第2章 留学
「ふっふふーん、ふっふふーん、ふーんふーん」
「ずいぶん上機嫌だなカイト」
「そりゃあねぇ、、ようやく師匠から一本取れたんですよ?もう闘技会で優勝した時より嬉しいっす」
上機嫌で鼻歌を歌いながら夕食の支度を手伝うカイト。
「バツナ草の洗浄とミューカルの千切り完了〜!」
闘気の腕を使った見事な手際で千切りと洗浄を2つ同時に進行し、終わらせるカイト。
「せっかく魔力も戻ってきたというのに、普段の生活でも特訓とは、、」
「ようやく1つ壁を越えても向こうにはまだまだあるんでね、努力は疎かにしません!塩お願いしますぁす」
夕食の支度を終え、食卓に豪勢な食事を並べた後、丁度のタイミングでシエルが帰宅した。
「ただいまー!お母さんお土産買ってきたよ〜!」
花の刺繍をしたパンパンの手提げ袋を持ち上げながら家に入ってくるシエルと目が合うカイト。
「あ、カイトさんもいらしてたのですね」
「ごめんね〜、ちょっとお邪魔さして貰ってる〜」
「豪華な料理、、何かお祝い事あったっけ?」
「今日カイトがうぐっ」
シェインが話をしようとするも、急いで口を塞ぐカイト。
「師匠、、、師匠の口から直接おっしゃって下さい」
キリッとした表情で、ヴァイス本人の口から言わせるカイト。
「あぁ、今日カイトに殺されかけたのだ、それで焦ったカイトが」
「ちょっと師匠!!それじゃ無いですって!何度も謝ったじゃ無いですかぁ!」
「ふっ、冗談だ、、今日カイトに一本取られたのだ」
「え!?うそっ!?」
「にっひひ〜本当本当!」
カイトはそう言って嬉しそうにポケットルームから自慢の愛剣ならぬ愛刀をシエルに見せつけた。
「かの伝説の鍛治師イーグスタ・グラニエルに打って貰った最高の業物だ、これのお陰で初めて師匠から一本取れた」
「凄い綺麗な剣ですね〜、形もなんだか変わってて、私の顔が刀身に写ってるー」
「イーグスタに打って貰った剣か、確か今はもう現役から退いたと言われていたが、、」
鍛治師の名前を聞いて、シェインが反応した。
「現役を引退してたとこを、僕が引っ張り戻したんです!シエルも2年になったら愛剣の課題あるから打って貰いな、俺が話付けておくからさ!」
「え!?いいんですか!?よくわからないですけど有名なお方なんですよね」
「そうだ、イーグスタの打った武器を所持しているかいないかだけで、戦の勝ち負けが決まるとまで言われた程の鍛治師の中でも特別とされる特級鍛治師だ、私がシグニカ王国で団長に就いていた時も使っていたのは奴の打った剣だった」
「へぇ〜、そこまで深い話は知らなかったですね〜」
「お前がどの様にしてイーグスタのモチベーションを上げたかは知らないが、取り敢えず身に余る程の武器だと思われない様にな」
「はい!」
それからヴァイス家の一家団欒に少し混じり、皿洗いを手伝った後、ヴァイス家を後にし家に帰るカイト。
ーーそれから3日経った後、教員室にて。
「はい、これで正式な手続きは完了しました!2日後には留学先のグレアモル学園のカリキュラムを受けて頂きますので、それまで準備をしておいて下さいください」
「はい、ありがとうございます」
ガラガラ
「カイト、、こんなとこで何をしている?」
「師匠!おはようございます!ちょうど今留学の手続きを終えた所でして、今から学園長に呼ばれているので向かおうと」
「そうか、、少し授業に活気が減るな」
「そうっすね、、まぁ強くなって帰ってきますので、また帰ってきたら手合わせお願いしますね!」
「あぁ、楽しみにしているぞ」
「それじゃあ行ってきますね」
ヴァイスと別れた後、足早に学園長室へと向かうカイト。
コンコン
「はいよ〜」
ガラガラ
「失礼しまーす、、用って何でしょうか?」
「来たか、、まぁ腰掛けなさい」
学園長の机の前に新調されたソファーに座り込むカイト。それからいつもの様な柔らかい物腰で留学の手続きの話を軽くした後、話がグレアモル学園に移る。
「もう一度聞くが本当にグレアモル学園でよかったのか?あそこには、、」
「分かっています、ネゼル・グレアモル学園長ですよね。何を企んでいるか分かりませんが、何もしてこないと思います」
カイトの言葉にノイドが真剣な面持ちになる。
「何故じゃ?同級生をさらった挙句、アルベルト君を半死まで追い込んだ奴じゃぞ?」
「何て言うでしょうかね、、勘ですかね、もし僕に何か万が一な事があればどうなるか、学園長から直々に圧をかけていると思うので、簡単には手を出してこないでしょう」
「そうじゃろうが、やはり何処か落ち着かん」
「大丈夫ですよ、何せ学園長ですら恐れている最強の精霊が僕には付いていますから」
『おうよ!俺様がいんだじぃさん、大丈夫だって』
「分かりました、、それじゃあもう何も言うことはない、大陸大会までに楽しむのも良いが精進するんじゃぞ?」
「了解でーす!」
ーーそして留学当日
「おっし、これで荷物もバッチリ!行くかー!」
「いやー!」
「いやー!」
部屋で2つのでかいバッグを閉め、持ち上げようとした途端、勢いよくドアが開き、外からアルトとエリーゼがカイトの各足に引っ付いた。
「ちょっ、動けないから離してくれ2人とも〜」
「やー!」
「いかないでにーに!」
「あら、何やってるの2人とも、にーにが歩けなくなるでしょ?危ないからおいで」
ぐずるアルトとエリーゼの声を聞いたカミラが2人を引き剥がす。
「あー!いやだー!にーに!」
「にーに!遊んでー!」
「ほらカイト!今の内に行きなさい!」
「助かった母さん!じゃあなアルト!エリーゼ!」
素早くエリーゼとアルトの頬にキスをし、部屋から出て、そのまま家から出るカイト。
「ふぅ、、家から出るだけで骨が折れるわ、まぁ訓練で疲れた俺を癒してくれる2人に会えないのは辛いけど、新しい環境に身を置くのはやっぱりワクワクすんな〜」
「よぉ〜カイトー!」
「ん?おぉ〜ルフトじゃん、ちょっと待て、何でみんなもいるんだ?」
「お見送りぐらいさせてよ」
「やほやほ〜」
「何で俺まで、、」
「カイトさーん!」
「私は別にいなくても、、」
ルフトに続き、セニカ、ラゼッタ、シエル、スカーレット、アルベルトまでもがカイトの見送りに来た。
「グレアモルに行くんでしょ?ミドラにあたしの事喋ったらはっ倒すからね」
「ほら、荷物貸して、城下町の獣車まで送るから、みんなで行こ」
「あぁ、荷物なら大丈夫、ルフトー!浮かせ役よろしくー」
「えー?いやだよー、、しんどいからあれ」
「カイトのお見送りなんだからそれくらいやってあげなさいよ」
「そうだね、やってあげようカイト君」
スカーレットの一言で、直ぐに意見が変わるルフト。
(スカーレットの奴、ルフトの扱い慣れてきてんな)
そこから歩いて城下町にある獣車の停留所まで向かい、荷物を預けるカイト。
「うっし、、それじゃあ」
「あぁ、元気でな」
「おう」
「弱くなって帰ってくる事にならない様、祈らないでおく」
「結局弱くなって欲しいってことね、一生無理な願いだなアルベルト」
「じゃあね、帰ってきた時にまた手合わせ楽しみにしている」
「あぁ、ルフトのいじめるのも程々になスカーレット」
「じゃあね〜」
「それだけかラゼッタ?ははっ、まぁ、お前らしいけどな」
「私もカイトさんが帰ってきたときには、今より立派になってみせます!」
「いいねぇ〜、お互い頑張ろうなシエル」
「じゃあねカイト、、半年間とても長いけど、たまには会いに来てね、手紙もいっぱい出すから、ちゃんと読んでね、あとそれと、、」
「ありがとうセニカ、、俺も寂しいけど、成長した姿をセニカに見せられる様頑張るから」
「あっ、後みんなに言い忘れてたけど、今年の大陸大会だけど、俺出れないから頑張って!じゃあな!」
バタンッ
最後の捨て台詞に突っ込む暇すら与えずに獣車に乗り、その場から去っていった。
獣車の背後からラゼッタの怒鳴り声などが聞こえたが、男は前を一度向いたら後ろを振り向くべからず。
「次会ったとき何されるかわかんねぇけど、そん時の俺に託した」




