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第2章 精霊展

「なぁビレイクってどんな街だ?」


「すっごいよ、もうね圧巻されるから楽しみにしておいて」


「中央都市ビレイクは、かの先人教皇アストリア・オリガ・ビレイクによって建てられた街で、なんと言っても山を半分以上くり抜いて作り上げた神殿は、大陸観光名所の1つでもあるのだ」


「最悪、全部言っちゃってるよミドラ君」


「山を削って建てた神殿ってロマンじゃん!すっげぇ〜」


「うむ、ただ1点だけ、向こうに着くと要らぬ事は言わない事だ」


「それって?」


「ここガルナロート国は他国の王政や、軍政と違い、宗教国家なのだ、国の実権は教皇が握っている為、下手な事を言って万が一教徒にでも聞かれれば、我とて命の保証は出来ん」


「へぇ〜、宗教国家ってのは授業で習った事があったけど、そこまで過激だとは知らなかったなぁ、因みになんの宗教なんだ?」


「我も詳しくは知らんが、唯一神アネアを信仰の対象とし、神の子ルニヤの残した言葉を教えとし、その教えは『白書』に記されている。宗教の歴史は前の世界ルグドラから始まっていたとされている為、その教えはガルナロートに限らず、どの国にも強く根付いていると言われている」


「やっぱ宗教は何処にでもあるもんなんだな...」


それから様々な注意事項を受けながら、獣車に乗る事1時間。魔物が出没する谷を抜けると、カイトの想像していた数倍程神秘的な光景が広がっていた。


「うっっっっわ!なんだありゃ!」


谷を抜けた下り坂から見下ろすと、円形に建てられた街があり、見た感じどの建物も2階程度の大きさより高い建物はなく、高低差もない。故に1番奥にある山に自然と目が留まる。


中央都市ビレイクの超巨大建築物、ミドラの言っていたまんまの特徴で、一度前世で見た事あった富士山とほぼ同じぐらいと高さを誇るその山は、8割まで中身をくり抜かれており、超巨大建築物はくり抜かれた山の中にあった。


そして遠くからでも一目で分かる、中枢に位置する1番派手な輝くを放っていたのが、ミドラの言っていた神殿だとすぐに分かった。


「山をくり抜くとかマジでなんでもありだな」


それから下り坂を降りて、街に入った後真っ直ぐに発券場へと向かった一同。


幅が40メートル程の大きな道路沿いにある、精霊展が開かれる、博物館程の大きな会場の前で獣車を止める。


「うーわ、人が一杯だぜ」


会場の前に設置された発券場は2つあり、片方には長蛇の列が出来ており、もう片方の列は数人だけが並んでいた。見るからに少ない方がVIPだと分かったカイトは、数少ない方で並ぼうとしたがミドラに引き止められる。


「こっちじゃないのか?」


「そっちはVIPだ」


「まさかVIPじゃなかったらこっちのクソ長い列に!?」


駄々を捏ねようとするカイトにミドラがドヤ顔で口を開く。


「我らは招待客だ、VIP所の小さな物ではない」


「うっほぉ〜!流石四貴族様〜!」

「カッコいい〜ミドラくーん!」


「ぬぁーっはっは!もっと褒めるが良い2人とも!」


VIP列に並んでいた貴族の様な身なりをした人物達に、睨まれたものの、今この瞬間は自分達の方が特別だろ感じているカイトは、堂々と挑発した表情で会場の中へと入っていった。


大きな両開きのガラス扉を開け、会場の中へと入っていく。


扉の先には受付があり、廊下が左右に分かれていて、天井は上空がガラス張りだった。場内を観察するカイトを他所に、受付の係員に声をかけるミドラ。


「ミドラ・オルフェオンで話を通してもらっている」


「確認致しますので少しお待ちください」


そう言って係員が名簿の様なものを取り出しを紙を捲っていく。


「ミドラ・オルフェオン様...シドウ様の紹介で3名で宜しいでしょうか?」


「あぁ」


「では此方にサインの方をお願い致します」


渡された注意書きの用紙にミドラがサインをし、それと交換で3枚のチケットを渡されるミドラ。


「それでは開催は明日の午前中が招待客様限定の時間となっておりますので、くれぐれもご注意下さい」


「うむ」


「ありがとうございます」


二つ返事で返すミドラに、代わりに礼を言うカイト。


それから一同は会場を出た後、ビレイクを散策する事にした。


「どこ行こうか〜」


「そら勿論あのすげぇ山にある神殿だろ」


「では向かうか」


こうして一同はガルナロートが誇る巨大建築物ルハナ神殿へと足を進めた。


「結構近代化って言うか...道路とか整備されてるんだな」


「父が言っていた、宗教は成功させれば1番金を儲けられ、権力を得られると。なので国の資金はどの国よりも多いガルナロートは道路整備も含め娯楽施設から国に必要とされるものは何から何まで全て一流であり最高級だと。それにビレイクはルニヤ教徒の聖地とされているからな見栄えは更に重視される」


「あ、見えた見えた!あれがかの有名な神の子ルニヤが天から降り立ち、ここに住んでいた人達に啓示を与えたって言うルニヤ聖台!」


かなり広い道路を進んだ先に、物凄い広い円形の広場に出ると、広場の真ん中に大理石の様な石で作られた台が置かれており、教徒とおまわしき人物達がその台を囲う様に、両膝と頭を地面につけて、何やら祈っていた。


「うわ、初めて見たあんな光景」


「あの台は教徒からすればかなり神聖な物だ、故にあの台を街の中心とし、街が開拓されていったのだ」


「ほえ〜」


一同は少し聖台を見ていき、少ししてから再び神殿へと足を進めた。


自身らが通ってきたのは南大通り、神殿への道は南道路から広場に抜け、広場の中心にある聖台の奥にある北大通りを真っ直ぐ行くと神殿に到着するとの事。


「細い通りも何があるか気になるなぁ、隠れた名店とかありそうだし」


「細い通りはあまり入らない方がいい、1番金がある国だが、1番裕福な国ではない。大通りでは見えないが、細い通りに入ると物乞いや、ひったくり、すり、路上強盗などよからぬ事を企む輩も出てくる」


「そうそう、聖地とかって言われてるけど、実際は教徒達と、慈悲深い教徒達を目当てに物乞いする貧民の2種類しかいない街だからね」


「て事は結構治安があまり良くないのか」


「そうだね、大通りのお店とかの出されている値札は、基本的に倍くらい上げているし、ホント観光するにはあまりお勧め出来ないけどね、、」


「それでも観光客が耐えない理由がこれだ」


ミドラがそう言ってサバトの方を見ているカイトを目線を進行方向に指で誘導した。


「....」


谷からはあまり見えなかったが、近くで見るとその存在感に圧倒され、言葉をなくすカイト。


傾斜が急な山の麓にはこれまた豪華な住居郡が街を見下ろす様に建ち並び。住居郡の1番頂上には、山をくり抜かれて建設された神殿内部に入る事ができる唯一の道があり、そこから神殿内に入り道なりを進んでいくと、最上階から外に出るとルハナ神殿に通じるとの事だ。


「観光名所ではあるが、立ち入りは禁止なのだ。ルハナ神殿に入りたければ年に1回行われる降神の祈りで教徒になりすまし、ルハナ神殿で神に祈りを捧げるついでに中身を見る事が出来る」


「ここまで来て外観だけってそれはねぇ、、」


「ねぇミドラ君、カイトのこの笑顔、、」


「何を企んでいる」


「一回入るくらいいいじゃん?」


そう言ってカイトは上着を脱いで顔を隠し、ミドラとサバトの顔も隠してあげる。


「よし、準備完了!しっかり捕まっとけよ!」


『テレポート』


場所は目に見えるルハナ神殿の真上。標高何千メートルとある、通常の登山なら何泊かしなくてはいけない所を、たったの魔法1つでそれらを苦労を嘲笑うかの様に無視して、ルハナ神殿の頭上まで飛んだカイト達。


「うっわ!すげぇぞサバト!」


ルハナ神殿から見下ろす街の風景にテンションの上がるカイトと、カイトにしがみつくサバト。ミドラは余りにも美し過ぎる絶景に息を呑んでいる。


風魔法でふわりと着地し、神殿に足を着ける。


「石で出来てんのかぁ、、風化で壊れたりしないのかね」


「加工石で建築していると言うのをガイドが言っていたのを耳にした事がある、滅多な事では壊れんだろ」


「うわぁ〜、見て見て!あれってミドラ君の住んでいるアラカノンなんじゃ!?」


「どれどれ〜?あぁー!あの町のシンボルの時計塔がハッキリ見えるな」


「ほぉ、アラカノン迄見える程の見晴らしとは、なかなかだな」


「アラカノンからは、建物が邪魔でこの山見えなかったのにな、すげぇ」


ガァァァァァァンッ!!!


「「「っ!!」」」


そうこう景色を楽しんでいると、突然背後の神殿内部から大きな鐘の音が鳴り響き、驚く3人。


「バレたか!?」


「いや、あれはアクナムを知らせる鐘だ」


「アクナム?」


「アクナムはお祈りの事で、なぜこの時間かと言うと、ルニヤの教えで、神が地上に降り立った時間がちょうど今の時間で、今度いつ姿を現すか分からないけども、いつ来てもいい様にと、神様をいつでも迎えられるという意味を込めて作った日課みたいな物だよ」


「この瞬間、全てのルニヤ教徒は地に伏せて祈りを捧げている」


「自分達がいる位置もあってか、なんだか祈られてる気分がするぜ」


「ははっ、自意識過剰だよそれは」


*「誰かいるのか!?」


「やべっ!」


突然背後から見回りに来た信者が現れ、急いで物陰から2人を巻き込んで飛び降りるカイト。


スカイダイビングを少し楽しんだ後、空中でミドラとサバトを寄手で引き寄せ、テレポートで住居郡の入口に戻る。


「ぷはぁっ!死ぬかと思ったぁ〜」


「新しい遊びを見つけたぞ...これは今度妹達に試す価値ありだ」


先程の飛び降りで、命綱なしで高いとこから飛び降りるスリル満点の遊びを思いついたカイトは、忘れない様にメモを取る。


(魔法があれば遊びの幅も無茶苦茶増えるなぁ)


「神殿も満足に見れたし、次どうする?」


「日が暮れるまでまだ時間はある、西大通りにあるこの町でしか手に入れられない素材を買いたいから付いてきてくれ。そしたら夕暮れの時間帯にはなると思うから、そこからホテルを取っておいた東大通りも観光しよう。あそこは主に歓楽施設があるから、夜が1番賑わう」


「いいねぇ〜、眠らない町ってのに一回は行ってみたかったんだよ」


「そうと決まればレッツゴ〜」


こうしてカイト達はミドラの買い物に夕暮れまで付き合った後、ホテルへと一旦チェックインを済ませて休憩し、夜ご飯目当てに歓楽街を周り大いに楽しんだ。


....そして一夜がが明けた。


シャーーーッ!


カーテンを開く音と窓辺から差し込む日の光に、眉を顰める。


「うむ、いい天気だ...時間だ、起きろ2人とも」


「んぅー...後2分だけ..」


「ミドラくん....もう..食べれないにょ」


「ほぉら...こっちこい」


カイトに腕を掴まれ、強引に部屋にある唯一のキングサイズのベッドの真ん中に無理やり引き寄せられるミドラ。


「ぬおっ!やめろカイト!我にそう言った趣味はない!」


「だから...もう食べられないよぉ」


「ぐっへへ〜、前からお前のその身体付き..ムニムニしてみたかったんだよ〜」


「んぅむむむっ...やめんかぁー!」


サバトとカイトにガッチリホールドされ、手足の自由を奪われた挙句、触手のようにうねらせた手がミドラの鍛え抜かれた体を弄ろうとした時。我慢の限界が達したミドラが魔力を解放して、小さい衝撃波を派生させ、ベッドにいる2人を吹き飛ばした。


「うわっ!」


「もう食べうわぁっ!」


「早く支度しろ、先に行ってるぞ」


「ちぇっ、いいじゃんかよ後2分くらい...」


「ぷへっ!これ誰の靴下だよ!おぇっ!」


「あ!サバトお前、俺の靴下だぞそれ!」


ミドラが部屋から出て行き、それを見たカイトとサバトは急いで身支度を済ませて、後を追う。


道中でミドラに追いつき3人で会場内へと入る。


「お待ちしておりましたミドラ様」


会場に入るなりそうで迎えたのは、昨日ロビーで受付をしていた男性だった。


「クハン老師はいらしてるか?」


「はい、招待客のお方は老師様自らお客様を1組1組丁寧に案内をしております。此方整理券になりますので、順番の方が来ましたら、お呼びいたします」


「うむ」


それから整理券とガイドブックを渡され、ロビーの右側廊下に入り、扉の先にある小さな部屋へと案内され、部屋にある椅子に腰掛ける3人。


「ミドラとサバトはクハン老師って人に会ったことはあるのか?」


「父は何度か言葉を交わした事があると聞いた」


「僕はそう言ったお偉いさんとは無縁の関係」


「俺の願い聞き入れてくれるかな、、」


「大丈夫だ、招待客である以上、会話はくらいはできる、お前のいつもの交渉術でなんとかなるだろう、もしそれが仮にうまくいかなくとも、クハン老師は精霊愛がとても凄いと聞く、お前の願いは聞かなくても、精霊が困れば助けてくれるはずだ」


「そうだな...」


(いざとなればファミル先生の名前も出させてもらおう、帰り際にお土産買って行かないとな)


コンコンッ


カイト達が入ってきた扉と反対方向の扉からノック音が聞こえ、中から係員の女性が入ってきた。


「お待たせ致しました、ご案内致します」


「なんだかワクワクしてきたね」


「行くぞ」


「ふぅ...」


小部屋を出ると、一本の暗い廊下があり、突き当たりで注意事項が説明された。


「それでは以上の注意事項を踏まえで、精霊展をお楽しみください!」


ガチャン!!


扉が開かれると眩しい日の光で一瞬目が眩む。


扉の奥に広がる光景に、ミドラとサバトが感嘆の声をあげた。


「うぉ〜、建物の中に自然があるよミドラ君」


「凄いな、まるで自然に迷い込んだみたいだ」


「植物館だぁ〜」


ミドラとサバトは見たことない景色に驚き、カイトは前世で一度訪れた事があった植物館を連想させた景色に懐かしむ。


ガイドブックには館内のすべての植物と岩などが魔法ではなく、本物を使っている事を強調していた。


*「のぉっほっほ、これはこれは、可愛らしいお客人が招かれたのぉ」


嗄れた甲高い声で、頭上から浮遊してきた老人がカイト達を出迎えた。


背丈はカイトの半分くらいしかなく、老人が浮遊しながらフワリと床に降りゆくと、胸元まで伸びた立派な白い髭が顔に被るというお茶目な一面を見せた後、丸いフレームの老眼鏡の奥から、にっこりと優しい笑みでカイト達に微笑みかけた。


「ようこそ精霊展へ、ワシが主催のクハンじゃ、此度は御3方の案内をさせて頂きます」


そんな物腰柔らかそうな雰囲気からはファミルと同じ、三賢王とはとても感じられない3人。


「よ、よろしくお願いします」


緊張した面持ちでカイトが一歩前に出て頭を上げる。


「ほぅほぅほぅ、、それじゃあ早速案内をさせてもらおうかの」


そう言ってふわりと再び浮き始め、全身から光を発し出したクハン。


『現世へ』


瞬間、クハン発光する体から無数の光の玉が館内に飛び回り、次々と姿を表した。


人型の妖精や、動物、何体かの動物と掛け合わせた合成種の様な動物と、ファンタジーな世界で見た事ある生き物に似た精霊から、考えつかない様な見た目の精霊まで、その数はざっと見た感じ数十体が一気出現した。


「まさかこれ程の精霊を1人で召喚させただと?」


「はは、普通のおじいさんだと思ってたけど、これは度肝を抜かれたよ、、」


驚愕な出来事を目の前で見て驚くミドラとサバト。カイトは口をただただポカーンと開いている。


(同時にこれだけの精霊を出すって、どんだけの魔力タンク積んでんだよ)


「それではワシについて参れ」


(あれだけの精霊を召喚してもなお、息一つ切らさないなんて)


「なにしてんのカイト、置いていかれるよー」


それからクハン老師の案内による精霊展が始まった。


様々な環境を似せて作られた館内を回りながら、その場その場にいる精霊達の特徴を次々と紹介してもらうカイト達。


その案内は小一時間程続き、案内が終わった後クハンがカイト達に質問をした。


「君達、精霊はどうやって生まれるか知っておるか?」


「学校の授業では、微精霊達が大気の魔力を吸い上げて、それによって微精霊に意識が宿り精霊へと進化すると聞きました」


カイトがファミルの授業で聞いた話をそのまま答える。


「正解じゃ、では微精霊はどうやって生まれてくると思う?」


「それは...」


「ほっほ、では今ワシがした質問を今度先生にしてみて、答えられなかったら教えてあげなさい...コホン」


「では微精霊とはどうやって生まれるか、それは死者の体から生まれるのじゃ」


「死者!?」


思わぬ答えに驚くサバト。


「ほっほ、驚いたじゃろ?言い間違えてはいないぞ?死んだ者の魂から微精霊は生まれるのじゃ」


「すべての生き物には魂がある、それは目に見えないものの、抽象的な物ではなく、実在するものなのじゃ」


ゴゴゴッ


突如3人の足元に岩魔法で作り上げた簡易的な椅子が現れ、3人は授業を聞く様に座り込んだ。


「はい!」


「そこのセンター分けパーマ君」


「クハンさんはその魂というのを見た事はあるのですか?」


「無いな、じゃが精霊達には見えるのじゃ、精霊達は世界のあらゆる存在の中で、唯一あの世とこの世を行き来できる存在なのじゃ」


「あの世とこの世、、それは我らが生きているこの世界と死者の世界の事なのでしょうか?」


「そうじゃツンツン頭君、精霊は本来霊体なのじゃが、現世の存在と契約を交わし、交わる事で2つの世界を行き来出来る様になるのじゃ」


「霊体って事は、普通だったら見えないはずなんじゃ?」


「いい質問じゃ黒髪君。たしかに人間には霊体を見る事は出来なくとも、動魔力は見えるじゃろ?」


(動魔力は確かファミル先生が言ってた、力に呼応して変化が起きる魔力を動魔力、逆に何もなくただただ空中に浮遊しているのが静魔力で、ファミル先生の持っている魔力眼などの特殊な目が無い限りは、静魔力は見えないとされている)


「精霊と動魔力にはどう言った関係が?」


「ここで魔力の話になるが、魔力とは無限の力にして、すべてのエネルギーの源と言われている。その力は未だに正体は未解明とされているが、1つワシが分かっているのは、魔力の存在はあの世とこの世に分け隔てなく存在するのだ」


「つまりどういう事だぁー?」


早くも頭がこんがらがってきたサバト。


「霊体はあの世にのみ存在し、ワシらはこの世にのみ存在している。ここまでは分かるな?そして問題の魔力というのはどういう事か、どちらからも見えていて、どちら側からもアクセスする事ができるのじゃ、なので先程のどうやってその姿を捉える事が出来ているかの話に戻るが、それは霊体側が大気中に飛んでいる静魔力にアクセスして、自分の存在を知らしめる為に力を与え、それが自身の得意属性に呼応して、赤色に光ったり、水色に光ったりするのじゃ」


「原理は分かりましたが、今の話を聞くと、それだとあの世というものが現世と同じ形をしているという事が分かる事になりますよね」


「いいとこに気が付いたのぉカイト君、それについてワシも気が付いての、だから気になって研究したのじゃ、その結果分かった事は、ワシらが今しがたあの世と呼んでいた世界は、実は死後の世界じゃなかったのじゃ、それを発見したワシはその空間、世界を霊界と呼んどるんじゃが、その霊界とは、ワシの予想ではこの世と死後の世界の真ん中に位置する世界なのかもしれん」


「この世とあの世の真ん中に位置する世界か...」


「おっとっと、ついつい君達との会話を楽しむあまり、口を滑らせてしもうたわ。取り敢えずワシが喋りたかったのは精霊の誕生の仕方だったのじゃ、今の話はまた機会があれば語り合おうぞ。ではな!案内は以上じゃ!お疲れさん!」


話が脱線してしまい、慌てて話を戻した後、時間が来てしまいクハンの案内が終わってしまった。


「ねぇカイト、あの事忘れてるでしょ」


「あ!あの!クハン老師!」


宙に浮き、次の招待客の案内に向かおうとしたクハンをサバトに言われて、目的を思い出し、慌てて引き止めるカイト。


「おん?何か忘れ物でもしたかえ?」


「いえ!その、、実はこの度精霊展に伺ったのは、精霊のエキスパートである貴方に聞きたい事があったからです!今日の出展が終わった後お時間がございましたら、少しだけ話を聞いてもらえないでしょうか!?お願いします!」


「我からもよろしくお願い申し上げます」


「ぼ、ぼくからもお願いします、友達、、いや、精霊の一大事ですので」


「...ふむ、精霊の一大事と聞くと放ってはおけんのぉ、それではこの住所に、アクナムの鐘が鳴った後に来なさい」


そう言ってクハンは一枚の紙をカイト達に渡し、そのまま次の客の案内へと向かった。


「よし!取り敢えず約束は取り付けられたな!」


「やったねカイト!」


それからカイト達は会場を後にし、色々時間を潰した後、アクナムの鐘が町内に鳴り響いた後、渡された住所へと向かうカイト達。


「やっぱ三賢王だし、ここに住むよね」


そう言ってサバトは神殿の真下にある一等地の住居群にある、豪邸を見上げた。


コンコンコンッ


「老師様!約束通り来ました!いらっしゃいますでしょうか?」


敷地の門を強く叩き、クハンに呼びかけるミドラ。


ガチャン!


突然両開きのドアが3人を迎え入れる様に開き、敷地内の奥の方でダル着をきたクハンが手招きをしていたのが見えたので、敷地内へと足を踏み入れる。


「綺麗な庭ですね〜」


懐かしい石畳の道を通ると、左手に噴水が見え、右手には精霊達がそこら中を飛び交い、まるで戯れあいをしている様だった。


「おっほっほ、歓迎するぞい3人共、して早速だが困っている精霊についてじゃが...契約者は?」


「あ、僕です!」


「黒髪君だね、それじゃあ契約印を見せてもらおうかね」


そう言われ、カイトはすぐの上半身裸になり、肩の契約印をクハンに見せた。


「ふむふむ、、なるほどな」


「何か分かったんですか?」


「赤く燃え上がる様な痛みは出たかね?」


「はい!突然精霊と修行していたらがぼぉっとした状態で突っ立ってて、その後すぐに苦しみながら頭を抱え出したと同時に、契約印が赤くなり出したのです」


「ふむ、説明すると契約印の赤い光は、契約の破棄を意味するものだ、痛みの強さは向こうの破棄をしようとする意思の強さに比例する」


「て事はアッシュは俺と契約を破棄しょうとしたって事でしょうか?」


「お主達の間で何が起こったか分かりはせんが、そういう事じゃな」


「喧嘩はしてなかったんですけどね、、なんなら稽古を付けて貰ってたくらいですから、不仲が原因と言うのは否定できる自信があります。もしかしら前世の記憶と関係があるのかと僕は考えているのですけど...」


「前世と言ったか!?その精霊の姿はどんな風貌をしておった?」


「赤い髪で、ミドラと同じツンツン頭に、腰に2つのお面を付けた生意気野郎です。あ、これうちの学園長に言われたんですけど、俺の精霊はかつてルグドラにあった修羅の国の王だったらしいです」


「なんと!....それは困ったものじゃ...」


「どうかしたんですか?」


「ワシが今日した話を覚えているか?」


「はい、まだ鮮明に記憶していますけど...」


「あの続きの話と関係があってな、まずは続きを話そうかの」


そう言ってキッチンスペースから果汁を取り出して、3人分とグラスピッチャーを机の上に置いて、改めてソファに深々と腰掛けてクハンは話を再開した。


「世界はワシらの住む現世、そして精霊達の本来いる場所霊界、それから死後の世界とあるんじゃが、如何なる生物も死んでしまえばそこで終わりじゃ、ここでいう終わりというのは魂ではなく記憶じゃ。肉体を離れた魂には手足もなければ脳もない。只々正体の解明できていない光だけがあるのじゃ、なので脳のない魂には記憶は残らんのがこの世の摂理なのじゃ、もしそんな摂理に逆らえる存在がいるとすればそれは神しかおらん」


「そしてそれを自分の意思で操れるのも神なのじゃ。何故それを説明できるかと問われればワシには分からんが、それを証明できるのが転生者の存在じゃ」


(転生者....)


「転生者は一度肉体を離れた人間の魂が本来あるはずの無い記憶とともに別の生命に宿った者たちじゃ。それはもしかしたら先程言った様に神の御技、もしくは偶然に偶然が重なっただけかもしれん。話を戻すが精霊に関しては人間の死した魂が精霊になる事はあるが、例外なく記憶は消える。ここまでの話を整理するが、精霊というのは死した者の魂から生まれ、魂の前世の記憶は例外なく消えるのがこの世の摂理」



「何よりワシが驚いたのはお主の精霊は修羅の国の王と聞いたが、修羅の国に詳しい人から聞いた話だと、修羅の王は不死の呪いをかけられていて、死ぬ事はできん。死ぬ事はできんのに、肉体から魂が剥がれ落ち、精霊となって生まれ変わった事。何が何やらワシにも訳がわからなさ過ぎて困っている上に、記憶を徐々に取り戻して行っているという断定していたワシの長年の研究成果を全て覆されている」


「つまり、クハン老師にも俺の精霊の身に起こっている出来事が何か分からないって事..ですか?」


「分からん...が仮説はいくつかある。その中でも最も有力なのが、お主の精霊が元の肉体に戻ろうとしているのかもしれん、つまり生き返ろうとしているのじゃ」


「...たしか前に生き返るとかどうとか言ってたの思い出しました。その時は一時的に契約が切れたみたいな感じでしたけど、何日後かに戻ってきて、そん時に生き返らせようとしていた修羅の国の住民なんですかね?その人達に頼んで蘇生をやめさたと言ってましたけど...」


「蘇生をやめさせると言っても呪いの所為で、生き返るのは必然的な事になっているかもしれん、契約印になんの痛みも生じずに、契約を破り、それをまた結び直せたのはまだ契約してから時間がそんなにたっておらんかったからと思う。取り敢えずわかった事は数日前にけいやくを破棄しようとしていた理由は、体が蘇生されてしまい、魂がその肉体に戻ろうとして起きた暴走なのかも知れぬな。今回は契約期間も長くなって信頼関係も深くなったが為に、容易に、それも一方的に契約破棄ができなくなってしまっている為、意識がシャットアウトしてしまったのかも知れぬ」


「じゃあ成す術ないんじゃ...俺が契約を解除しなかったら、俺が死ぬまでずっと俺の中に意識もなく閉じ込められるって事になりますよね」


「うーむ..ただ1つだけ方法があるとすれば、元の肉体と魂の繋がりを断ち切る事じゃ」


ミドラとサバトは側から2人の会話を聞いて、混乱しながらも辛抱強くカイト達の会話を聞き続けている。


「聞いた感じ、まるで元に戻るのを僕が阻害するみたいですね」


「そうじゃな...じゃが問題は本人がどう思っているかじゃ。お主の精霊は元に戻る事を望んでいるのか?それとも帰りたいと思っているのか?」


「一度俺の中から消えた時は自分の意思とは関係ない事だと言っていました。それに生き返らせる事を止めようとした事には何か理由があったのかも知れません。その断ち切る方法、やってみてもいいですか?」


「うむ。ならそうと決まれば、今夜は体を休めるといい、明日の朝にやるとするか」


「はい。ミドラ、サバト悪いなもう1日この街に滞在する事になった。もし何か用があるんだったら先に帰っててもいいけどどうする?」


「無論、お前の願いが果たされるまで、我は側にいる」


「僕もミドラくんに同意」


「へへっ、いい奴らだなお前達」


ミドラとサバトの二つ返事に、少し照れるカイト。それから一同は宿を探しに向かおうとすると、クハンが3人を呼び止めた。


「元々この街には今日去る予定じゃったから、宿は取っておらんかったのか、それだったらもうじき日も沈みきる、外は子供が出歩くには危ない時間故、ワシの家で泊まっていきなさい」


「いえいえ、それは流石に...」


「是非お願いします!...後僕たちお腹も空きました〜」


カイトが申し訳なさそうに断ろうとした所を、サバトが先頭に立ち、図太い精神で食事までねだる。


「ホッホッホ、この歳になると話し相手も見つからん故、この老人のうるさい話に付き合ってもらう事になるが?」


「三賢王の一席たる貴方様からのお話など、貴重故、いつまでもこのミドラが付き合いましょう!」


「ちょっ、お前ら」


自身より身分も力も上の人間に対しては、言葉に気を使うミドラに、貴族の本性を垣間見たカイト。


こうしてクハンの提案により、カイト達はクハンの家で一夜を明かす事になった。


そして次の日...


「ふぁぁぁ、おはようございます、クハン老師」


「おぉ、どうじゃった?メルループの寝心地は?」


昨晩空き部屋に案内されたカイト達は、空き部屋の中に居た一匹のモフモフした毛が特徴の羊の精霊を寝具にしてもらい、一晩精霊の柔らかく温かい低反発の毛玉の上で寝たのだった。


「いや〜、あの寝心地を体験したら、他のベッドじゃ寝れないんじゃないかってくらい、寝心地抜群でした」


「ホッホッホ、良かったよかった、おぉ、それと朝食を用意しておいたから、冷めない内に食べるといい」


「すいません、色々と助けて頂いているのにも関わらず、ここまで用意して頂いて」


「よいよい、子供はよくて寝て、よく食べ、よく遊ぶのが仕事じゃ」


(ほんとこの世の中って力ある人でも優しい人はいるもんなんだなぁ)


忙しい時間を割いてもらい、ここまで親身になってくれるクハンに、ただただ感謝と尊敬しかできないカイト。


「ご馳走様でした!朝食とても美味しかったです!」


「よっこらせと!、、それじゃあ朝食も食べた事だし、早速始めるとするかのぉ」


「よろしくお願いします」


「ではまず」

トンッ


そう言ってクハンは座っていたソファーの横にあった杖を取り出し、床を軽く叩いた。


ブワァーン


「空間魔法ですか...」


杖で叩いた地点を中心に、白い光がカイトを包み、何もないただの白い空間へと飛ばされた。


「何が起こるか分からんからのぉ、ここなら何が起こっても大丈夫じゃ、それではここにきてから、正座で座りなさい」


クハンの目の前まで行き、正座で座り込むカイト。


ピタッ


水の魔力を指に込め、カイトの額に中指と人差し指を当て、静かに自身の魔力をカイトに注ぐ。


「フゥンッ!」

ドゥワァンッ!!


突如意識を失う感覚が全身に襲いかかり、その場でグッタリ倒れるカイト。


「....ハッ!」


意識が戻り、目を覚ますと目の前にはクハンが立っているが、カイトが目を覚ましたのをどうやら気付いていない様子だった、そして少しすると...


((おーい、聞こえてるかえ?))


((あ、はい!バッチリ聞こえてます))


目の前にいるクハンからではなく、頭の中から聞こえたクハンの声にカイトは、久しぶりの念話だと気が付き、慌てて返事する。


((よし、それじゃあ、まずは状況を説明しよう。今カイトくんがいる場所は、自身と精霊が繋がった空間じゃ、補足情報として精霊はいつも体内にいる時はその場所におるのじゃ、見えている景色も同じゃ、ただ動ける範囲が決まっていて、宿主であるカイトくん本人が動かない限り、景色は変わらん))


((へぇ〜、凄いですね〜、精霊はいつもこんな感じで俺の中から見てたんですね〜、自分の背後も見られるのか、すげぇな))


((今からカイトくんに行ってもらうのは、その場で精霊を見つける事じゃ))


((そういえば同じ空間にいるのに、いませんね))


((何せ一度その空間を自力で打ち破ろうとしたからのぉ、何処かに小さなひび割れがないか探してみてくれ))


((ひび割れか〜....んー...あ!ありました!此処ですね))


((よし、それじゃあそこの手をかざしてみてくれ、後はワシがなんとかする))


((はい))


そう言ってカイトはわずかなヒビが入った空間に手を添えた。


((ほい!))

パキィン!!


空間のひびが、ガラスの様に割れていき、ひび割れた何も変わらない空間から、倒れているアッシュを見つけたカイト。


((おい!アッシュ!!))


((落ち着きなさい、その精霊は今昏睡状態に入っておる、その精霊の額にワシがやった様に水の魔力を2本指に溜めて当ててくれ))


((分かりました))


カイトは言われた様に2本指に水の魔力を溜めて、アッシュの額に当てる。


((もう一度気を失う、そして次に目が覚めても、何を見ても決して恐れない様に心を落ち着かせるんじゃぞ?これからカイトくんを恐ろしい所に連れて行く事になるやもしれん、三賢王たるワシがついておるから臆さない様にな))


((は...))


返事をする前に意識が再び途切れる。

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