第2章 増える悩み
竜車に揺られ続けられること2日間、カイトは現在エリュードを北上し、モルバトまで1日かけて到着して休憩し、獣車を乗り継いだ後それからまた1日かけて北上し、大陸最北の国ガルナロートのウルスラと言う町にあるグレアモル学園へと到着した。
「到着しましたカイト様」
「お、やっとか!ありがとうございます」
ガタン
獣車から降りて、まず最初に目に映り込んだのは、バベルの塔の様な渦巻き状に建設された建物であった。
「うーっわ、、すっげぇ〜」
1番上の階層までは優に200メートルはあり、見上げるのに腰を曲げそうになる程目の前に聳え立つその建物に、圧巻されるカイト。
*「ははっ俺とおんなじリアクションしてる」
「ん?」
*「よっ!ひっさしぶり〜元気だった?」
「サバトじゃん!何してんだこんなとこで?」
「学園長から直々に学園内の案内をお願いされてね〜、大陸大会後のお祭りで一緒に楽しんでる所見られてたみたいでね」
「そうなのか、いや〜国外まで出るとやっぱ心細いからさ〜、知ってる奴に会えるのはなんだかホッとするな!」
「それじゃあ荷物を持って付いて来て」
「おけい!」
そう言ってカイトは案内役であるサバトの後を付いていく。
「まずはそうだね、一応説明しておくと、この塔全体が学校になっていて、全部で10階層の造りになってるの」
「此処が学園の入り口!」
少ししたら階段の前で足を止めて、10数段先の塔の入り口を指しながら説明する。
説明し終わった後、階段に登りそのまま塔の入り口へと入っていく。
「今歩いているのが1階層の廊下で、この廊下を出ると!」
ガチャン
薄暗い廊下の先にあった大きな扉を開くと、真っ先に光がカイトの目を眩しく照らし、光に目が慣れた瞬間に目の前に映った風景に驚く。
「此処が自由広場、、1階の施設は此処と併設された食堂がメインになっていて、授業終わりに生徒たちが集まって談笑したり、復習したり色々やってる」
円形に広がる広大な広場、前世でいう大きめのショッピングモールの一階ぐらい広い場所で、扉から入った左右の端には昇降台が各3基併設されていた。
「やばいなぁ、もう1階で迷子になりそう」
「僕も此処になれるまでは1ヶ月かかったからね、早くなれるといいね」
「あ、そうだ、一応大まか学園内の構造を説明すると、1階は自由広場、2階は寮になっていて、3階は図書室とトレーニングルーム、4〜6階は学科教室があって、7〜9階は訓練所になっていて、10階は学園長室と教員室になってる」
「大体分かったよ、、ちょっと結構な長旅で疲れたし、寮の案内頼んでいいか?ちょっと休憩がしたい」
「あぁ、そうだね!それは気付けなくてごめん!えぇっと、じゃあ昇降代に行こうか」
入り口から見て右端にある昇降台に乗ると、入り口付近にある穴に向かってサバトが手を入れて魔力を放つ。
「この昇降台は乗った本人達が自分で必要な魔力を注入して動かしてるんだ、2階に着きそうになると」
ピコンッ
サバトが穴の上を指すと1〜10階の各パネルの2階部分が点灯し。穴から手を出した。
目的の階層で点灯したら手を離せばそこまで自動で止まってくれるから一応使い方はこんな感じ、後補足なんだけど今乗った昇降台は東昇降台ていう名前ね、西と東があるから授業や用事によって、出口と用事のある場所が近いから慣れたら使い分けて」
「分かった」
ゴォーッ
昇降台から出ると左右に分かれた道があり、前を見ると大きな穴が空いていて、腹の位置まで立てられた手すりからは、下の階層が見えた。
「はぁ〜、すげぇ構造だな」
「ね、中には此処で生活したいっていう理由だけで入ってくる生徒もいる程だからね」
一応カイトの今いる東昇降台は時計で言えば3時の方角に位置しており、12時から3時までのエリアが1年寮。
昇降台を挟んで3時から6時までのエリアが2年寮。
階段を挟んで6時から9時までが3年寮となっている。
「因みに1年ごとに寮の部屋が豪華になっていくからそれも楽しみのうちの1つなんだぁ〜」
「へぇ〜、3年の隣の北西エリアは何があるんだ?」
「あそこにはカフェテリア見たいなのがあって、3年寮のとなりだから基本は3年しか使ってないんだ、1年寮の隣でもあるけど、やっぱり3年には気を使うしね」
「どうせミドラはそれでも使ってたんだろうな」
「あっはは、流石カイト!よく分かったね!」
そうこう話していると2年寮に着いた。
(カプセルホテルみたい、、)
綺麗に等間隔にずらりと数百メートルも並んだ四角い建物は、カイトの前世で馴染みのある物を彷彿させた。
各部屋には番号札が貼られてあり、カイトの部屋番号は201だった。
「1番奥じゃん、、」
「まぁそう言わずに入りなよ」
ガチャ
扉を開けると、これまた高級マンションの一室の様なリビングになっており、窓は全面ガラス張りで、グレアモル学園の近くにある町を一望できる絶景で、部屋の左には扉が2つあり、右に1つあった。
「前言撤回!ここ最高ぉ〜!」
「ははっ、あんまり大声出すと、すぐ隣の3年に文句言われるよ」
*「誰だぁ!?我の部屋で獣の様な耳に障る大声を出しておるのは!」
「え?」
ダダダッ!
ガタンッ
リビングの右部屋から聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえ、中からミドラが扉を勢いよく開けて、カイトに向かって走り出した。
「よっ、久しぶりだなミドラ」
「ぬおっ!カイトではないか!久しぶりだな!なぜグレアモルにおるのだ?」
「留学に来ちゃった〜」
「ミドラ君、、昨日説明しなかったっけ?カイトが俺たちの寮に来るの?」
「え?俺たちの寮?」
「うん、カイトの部屋は俺たちと同じ201だよ!」
そう言って満面の笑みで201の番号が書かれた鍵をカイトに見せた。
「おぉ〜!最高じゃん!寮は3人で一室って聞かされてたから、知らない人だったらどうしようかと思ってたんだよ!」
「それじゃあ、荷物を片付けたら、今日はカイトの歓迎会だね!」
「おっ!そんな事してくれるのか!?」
「うむ!当たり前だ!新しい従者が入ったのだからな!」
「何で従者になってんだよ、、」
こうしてこの日はミドラとサバトに歓迎会を開いて貰い、この日は道中の疲れもあって、珍しく筋トレをせずにベッドでそのまま寝たカイトであった。
ーー次の日
「おーいカイトー、そろそろ起きろー」
「んぅ、、もうちょっと待ってくれ、、」
「昨日はしゃぎ過ぎたか?まぁ無理もない、我の踊り芸を見て、泣きじゃくっておったからな」
「ぷふっ、、思い出させるなってミドラ、昨日の腹踊りマジで面白かったんだからな」
「ほら起きろ!サバトに残りの学園内を案内してもらうのだろ?」
ミドラに布団を剥がされ、やむなく起きるカイト。
それから朝食を食べ終えた後、部屋を出てサバトに学園内の案内の続きをしてもらう。
3階のトレーニングルームはかなり設備が整っており、ジムの様な感じで、図書室はあまりあまりウルミストと変わらない感じの静かな空間だった。
4〜6階の学科教室はかなり多く覚えきれなかったカイトは、サバトについていく事にした。此処の授業方式はウルミスト同じく、朝から昼は勉強で、昼から夕方までは剣術訓練、夕方からは自由時間が設けられている。
7〜9階の訓練所は、各階層に4つの大部屋があり、大部屋の中に入ると、壁一面がガラス張りになっていて、寮部屋と同じ様に景色を見渡せた。
「景色にこだわって作ってんな〜、このガラス強度とか大丈夫なのか?」
「うん、かなり特殊な加工が施されてるみたいだから大丈夫、それに訓練中はガラスの前にシャッターが閉まるから、ガラスが傷つく事はないんだ」
「成程、それじゃあ次行くか」
「次の教員室で最後だね」
昇降台を上がり、教員室へ入る。
教員室へ入ると窓口の様な所があり、サバトが窓口の人とこそこそ喋っていると、黒髪の肩まで伸びた、一見雰囲気がキリッとしていてシェインに似た女性がカイトの前に来た。
「ユシカ先生、この子がウルミストから来た留学生のカイト君です」
「カイト、この人が僕たちの担任兼、剣術顧問のユシカ先生」
「君がウルミスト学園のカイト君か、よろしく頼む」
「はい!半年間お世話になります!」
「長い旅路で疲れてると思うが、残念な事に明日から授業が再開する。今日はしっかりと休んで明日の授業に備える様にな」
少し男口調が混じった感じだが、気に留めないカイト。90度に腰を曲げ、差し出された手を丁寧に握り返す。
「はい、それでは失礼します」
教員室を後にし、昇降台へ戻るカイトとサバト。
「じゃあ次は学園長のとこだね」
「え!?学園長?」
「うん、一応お世話になるんだし挨拶しておいた方がいいでしょ?」
「んー、、まぁそうだけどー」
「どうしたの?緊張?」
「ちょっと嫌というかー、なんていうかー、偉い人を前にするとお腹壊しちゃう癖があってー」
*「だったら僕が魔法をかけてあげるよ、はいっ!」
『コンディションヒール』
突如背後から姿を表した人物に、雷走を使ってな距離を取る。
「おっ、、カイト?大丈夫だって!ほら、この人がネゼル・グレアモル学園長だよ」
「お勤めご苦労さん、サバト君、僕はちょっとこの子と2人きりで話がしたいから、はい、君には休日に働いたご褒美としてお小遣いをあげよう!」
肩の手前まで伸びた苺色の髪をかきあげながらネゼルは指をなるすと、サバトのポケットが少し膨らんだ。
「うぉっ!こんなに!?アザース!じゃあなカイト!」
すぐにサバトはそれがお金だと理解し、すぐに昇降台で降りて行った。
(最悪だー)
((安心しろ、俺様がいる、何かあったら俺様を盾にして逃げろ))
((あぁ))
「ふふん、そんなに警戒しなくても、君を取って食わぬようノイド学園長には厳しく言われている、さぁ行こうか」
そう言って昇降台に乗せられ、上昇していくが分かるが、10階層までしかパネルがないので、何処も点滅せずに昇降台が止まる。
「さぁ此処が僕の部屋だ、お入り」
昇降台を降りて、部屋の中へと警戒しながら入っていくカイト。
ブワンッ
突如部屋の地面が光だし、脱力感が襲いかかって来たのを感じたカイト。
「何すか、、今の?」
パンッ
「はいっ!お遊びは此処まで!」
「お遊び?」
((おい、アッシュ!))
((、、、、))
アッシュを呼び出そうとするも、出てくる気配は感じない。なんなら魔力すら練る事ができなくなっている事に気が付いたカイトは、一瞬にして嵌められたと思う。
「君とはお話がしたくてね、まずは失礼だが、この部屋での魔法は制限させてもらったよ?勿論精霊との繋がりも一時的に切らせて貰っている」
「空間魔法の一種か、、」
「おぉ、ご明察!さっきの光は結界が張られたのではなくて、空間転移さ」
「話とはなんですか?」
「取り敢えずそこの椅子に掛けて貰えるからカイト君」
「、、、」
何か仕掛けが無いか調べるカイト。
「よしたまえ、取って食おう物なら、この学園に入ってきた瞬間から君は死んでいるよ、何せこの建物自体が僕の胃の中と行っても過言ではなくてね」
「はぁ、、」
諦めの入ったため息を吐きながら椅子に座るカイト。
フワンッ
「なんだ!?」
「やはり、そうだったか」
カイトが椅子に座ると同時に、椅子が光を放った。即座に立ち上がり、腰の剣に手を当てる。
「落ち着きたまえ、、その椅子は君が何者かを明確に教えてくれるただの道具さ」
「俺が何者か?」
「あぁ、君がこちら側の世界の住人か、もしくは、、」
ネゼルのもしくはの一言に、心臓が僅かに縮まるのを感じるカイト。
「おっと心臓が僅かに縮んだねぇ、どうだい?少しは話をする気になったかい?」
「分かりました、、警戒は解きませんが、話はします」
「良かった!それでは!」
パチン
ネゼルが指を鳴らすと、カイトの目の前に紅茶と菓子が置かれた低いテーブルと、ソファーが現れた。
「それではお話をしようか、、そうだね、まずは君の出自からだね、勿論こっちではなく、向こうのね」
(やっぱり知られたか、、あの椅子はおそらく俺が転生者かどうかを知る装置)
「その前に、何があんたに俺が何者かという疑問を抱かせたんですか?」
「そうだねー、僕と君は同じ運命の悪戯によって踊らされている道化だからさ、と言っておこう」
「昔同じ様な事を聞かれたんですけど、同じ者同士で感じる物があるのですか?」
カイトの質問にはにかみ、目を閉じる。
「あぁ、僕には感じるよ、それよりも同じ事を聞いてきたその者の事も気になるけどね」
「それは話しません、貴方の事を100%信用してる訳では無いのですから」
「それじゃあ質問に答えたから、今度は僕の番だね、先程の質問の続きを」
カイトは簡潔に自分が元いた世界の話をした。
「成程、つまり君はこの世界ではなく、別の世界で生を受けた事があると、、」
「まぁそんな感じです」
ネゼルの顔から余裕の笑みが消え去り、深くなにかを考えている。
「だとしたら君と僕は同じ運命にはいないね、君のはもっと光の当たらない深海の如く深く、ややこしい立ち位置にいる。分かりやすくいうと、歯車を狂わす者さ、そう、あの男の様に」
一瞬だが、あの男の部分と言った瞬間に、空気が凍てついた。
それに感づいたカイトは、この男と転生者と呼ばれる人はもしかしたら何か関係があるのだと予測する。
「僕の存在が歯車を狂わすって、言っている言葉が抽象的過ぎて意味が分からないです。狂わすといっても、狂わせる気持ちはないですし、、」
「ほう、なら元の世界には帰りたく無いと、、」
その言葉に点と点が線となって繋がった。
「元の世界に帰る事が、歯車を狂わす事になるのですか?」
「あぁ、僕はその方法を知らないが、それをやろうとして狂わした人物を知っている」
「納得できる理由がなければ、探し続けますけどね」
「おっとそれ以上は何も言わなくてもいい、君と同類だと思われたら、君の運命に呑み込まれる、、それだけは勘弁してほしいものだ」
ゆっくりとカイトの耳に近づき、小声で囁く。
「何処に耳があるか分からないからね」
「話は以上だ、君の事を知れて良かったよ!これから半年間よろしく頼むよ!」
パチンッ
フワンッ
((おいカイト!))
気が付くと、寮の前にいたカイト。
「ん?なんで此処に?アッシュ?」
((何があったんだ!?))
((あの部屋に入った瞬間、空間転移させられて、俺らのリンクを切られたんだ))
((あの道化野郎、、小賢しいな))
((まぁ五体満足で帰って来れたよ))
((次会う時は俺様も横にいといた方がいいな))
((あぁ、色々話したんだけど、あの人俺と同じ転生者かも知れない))
((あいつもか?何を企んでやがんだ?))
((さぁ、ただ俺の存在は運命の歯車を狂わす者だって言われて、、))
((あぁん?道化の次は占い師のつもりか?))
「あぁ〜、また悩みが一個増えたぞー!」
「ふふん、未だかつて、かの英雄アハトでさえその姿を見た事がない、鬼神をその身に宿した転生者か、どうなる事やら、、」
*「ネゼル様、お客人がお見えです」
「おぉっと?だれかな〜?」
*「古き友エシュロンとだけ伺っております」
昇降台からダイヤの様な宝石が額に埋め込まれた女性が現れ、ネゼルに報告だけをし、再び昇降台へと消えていった。
ブゥワンッ
瞬間、ネゼルの部屋が一瞬にして暗い城の広間の様な場所に様変わりした。
「おやおや、あいも変わらず、まだ許可を出してもいないのに、、」
グワンッ
空間がねじ曲がり、中から真っ白の顔をした上下タキシードの美青年が現れた。
「久しぶりだな、ネゼル」
「姿は違えどその紫色の邪な目と魔力、生きていたんだねエシュロン」
ネゼルの前に現れた青年の正体は、1年前にエルグランドを襲撃した黒幕、魔族の王エシュロンだった。
「世間話をしにきたのではない」
「ふふん、それなら話が長くなりそうだね、茶でもどうだい?」
そう言って指を鳴らすと、カイトをもてなした時とは一層格式が違う、高級なテーブルと茶菓子が現れ、2人は席についた。




