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第2章 創設記念パーティー



「うぉおおおっ!」


『いいぞその調子だ」


カイトの腕から闘気が淡い光を放ちながら、ゆっくりと2メートル離れた木の葉に伸びてゆく。


「うっぐっ!...もう..少しっ...」

ピタッ


「...せいっ!」

ファサ


一枚の葉に闘気が当たり、さらに意識を集中させ力を振り絞って何とか葉っぱを弾いた。


「うはっ....っしゃいぃぃ!」


『っしゃああ!!』


「やっと伸ばすとこまで出来たぞ!ひゃっほう!!」


アッシュを取り戻してから2週間経った今、再びアッシュが暴走した池の辺りで魔力なしでの闘気操作を練習し、漸く大きな一歩を踏み出せた事に、カイトとアッシュは叫びながら喜ぶ。


『俺様が消えてから今日までまだ1ヶ月も経ってねぇだろ?急に上達しやがったな』


「まぁ、修羅で何回も殺されそうになったからな、そのおかげで闘気が更に増えたと同時に、身体に違和感が出始めてな、それが闘気だって気付くのに2週間もかかっちまったわ」


修羅の国から帰って来てから、全身の皮膚が痺れいてる様な違和感が身体にずっと感じ、ただの痺れだと思いあまり重く考えてはいなかった。がしかし数日間経ってもその痺れは止む事が無かったので、変だと感じていたら、突然近くにいたサバトがコーヒーの様な苦い飲み物に似たカーラと呼ばれる熱々の飲み物を、滑ってカイトの顔にブッカケ事で、痺れの正体が闘気の流れだと分かったのだ。


盛大に足を滑らせたのに気が付き、目の前まで降って来た熱々のカーラを、慌てて腕で顔を覆い、ガードしようとしたらその時。全身に感じていた僅かな痺れが腕と顔に集まったのを感じ、目をつむってから幾ら経っても降りかかって来ないカーラに違和感を感じ目を開けると、カーラが顔と腕に掛かっていたが、小さな濡れる時の衝撃と熱すらも感じなく、闘気が身を守っていた事に気がつく。


そして腕と頭に闘気越しで掛かったカーラを振り落とすと、全身の痺れが再び顔と腕から全身に広がっていき、痺れの正体が闘気の流れだと気がつくのに時間は掛からなかった。


『変な気分だろ、まぁ少ししたら痺れも消えて、本格的に神経が通った様な感覚になる』


「分かりやすく言うなら、今までは何も感じない物が守っていてくれた感覚だったけど、痺れて痛覚やら暑さ、冷たさを感じない物で守っている感覚になっている」


『そうそう、今までは無意識に何も感じない何かに守られている感覚だったが、今ではしっかりと“闘気”がどのタイミングで守ってるのかって分かる様になっただろうよ』


「おかしな感覚だよな本当...」


闘気の事を改めて知れて、感極まっていると、草陰から物音が聞こえた。


「...だれだ?」


「うわっ...引っ付き虫いっぱいだねここ!...カイトー!そろそろ始めるから戻るよー!」


「おっといけねぇ、今日がパーティーって事忘れてた!」


本日アグシュカ暦1535年2月半ばはここウルスラの街にグレアモル学園が創設されてから80周年を祝う祝日だった。この日になると学園では3日間も祝宴が開かれ、国中からお祝いに駆けつけてくれた人達を学園の生徒が歓迎するの恒例行事。


それぞれのクラスが出し物をし、前世で言う文化祭見たいな事をするのだ。


それをミドラの実家に行く前から聞かされていたカイトは出し物を決める際、誰も出し物の案を出さない中、食堂を開きたいと真っ先に候補を挙げ、カイトの料理が美味しい事は何度も振る舞ったクラスの中では知れ渡っていたので、すぐに多数の賛同を得て、カイト達のクラスの出し物は露店で決まった。


そしてそれが決まってすぐのアッシュの暴走だったので、露店の準備で必要な物を急いでメモ用紙に纏め、頭を下げてクラスのみんなに用意を任せたものの、何一つ文句を言わず、喜んで手伝ってくれたクラスメイトに頭が上がらないカイト。


創設記念パーティーの会場は学園一階の自由広場で行い、そこにお店を出す事になっている。


「おぉ〜!俺の思ってた露店より3倍はデケェぞ!!何だこりゃあ!」


学園の自由広場に着くと、準備中の露店が数多く立ち並んでおり、そのどれもが前世でお祭りの季節で並ぶ見慣れた露店より3倍程の広さだった。


懐かしい雰囲気に昔を思い出すも、こういった行事に関しては、余り積極的に参加出来なかった為、大人になって後悔していたカイトは存分に楽しもうと考えた。


自由広場の入り口の反対方向にある奥の壁には仮設の大きな舞台が設置されており、入り口に入って直ぐの左右の壁が露店エリアになっていた。広場にあった噴水や、便利などは撤去されており、文字通り何も無いただの広場になっており、広がったスペースに店を構えている形となっていた。


「みんなはこっちにいるよ、着いてきて」


「うわぁ〜、マジで文化祭見たいだなぁ〜!」


広場の入り口を右に歩いていくサバトに着いていくと、今では見慣れたクラスメイト達がせっせと露店を建設していた。


「結構進んだみたいだな、流石だぜ!場所もいい感じのとこだしこれなら『ハート』クラスの奴らにも勝てそうだな!」


留学に来てから数ヶ月経った最近知った事だが、グレアモル学園には4つのクラスがあり、『スペード』『クラブ』『ハート』『ダイヤ』とあり、左から順に武学、地学、文学、理学の各専攻によるクラス分けとなっており、カイト達のクラスはスペードという事を文化祭の時期になってから知ったのだ。


そして先程カイトの口から出たハートクラスは、前回の露店で入学早々全学年1位の売り上げを叩き出した事で、かなり期待が高い露店と聞き、勝手にライバル視しているのだ。


「一応ハートクラスは丁度俺らの向かいにあるあのお店なんだよ」


「よしサバト、金なら払ってやるから、今すぐあの店の厨房に虫を仕掛けてこい」


「ラジャ」


ガシッ


真顔で虫を仕掛けに行こうとするサバトの首根っこを、モフモフのポルプフに似せた着ぐるみを来たミドラが掴んで止めた。


「潰すなら正々堂々とだ、我が行こう」


正々堂々を間違った方向にかざしたミドラを、笑いながら止めるカイトとサバト。


「ぷっ!冗談だってミドラ、頼むから本番の時に着ろってそれ!アッハハ、マジでおもしれぇ!」


「アッハハ、もうダメ、ミドラくんその真顔止めて、、、ブフッ!」


「我は任せられた事を真剣にやるのみ、全力で店の売り上げに貢献して見せる。今これを着たのはただの試着だ、フォイドが本番の時違和感がない様にと、今着てみて動いてくれと言われたのだが、問題ないな」


「ナイスフォイド!マジで良いアイデアだぜ」


腹を抱えて笑うカイトとサバトは、ポルプフを扱うお店という事でイメージキャラクターとそのぬいぐるみを作ろうと提案した、手先が器用な着ぐるみ担当のフォイドに親指を立てると、満足気な表情で親指を立て返しすフォイド。


「ふぅ...そうだなぁ、後は調理担当の俺らで仕事すっから、建設担当は休んで楽しんででくれ、お疲れさん」


それからカイトは調理担当のサバトを含めた6人の調理補助で最後の打ち合わせをし、数時間後、創設記念パーティーの開始を知らせる鐘が鳴り響いた。


ゴォーン!!ゴォーン!!


シュンッ!


パァンパァン!


けたたましく鳴り響く鐘の音が校内に響き渡ると、広場の舞台にグレアモル学園・学園長ネゼルが煌びやかな赤黒白の色を織り交ぜた道化の衣装に身を包んみながら瞬間移動で現れ、両手を叩き皆の注目を集めた。


「生徒諸君!ここ数日間の準備お疲れ様、今日は待ちに待った創設記念日!80周年を迎えられる事が出来たのは、紛れもなく生徒である君たちと、先生方のおかげだ、歴代学園長に代わりこの日を迎えられた事を感謝する」


「これから3日間、準備期間で疲れていると思うが、人生でたった一度しかない学生生活の僅か3回しかない一大行事!よく遊び!よく楽しみ!よく食べて!元気にはしゃぎなさぁい!」


「それとこの祝祭が終わった後、君達には創設80周年という節目の記念に最高のプレゼントを用意させて頂いたのでお楽しみに!では!」


バサンッ!


そう開催を宣言をした後、マントで体全体を隠した次の瞬間、マントが突然ひらりと舞台上に落下し、ネゼルの姿が消えた。


パァァァァァン!!パッパパパァァン!!


そして突如ブラスバンドの様な楽団が、舞台の袖からラッパ音や打楽器を奏でながら入場すると同時に広場の入口扉からガチャンと音が鳴った。


そして数秒後...


「「「うぉおおおお!!!!お祭りだぁああ!!」」」


雪崩の様に流れ込んできた一般市民達が、一瞬で広場を埋め尽くして、大いに騒ぎ、音楽乗って踊り出した。


「うぉおお〜迫力ぱねぇ〜」


「カイト!こっから死ぬほど忙しくなるよ!気を引き締めてかからないと一瞬でパンクするから!」


「おっしゃい!!目指すぞ売り上げNo.1!燃えてきたぁあああ!!」


そして早速1人目の家族連れの客が現れた。


「ここに書いてあるテリヤキって言うのを貰えないかしら?」


「はいよぉ!代金はそちらでお願いしますね!」


早速カイトの1番の自信作、ポルプフの照り焼きの注文を貰い、下準備した材料を焼き始めると、次々と注文が飛んで来た。


「カラアゲ1パックとテリヤキ2人前下さい!」


オーダーが入り次々と動き始めるクラスメイト。サバトは料理経験がない為、レジ係を任せている。


「カラアゲはそこに置いてある4つの味の中から好きな味をかけて食べてくださいね!はい、こちら照り焼きになりまぁす!」


「お兄さん、このベビーカステラってのはなんなんだ?それとヤキソバも気になるなぁ」


オーダが飛び交う中、質問されたカイトは、焼き加減を確認しながら、丁寧に説明する。


そして数分後再び同じ質問が何度もされたので、急いでサバトにフォイドを呼んでくる様頼んだ。


「悪りぃフォイド、お客さんがうちの料理がどんなものか想像できないの盲点だったから、急いでメニューを絵に書いてくれ!」


「任せろ!」


そう言って厨房の中で紙とペンを取り出し、オーダーとは別に、サンプルとして幾つか器用にメニューを作り上げ、それを模写するフォイド。


そして小一時間してから、フォイドのメニューイメージが全て完成し、露店の看板の上に急遽メニューのイメージを並べる事で問題を解決した。


そして作ったサンプルを平らげたフォイドは満足気に、他の露店を回りに厨房から出て行く。


「カイト!チリソースの補充は何処だっけ?」


「そこだ!」


魔力を込めた闘気の腕を伸ばし、指差すカイト。


「ヤベェ!丸焼き台が動かなくなった!」


ドォン!!


乱暴ではあるが、ポルプフの丸焼きの台を闘気の腕で軽く叩くと再び、動き出した。


「テリヤキのソースが無くなりそうだ、補充を頼む!やば、バツナ草がいつのまにかなくなってる」


タッパーに下準備していたバツナ草が無くなっている事に気が付いたカイトは、すぐに誰かに頼もうとしたが、ほかのクラスメイトも手が空いていない様子だったので、焼き担当のカイトはサバトに一旦その場を任せて、バツナ草となくなりそうな物を全て下準備し始めた。


「ミドラ!一旦客引き中止だ!裏の食料庫に行って紙箱2つ分のポルプフを取ってきてくれ」


「了解した」


それから数々の小さなトラブルはあったものの、何とか1番忙しい時間帯を切り抜ける事ができ、少し余裕ができ始める。


「あぁー!マジで忙しかったぁ!!」


「...もう私足がガクガクだよ」


「後はもう忙しくなる事ないと思うし、俺1人で大丈夫だから、小一時間休憩して来てこい、ほら、ポルプフ串だ」


自家製の香辛料をふんだんに振りかけた非売メニューを人数分焼き上げ、全員に渡した。


「あぁ〜、もうお腹ぺこぺこでこれを食べられるなんて幸せぇ〜」


「ちょっと生き返るわ〜」


普段から授業で鍛えているクラスメイトでさえ、その場に座り込むほどの忙しさだった。


「初日にしては結構売り上げ多かったんじゃね?流石大陸大会MVPで名前が広まっただけはあるな」


「お疲れー...ほい、水分補給ぐらいしときな」


「サンキュー、、にしても賑やかだなぁ〜、舞台でやってる演劇を見ながら露店の飯を食べるなんて贅沢だな」


「昔はこれ程盛り上がってなかったらしいからね、学園生徒だけでやってたらしいんだけど、ネゼル学園長になってから校内の行事の雰囲気はガラリと変わったしね」


「ゴクッ..ぷふぅ..それ程凄い人なのかねぇ」


「まぁ、今日に限らず普段の身なりを考えたらそう思うのも、無理はないね」


(まぁ、俺が言ってる事とは違うんだけどな)


*「テリヤキとカステラを一つずつもらえるかね?」


「おっ、今焼きますんで少々お待ち下さいね〜」


*「やぁ」


「うげっ!」

(噂をすれば影がさすとはよく言ったものだよ)


客の正体は今しがた話していたネゼル本人だった。


「あ、学園長、来てくれたんですね〜」


サバトが気さくに学園長と会話をしているのを、我関せずといった様子で淡々とポルプフを焼く。


「生徒達が協力した青春の味を僕も味わってみたくなってね、それよりどうだいカイト君?この後僕とお話しでもしていかないかい?」


「結構です、、まだ明日の下準備とかがあるんで」


「んー?いいじゃんカイト、せっかく学園長が話したいって言ってるんだし、ほら!カイトも休憩が必要だし!」


「ちょっ、良いってそんなお前が空気読まなくて」


「それじゃあサバト君の好意に甘えさせて頂こうか」


そう言ってネゼルはカイトの肩に手を置いた瞬間、抵抗する時間さえ与えずテレポートでその場から2人が消えた。


「んぉ?...あれ?何であんな事言ったんだ?俺焼く係以外あんま知らないのに」



シュッ


移動した先は学園の11階に位置するネゼルの学長室だった。


留学したての日を思い出し、結界を張られてないかアッシュとの繋がりを確認するも、返答は返って来なかった。


『後ろにいる、安心しろ』


小人の姿ではなく、元の大きさでカイトの背後から声を掛け、それを聞いたカイトは僅かにホッとする。


「僕が肩に手を置く前に実体化したか」


『前回と同じ手はくらわねぇぞ三流道化』


主に目上の人間に対してとる横柄な態度を治してもらいたい所だが、今はそれよりも此処へ連れてきた理由を探るのが先だと、2人の会話に割って入る。


「話って何でしょうか?できれば手短に済ませて欲しいです」


「そうだね〜、今日は一つ提案をしたいなと思ってね、後1週間もすれば君はウルミスト学園に戻る、この半年間君を見ていたが本当に失うのが惜しいほどに素晴らしい生徒だ、君との切磋琢磨のおかげでミドラ君も大陸大会で優勝する事が出来たし、君自身もまた成長をしている。そんな君達が同じ学園の名を背負えば次の大陸大会の優勝だって生温い物さ」


「つまり僕を引き抜きたいとの事ですか...だったら」


ネゼルの言いたい事が何となく分かったカイトは、すぐに拒否をしようとしたが、言葉を遮るネゼル。


「今の話で君が食い付かないのは分かっている、冗談だよ冗談〜ただね、もし此処に残れば君に元の世界へと帰れるよう協力してあげるけど...どうかな」


何を言われても断る気でいたカイトだが、提示された条件に、心が僅かに揺らいだ。


そんな動揺して言葉が出ないカイトにネゼルが畳み掛けるように口を開こうとした瞬間、カイトの目を覚ますような一言がアッシュから放たれた。


『ほぉ、これはお優しい事で、じゃあ見返りを求めてないんだったら善意で教えてくれても良いよなぁ?』


見返りと言う言葉にカイトが反応し、我に返った様に落ち着きを取り戻し、警戒の糸を紡ぎ直す。


「これは参ったねぇ、確かに見返りが欲しいかと言われれば、確かにそうだねぇ」


『詐欺師のやり口に翻弄されんなカイト』


「すまねぇ、、確かに貴方の提示した物には喉から手が出るほど欲しい物です。だけどいくらそれで僕を口説いたとしても、見返りを聞かない限り2つ返事はできません」


「では見返りを話そう」


そう言って笑顔で口を開く。


「転生者を殺すのを手伝ってくれないかい?」


「...は?」


転生者の殺害を協力して欲しいと満面の笑みで答えるも、再び混乱しそうになる。


「転生者って言っても、誰をですか?」


「君が出会った人物だよ、名無しの転生者」


その言葉に背筋が凍る。それは何故ネゼルのイメージしている転生者と自身のイメージした転生者が同じなのかという事に対してではなく、あれ程の人外さを感じた相手と戦うイメージを一瞬してしまった事に対してだった。


師匠のヴァイスですら勝てないかもしれないと言ったヘルトラの怪物を一瞬にして無に返し、目の前に立っているだけで、見られていると視線を意識しただけで震えさせてくるそんな人物に対し、戦う前から戦意など沸き立たないのに、ネゼルは殺すのを手伝って欲しいと口にしたのだ。


そんなカイトからすれば、ただの自殺行為に見える愚行を、目の前の人物は満面の笑みで自分に提案してきた事に、正気ではないと感じる。


「どうやら話は以上ですね、僕には元の世界に帰る願望はありますが、自殺願望はないので、もし元の世界に帰れる方法が知りたければ、気ままに冒険者をしながらでも探し出せるので、辞めておきます」


「そうかい、、なら仕方が無いね、ではこの話は無しにしようか!」


惜しむ様子もなく、笑顔のままカイトエレベーターを見送るネゼル。


『おい、そこから1ミリでも魔力を放出してみろ、首の骨潰すぞ?』


僅かに腕を上げようとしたネゼルを見て、首根っこを闘気の腕で掴むアッシュ。


「君との接触は初めてだねぇ...何にもしないよぉ」


エレベーターに乗ったカイトはそのまま降下していき、アッシュは光の玉となってカイトの身体に戻る。


「ンフフ...そうかぁ、修羅の国に行ったんだねぇ...ほぉ...六武衆かぁ....やはり鬼神の強さは凄まじい...強烈だぁ」


両眼の眼球に展開された緑色の魔法陣が見せる、カイトの記憶を覗き込みながら、独り言を呟くネゼル。


昇降台から降りて、露店へと戻ったカイト。


「お、帰ってきた帰ってきた」


「悪いなサバト、忙しかったか?」


「まぁ、そこまでだよ、分からない所は休憩中のみんなに聞いたし」


それから忙しくなる事もなく、7人体制で回していた店を4:3で2チームに分け、1つのチームが店を回している間、別のチームは舞台鑑賞や、他の屋台を見て回ったりして、1日目が終わった。


そして次の日は、カイトの作るポルプフが知らずの内に客として有名な美食家が紛れており、どうやってか話題を起こし、瞬く間にその話題は他の町に広がり客が倍に増えるという、想定外の事が起こり、一時現場が回らなくなったり、長蛇の列が出来上がって他の露店にまで迷惑をかけてしまったものの、建設担当だったクラスメイトが応援に駆けつけ、何とか無事にその日は凌ぐ事ができた。


そして現在カイトの寮部屋で反省会を開いている。


「とまぁこんな感じで明日は、この更に倍の人数がなだれこむかも知れない、だから一個提案があるんだけど、もう1店舗構えようと思うんだけど、どうかな?」


「賛成!もう今日ので死ぬかと思ったし、絶対に店舗分けた方がいいと思います!」


サバトが真っ先に挙手をし、賛成するが、同時にミドラが意見した。


「我もその意見には賛成だが、人数はどうやって分ける?」


「ん〜、そうだな、、俺とサバトは離れよう、焼き担当は常に俺とサバトが担当していたしな、後はちょっと慣れて来た組はサバトの方に行ってもらって、慣れてない組は俺と一緒にやろうか」


そしてカイトは2店舗目のチームメンバーを決めた後、夜中に発注先へと向かい追加の注文をしに回り、今度は2店舗目の建設をアッシュとミドラ、サバトと4人で1店舗目の横に空いているスペースに建設し、その日は終了した。


そしていよいよ創設記念最終日...


「よし、みんな揃ったな、今日は昨日言った様にそれぞれチームに分かれる。もしどうしても分からない事があったら、すぐに呼んでくれ」


「よしゃ!それじゃあみんな更に気合い入れてハートクラスとの差を圧倒的な物にすっぞ!」


「「「おぉー!!」」


ゴォーン! ゴォーン!」


...


......


『それでは今年の露店売り上げ順位を発表します』


「どうだぁ?」


舞台ステージに上がった3年の係員が音響石を右手に売り上げ順位の発表を行った。


そしていよいよ売り上げ上位3位の発表。


『第3位...売り上げ金額は銀貨87枚..チームポピューです!』


「よっしゃああああ!!!」


大声を出して喜ぶ3年生の男性。ポピューとは、前世で言うタピオカの様なモチモチした食材が入った飲み物で、最近大陸で流行っている飲み物らしく、カイトも店の交代中に試しに飲んでみたが、かなり美味しかった覚えがある。


(まぁ、でも所詮3位...2位で呼ばれないでくれ!頼む!)


『そして第2位...売り上げ金額は金貨1枚と銀貨23枚...』


(よっしゃぁああああ!!)


心の中で、店を終了したと同時に計算した金額よりも発表した額が下回っていた為、直ぐに勝ったと分かったカイト。


『チームスイーツランドです!!』


「んぉおおおおお!!!よっしゃああああい!!」


「「「「きゃああああ!!」」」」

「「「「うぉおおおお!!」」」」


勝ったと確信したカイトとクラスメイトが歓喜に満ちた叫びを発する。


『そして映えある第1位は!!』


「おぉぉぉぉ!?」


自分達だと分かっていても、盛り上げるカイト。


『売り上げ金...何と歴代最高!金貨12枚!!チーム俺のヤタイです!!』


「うぉおおおおおお!!!」


再び歓喜の声を高らかに上げるカイト。


「うぉっ!」


そして突然体を持ち上げられ、胴上げをされるカイト。


「カイトのおかげだぁああああ!!」


「カイトを高く胴上げせよぉおおお!!」


「いや、みんなのお陰だって!ははっ!恥ずかしい恥ずかしい!」


それでも辞めないクラスメイトにしょうがなく身を任せた瞬間。


「今だみんな!」


サッ!


「あっはは、お前たちぐへぇっ!」


サバトの合図で突然クラスメイトが着地点を開けて広がり、そのまま後頭部を強打するカイト。何処の世界でもこういうノリがあるのかと闘気に守られた頭部をおさえるカイト。


それから売り上げの発表が終わり、いよいよネゼルが創設記念の初日に言っていたプレゼントの発表が始まった。


『やぁ全校生徒諸君!今年の創設記念パーティーも君達のおかげで例年より大いに盛り上がる事が出来た、まずは感謝を致そう!』


『そして今からみんなが期待以上の頑張りを見せたという事で、僕からみんなに最高のプレゼントを用意させて貰った!それは....』


『今年の冬期強化合宿を止めて〜ガルナロートが誇る2大観光名所!!ジャンガラ山脈の2泊3日の旅行に、全校生徒を招待しよう!!』


「「「うぉおおおおお!!!」」」


「「「まじかぁあああああ!!!!」」」


「「「学園長ぉぉおおおお!!!」


「何だ何だ!?そんなに嬉しいところなのか?」


「カイトは知らぬと思うが、この学園は夏と冬に強化合宿と言って、座学のクラスはひたすら勉強をさせられ、我ら実技のクラスは厳しい訓練を受けさせる地獄の様な3日を学園外で過ごさないといけないのだが、それが無くなっただけでなく、ガルナロートが誇る2大観光名所、この前行ったビレイクの町と同じく2大名所に数えられるジャンガラ山脈に行けるのだ、もう我ですら踊りたくなる気分だ」


「だったら踊ろうよミドラ君!!僕はもう興奮しすぎて、もう訳わかんない動きをしてるから!」


そう言って全身をクネクネさせエイリアンの様な動きをするサバトがミドラに近寄っていき、珍しくミドラもハメを外して、一緒に踊っている。


(まぁ、俺にはもう関係無い話になるけど、みんなが嬉しいならそれで良いや)


こうして創設記念パーティーで無事露店の売り上げNo.1を達成する事ができたカイトであった。


そしてこの日は余った食材を使い、学園の中庭で特別に許可を貰い、クラス担任のユシカも招き最後の思い出としてBBQをしたカイト達。


強化合宿が無くなった嬉しさと、売り上げNo.1を達成した事でこの日の打ち上げは最高に盛り上がり、朝まで食べて飲んで騒いだのであった。


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