第2章 気ままな時間
「ん〜すごく美味しい〜!」
初めて見る青色のノノと言う果物を絞られた果汁100%のジュースに舌を唸らせるシエル。
「買ってきたわよ〜!」
三すくみで負けて買い出しに行ってきたルフト、ラゼッタ、スカーレットが手提げの紙袋を手に帰ってくる。
「うーっわ、スカーレットお前それ1人で全部食べ切るつもりか?」
「、、誰にも分けてあげないわよ?」
驚いたのはスカーレットの持っていた紙袋の量だった。まるで金持ちがデパートで大量に買い物をした時の様な感じで、乗せられる所に全部紙袋を乗せたスカーレットがみんなの座っている縦長テーブルの上に広げたざっと見た感じ10人前くらいの食事に驚くカイト。それを両腕で取られない様にガードし、カイトを睨みつけるスカーレット。
「ふぅ、、あ、シエル何飲んでるの?あたしにもちょうだーい!」
「はいどうぞ」
買い出しで疲れたのかシエルの飲んでいるジュースを見て、一口頂くラゼッタだが、予想以上に大きい一口に透明の容器の中に見える透明感のある青色の液体が10分の1迄に減ってしまい、容器を返され涙目になるシエル。
(恐るべし竜の肺活量、、)
「ほらシエル、俺のまだ一口しか飲んでいないからあげるよ」
そう言って側から見ていたカイトが涙目のシエルを見て、自分のジュースをシエルに渡した。
「えっ!、、でも一口飲んだって事は、、あの、、その、、それが、あれで」
とモジモジしている間、カイトが自身のストローを隣に置いてあったセニカの容器に刺し、セニカと同じ容器で同時に飲む所を見て、悲しい笑みを浮かべながら俯く。
すると突然
「もぐっ!、、美味しい!」
口の中に突如放り込まれたお肉を噛み、絡まったソースとお肉の旨味が一気に口の中を駆け巡った。
横を見るとルフトが悪戯顔でシエルにお肉を見せながら笑う。
「アッハハ!シエルの今の顔よ!」
「ていうか、、何であんたがいんのよ」
楽しい雰囲気の中、突如カイトとセニカの横に座るサバトではなくその隣でサバトのジュースを飲もうとするも頬が凹むほど手で押さえつけられるミドラに嫌気が差すラゼッタ。
「んむぅ、、一口くらいいいだろっ、、」
「いいじゃんラゼッタ、多い方が楽しいよ」
「むぅ、セニカまであいつの味方ー、、」
「何だったら俺達が消えてやろうか?ミドラとの賭けに負けたんだしな」
「おい待てカイト、我はまだデート権を使うとは言っていないぞ」
ラゼッタとカイトの会話にジュースを奪い取ったミドラが割って入る。
「んじゃあいつ使うんだよ、お前達の住んでる場所って国2つくらい跨いだ距離だろ?」
「ゴク、、ぷはぁ、これだから見聞がない奴は、確かにラゼッタとの距離は遠い物の、近頃噂になっているテレポーターという物がガルナロートに設置されるという話でな」
「テレポーターがガルナロートに?誰に聞いたんだその話?」
「この間聖剣オルフォルトを取りに実家に帰った時にな、父上と国の上層部が話しておるのを盗み聞きしてな」
着替えを取りに実家に帰る様な軽い会話の中に出てくる聖剣に違和感を感じるも、留学に行く前に、ファミルとの会話でまだテレポーターは他国に配置しないと聞いていたカイトは何かあると思い、一度グレアモルへ帰る前に、エルグランドに寄って行こうと決める。
「そうか、、それでラゼッタとはこれからいつでも会えるから、使いたい時に使うと」
「そうだ!」
「はぁー、いっときの感情とはいえ、何であんな安い挑発に乗ったんだろぉ〜」
自身の発言を後悔するも、撤回はプライドが許さず、でもなんとか撤回したいと脳内で鼬ごっこをするも、すぐにストレスは爆発し、暴飲暴食をし始めるラゼッタ。
「、、んぐっ!」
「どうしたラゼッタ!詰まったか!?おのれぇ肉の骨め!死しても尚人の喉につっかえ苦しめるとは!」
『波動掌』
パァンッ
「ちょっ!ミドラ!やりすぎだぞ!」
「ぷはぁっ!、、ごほっごほっ!、、んあー!死ぬかと思ったー」
唐突に喉を掴み苦しみ出したラゼッタをいち早くミドラが気が付き、波動掌で背中を力強く叩きくも、女子に対して乱暴過ぎる行いに慌てるカイト。
「姿を表したなこの骨め!こうしてくれてやる!」
波動掌でラゼッタの口から吐き出された骨を拾い、近くにあったゴミ箱に投げ捨てるミドラ。
「ありがとミドラ、、初めてあんたをカッコいいと思ったわぁ、、」
まさかのお礼にカイトの頭にハテナが浮かび上がり、一方ラゼッタの事ならなんでもストレートに受け止めるミドラは大いに喜んだ。
「我をカッコいいと言ったか?、、聞いたかカイト?、ハハッ!ラゼッタに褒められたぞぉおお!!」
喜びのあまり叫びながら場内を走り回るミドラの姿を見て、大会中の真剣な時とのギャップに笑う一同。
それから色々な新メニューを食べ、観光して回ったカイト達は、日が暮れるとそのまま大陸大会の主催者であるバミエルが主催する他校との親睦を深めるパーティーの会場へと向かった。
ガチャンッ!
ギィィィィッ
バタン!!
招待された、上から見ると『回』の字になっている作りの屋敷の入り口に入り広間へと案内され、名前と出身校を名簿録に記入すると、今度は広間の奥にある、両開きになっている大きな扉が開かれ、淡い光がカイト達を照らした。
「うぉ〜、これは斬新だなぁ〜」
扉を抜けた先にはそのまま内庭へと繋がっており、丁寧に手入れをされた芝生の上で沢山の生徒達が既に交流していた。
「わお〜!一応屋内なのかな?天井はガラス張りだし」
「さぁ、俺もよく分かんないけど、おしゃれだなぁ〜」
イルミネーションの様な灯りに目を奪われながら、中に入っていくと早速主催者であるバミエルが出迎えた。
「ようこそお客人、どうですか私自慢の内庭は?おや?これはチャンピオンのミドラ選手と、四貴族のラゼッタ選手ではございませんか!それにシエル選手も!」
そう出迎えた直後、すぐさまミドラ達を見つけたバミエルはカイト達を無視して、握手を求めた。
(失礼な奴だな、、)
握手をしに差し伸べた手を引っ込もうとすると、その手を駆け寄って握ってきた人物がいた。
「やぁやぁ!これはカイト様!」
そう言って低い腰と100点満点の営業をスマイルを見せたのは、バハラ行商団金員ソクラスであった。
「カイト知り合い?」
「ややっ!お隣の美少女はまさか!?カイト様もお目が高いですなぁ」
「あっはは、、えーっと、この人はバハラ行商団金員のソクラスさんで、ほら俺達が星の宿で出会した時の次の日に、行商団の話があっただろ?その時にお得意になって、今では愛剣の制作をお願いして貰ってるんだ、セニカに誕プレで渡したあの剣はソクラスさんから買い取った物なんだよ」
「へぇ〜、結構繋がりの深い人なんだね〜」
「ささっ!彼方に御座います一流シェフが手がけたフルーツをお味見していって下さい!」
バミエルの無礼で気を悪くしない様にソクラスが意識を誘導させる。
「お気を悪くしないで下さいカイト様、あの方だけで無く私達商売人は人を勘定する癖が御座いますので、、」
「優しいんですねソクラスさんって、私商人ってみんなお金に汚い人かと思ってました」
「実際にソクラスさんも汚いと思うぞ?ただ俺がお得意様だからこうやって優しくしてくれてるのかも知れないしな」
「ちょっ、カイト様ぁ、流石にそれにはこのソクラスも傷付きますぅ、、カイト様には多大なる恩を感じ、今では僭越ながら身内の様な身近さを感じておりますのに、、」
わかりやすい態度でしょぼくれるソクラスに、笑うカイトとセニカ。
「冗談ですよ、正直あの人にどう思われるなんて気にしません」
「そうでしたら、安心しました」
「だって僕に宣言してましたよね?将来白金員になるって、だからあの人にどう思われるより、ソクラスさんの将来性に賭けてるので、絶対になって下さいよ?」
「うぅっ!このソクラス、そこまで期待されていたとは!!」
その場に両膝をついて号泣し始めるソクラス。
「何してんだいくぞセニカ?」
「え、、あ、うん」
置いていっていいものかと悩んでいたセニカに声をかけ、その場を後にしたカイト達。
「それも美味そうだな、腹は一杯のはずなのに、別腹が欲してるぜ」
「どれにしようかなぁ〜、、あっ!このお菓子綺麗〜!」
そう言ってセニカは薔薇の形をしたホワイトチョコレートの様なお菓子を手に取り、口の中に含んだ。
「ん〜、美味しい〜」
「ハハッ、そんなに美味しいか?」
*「やぁカイト」
幸せそうな表情を浮かべるセニカを見て、笑うカイトの背後から突如声を掛けられ後ろを振り向くと。
「ネ、フェト?」
「何をそんなに警戒しているんだい?」
ネフェトと分かるなり、何故か構えてしまうカイト。
「セニカー!サティア紹介してあげるー!こっちおいでー!」
「待って!今行くー」
一方セニカはラゼッタに呼ばれてそっちの方へ行ってしまい、1対1となった。
「急に声を掛けて来たから驚いただけだよ」
「そうか、てっきり嫌われているのかと思ったよ」
嫌ってはいないが形容し難い似たような感情は抱いているカイトに、ネフェトが質問をした。
「今回の大会には出てなかったけど何かあったのかい?」
「あぁ、今は留学でグレアモル学園に身を置いてるから参加できねぇんだ」
「成る程ね、だからミドラはあんなに強くなっていたのか」
「まぁ俺が直接的な要因になってるという自負はある」
「あっはは、謙遜はしないんだね!」
喋っている感じ、人を遠ざける様な試合で見せる凍てついた雰囲気はなく、物腰柔らかい普通の青年に違和感を感じるカイト。
「あぁーあ、君がもしネロゴートに留学してくれていたら、優勝していたのは僕の方だったかもなのに」
「嫌だし絶対、、それよりお前って二重人格なのか?試合の時の雰囲気と全然違うからなんだか別人と話している見たいだけど」
「よく言われるよ、教えてあげるのにはまだ君と僕の仲はそこまで深くないしな」
「そうか」
「アドラス家の呪いさ」
「いや、言うのかよ」
ネフェトのボケに心の中でズッコケるカイトを他所に、話を続ける。
「って言うのも冗談で、実は僕の祖父がとても有名な『星斬り』の異名を持つ英雄でね」
「あの実況の人が言ってた凶星を斬ったっていう人ね、あれ本当だったんだな」
「そうそう、それでその時に斬った言ってしまえば隕石なんだけど、それを真っ二つに斬った祖父が手作業で修復して、記念として家に保管してたんだけど、僕がまだ7歳の頃かな?祖父に抱いてもらいながら、大事に保管してあった石に触れさせて貰ったんだよ、そしたら、、」
「そしたら?」
構えて喋っていたカイトも既に前のめりに話を聞いていた。
「突然隕石が光だして、僕だけを吹き飛ばしたんだって、それで終わったんだけど、それから剣を握って修行をする度に、何故か気持ちが昂って人が変わる様になったんだよ」
「はぇ〜、それは不思議な事があったもんだなぁ」
「でしょ?だから剣を握る度にあんな風になるから、みんな僕に対して近寄り難い雰囲気を感じて、友達がいないんだよ」
「苦労してんだなお前も、、」
「まぁ、唯一の友達は僕を慕ってくれるレクトとライバルのミドラだけさ、それで今めでたい事に君とも友達になれたしね」
「なったって、、そんな簡単にはい今から友達って言ってなるもんじゃねぇぞ?」
「そうなの?秘密を共有すればそれって友達じゃないの?」
キョトンとしたネフェトに、カイトは今まで感じていた違和感の正体を突き止めた。
(成る程、、こいつは友達関係限定のコミュ障だな、友達が居なさすぎて、友達とは何かを知らないあまり、どうやって友達を作るのか分からない、だからあんな安易と家の機密を教えたのか)
「あのなぁ、お前のそれはただ一方的に相手に欲しいものを与えただけなんだよ、ギブだけしている関係は友達じゃねぇ、ただの都合のいい奴だ、友達関係を築くならギブアンドテイクが大事だ!」
「じゃあ何か頂戴」
「あ、じゃあさっき取ったこのケーキを、バカ!そうじゃねぇって、頂戴っていって貰うもんじゃないんだよ」
「よく分かんないなー」
「はぁ、、もう噛み砕いて説明すると、決して何かをしてあげたから友達だとか、して貰ったから友達じゃない、気が付いたらなってんのが友達だ」
「ほぉー!メモをしておいた方がいいな、あ、メモ忘れたんだ」
「あー、、なんか疲れるわお前と喋ってたら」
それからもネフェトにしつこく付き纏われたカイトはヘトヘトになりながらミドラの所へと向かい、ミドラにネフェトを任せた後、デザートを取りに行った。
「ネフェトって人と仲良くなったんだね」
「何言ってんだよセニカ、ストーカーされてただけだよ」
「ふふっ、なんだかカイトって苦手って思ってる人と程仲良くなれるよね」
真っ先にアルベルトを思い浮かべ、ジュランやネフェトの顔も浮かび上がる。
「はぁ、、今日は試合出てないけどスッゲェ疲れた気分だわ、こういう時に糖分を取るんだぜセニカ!」
そう言ってガラス瓶に詰められた七色に光るビーンズを口に放り込むカイト。
「あっ!それ私も気になってたー!、、えっと、どれにしょうかぁ」
トンッ!
お菓子に向かって伸ばしたセニカの手に、カイトではない誰かの手が当たる。
「あっ、ごめんなさい」
*「これが運命、、」
パシッ
そう言ってセニカの手をそのまま両手で包み込み、柔らかな青い目でセニカを見つめるその人物は、今大会1年の部優勝者であるエリウスであった。
「おい、人の彼女の手を何握って運命感じてんだ?」
グッ!
一連の流れを見ていたカイトがエリウスとセニカの間に割って入り、睨みつけながら手を引き剥がそうとするも、ビクとも動かない。
身体強化を使い、引き剥がそうとした途端。
「なんだお前?邪魔だ」
ドォンッ!
「カイト!、、ちょっと、離して!」
カイトの顔に突如衝撃が走り、吹き飛ばされた。
ズィンッ!!
パァンッ!
カイトが吹き飛ばされるのを見て、セニカが手を引き剥がそうとするも、びくともしないので、魔法剣を生成しようと魔力を込めた瞬間、一閃の雷が目の前に現れ、次の瞬間にはエリオスが吹き飛ばされ壁にめり込んだ。
「おいそこ!何をしている!?」
バミエルが異変に気が付き、カイト達を制しようとするも、頭に血が昇るカイトにその声は届いていない。
『刀旋脚』
雷走で再び壁にめり込むエリウスに近づき。回し蹴りを放つ。
ズガガガガァッ!!
壁を抉りながら横に吹き飛ぶエリウス。そして向こうも火がついたのか、両手に光を放ちながら雷走より速いスピードで、カイトの背後に回った。
「舐めんなっ!」
『光破拳』
ドォンッ!
光り輝く拳がカイトの背中を捉え、衝撃波が起こりガラスが全て割れるも、分厚い闘気でコーティングしたカイトの背中には子供に背中を殴られた程度の衝撃しか感じない。
ガシッ!
「くっ、、」
カイトを守る分厚い闘気が形を変え、一本の腕に変形した後エリウスの腕を掴み、振り返るカイト。
『天烈脚』
垂直に上げられた足を、掴まれて動けないエリウスの顔に振り下ろし、そのまま空間から剣を取り出し、膨大な魔力と闘気を剣に纏う。
『千切り星』
剣を振り下ろそうとした瞬間、ルフトの槍とミドラの剣がカイトの剣を受け止め、弾き返した。
がすぐさま体勢を立て直し、再び斬りかかろうとした所をルフトとミドラに続き、サバトとラゼッタがカイトを止めに入った。
「おい落ち着けカイト!!もう相手は気絶してるぞ!」
「どけよルフト、そいつが喧嘩ふっかけてきたんだ、大会じゃあるまいし、再起不能まで叩き潰してやる」
「バカイト!早く辞めなさい!」
バシンッ!
ラゼッタが渾身の力でカイトの頬を引っ張る。
「痛っ」
「カイトもうやめて、私は大丈夫だから、ね?」
すぐにセニカが駆け寄り、カイトの目の前まで近づいて説得し、怒りをなんとか抑え込むカイト。
「折角の親睦を深めるパーティーを汚す不届き者め!」
「先に手を出してきたのは向こうだよ」
バミエルがカイトに向かって怒鳴りつけるも、カイトを庇う様にセニカが前に出て事情を説明する。
「バミエル殿、事情もなくカイトが人にここまで手を出す事はない、事情を説明させてくれないか?」
ミドラも前に出てバミエルに怒りを収めるよう説得する。
「その者!何か異論はあるか?」
「そいつが先に喧嘩ふっかけて来たから、返り討ちにしただけだ」
「だとしてもやりすぎだとは思わないか?家の壁やガラスなど、壊す必要まであったのか?」
「そんなん知らねーよ」
「カイトっ」
カイトの後ろに立っていたラゼッタが腰を軽く小突く。
「すいません」
「バミエル様、ここは1つ私の顔を立ててくれませぬか?」
今度はソクラスが話に割って入り、バミエルが眉を顰める。
「貴様が?此奴と何の関係があるのだ?」
「カイト様には多大なる御恩がある身、弁償などは私が請負いますので、どうかお怒りを」
そう言って腰を綺麗に90度曲げ、カイトに代わってソクラスが謝罪し、その場でカイトは屋敷を追い出された。
「はぁ、、俺は悪くねーだろうよ」
「いいやどっちもどっちだよ」
「本当に、ひんやりさせられたわ」
「全く、大馬鹿者だ」
ルフト、スカーレット、ミドラに否定され、更にシュンとするカイト。
「でも私はカッコよかったですよ!セニカさんを守ろうとした様に見えて」
シエルがしょぼくれるカイトに微笑みかける。
「シエルはカイトに甘々なのよ、全くあたしのビンタが無かったら今頃どうなってたか」
「ありがとうなラゼッタ、あのビンタのおかげで少し目が覚めて、セニカの話が頭に入った」
「ふんっ、感謝しなさいよね」
「次また頭に血が昇ったら頼むわ」
「嫌よ、めんどくさい!」
「ていうか折角の親睦会なのに、みんなまで巻き込んで悪かったな」
「俺も止めに入ってた方が良かったか?」
謝るカイトの後ろからネフェトがひょこっと顔を出した。
「うぅっ!いつの間にお前もついて来てたんだよ」
白い肌に生気のない様な漆黒の目もあって幽霊だと勘違いしたカイトがビックリする。
「私はああいう無益な喧嘩には入らない平和主義だから」
今度はラゼッタの背後からサティアがひょこっと現れる。
「勝手にしてくれ、ってか元々人数が多いのになんか更に人が増えてるな」
カイト、セニカ、ルフト、ラゼッタのいつメンに続きスカーレット、シエル、そして他校であるミドラ、サバト、ネフェト、サティアと自分を取り囲むと言ったら天狗の様に感じるが、一緒に行動する人数が増えた事に違和感というより、前世では常に感じていた孤独感を感じなくなり、心が満たされるそんな安心感、満足感とも呼べる物を感じるカイト。
間違いを犯しそうになれば、叱って止めてくれる者がいて、楽しければ一緒に笑ってくれる者がいる。こんな風に若くて何も感じなくて楽しくやってるだけでいい気ままな時を2回目の人生だからこそ分かるその貴重な時間を深く、身に染みらせる。
「なぁ、みんな卒業後したらさ、俺がギルド作ってさ、全員入らねぇ?」
「面白そうだな〜、四貴族のみんなもいるしさ、絶対に黎明の劔越えれるよなぁ」
カイトの提案に真っ先に乗っかたのがルフトだった。
「面白そうね〜、みんなと毎日こうやって騒いでたら楽しいだろうね」
「私も同感です!皆さんと一緒にいる時が最近1番落ち着きます」
「そうね、セニカが入るなら私も入ろうかしら」
セニカ、シエル、スカーレットも続いて賛同するも。
「四貴族同士で手を組んだらそれこそ色んな所に目を付けられるでしょ、私は魔道の研究に没頭したいし」
「でもそれってギルドに入りながらでもできるでしょ?」
「んーー、、それもそうね、でも集中とかできないだろうねー、それよりあんたは大丈夫なの?竜狩りが竜も狩らずに、そこいらの魔物ばっか狩ってたらそれこそ竜狩りじゃなくて、ただの魔物狩りになっちゃうわよね〜」
「アッハハ!!それはそれで面白いわね!まぁ家業に関しては別に引き継ぐ事もできるし、ギルドに入った所で別に変わらないわよ」
サティアのジョークに腹を抱えて笑うラゼッタと一同。
「僕は自分の体の解明が出来れば、なんだっていいかな、父さんにも厳しく言われてないし、何かあれば妹に家業を就かせれば」
「妹に家業を就かせるなど聞いた事がない、嫡男に身を落とした者であれば、その責任を負うべし、我は家業をに就くのでパスだ」
「「「えぇーーー!!」」」
折角全員の承諾を得られる寸前でミドラの真面目が場を白けさせた。
「なんでさミドラ君!俺も興味持ったし入ろうよぉ〜」
「断固拒否する!」
サバトがミドラを説得しようとするも両腕を組み断る姿勢を維持するミドラ。
「ラゼッタ〜!説得しろよ〜」
「嫌」
カイトが冗談混じりにラゼッタを指名するも、速攻で拒否するラゼッタ。
しょうがなしに、カイトがミドラに耳打ちをする。
「ギルドにいたら毎日ラゼッタに会えるんだぞ?それでも家業優先なのか?」
毎日会えると聞いて、一瞬ミドラが硬直するも首を縦に振る。
「ふーん、だったら教えてやるけど、もし仮にお前が家業に就けば、ラゼッタは家業とギルドの仕事を兼任しなければいけなくなる。そうなるとただでさえお前も忙しいのに、更に忙しいラゼッタとは年に1、2回かもしくは会えない年だって出てくる。それだけならまだいい、ただラゼッタも1人の女性だ、色んな男性からアプローチを掛けられて、確かにラゼッタの好きなタイプは自分より強い男性だから、滅多に出会わないだろう、しかし万が一、億が一、そんな人物と出くわす事になれば、お前達の会う頻度は更に少なくなり、気がつけば向こうはお前が知らない間に結婚して、子供もできている。それに一月前の恋愛講座でも教えた『女性は母性本能をくすぐられると弱い』で貧弱だが母性本能をくすぐる年下が現れれば、お前より実力は劣っているのに、ラゼッタと添い遂げそしてムフフなアレがコレで!」
「んのぉおおおお!!!許さんぞそれだけはぁ!我もそのギルドに入る!!どこにあるそのギルドはぁあ!!今すぐ我を入れよ!!」
「ちょっ!落ち着いてよミドラ君!」
「にっひひ!懐柔成功〜」
それから色んな話をしながらそれぞれのホテルへの分かれ道に着く。
「それじゃあ私はここでお別れね」
「俺達もここでお別れだ」
「なんかちょっと寂しいね、1年に1回だけしか会えないって」
「卒業したらギルド作るんだし、そん時までの辛抱だろ」
「ふふっ、冗談のつもりと思ってたんだけどね」
「そんな事より、今度は俺達ウルミストが優勝するからな」
「あっ、だったら僕も今度は負けないよ!」
「ふんっ、いつでもこい、その都度正面からねじ伏せてやる」
カイトの言葉にネフェトとミドラが受けてたち、サティアは我関せずといった態度であったが、静かに闘志を燃やしているのを、ラゼッタは感じ取っていた。
こうしてそれぞれのホテルへと帰っていった一同。
「あれ?そういえばカイトあんたグレアモルのホテルじゃないの」
「あっ、ほんとだ忘れてた」
カッコつけて別れたものの、自分がまだ留学中の身という事を忘れてしまっていたカイト。
「じゃあな!また当分会えなくなるけど、元気でなみんな!」
「うん、じゃあね!」
「じゃあな〜」
「おつかれ〜」
シエルとスカーレットは何も言わず笑顔でカイトに手を振る。
そして帰り道の途中でミドラ達に追いつく。
「おぉ!そういえばまだこちら側だったな」
「あぁそういえば」




