第2章 寝起きの襲撃
大陸大会に優勝したミドラとその他健闘を尽くした生徒は、グレアモル学園に着くなり、派手な凱旋パレードが学園内で行われ、密かにおこぼれにあずかるカイト。
そして凱旋パレードから4日後、現在カイトはテレポーターに関する件で、ファミルの元へと訪れていた。
コンコンッ
「すいませ〜ん」
ガチャ
「、、、、カイトか」
レイゼンがカイトを出迎え、執務室へと入るカイト。
「あらカイトくん、大会ぶりねぇ」
「どうもです〜、あっ、これガルナロートのお土産です、後でレイゼンさんと食べてください」
「そこまで気を使わなくてもいいのに、偉いわねぇ」
手土産を渡した後、早速ソファーに座り本題に入る。
「今日来た件ですが、ちょっと同級生から話を聞きまして」
「うん、何かしら」
「予定よりも早くガルナロートにテレポーターを設置するという話を聞きたのですが、本当ですか?」
「あぁ〜、その事ね、そうそう、一月前くらいかしら、ガルナロートのお偉い様達との会議で決まってね」
「差し支えなければ理由を聞いても?」
紅茶を一口飲み、じっくりと味わった後容器をテーブルに置き、やや曇りの見える表情で口を開けるファミル。
「シグニカと戦争が起きてしまうかもしれないの、私達じゃあ止められなかったわ」
「本当に起きるんですね、、」
「えぇ、休戦協定を向こうが破棄してから、シグニカは本格的に攻め入る姿勢を見せつけているの、シグニカ内の密偵の情報では来年迄には挙兵の準備が整うと、そして何より今不安なのは国境付近での小競り合いよ、ガルナロートだけでなく、同盟各国にテレポーターを設置する決めてとなった小さな事件が国境付近で起きてね、それで向こう側とこちら側に死人が出てしまったの」
「死人が?それは緊迫した状態になりますね」
「いつ戦争が始まってもおかしくないのに、こちらは向こうほど準備が出来ていないのよ、兵器開発もまだ企画段階だし、増援を同盟国から集わせたとしても、どれほどの兵力か分からない、後手に回っている間にも向こうは兵力をつけているし、正直状況はあまり良くないわ」
「んー、、じゃあなんで今準備が整い切ってないこちら側に攻めてこないんでしょうね」
「それは先程言った通り向こうがまだ挙兵できる準備が整っていないからじゃない?」
「確かにそれもあるかもしれませんが、こちらも同様で、寧ろ相手の方に利が有るんですよね、今現在の兵力差って言うのは把握しているんですか?」
「確かぁ、、えーっと、、」
「シグニカ軍7万に対して、エリュードはたったの3万、援軍を入れると今の所ガルナロート5千、エマリア1万、我らエルグランドが100だ」
カイトの質問にファミルが思い出そうとしていると、レイゼンが話に割って入った。
「合計して、やっと向こうの半分以上、、それもまだ不確かな情報で、もし仮に戦がすぐ始まったとしても、すぐに駆け付けられるかも分からない状況、テレポーターは未だ未完成、相手は魔族と組んでいる事は確定、シグニカの援軍ももしかすると出てくる可能性も捨てきれない。攻め入るとすればこれ程の好機はないのにどうして?」
可能性を含めた状況整理の早さに口を開けながらジッとカイトを見つめるファミル。
「私でもそこまで考えきれなかったのに、、賢いわねカイト君」
「あっはは、、」
(普通ならこんな状況、中坊と同じ年齢のガキが考えつくわけがないもんな、でも残念な事に俺は転生者で年齢を合算すると30代後半だ、趣味が漫画、ゲームとあって、こういった状況の漫画やゲーム作品は数々見てきた、そして脳内で今までのそういった状況を打破してきた作品を全て思い返し、たどり着いた結論は!)
「先生、前に仰っていたシグニカ王の半身なんですが、シグニカは半身の情報を握っているのですか?」
「どうかしら、王様が言うには厳重に保管しているし、見つける事は確実に不可能って自信満々だったし」
「だとすれば攻め入れない理由って多分そこにあるのだと思います」
「半身ね、、」
「場所が突き止められないので、どこを攻め入れば良いのか向こうは定まってないので、もしかしたら攻め入らない理由はそれなんじゃないですか?王都を守る障壁の復帰には早くて2年はあるから向こうには十分な猶予はありますし、、」
「、、、、それだと今王都を攻め入って、それから探せば良いのでは?」
「たしかにそれもありかもしれませんが、王都を攻め入ったとしても王様が居場所を吐くか分かりません、なのでエリュードを完全に制圧したとしても、半身が見つかるまで時間を要します。となるとシグニカ側は、自身の国と王都に主要な戦力を分散させないといけなくなります」
「そうすればシグニカにとっては逆に不利な状況」
「はい。両国を守らないと行けないとなると、同盟国的には攻めやすい形になるかと。なので今攻め入るのは向こうにとってあまり利益がありません」
「ほぉ、ファミルの持つ観察眼とは違ったなかなかの観察眼だなカイト」
「むぅ、、私の事は余計よ、ふんっ」
レイゼンの一言で女の子の様にソッポを向くファミル。
「取り敢えず纏めると、向こうは半身の情報なくては攻め入る事はしてこない筈です。なので向こうが半身を見つけるか、2年以内の障壁が完成する迄は時間の猶予はあると思います。なんだったら半身貸してもらって、それを餌にシグニカ軍を誘き寄せて、そこをファミル先生の特大極級魔法でドォーーンッ!っとやってしまえば楽な感じしますけどね」
「あら、イイ作戦を思いつくわねカイト君〜!それ今度の同盟会議で挙げてみようかしら!」
「、、、、辞めとけ、エリュード王に叱られるのが目に見えている」
「それかテレポーター使って、あちこちに半身を持っていって、鬼ごっこしたりとか」
「、、、、それは意味が分からん、突然年相応の作戦を言うな、調子が狂う」
「それも良いねぇ、後は半身をヘルトラに投げ捨てれば、更に良いと思はない?」
「あっ!それは盲点でしたね!大賛成です、誰も取りに行けませんもんね!」
「、、、、いい加減にしろお前たち、用が済んだら稽古に戻れ、お前も愛弟子の顔を見て済んだらまだこんなにも残っている書類にサインしろ」
「ぶぅー、ぶぅー!そんなんじゃ彼女出来ませんよレイゼンさん!」
「そうだそうだー!もっと言って良いわよ、上司の私が許可をするわぁ、特に彼女関連は〜!」
真面目過ぎて場を冷やかすレイゼンにカイトとファミルが抗議するも、カイトは締め出され、ファミルは軽いゲンコツをもらう。
こうしてテレポーターの件は聞き出すことが出来たので、テレポーターでモルバト都市国家まで移動し、そこからテレポートでグレアモルの寮に戻る。
シュンッ!
「ぶはぁっ!、、あー、魔力めっちゃ持っていかれるわ〜」
自室のベッドに寝転び、気がつくと眠りについていたカイト。
ドォォォンッ!!
「うぉっ!」
突如鳴り響く爆音に慌てて目が覚めるカイト。
「まさかもうこんなに早く!?」
「急いでカイトを起こして、向かうぞ!」
寮にリビングで慌てた様子のサバトとミドラの声が聞こえ、間も無くしてサバトが扉を開けた。
「カイト!!直ぐに運動着に着替えて、付いてきて!時間は刻一刻と迫っているから!」
いつもの呑気な感じとは打って変わり、緊張した面持ちでカイトの腕を引っ張るサバト。
ガチャッ
*「急げ急げ!!」
*「今年こそは記録抜かしてやる!」
*「おい!東昇降台はパンクしてる!階段で降りるぞ!」
「な、んだ?みんな焦って?何が始まるんだよ、、」
寝起きで目を擦りながら寮から出ると、全生徒が大急ぎで下の階に降りていく慌しい光景が見えた。
「カイト!学校の入り口まで我らをテレポートで連れて行け!」
「え?、、あぁ」
シュンッ!
スタッ
『ギィエエエエエ!!!』
学園の入り口までテレポートすると、上空に空を覆い尽くす程の大量の数のデカいコウモリが飛びかっていた。
「良い?一度しか言わないよ!?あの魔物はダルカナペカって言う名前で、この時期になるとダルカナペカは大量の群れを成してここの町を襲いに来るの。ギルドでは圧倒的に人数不足になるから、丁度学園が近くにあるって事で僕達が協力して町を守るって訳、そんで1番重要な事、それは胸に光っている石があるの見える!?」
「あぁ、、薄い水色の石が見えるけど、、」
「あれ、必要だから、倒したら絶対剥ぎ取るの忘れないで」
「え?」
ザシュッ!
そう言って準備運動を終えたミドラは頭上からこちら側に飛びかかってきた一体のコウモリを一撃で倒し、胸の石を力ずくで引っ張り取り出した。
「おっ!あそこに群れが!」
『乱砂刃』
今度はサバトは群れているコウモリを見つけて、砂刃を飛ばし、倒れた数匹の胸から石を取り出してポッケにしまった。
「取り敢えず、今は大群のダルカナペカを1匹でも多く倒して、石を取って!説明は以上!ミドラ君、僕は学校の周りにいる奴らを片付けるから、街は2人に任せたよ」
ザァァァァッ
砂を足元に巻き上げ、学校の裏へと飛んでいったサバト。
「あぁ、行くぞカイト!どちらが多く討伐できるか勝負だ」
「よくわかんねぇけど、競争なんだったら負けるわけにはいかねぇな、ふぁあ〜睡眠を妨げやがって」
ズィンッ!
数を倒せと言う極端な説明で、理解できていない物の、雷走で街中に走っていき、次々とダルカナペカを斬り伏せていくカイト。
シュインッ!
「ちっ、やるなら全部やりきれよ」
『紫電』
ズィンッ!
カイトの左から斬撃が通り過ぎ、目の前にいた大群が次々と倒れていき、カイトは斬撃を回避した余り達を全て薙ぎ倒す。
『ギュュュュッ』
「カイト!真上だ!」
ズパァンッ!
ミドラがカイトの頭上にいる一体が口から魔力を溜めているのに気が付き、注意するも、既に手遅れで口から放たれた音波の様な衝撃波で地面に吹き飛ばされたカイト。
「ってて、、数が多過ぎるぞ、、アッシュ出番だ大暴れしてこい」
キュイン
『っしゃー!纏めて潰してやる』
『皕輪天掌』
ズパパパパパパァン!!
闘気の掌底を無数に飛ばし、上空にいた大群の殆どを倒し、残りの逃げようとしているダルカナペカを見て、右手を眼前に伸ばすアッシュ。
『輪圡』
ドゥポンッ!
アッシュの手から直径1メートルで作られた闘気の球体が、アッシュに操られ残りのダルカナペカを次々と倒していった。
「そう言う使い方もできんのか、、俺も!」
ドゥポンッ!
アッシュの様に闘気だけではまだ無理なので、手に集めた闘気の中に風船を膨らます容量で魔力を注入し、手から分裂させ操るカイト。
「やべ、、やっぱ魔力の分離操作はめちゃくちゃ消費が激しい、、却下だこれは」
少し時間と魔力を無駄にしたものの、アッシュの殲滅力がそれを補い、他の生徒がやってくるまでに、粗方倒してしまった2人。
*「くそっ!ここはミドラ達にやられてる、向こうに行くぞ!」
*「でもあそこはさっき3年が縄張りにしてたから、、」
*「そんな事気にしてたら貰える物も貰えねぇぞ!」
「ふぅ、此方は粗方片付いたな、、それより」
『オラァ!!どうした!?反撃してみやがれよ魔物共!?』
グシャッ! ベシャッ!ドォンッ! パァン!
「あれ程強い精霊を従えていたとは初耳だぞ?」
「ん?あぁ、アレはちょっとした爆弾だ、大会とかでは、出したとしてもセーブして戦ってもらってる、じゃないと俺の実力を試す前に試合が終わっちまうしな」
「それ程に強いのか?」
「まぁ俺達よりはな、試させた事は無いけど、、」
「いつしか手合わせ願いたい物だな」
好奇な目で暴れ回るアッシュを観察するミドラ。
「はっ、やるなら今のうちだぜ」
(アイツが誰の手にもつけられない程強くなる前に)
「そうだな」
(帰る前に一度申し込んでみるか)
それから次々とカイト達に遅れて到着してきた生徒達によって、別のエリアの魔物は1匹残らず掃討された。
「こんなものか、、他の生徒が来てからペースが落ちた物のかなり討伐出来たんじゃないか?」
「間違いなく前年よりかは戦果が上がっている、付いてこい、サバトと合流するぞ」
「あぁ」
学校に戻るとサバトが2人を待っていて、合流した後、一旦寮へと戻る。
「それでは互いの戦果報告だ」
「それじゃあまずは僕からね!よっ!」
ジャララララ
「56、、57、、58!」
机の上にばら撒かれた石を1つ1つ丁寧に数えたサバト。
「じゃあ次は俺とアッシュだな、ほいっ!」
ザァァァァッ!
「やっばぁあああ!どんだけ狩ったのさカイト?」
「おぉ〜」
「半分以上は精霊だけどな」
机の上にばら撒かれた、ざっと目視でサバトの3倍はある石を見てサバトが驚き、ミドラは感嘆の声を上げる。
「63、、64だな」
「凄いねぇ〜164体って、個人では結構な記録なんじゃないの?」
「うむ、ロイドさんの歴代最多である221が不動の1位で、昔の卒業生の179が2位、そして164体は3位だ」
「いぇーい、つってもただの討伐記録で結局何が目的だったんだ?」
「目的はね、、町の護衛とお金と権利さ!」
「、、は?」
「この石を学園の教員室に持っていくと、討伐報酬としてお金がたんまり貰えて、学園の掲示板に順位が発表されるの、それと討伐数によって町内会から追加報酬が貰えるの」
「なんだよ、結局金絡みだったのかよ〜」
聞いて呆れるカイトに卑しい笑みを浮かべて耳打ちするサバト。
「討伐数によっては、学園内の給食に色が付くし、費用がタダになるかもよ」
「むっ!?それは嬉しいぞ、つっても俺ももうすぐで帰るんだけどなぁ、、あっ!サバトお前まさかその為に俺を利用しやがったな!」
「へへ〜、バレちゃったか〜」
「次は我の番だな」
それからミドラも石を取り出し、数えると91個で単独では1番多かった。
「それじゃあ換金しに行こうか!」
そう言ってカイト達は10階にある教員室へと向かい、換金の受け付けをしに行く。
「じゃあ次はカイトだね」
「んっ」
ザァァァァ
学生証を提示した後、袋に入れた石をボウルに流し込む。
*「うぉおおおお!」
*「おい見てみろあれ!かなりの数だぞ」
カイトの出した石の数を見て、換金にやってきた生徒の視線がカイトに集まる。
「わお〜!ロイド君以来の単独討伐数だよこれは〜」
係員が驚いた様子でカイトの石を回収し、計算し始める。
「164体ね!はいこれ報酬と、150体以上の討伐の追加報酬として町内会から発行して頂いたゴールドカード!期限は卒業までと、たしか君は留学生の身だからもし譲渡したい際は、ここに来れば手続きできるから」
「おぉ〜!ゴールドカード!」
「我も初めて見るな」
「金ピカのカードだぁ、何が出来るんだ?」
「ごほんっ、僕が説明しよう、ゴールドカードとは町内会が発行する、町に多大なる貢献、もしくは町を危機から救ってくれた者にのみ発行される特別なカードで、その特典は一流レストランの食事が半額、大衆食堂なら90%オフ、学内の給食は全品無料、そして町内の雑貨店、娯楽施設、洋服店、美容室、その他店舗で半額プラス特典がある、そしてガルナロート国内の獣車は乗り放題で、言わばVIP待遇が受けられるカードだ!」
「おぉ〜!!すげぇもん貰ったなぁ〜!!」
「本当だったら無期限のカードなんだけど、ハードルを下げる代わりに期限付きという条件で学園の生徒にもそう言ったチャンスを与え、モチベーションを上げる為に学園長が町内会にに取り合ってくれたのさ、いやぁ〜ありがたやぁ〜」
カイトの手に持っているカードに跪き、両手を合わせて縦に手を擦りながらありがたがるサバト。
「て事は〜」
「ぬぉっほっほ!早速お使いになるのですかい旦那?」
カイトとサバトが同時に見つめ合い、卑しい笑みを浮かべる。
「爆買いじゃああああ!!」
「イィヨォッ!!流石カイトの旦那!!」
そう叫ぶなりカイトとサバトはミドラが換金している間に、音速で学園内から飛び出し町へと消えていった。
そして数時間後...
ガチャッ
ドサンッ!!!
「ぶあぁぁあ!無茶苦茶買ったぁ〜」
「もぅ、、腕のスタミナヘトヘトだよ」
大量の買い物袋を両手だけでなく闘気の腕や、腰、首に巻き付けた状態で寮内に入るなり倒れ込むカイトとサバト。
「お前達、どれほど買い物をして来たんだ、、」
「町の半分でいい店は全部、、サバト、余は喉が渇いたぞ」
「ハハッ!少々お待ちよ旦那!」
カイトの一言でテキパキ動き、飲水をカイトの目の前まで持っていくサバトは、最早誰から見てもただの従者にしか見えなかった。
それから数日間は事あるごとにゴールドカードをサバトにチラつかせ、操っていたカイトだった。




