第2章 洗礼
「それでは全員揃ったな、授業を始める前に、皆に1つ報告がある。入れ」
ガチャ
「失礼しまーす」
ユシカの合図と共にカイトが教室の中へと入ると、途端にクラス内がざわざわし始める。
「あれってウルミストの、、」
「確か決勝でアドラス家の奴に奮戦した」
「名前なんだっけ、、」
「どうも!エリュード王国のウルミスト学園から来ました、カイトです!半年間の間ですけどよろしくお願いします!大陸大会では、対戦相手校ですが、何かを盗んで、利益を得る様な事は考えていませんので、ご安心ください!」
前世では転校などした事がないカイトには、慣れない事ではあるが、顔馴染みもいる為、何とか元気よく丁寧に挨拶をするカイト。
「という訳で今日から半年間我が学園で皆と共に勉学を共にするカイト君だ、仲良くする様にな」
「「「は〜い」」」
それからカイトは用意されていた席に座り、授業が始まった。
ーー3時間後
「うぅ〜、、やっぱ座ってるだけの授業ってきつー」
授業が終わり、机にぐったりと上半身を預ける。
「カイト、昼食に行くぞ、今日は前回の訓練でサバトが我に負けたから奢る約束だ、お前におこぼれをくれてやろう」
「え?なんでカイトが、、」
「よしゃ!言い方は癪だが、タダ飯食えるなら関係ねぇ!行くぞミドラァ!」
「ぬっ!我の前を走るとは、、生意気な!」
「僕の意見は、、、」
ポツリと1人教室に残されるサバト。
サバトの奢りで昼食を食べ終え、急いで訓練所へ向かうカイト達。
「早くしろサバト!うぷっ!」
「誰が早く訓練所につけるか勝負だ!」
「ちょっ、、お腹一杯だから走れ、ちょっとカイト!近づくなって!」
先頭を走るミドラに続き、カイトとサバトが後を追うも、満腹の状態でいきなり走り出した為、胃が逆流し気持ち悪くなったカイトが、ヨレヨレとサバトに近づいていく。
『コンディションヒール』
喉まで迫ってきた昼食をなんとか戻し、回復する。
「あぶなかったー、、」
「すまねーサバト、危うくぶっかけるとこだった」
「でもどうするよ、ミドラがもう階段から行っちゃったよ」
『テレポート』
サバトの手を取り、一瞬で訓練所の階層まで飛んだカイト。
「ちょっ、訓練所以外のとこで魔法使ったらダメだって!」
「校則なんて破る為にあるもんだよ、バレなきゃ平気だ、それともなんだ?もう一回俺達の昼食奢るか?」
「あんなに高い食費初めて見たしもう無理だよ!次奢ったら今節は確実に餓死するって、、」
ダダダダッ
「ほら、言ってるうちに来たぞ!訓練所まで行くぞ!」
そう言って走り出し、無事ミドラより先に訓練所の前に着いたカイトとサバト。
そして少し遅れてミドラが額に汗を浮かべながら到着した。
「なっ!貴様らどうやって我の先を!?」
「へっ!まだまだだなミドラ、この学園にはお前の知らない秘密のルートがあるんだよ」
「秘密のルートだと?、、1年在籍していたが、まさかまだ我の知らないルートがあったとはな、よし!明日の昼食は我の奢りだ!」
「よしっ!アホで助かったぜ」
「2人とも、早く中に入らないとまじで遅れるよ」
訓練所に入ると、カイト達以外の生徒は全員が準備運動を行なっていた。
「全員揃ったな、5分のアップが終わり次第ミドラ、皆を集めろ」
「わかった」
「なんで先生にタメ口なんだよ、、」
「うむ?別に普通だろう?」
キョトンとしているミドラにカイトが突っ込もうとした所をサバトが間に入る。
「ユシカ先生はミドラ君が小さい時から屋敷でお世話になってる剣術の顧問なんだ、ミドラ君がグレアモルに入学と同時に、自分以外の人間にミドラを正しく導ける者はいないって理由で、学園に来たんだ」
「理由がすげぇ無茶苦茶、、」
「屋敷では一応我の雇われだからな、身分は我の方が上なのだ!!!」
「いきなり大声出すんじゃねーよ、、この距離で普通に聞こえるっての」
それから5分のアップが終わり、ミドラが号令をかけ、ユシカの前に整列する。
「それでは本日のメニューを発表する...」
訓練の前半は身体トレーニングを1時間やり、15分の休憩を入れた後、剣術の打ち合いに移る。
「カイト!まずはお前の実力を把握しておきたい、私が対戦相手を決めるか、自分で決めるか好きに選べ」
「へへっ!勿論自分で選びます!」
「誰を指名する?」
ユシカが喋り終えた直後に、ミドラの方を指さすカイト。
「ミドラで!」
「本当にいいのか?ミドラはこのクラスで1番腕の立つ人物だが」
「ユシカよ、この者を侮るな、此奴は我を負かしたネフェトと互角とはいかぬものの、渡り合った者、それが1年くらい前の話だから十分に剣の腕は上げている筈だ」
「失礼した、それでは私が審判を、他の者は各自パートナーを決めておけ」
ガラス張りの窓の前にシャッターが現れ、訓練所の室内が点灯する。
「なんやかんや戦うのは初めてだなミドラ、全力で行っていいのかこれは?」
「無論だ、我に手加減などすれば、その首をゴブリンの餌にしてやる」
「いや、俺らってもう友達みたいな関係だよな、友達になんてこと言うんだよお前、、」
「ふっ、、」
ミドラとカイトが同時に剣を構え、腰を落とす。
「始め!!」
ユシカの合図で、同時にその場から消える2人。
ガキィン!!
空中で剣が交わり、火花が互いの頬を掠める。
『天歩』
空を蹴り、空中でミドラの背後に移動し斬りかかる。
『鬼哭』
目の前からミドラが消え、頭上から剣をカイト目掛けて、振り下ろす。
ギィィィインッ!!
ドォン!
咄嗟の判断で剣を振り上げぶつけるも、体勢に不利があり、そのまま体ごと地面に吹き飛ばされる。
ブルゥンッ!
ザーッ
「あぶね〜」
「ふんっ!」
『斬破』
『闘斬破』
ドォォン!!
『鬼哭』
ダァン
地を這う斬撃同士がぶつかり合い起きた爆風で、目が霞むもしっかりとミドラが消えたのを捉え、即座に緊急回避で避ける。
『残雪』
『烈刀』
ミドラは間髪入れずに、一瞬で距離を詰めながら素早い一太刀を入れようとしたが、今度はミドラがカイトの左手に握られた闘気の刀に嫌な気配を感じ、避ける。
「なっ!」
「うぉっ!ミドラ君が正面からの打ち合いを避けた!」
初めて取るミドラの選択肢に、驚くクラスメイト。
「今の攻撃はなかなかに肝を冷やしたぞ、、」
『無頼剣・乱閃』
ブワァン
キィンキィンキィン
『雷貫』
力技ではあるが、攻撃体勢のまま闘気を全身に巡らせ防御し、攻撃と防御を同時に行う。
『漂水』
ズルンッ!
ガッ
一気に距離を詰め、刺突を行うも、ミドラは一歩後ろへステップバックし、体勢を即座に整え後方へカイトの攻撃をいなすと同時に、蹴りを入れて吹き飛ばす。
ゾワッ!
(殺気!)
背後から感じる凄まじい殺気にすぐさま振り向くと、ミドラが剣を中段に構え、深く息を吐いていた。
『オルフォルト流滅技・破邪顕正』
(どうくる!?)
剣と闘気の刀を構えて、身構える。
ミドラが剣を振り下ろしたと同時に、頭上から斬撃が現れ、寸前でガードするカイト。
ガッ
バキィッ!
ドォン!!!
頭上から降ってきた斬撃は、カイトの剣を易々とへし折り、闘気の刀でなんとか耐えるも、更に斬撃が重くなり地面に叩き潰されるカイト。
「ぐふっ、、」
「勝負あり!!」
勝負はミドラの勝利で終わった。
「は〜、やっぱつえーなミドラ」
「当たり前だ、たが気に食わん」
「なんでよミドラ君、勝ったじゃん」
「全力を出してないこいつにな、まるで試されている様な戦いだった、つまらん!もう一本だ!」
「ちょっと待て、結構全力だったって!」
「結構だと?やはり貴様!」
剣を乱暴に振り下ろすミドラを見て、ユシカの背後に隠れるカイト。
「落ち着けミドラ、お前達が全力を出すのはここじゃなくてもいいだろう」
「どけユシカ!その者に全力を出させるまでに我が追い詰めてやるぅ!」
かなりご立腹のミドラは結局この日1日中カイトと口をきかなかった。
こうしてカイトはグレアモル学園での留学はやっと始まったのであった。




