれはフィスの翼をルフト君はイメージをしているのだけれど」


「例えばフィスとかけ離れたドラゴンのイメージや、鳥類以外の生き物のイメージをしても、その姿にはなれないの」


「ほうほう、精霊と何か関係のあるイメージじゃないと変化しにくいって事ですね」


「そうよ、後は姿を変える以外だと、武器と同化させる方法もあるわ」


「成程〜、それじゃあ早速やってみましょうか、まずはどうすれば?」


「深く深呼吸して意識を集中させて、まずはリラックスしてみて、それから精霊を感じようとしてみるの、体の何処かじゃなくて、ちゃんと体内でこれが精霊だって確信がつける感覚が来るから、慌てずゆっくりと」


ブワァン!


体の中にアッシュの存在を強く感じ、体から闘気が溢れるカイト。


「あらぁ!早いわね」


魔力眼で正確にカイトとアッシュの魔力が1つになるのを感じるカイト。


「たった1回目で出来るなんて...ビックリしたわぁ」


「次はどうしたら良いんですか?」


突然の出来事にファミルが驚くも、カイトの一言で我に帰る。


「次は自分の精霊の形をイメージしてみて、例えばルフト君の精霊フィスだったら翼だったり、セニカちゃんの精霊レオだったら燃える立髪をイメージしたり、アッシュ君のイメージは何か考えてみて」


「アッシュと言えば、殴ったり蹴ったりするから、手足ですかね、後お面」


「1つにイメージを絞って、体の何処でも良いから放出してみなさい」


カイトが最後にイメージしたのはアッシュの武器である四肢だったので、1つになったアッシュとの魔力を四肢に放出するイメージをすると...


ブォォォンッ


カイトの両手両足から僅かな光が発せられた。


「おぉ〜、なんだか変な感じですねぇ、四肢からアッシュの存在を感じます」


「本当にまさか初日にここまでできるなんて、驚きだわ?普通は瞑想して精霊の存在を感じるだけでも一月はかかるのに、セニカちゃんは昔怒りからくる感情で、無意識に魔法剣にレオの魔力を分散させた事があったくらいよ?何か2人の間にあったのかしら?」


「あぁ〜、そういえばこの前...」


カイトはアッシュが暴走して、クハンに助けて貰った出来事を一通り話した。


「そんな事があったのね...それだったら納得するわ、アッシュ君を助ける為に、一度精霊の存在を感じるどころか、精霊の空間へと直接アクセスして、コンタクトを取ったんだから存在を感じるくらいすぐだったって事ね」


「そうなんすかね?」


「まぁ精霊術に関してはこんな感じね、後は自分達で色々工夫をしてみると良いわ、じゃあ次は魔力吸収ね、これは上級無属性魔法だから、無属性に特化してるカイト君なら、すぐにできると思うわ」


「気になってたんですよねぇ、因みに僕の予想なんですけど、吸収と逆の事をやるのが付与ですか?」


「原理はそうだけど、少し違う所があるわ、まずは説明するわね、まず魔力というのは常に空間に漂っている物なの、そこが海であれ、高い空の上であれ、土の中、枯れた大地であれね」


「私達は生きている間は無意識にその空間に漂っている魔力を吸収しているの、吸収のスピードには個人差もあって、魔術に長けているほどその吸収速度は早いの、つまり魔力の回復が早いって事ね」


「今から教えるのは、この吸収の速度を自在に操る方法と、魔力を宿した物体から吸い上げる方法を教えるからね」


「どうすればいいでしょうか?」


「まずははじめての授業でやった自分の体に流れている魔力を感じる事をしたのを覚えている?あれと同じ要領で集中して大気中に漂っている魔力を感じようとしてみて」


目を閉じて、自身の周りの空間に漂う魔力を感じようと集中し始める。


「んーーーーーーーー、何も感じない、と言うよりどう感じれば...」


「そのまま目を閉じててね」


すると突然自身の周りから何か気配を感じるカイト。


やがて気配はどんどん強くなり、やがてそれが自身の中で感じられる魔力と似たような存在だと気が付く。


「今待機中に浮遊している微量の魔力に、普通の人でも感じられるレベルの魔力を込めてたから、段々と弱めていくわよ」


そして周りの魔力の気配が薄くなっていくのを感じるカイト。そして一定まで下がると感じなくなりそのタイミングで感じなくなった事を報告する。


「成程ね、どうやらカイト君はあまり魔力感知に関する感覚が普通より乏しいのかもしれないわね」


キッパリと言い切ったファミルに、目を開けて涙目になるカイト。


「へっ?そんなぁ...」


「安心して、精霊術が出来ただけでも一歩大きく踏み出せたんだし、これでイーブンって所よ、課題が分かれば、魔力を感じる基礎トレーニングを今日から始めましょうか、それが出来てからやっと魔力吸収に入れるからね」


「はぁい...」


「次は...光属性魔法ね、カイト君は現時点では中級の治癒魔法と簡単な光魔法の応用だったわね」


「そうですね、なんか戦闘で使えるカッコいい奴とか無いんすかね、、折角適正はあるんですけど、治癒魔法以外使う機会が余り無いですし」


「そうね...光魔法に関しては基本的に支援魔法が一般的だし、火適性が有ればカイト君の言うカッコいい光熱魔法があるから難しいわねぇ」


「それだと治癒魔法や補助を徹底的にやるしか無いですね...まぁこれもこれで悪くは無いんですけどね」


「それじゃあ色々課題も見えた事だし、まずは精霊術をもう少し磨き上げようか?それが出来たら魔力吸収、光魔法の順番でね」


「はい!」


こうして久しぶりの魔法の授業では新たな問題が見え、それらを克服する為の訓練が開始された。


「あぁ...久々だわ、魔力が無くなるこの感じ...筋肉痛ならぬ魔力痛みたいな?」


「久しぶりの授業だもんね」


魔力の過剰消費による脱力感と僅かな全身の痛みを戦いの場以外で久し振りに感じ、グッタリ机に伸びるカイトにセニカが腕を取ってマッサージする。


「なぁルフト?お前は魔力感知出来たよな?何がどうなったら魔力なんか感じ取れるんだよ」


「まぁ俺は風魔法に適性があるからな、ソーマさんが言うには風魔法は感知に特化しているみたいだから、なんか自然に?俺も原理を説明しろって言われたらよく分からないけど、一回感じ取れれば後はもう楽勝だよ」


「ただでさえ遅れてんのに、ここに来て苦手項目が出てくるとはな〜」


「カイトさん、それより向こうでのお話聞かせて下さいよ!私ガルナロートがどの様な場所か気になります」


「お、そうだな!もうな、凄かったぞ!まず最初に驚いたのがグレアモル学園の建物!まず学園全体が塔になっててな、その中に全部があるんだよ!......」


魔法の授業が終わり、スカーレットは分からない所をファミルに質問をし、ラゼッタは女の顔になりながら、レイゼンにアピールしているも、アピールだと気付いていない鈍感な様子。


カイトはガルナロートで起きた体験談を1つ1つシエルに話してあげ、それを傍らで聞くルフトとセニカ。


それから少しするとファミルとレイゼンはエルグランドへと帰っていき、カイト達も少ししてからその場で解散した。そして今日は武活も無いのでそのまま家に帰る。


ジャバァンッ!


「ふぅ〜、久しぶりの学校疲れたぁ〜」


「にーに!エリーも入るー!」


カイトがエリュードに帰ってから思い付きで、浴室に設置した木でできた湯船に浸かっていると、扉越しにエリーゼが入ってこようとする。


「ちゃんと服は地面に捨てちゃダメだぞー」


「はーい!」


ガラガラガラ


ペタペタペタッ

バシャン!


スライド式の扉を開けるとすぐに湯船に浸かっているカイトの方に走り、ジャンプして湯船の中へとダイブしたエリーゼ。


「あっははー!」


「うぉっ!エリー!ちゃんと身体を洗ってからじゃないとダメだろ?ほらにーにが洗ってやるから」


湯船に入ってきたエリーゼを抱え上げ、そのままシャワーで身体を洗ってあげるカイト。結局疲労が取れたどころか、逆に疲れてしまう。


ボフッ!


エリーゼが寝入るまで面倒を見させられ、漸くの思いでベッドへとダイブするカイト。


「あぁ〜、ようやくベッドに入れたー」


そしてベッドに入るなり、すぐに眠りについたカイト。こうして新学期の1日目が終わったのであった。



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