第24話 ハプニング?穏やかな休日
ここ数日は比較的穏やかに過ぎた。
――そう、本当に比較的に。
店を開ければ客が来て、閉店すれば販売メモを見ながら帳簿をつける。夕食後には必要な薬を補充し、足りなくなりそうなものは翌日のために書き出しておく。次の日、客の少ない時間に俺がそれを買いに行く。
ここ数日で、日々の仕事はそんな流れに落ち着いていた。
問題が起きたのは、そんなある日のことだった。
いつものように店を開けていると、何度か薬を買いに来ている男が俺を見た。
「そういや嬢ちゃん、この兄ちゃんは誰なんだ?」
フィリエンヌが俺を見る。
「レオナールです。今は一緒にこの馬車に住んでます」
「まじか!」
男は驚いた顔で俺とフィリエンヌを交互に見た。次の瞬間には満面の笑みを浮かべている。
何がそんなに嬉しい。
男はそのまま機嫌よく帰っていった。
嫌な予感しかしない。
間違ってはいない。
そう、間違ってはいないのだ。
フィリエンヌが言ったことは何一つ間違ってはいない。
だが、言い方というものがある。
そして、その嫌な予感は当たった。
翌日には別の客から「嬢ちゃんの旦那」と呼ばれた。
「旦那じゃない」
その次は買い出し先だった。
「薬屋の嬢ちゃんの旦那だろ?」
「旦那じゃない」
店へ戻れば、また別の客に言われた。
「旦那、傷薬一つくれ」
「旦那じゃない」
噂というものは、どうしてこういうときだけ広まるのが早いのか。
フィリエンヌは事実を言っただけだ。分かっている。だから怒るに怒れない。
だが、この数日で俺が一番多く口にした言葉は「旦那じゃない」になった気がする。
日々の仕事は問題なく回っている。
だから、比較的穏やかだった。
本当に、比較的に。
そして今日は、店を開いてから初めての定休日だった。
いつもの時間に目が覚めた。
定休日だからといって、朝まで変わるわけではない。寝台から起き上がると、シュネリュも目を覚ましてこちらを見る。
「朝飯にするぞ」
「キュ」
調理台へ向かうと、シュネリュもいつものようについてきた。
昨日買っておいた食材を取り出し、朝食を作る。シュネリュの分を味付けする前に取り分け、残りを仕上げる頃には、フィリエンヌも寝台から起き上がってきた。
「おはようございます」
「おはよう。もうできるぞ」
三人でいつも通り朝食を食べる。
店を開ける必要がないせいか、いつもより時間を気にせず食べられる。食事を終える頃、今日の予定を何も決めていなかったことを思い出した。
「フィリエンヌ。今日は初めての定休日だが、どうする?」
「そうですね。薬草を見に行きたいです」
「……休みの日まで薬草か」
「定休日は薬草を買いに行くためでもあるんですよね?」
「それだけじゃない。体を休めるためでもある」
「薬草を見るのは疲れませんよ?」
「お前はな」
予想していたような、していなかったような答えだった。
だが薬草の買い出しも、定休日に済ませておきたいことの一つではある。
「分かった。なら朝飯を片づけたら町へ行くか」
「はい」
「キュ!」
シュネリュまで返事をした。
どうやら今日はついてくるらしい。
初めての定休日は、三人で町へ出ることになった。
朝食の片づけを済ませ、最初に向かったのは、もちろんフィリエンヌが希望した薬草店だった。
店に入った途端、フィリエンヌは並べられた薬草を順番に見ていく。時折手に取って葉や茎を確かめては戻し、別のものを手に取る。
俺には同じ薬草ならどれも大して変わらないように見える。
フィリエンヌが一つの薬草を手に取ったところで、その隣に並んでいたものを指した。
「これとどう違う?」
「鮮度が違います。こちらの方が新鮮です」
「……同じに見えるが」
「こっちは葉の端が少し乾いてます」
「これか?」
「そこじゃないです」
指した場所が違ったらしい。
もう一度見比べてみるが、やはり俺には大した違いがあるようには見えない。
少し離れたところには、今フィリエンヌが見ているものとよく似た薬草が積まれていた。
「こっちにも同じような薬草があるぞ」
「それとこれは種類が違います」
「違うのか?」
「はい」
「……どこが?」
「葉の形が違います」
「同じに見える」
「全然違いますよ?」
フィリエンヌが不思議そうに俺を見る。
どうやら本気で言っているらしい。
もう一度二つの薬草を見比べた。言われてみれば違うような気もするが、これを一人で見分けろと言われても自信はない。
瓶や紙なら頼まれたものを買ってこられる。薬の材料でも、何をどれだけ買えばいいのか指定されていれば問題ないと思っていた。
だが薬草は駄目だ。
同じ薬草でも状態を見なければならず、似ているからといって同じ種類とも限らない。
フィリエンヌはそんな俺を気にすることなく、必要な薬草を選び始めた。
……今後、薬草に手を伸ばすのはやめておこう。
必要な薬草を買い終え、店を出た。
気に入った薬草が思っていたより安く手に入ったらしく、フィリエンヌは満足そうに袋を抱えている。珍しく小さな鼻歌まで聞こえてきた。
俺には最後まで何がどう違うのか分からなかったが、かなり満足のいく買い物だったらしい。
三人で市場の方へ歩いていると、通りにある服飾店が目に入った。
そういえば、この数日で随分と暑さが増した。昼間だけでなく、夜も少しずつ寝苦しくなっている。
「なあ。この数日、暑さが増して夜も寝苦しくないか?」
「そういえば、少し暑いですね」
「あそこの服屋で夏用の寝巻を買わないか?」
「いいですよ」
フィリエンヌに異論はないらしい。そのまま三人で服飾店へ入った。
店内には普段着のほか、薄手の寝巻もいくつか並んでいた。
フィリエンヌは女性用の寝巻を順番に見ていく。飾りのついたものにはほとんど目を向けず、手で生地を確かめていた。
店員が一着の寝巻を手に取る。
「今の時期でしたら、こちらはいかがですか? 薄手ですので、これから暑くなっても涼しく着られますよ」
半袖で裾はふくらはぎほどまである。飾りも少なく、随分と簡素な寝巻だった。
店員がフィリエンヌの体に軽く当てて丈を確かめる。
「こちらなら大きさもちょうどよさそうですね」
「薄いですね」
「ええ。でも透けるほどではありませんよ」
「これにします」
「二着買っておけ。これから暑くなるし、洗濯すると厚手の寝巻にするのは辛いだろう」
「そうですね。では、もう一着お願いします」
フィリエンヌは同じように薄手の寝巻をもう一着選んだ。
俺も男性用から薄手の上下を二組選ぶ。
二人分の寝巻を持って店員のところへ行くと、店員がそれぞれを見比べて微笑んだ。
「ご夫婦でしたら、こちらの寝巻もお揃いで――」
「旦那じゃない」
「あら、失礼しました」
もう何度目になるか分からない言葉が、考えるより先に口から出た。
隣を見ると、フィリエンヌは気にした様子もなく自分の寝巻の生地を触っている。
「これなら夜も涼しそうですね」
「……そうだな」
どうやら気にしているのは俺だけらしい。
寝巻を買い、俺たちは服飾店を出た。
そのまま市場へ向かった。
昼も近くなり、市場は朝より人が増えている。野菜や果物、肉や魚を並べた店の間を歩きながら、夕食に使えそうなものを見ていく。
薬草店では俺がフィリエンヌについて歩いていたが、ここでは逆だった。フィリエンヌはシュネリュと一緒に俺の後ろをついてくる。
いくつかの店を見ている途中で、後ろからついてきていた気配が止まった。
振り返ると、フィリエンヌが果物を並べた店の前で足を止めている。籠には瑞々しく熟した桃が積まれていた。
近づくと、甘い香りが漂ってくる。
「桃が好きなのか?」
「食べたことがないので分かりません」
「ないのか?」
「はい。でも、とても好きな匂いがします」
「気になるんだろう?」
「……はい」
「なら買うか」
何個か状態のいいものを選んで店主に渡すと、フィリエンヌがその数を見た。
「そんなに買うんですか?」
「俺が食いたいからな。余る量じゃない」
「レオナールはこの桃が好きなんですか?」
「嫌いじゃないぞ。甘くて果汁が多くて旨い」
「そうなんですね」
フィリエンヌが、店主から受け取った桃の入った袋を見る。
食べたことがないと言っていたわりに、随分と気になるらしい。
薬草ほどではないが、桃も相当気に入っているようだ。
覚えておいてもよさそうだ。
さらに市場を歩いていると、今度は香ばしく焼けた肉の匂いが漂ってきた。
そろそろ昼飯にしてもいい時間だ。
匂いのする方を見ると、いくつかの屋台が並んでいた。
その中から、肉を焼いている店へ向かった。
串に刺した肉が炭火の上で焼かれ、脂が落ちるたびに香ばしい匂いが広がる。
足元を見ると、シュネリュも匂いにつられたのか鼻を動かしていた。
「ここで昼飯を買って食べないか?」
「ここでですか?」
「嫌か?」
「いえ。屋台のものは食べたことがないので」
「そうなのか?」
「はい。どんな味なのかは気になっていました」
それならちょうどいい。
屋台には甘辛いタレをつけたものと、塩だけで味をつけたものが並んでいる。
「タレと塩がある。どっちにする?」
「塩がいいです」
「やっぱりそっちか」
「分かってたんですか?」
「十日も飯を作っていればな。お前はこってりしたものより、さっぱりしたものの方が好きだろう」
「そうかもしれません」
本人はあまり意識していなかったらしい。
俺も塩を頼み、シュネリュには味をつける前の肉を少し焼いてもらえるか店主に聞いた。快く引き受けてもらい、三人分を受け取る。
近くの空いている場所へ移動すると、フィリエンヌは串焼きをしばらく眺めてから、一口食べた。
もぐもぐと噛む。
もう一口食べる。
「どうだ?」
「おいしいです」
「そうか」
「お肉の味がよく分かります」
「塩にして正解だったな」
「はい」
そう答えると、フィリエンヌはまた串焼きを頬張った。
シュネリュも焼いてもらった肉を夢中で食べている。
「キュ!」
「シュネリュもおいしいみたいですね」
「そうだな」
三人でそのまま昼飯を食べた。
特別な料理でもない。ただ肉を焼いて塩を振っただけのものだ。
それでも初めて食べるフィリエンヌには珍しいらしく、最後まで随分と満足そうだった。
食べ終えてから、夕食に使う肉や野菜を必要な分だけ買っていく。
暑くなってきた今の時期は、生ものを一度に買い込むわけにはいかない。保存の利くものはある程度置いてあるが、肉や傷みやすい野菜は少しずつ買うようにしていた。
必要な買い物をすべて終える頃には、昼を少し回っていた。
「そろそろ戻るか」
「はい」
フィリエンヌが答え、シュネリュも俺たちの足元へやってくる。
初めての定休日の前半は、こうして終わった。
俺たちは買ったものを抱え、三人で馬車へ戻った。
馬車へ戻ると、買ってきたものをそれぞれ片づけた。
薬草を所定の場所へしまい終えたフィリエンヌは、そのまま調合台の前に立つ。
何をするつもりなのかと見ていると、棚に並んだ薬の在庫を確認し始めた。
「フィリエンヌ」
「はい?」
「何をしている?」
「何か作っておこうかと思って」
「今日は定休日だぞ」
「はい。お客さんは来ませんから、ゆっくり調合できます」
そういう意味で言ったんじゃない。
放っておけば本当に薬を作り始めそうだ。
「フィリエンヌ。こっちに来い」
「何ですか?」
「いいから来い」
不思議そうな顔をしながらも、フィリエンヌが調合台から離れる。
寝台まで連れていき、座るように指で示した。
「座れ」
「はい」
素直に座ったフィリエンヌを見下ろす。
「今日は定休日だ」
「さっきも聞きました」
「体を休めるための休みでもあると言っただろう」
「でも、調合はできますよ?」
「できるかどうかの話じゃない。午前中ずっと歩いていたんだ。午後は休め」
「……休むとは、どうすることですか?」
「休むことを知らないのか?」
フィリエンヌは本気で聞いているらしい。
今までこいつは、休みの日をどう過ごしていたんだ。
「寝なくてもいい。本でも読んでいろ」
「師匠の備忘録でもいいですか?」
「……それで休めるならな」
「では、そうします」
ようやく納得したらしい。
フィリエンヌは師匠の備忘録を持ってくると、寝台へ戻って読み始めた。
シュネリュも午前中歩き回って疲れたのか、フィリエンヌの寝台の近くで丸くなる。
俺はそれを確認してから、買ってきた食材を片づけ始めた。
しばらくして振り返ると、フィリエンヌの手から備忘録が寝台の上へ落ちていた。
規則正しい寝息が聞こえる。
やはり疲れていたらしい。
「……だから休めと言ったんだ」
起こさないよう小さく呟き、俺は残っていた片づけを続けた。
片づけを終えると、久しぶりに剣を取り出した。
店を始めてからは料理に買い出し、帳簿までやるようになり、手入れも簡単に済ませることが増えていた。
鞘から抜いて刃を確かめる。汚れを落とし、傷がないか確認してから丁寧に手入れをしていく。
こうして剣を触っている方が、帳簿をつけているよりよほど俺らしい気がする。
手入れを終えて剣を鞘へ戻す。
フィリエンヌはまだ眠っていた。シュネリュも近くで丸くなったまま動かない。
さて、何をするか。
店は休みだ。買い出しも終わった。夕食を作るにはまだ早い。
しばらく考えてから帳簿を手に取った。
休めと言った手前、今から薬を作るわけにもいかない。それなら次の六日間でどの薬がどれくらい必要になりそうか、見ておくくらいならいいだろう。
傷薬は相変わらずよく売れている。咳止めと解熱薬は――。
帳簿を眺めながら、次の六日間に必要になりそうな数を頭の中で考える。
静かだった。
客の声も、調合する音もない。
聞こえてくるのは、時折シュネリュが立てる小さな寝息くらいだ。
帳簿を持ったまま椅子へ深く腰を預ける。
もう少し見ておこうと思っていたはずだった。
次に目を開けたとき、馬車の中へ差し込む光は少し傾いていた。
手元を見る。帳簿は閉じられないまま膝の上にある。
「……寝ていたのか」
思っていたより長く眠っていたらしい。
フィリエンヌを見ると、まだ寝台で眠っている。シュネリュも場所を少し変えただけで、再び丸くなっていた。
三人とも昼寝をしていたことになる。
こんなに静かな午後を過ごしたのは、いつ以来だろう。
帳簿を閉じて立ち上がった。
そろそろ夕食の支度をする時間だった。
夕食を作り始めてしばらくすると、フィリエンヌが目を覚ました。
「レオナール?」
「起きたのか。よく眠れたか?」
「もう夕食の支度ですか?」
「ああ。腹がすいたか?」
「そんなに寝てたんですか?」
「ああ。休みなんだからいいんだよ」
フィリエンヌはまだ少し眠そうな顔で寝台から起き上がった。
シュネリュも起きてきたので、味付けをする前に夕食の分を取り分ける。
買ってきた食材で夕食を作り、三人で食べ始めた。
食事が終わると、市場で買った桃を一つ取り出した。
「食べてみるか?」
「はい」
皮を剥いて切り分け、皿に載せてフィリエンヌの前へ置く。
甘い香りが漂ったのか、フィリエンヌの口元がわずかにほころんだ。
そのまま一切れ手に取り、口へ運ぶ。
しばらく黙っている。
どうしたのかと思って顔を見ると、今度ははっきりと頬が緩んでいた。
「気に入ったか?」
「……はい。すごくおいしいです」
「……そうか」
「甘いです。それに果汁がたくさん出てきます」
「そういう果物が好きなのか?」
「多分、好きです」
初めて食べたのだから、本人にもまだよく分からないらしい。
だが二切れ目へ伸びる手を見る限り、桃が気に入ったことだけは間違いなさそうだ。
桃を食べ終えたところで、今日一日を思い返す。
「今日はどうだった?」
「初めてのことばかりでした」
「疲れたか?」
「少し。でも、楽しかったです」
「何が一番よかった?」
「そうですね……」
フィリエンヌが少し考える。
「おいしいものが多かったです」
「そこか」
「はい。串焼きも桃もおいしかったです」
「薬草じゃないのか?」
「薬草もよかったですよ。安く買えました」
「……そうか」
結局、薬草も入るらしい。
それでも朝は薬草を見ることしか考えていなかったのだから、少しは休日らしい一日になったのだろう。
「今日はいつもより歩いた。早めに休め」
「昼寝しましたよ?」
「それでもだ」
「分かりました」
素直に返事をしたフィリエンヌを見て、食器を片づける。
食器を片づけると、フィリエンヌが桶に水を入れて持ってきた。
もう何度も繰り返した夜の習慣だ。
「レオナール」
「ああ」
後ろから水の音が聞こえ、しばらくして衣擦れの音に変わった。
「終わりました」
振り返る。
フィリエンヌは今日買ったばかりの寝巻に着替えていた。
半袖の薄手の生地に、ふくらはぎまでの裾。店で見たときはただ涼しそうな寝巻だと思った。
実際に着ているところを見ると、今までの寝巻より身体の線が少し分かりやすい。
一瞬、目が止まった。
「どうしました?」
「……いや」
「これ、涼しいですよ」
楽しそうに言うフィリエンヌを見て、ふっと頬の力が抜けた。
「そうか。買ってよかったな」
「はい」
フィリエンヌは嬉しそうに自分の寝巻を見下ろした。
俺は入れ替わるように清拭を済ませ、同じく今日買った薄手の寝巻へ着替える。
確かに今までのものより涼しい。これなら暑さが増しても少しは寝やすくなるだろう。
フィリエンヌは寝台へ入ると、毛布を軽くかけた。
「今日は早めに寝ろよ」
「はい。おやすみなさい、レオナール」
「おやすみ」
フィリエンヌが目を閉じる。
しばらくすると、昼寝をしたというのに静かな寝息が聞こえ始めた。
フィリエンヌが眠ったあと、いつものように酒を少しだけ杯へ注いだ。
馬車の中は静かだった。聞こえるのは、フィリエンヌとシュネリュの寝息くらいだ。
杯を傾けながら、今日一日を思い返す。
薬草店では、気に入った薬草が安く買えたと珍しく鼻歌まで歌っていた。
初めて食べた串焼きも旨そうに食べていたし、桃を食べたときは分かりやすく頬が緩んでいた。
休めと言っても何をすればいいのか分からなかったくせに、寝台へ座らせてみれば夕方までぐっすりだ。
今日のフィリエンヌは、楽しそうだった。
杯に残った酒を一口飲む。
定休日を作ったのは間違いではなかったらしい。
フィリエンヌを休ませることもできた。
それに――。
俺も随分と寝てしまった。
休めと言っておきながら、自分まで昼寝をするとは思わなかった。
だが、悪くはなかった。
残っていた酒を飲み干し、杯を片づける。
明日からまた六日間、店を開ける。
寝台へ横になり、目を閉じた。
「……休日ってのは、こんなものか」
初めての定休日が終わった。




