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第2章 修羅の国

...


.......


「...んむぅ...何回気を失えば..っ!」


目を覚ますとそこは黒い雲と雷雲の様に光る紫色の空が広がっており、目の前には前世で言う五重塔の様な高い塔があり、中国の紫禁城の広場の様な所にいるのが分かったカイト。


息の詰まりそうなその場の雰囲気に、体が警笛を鳴らしているのか、先程から僅かな震えがしている。


((恐ろしい場所じゃな...そこに居ない筈なのに、息が詰まりそうになる))


((クハン老師も見えているのですか?))


((あぁ、お主の視覚を今借りてみておるが、少し後悔する程に恐ろしい場所じゃ、此処が修羅の国なのか))


((どうやらそうですね...その場から動くのが怖いくらいです...))


((すぐに終わらせるかのぉ、それじゃあまず初めに、いつもの様に自身の精霊を探知してみてくれ))


((わかりました))


そう言ってカイトは震えながらも、意識をなんとか集中させ、アッシュの気配を探ろうとすると、目の前の塔から僅かにアッシュの気配を感じるカイト。


((1番進みたくない方向に、反応が出ています))


((目の前の塔か...何かある事は無いから安心せい、もし何かが起こりそうになったとしても、ワシが引き戻してやる))


((はい))


重い足を上げて、前に進むカイト。


(ふぅ...とんでもねぇとこに来たな、全く)


広く長い階段を登るり、塔の入り口の目の前に着いたカイト。


((扉は開いていないのですが...))


目の前の木製の様な全長3メートル程ある巨大な門が固く閉ざされているのを見て、カイトがクハンに話しかけた瞬間、まるでカイトの存在に気付いているかの様に、門が招き入れる様に、ギィィィィっと音を立てながら内側に開いた。


((入りますね...))


((あぁ...))


中に入ると、壁に掛けられた紫色の松明が道を案内する様に手前から奥に順番ずつ灯されて行く。


そんな不気味な廊下を抜けると、円形の広場に出た。


((行き止まりみたいですね...))


((外から見ると高い塔だったが、何か仕掛けなどは無いのか?))


((探してみます))


そう言って一歩前に足を踏み出した瞬間...


背後から突然背筋が凍てつき、押しつぶされる様な気配を感じ取り、その場から逃げ出そうと雷走で走り去ろうとしたが、全身が硬直し竦み上がって何も出来ないカイト。


*「六道ノ辻が開いた故、非天を望む者が現れたかと馳せ参じたが...おかしいのぉ」


どうやら自分の事に気付いていない様な口ぶりに、ほんの少しの安心を感じた物の、その場から静止した様に動かないカイト。


ズゥン ズゥン ズゥン


背後に立っていた何者かが、歩いているのを感じたカイトはひたすらにバレない事だけを祈る。


ズゥン ズゥン


そして足音の正体が自身の体を擦り抜けて、目の前を通り過ぎ、広場の真ん中に立った。


見た目は暗くてよく見えないが、2メートル大で精悍な裸の上半身は所々メタリックの様な輝きをしており、薄暗い広場を照らす紫色の松明の光を反射していた、そして腕は4本あり、手首には金色に装飾された腕輪を付けていた


そんな目の前の存在の正体から感じる圧は、つい最近感じたシドウの圧とは比較にならない程の物で、ミドラには申し訳ないが、これ程の圧を知ってしまえば、シドウの圧などと嘲笑して言えるほどに、桁違いだった。それを思念体で且つ自分に向けられたものでなく、その場にいるだけで、そう感じるくらいなので、もし仮に実際出会えってその圧を向けられれば、気絶する自信がカイトにはあった。


広場の中央で何もしないその存在を観察していると、突然4本の腕を振り上げた。


*「ふぅん!」

ドォンッ!!


振り上げた4本の腕を地面に力強く叩きつけると、揺れでバランスを崩すカイト。


ブワァンッ


叩かれた地面は淡い光を発し、次の瞬間...


ギュゥンッ!!


「うっ」


地面が突如、吹き飛ぶ様にエレベーターの様に上に物凄い速さで上昇した事に驚き、思わず声が漏れるも、目の前の者は気付いていない様子に安心する。


そして数秒後、急ブレーキをかけた様に地面が止まり、衝撃で体が上空に投げ飛ばされ、地面に顔から強打するカイト。


(うぐっ、、なんだよこの変なエレベーター、、)


適当と言っていいのか、その雑な造りに、一瞬苛立ちを覚え、文句の一言を言ってやろうと考えたカイトだが、先ほどから真ん中に立っている謎の存在は、床が上昇している時も微動だにせず、急停止時の衝撃にもすんとも言わなかったので、それが普通だと理解した裏腹、こんなのが普通と感じているのかと思うと、少し顔を出した怒りの感情も、再び恐れによる感情で蓋をさせられた。


ゴォォォォッ


床が急停止して少しすると、謎の存在が見ている正面の扉が左右に石を擦る音を立てながらスライドして行く。


そしてその者は、ゆっくりと歩きながら開いた扉に向かって足を進めた。


ガコンッ


扉を通り過ぎるのを見ていると突然、地面が動き、扉が閉まろうとし始めた。


((まずい、早くあの扉へ))


((はい))


慌てて閉まっていく扉を通り抜け、その者の後を一定の距離を保って付いていく。


そして廊下の先には今まで見てきた塔の内部にある質素な造りではなく、豪快に赤と金色で装飾された派手な扉があった。


その者は扉の前まで着くと、4本の腕を上げ、扉に当てた後、腰を落とし、全力で扉を開け始めると言うより、力一杯押し始めた。


((ワシの考えでは此処に居そうな感じじゃがどうじゃ?))


((此処で間違い無いかと、目の前からアイツを感じます))


その者が扉を押し始める事数分...ようやくその者の体格が通れる程の狭い隙間ができ、中へと入っていくその者に続きカイトも中へと入っていった。


*「八武衆(はちぶしゅう)奴焚(なや)、王の許可無しに天座に立ち入る事、お許し下さい....王よ...あれ程のお労しい御姿から、これ程までに身体を再生させる事が出来ました...後は貴方様が望めばいつでも元のお身体に戻る事が出来ます」


「.....」


僅かに開いた狭い隙間から出た景色に驚くカイト。


薄暗い暗いせいで当たりが何も見えないが、その者が発した言葉の響きから、かなり空間だと分かった、そしてカイトが驚いたのはその者が跪き、王と呼ぶその正体だった。


石の四角い台座の上に、赤い光を放ちながら浮いている球体の中に浮遊するその存在だった。


(アッ...シュ?)


すぐさまそれがアッシュだと分かったカイト。しかし魂が無いからか、死体の様に力無く浮いている様だった。


「.....まだ抗われるおつもりなのですね...」


((どうすればいいでしょうか?))


((うーむ...あの者が此処から出ていかん限り、迂闊には動けん))


((取り敢えず一旦当たりを見て回りますね))


そう言って奴焚と名乗った謎の存在が、平伏したままなのを、他所に何か手掛かりが無いかを探り始めるカイト。


左右がどれ程広いのか分からない為、そのまま入り口から石の台座を通過し、真っ直ぐ前に歩く。


コツンッ

「うぉっ!」


歩いていると突然、段差に躓き、驚きのあまり声を出してしまうカイト。急いで口を手で覆い隠し、背後を見る。


((何も動いておらん、大丈夫じゃ))


((怖かったー))


再び段差に気をつけながら前に進み続けるカイト。


...慎重に進み続ける事数分、前方に玉座の様な物が見え、此処が何処だか理解したカイト。


((玉座がある...もしかすると此処が))


((玉座の間、、つまりただの塔だと思っていた此処は修羅の国の城だったみたいですね))


「ではまた後日、また伺いに来ます故、今日も此処らで引き取らせて頂きます」


そう言って平伏した体勢から立ち上がり、玉座の間を後にした奴焚が見えなくなった所で、カイトが動き始めた。


奴焚がいなくなったため、堂々と台座に登り、更に近くで球体に浮いているアッシュに近づく。


「触れたらヤバそうですかね」


((そうじゃな...じゃが触れて見んことにはどうする事も出来ん、どうにかして精霊本体の器と、魂を繋ごうとしている何かを断ち切らんと))


「やるしか無いって事ですね...ふぅ」


覚悟を決め、アッシュを包む球体に手を伸ばす。


ブゥンッ


思念体の体だからなのか、問題なく球体の中に手が入る、そして次の瞬間...


ドォンッ!!


シュッ!


「やはり誰かおるな...何者だ?」


あれ程の開くのに苦労していた巨大な扉を、秒でこじ開け、カイトの背後に一瞬で移動した


(は?)


ブゥンッ


いきなり背後から放たれた物凄いプレッシャーに焦って手を引いてしまうカイト。


ドガァンッ!!


微弱ながらにも球体から手を引いた瞬間、なにかを感じた奴焚は、目に見えない程の速度で、カイトのいる位置に拳をめり込ませた。


(......)


『八武衆...集え!』


手答えの無いのを感じた後、突然天に向かって、大きく叫ぶ奴焚。そして事態は最悪な方向へと進んでいく。


シュンッ


『八武衆・槃陀羅(ばんだら)


『八武衆・迦日羅(かびら)


『八武衆・五斑羅(ごはんら)


『八武衆・九婆羅(くばら)


『八武衆・乾金叉羅(けんごんさら)


『八武衆・羯琉伽羅(かるから)


『八武衆・緊金羅(きんごんら)


次々と台座を囲う様に名乗りながら現れたのは、奴焚と名乗った存在と同じくらいの圧を放つ七体の八武衆と呼ばれた存在らだった。


*「ちっ...王の復活だと思い来てみれば」


*「いつから我らを召集できる立場に立ったのじゃ?阿奴焚よ?」


「我らの間に序列は存在せぬ九婆よ、だが王の事となれば話は別、緊急で皆を召集させてもらった」


*「ほぉう...なら言うてみぃ、下らぬ事なら、ワシが自ら潰しちゃるけぇ、っけっけっけ」


ブシュッ!!


突然薄気味笑いを上げた細い長身の者の腕が、何かによって斬り落とされる。


*「貴様の下らぬ戯言は良い緊金、早く事を聞かせてくれ奴焚よ」


腕に付着した緊金の血を払うと、台座に浮かぶアッシュを見上げる奴焚。


「何者かが侵入したと思われる、我が六道ノ辻に入る前、何者かが入った形跡が有った、そして今しがた王の身を守るこの結界に僅かな反応があり、姿を隠しているとふんだ我は探し出す為こうして皆を召集した」


「姿の見えん者か、じゃったら、ワシらの出番じゃな」


ズポンッ


そう言って老婆の姿をした女性が台座に近寄り腰を前屈みにすると背中から、もう1人の老婆が現れ、当たりを見渡した。


「どうだ九婆、何か分かり得たか?」


「ふぅむ、、何も見えんのぉ」


「迦日」


奴焚の背後に立っていた、目を閉じたままの迦日は鏡を空間から取り出し、頭上に投げ込んだ。


「ふぅむ、、何かに化けている訳でも無さそうです、九婆様の魔力感知に反応が無ければ、五斑様の六道眼なら」


「五斑」


「はぁ...本来なら僕に頼み事をしたいなら代価を要求するんだけどねぇー、阿修羅様の事となれば仕方ないけどやってみるよぉ」


そう言って巨大な顔だけの男児の様な顔をした存在が、少し俯瞰から見る為に全員から離れ、目を光らす。


「あっ、奴焚くんの背後の位置に何か見えるよ」

ブゥンッ!


五斑が見つけたと報告した瞬間、カイトが立っている台座の足元を殴りつける奴焚。


(..さっきからなんだよ、思念体の身体じゃなかったら数回は死んでるぞ、殴ってる動作が見えねぇ)


「んー、殴っても反応は無いよ、多分それは思念体だよ、えぇーっとね、ハイッ!」


次の瞬間、五斑の目から放たれた光を浴びたカイトは、最悪の事態になったと感じた。


(目線を感じる...て事は)


全員から突如向けられた身がすくむ程の視線に、体が震え上がるカイト。


((姿がバレたと!?まずい!すぐに引き戻す))


慌てた様子でクハンがカイトを元に戻そうとした瞬間、カイトが引き止めた。


((バレた所で攻撃が当たる訳じゃないです、こうなったらもう力技で行きます!))


((何をするんじゃ!))


カイトがアッシュに手を伸ばし、もう少しで届く所で身体が止まる。


「けっけっけ、物理攻撃が当たらなければ、精神を攻撃するまでですよ」


台座に浮かぶアッシュの向こう側からいつの間にか移動していた緊金と目が合う。すると突然金縛りにあったかの様に、体が動かなくなるカイト。


「ごえぇぇぇぇ!」


突如体内に無数の蟲が這っているのを感じ、口から大量の蟲を吐き始めるカイト。


『嘆く鐘』


ゴォォォォンッ


「ぶふっ!」


呼吸が出来ないほどの苦しみを感じる中、突如鳴り響いた鐘の音に耳、鼻、口から同時に血が噴き出し、倒れるカイト。


((子供相手に、お痛が過ぎるのでは?))


『ディスマジック』


体内を這い回る蟲の不快な感覚が消え、身体の自由が戻るカイト。


『フェニックスヒール』


赤い炎がカイトの全身が燃え上がり、傷を全て癒し、一瞬で身体が元に戻る。


((今じゃ!行けい!))


クハンの声で我に帰り、全身にまだ残る痛みに歯を食いしばりながら一歩踏み出す。


「ぐああああっ!」


再び鐘の音が聞こえ、血を噴き出すが。堪えて何とかアッシュの手に自身の手が触れかけたその時...


スカッ


空を切った手に驚くカイト。


「童が此処に何用で潜ったのかは分からぬが、王には指一本触れさせぬ、試すか?神ですら恐れ、封印するのが精一杯だった我ら八武衆を相手に」


球体を自身の掌に乗せて、カイトの前に立ちはだかる奴焚。


遮獄牢(しゃごくろう)


九婆がカイトを中心にドーム状の結界を展開する。


「ひょっひょっ、虫はまず捕まえるのが先じゃろ」


((クハン老師!ダメでした!俺を元に!))


((....))


((...クハン老師?))


「おぉ?慌てておる慌てておるぅ!この結界内は隔離されておる、魔力に関係するものは全て遮断される故、助けは直接誰かが此処にこんと無理じゃぞ?」


(隔離されたのか...)


目の前に並び始める八武衆。その存在感に絶望以外の何も感じられないカイトは、此処から逃れようと何かを模索する事すら諦めそうになる。


(やべぇ...マジでどうして良いかわかんねぇ...だれか...)


「おぉ〜、その目はどうやら諦めたのぉ?けぇっけっけ、ワシらに挑もうなんぞ、若すぎたのぉ」


長身の細身の緊金が近づき台座の上で両手をつくカイトの顔を覗き込む。


「ゆぅーーーーっくり殺してあげるからのぉ?けっけっけ」


(...一か八か、どうせ死ぬんだし何でもやってやる)


そう言ってやり方を聞いた事がなかったので、ぶっつけ本番で1つ試めすカイト。


「契約を解除する!」


そう心から願い、叫ぶと同時にカイトは緊金の目を見て、意識を失った。


「子供相手に緊金も容赦ないね、そんなんだから奴焚くんに嫌われるんだよ」


「けっけっけ、貴様らとは同じ王を慕う者同士なだけじゃ、馴れ合いなど弱者がする事、下らぬ」


*「終わったか?だったら俺は帰るぞ?」


「あっ!槃陀くん!後で一緒にお酒飲まない?」


「事は解決したか」


そう言って各々が入り口に向かい、奴焚は台座に球体に入ったアッシュ元いた位置に戻す。


...


......


ズゥンッ


「この気配!」


突然懐かしい気配を感じた奴焚が、背にしていた台座の方を振り向く。


「王の帰還だぁ!!」


奴焚が叫び声を上げた瞬間、入り口にいた八武衆が振り返る。


「おぉ〜!この全身が警笛を鳴らし、震え上がるほどの気配!」


奴焚に続き、緊金も気配を感じ取り台座に向かって瞬間移動する。


「まさか、復活するの!?王様が!?」


「ほっほっほ、寿命が来る前に、もう一度御姿を観られるとは、何たる喜ばしい事か!」


「この前みたいに失敗しねぇだろうな、奴焚」


ズゥンッ!

ブォンッ!!


アッシュを包む赤色の球体が体内から発せられた衝撃波で消し飛ぶ。


「ぐっ...これ程の圧...成功にしたに間違いない、でかしたぞ奴焚!」


そして浮いていたアッシュの体が台座に倒れる。


「王よ!」


急いで奴焚が台座へと上がり、アッシュの体を支える。


ズゥンッ!!


「んぐっ!!」


そして奴焚がアッシュを支えた途端、アッシュの身体から伸びた赤い闘気の腕が奴焚の首元に伸び、身体ごと持ち上げた。


*「フゥ...この汚ねぇ空気」


「我らが主よ...復活の時を我がどれほどお待ちしておりましたか」


*「頭に響くそのウザい声..緊金か」


「左様でございます...」


奴焚を除いた八武衆の全員が片膝を地面に着き、顔を下げる中、緊金が満面の笑みを浮かべながら主人の顔を見上げる。


*「1人欠けてるが...奴焚はどうした?」


「王様、それ以上掴んでると流石の奴焚くんも死んじゃいますよ」


*「ん?あぁ、そこにいたか」


パッ


「ゲホッ!ゲホッ!...復活して尚あの頃のまま、どうやら再命の儀は成功と言えます」


*「お前達が居るって事はどうやら俺様は修羅に戻されたって事か」


ドォォォォン!!!


目が覚めて、違和感がないかを確認しながら、状況を理解したアッシュは、何の予備動作、慈悲も無く、数メートル離れていた奴焚の顔を闘気の拳で顔を殴りつけ、玉座の間の扉に吹き飛ばした。


ゴォンッ!!


その衝撃で奴焚が開けるのに苦労していた扉の片方の扉が全開に開き、五斑がそれを見て感嘆する。


「僕らでも開けるのに手こずるのに、あんな軽々しくやるなんて、流石王様だぶっ!」

ドォォォォン!!!


*「馴れ馴れしく喋りかけんな」


今度は嬉々とした表情で喜ぶ五斑の顔を同じ様に殴り飛ばすアッシュ。


*「阿修羅様...五斑は分かりますが、何故奴焚を?」


*「羯琉伽..お前もぶっ飛ばされてぇのか?1回テメェらが俺様を失敗した形で呼び寄せた時俺様ァ何つった?」


「で、ですが主よ..我らぐほぉっ!」


瓢箪を背中に担いだ羯琉伽と呼ばれた者が答えにならない返事をする前に、頭上から飛んできたアッシュに顔から着地され、顔が地面にめり込む。


「確かに主様は我らに再命の儀を辞めよと仰せられました...しかし我にはどうしてもあなた様がぉっ」


ドォンッ!!


今度は伽日がアッシュの怒りを沈めようと、試みるも、話の途中で顔を蹴られ、数メートル離れた壁に吹き飛ばされる。


*「俺様はお前らを必要としてねぇんだ、俺様がいなきゃなんにも出来ねぇのか?あぁ?」


次々となす術なく吹き飛ばされていく他の八武衆を見て、他の八武衆は怒り心頭の主人に震えながら、何も答えず、只々地面を見るだけ。


*「いいか?俺様ぁ自分の意思で戻りたい時に戻る。次また俺様の許可なしに復活でもさせてみろ?テメェら全員肉片になるまで殴り潰してやる」


放たれた殺気に先程のカイトの様な立場になる残りの八武衆。


*「おい緊金!」


「はぁい!」


*「あのガキに掛けてる幻術を解いて、見せた幻術の記憶全部消せ、後遺症の1つでもあったら俺様がお前を肉の塊にする現実を見せてやる」


「今すぐに!」


アッシュの命令に慌てて、緊金がカイトに見せている幻術を解き、記憶を消した。


「...はっ!」


幻術が解かれ、目を覚ましたカイトはすぐに起き上がり、あたりを警戒した。


「アッシュ!?」


*「へへっ、よぅ相棒、迷惑かけたなぁ」


「何だよその姿!もしかして復活したのか!?八武衆の奴らはどうなった!?」


アッシュの姿の変貌ぶりに少し驚くカイトは、数の減った八武衆を見て、状況を確認しようとするも...


*「悪りぃけど何言ってんのか聞こえねぇよ、また説明すっから、今は取り敢えず帰れ...おい九婆!こいつに張った結界解け」


「すぐに...」


パキィンッ!


(声が聞こえないのか、取り敢えず賭けはうまくいった見たいだな、後はクハン老師の念話が聞こえれば)


結界が解かれ、取り敢えず一安心したカイトはクハンの連絡を待つ事にする。そしてすぐに慌てた様子でクハンがカイトに念話で話しかけた。


((カイトくん!!無事かぁ!?))


((はい無事です、お騒がせしてすみません、結界の様な物を張られて、隔離されてました))


((そうか、無事か!申し訳ない、ワシも色々試してみたんじゃが、その結界を突破する事が出来んかった))


*「おいカイト、オッサンに伝えてくれ、俺様の魂と精霊の身体を繋ぎ続けとけって」


((あ、クハン老師!))


((大丈夫じゃ、言われずともそうしておる、取り敢えず解決したから連れ戻すぞカイトくん))


((はい、お願いします))


次の瞬間、意識が途切れて倒れるカイト。


倒れたカイトをアッシュが確認し、自身もそろそろ終わらせにかかる。


*「じゃあなテメェら」


「お待ちくだされ王よ!」


「乾金叉!早く王を止めよ!!」


緊金が止めにかかろうとし、九婆が乾金叉に向かって叫ぶ。


しかしアッシュはそれよりも早く、躊躇もなく手刀で自身の首を斬り落とした。


...


.......


「....うぅ」


「目が覚めたかの?」


「...頭が..ボーっとします」


「許容時間を越してもうたからのぉ、それより」


ゆっくりと立ち上がるカイトの前に見慣れた赤い髪の小人がクハンの背中からひょこっと姿を表した。


『ったく、後に戻った俺様より遅くに目覚めるなんてよぉ、しっかりしやがれってんだ』


「へっ..全く手間のかかるクソ精霊だな、言っとくけど次は何があっても、2度とあんなとこまで行って助けに行ってやらねぇかんな」


「そればかりはワシも賛成じゃ、あれ程迄に禍々しい所なんぞ、2度とごめんじゃい」


『どうだぁ?これで俺様の凄さが分かっただろぉ?』


「あぁ、すっげぇ厄介な精霊を抱え込んだ事だけは確かに分かったな」


『だぁーっはっは!』


皮肉を間に受け止めるアッシュ見て、安心するカイト。


「それじゃあ元通りにもなった事じゃし、元に戻すぞい」


トンッ


「うおっ、びっくりした〜」


「むっ?何処いらしてたのですか老師殿」


辺りは一瞬にして変わり、クハンの家に変わり、突然現れた2人にご飯を食べながら驚くミサバト。


「カイトくんの精霊は元に戻ったよ、ふぅ、、ワシはもう体力の限界じゃ、久しぶりに心臓を握られた気分じゃったよ」


部屋に戻るなり、ソファーに寝転ぶクハン。そして少しやつれた表情のカイトを見て何が起きたのか理解できないサバトとミドラ。


「はっ、なんだかお前らの顔を見たら安心したよ、悪りぃ、俺もちょっと横になる」


「顔色凄い悪いよ?」


「取り敢えずメルループのいる寝室まで担ぐぞ、腕を貸してみろ」


カイトの腕を肩に回し、身体を支えながら寝室まで運ぶミドラ。


「ありがとうなミドラ...」


「あぁ、帰宅と獣車の手配は我らに任せておけ」


そして寝室に入るなり、その場に寝転んだメルループの体に、カイトが倒れ込み、そのまま熟睡した。


それからカイトが寝ている間、ミドラとサバトはいつでもウルスラへと帰れる様に獣者を手配し、クハンの家の周りをカイトが目を覚ますまで散策して時間を潰した。


カイトが眠りについてから数時間後...



「それではクハン老師、大変お世話になりました!」


玄関先でカイトがクハンに礼を言い、頭を下げる。


「ほっほっほ、よいよい、また精霊の事で困った事が有れば、ワシに相談せい、いつでも歓迎するぞい」


『じゃあな爺さん、助かったぜ』


「ほっほ、じゃあの」


最後に3人で頭を下げて、カイト達はクハンの家の外で止まっている獣車に乗り込み、クハンに最後まで見送ってもらった。


「またいつか会いましょう!クハン老師!」


こうしてカイトの精霊アッシュは、元通りにカイトの元へと戻り、問題は解決された。




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