第32話それぞれの願い、それぞれの音
第32話(if):それぞれの願い、それぞれの音
扉を抜けた先に広がっていたのは、世界のどこにも存在しないはずの空間だった。 深い霧の中、色も形も曖昧な大地が広がっている。空はなく、ただ淡く揺れる光だけが足元を照らしていた。
ルカが、そっと手を握る。「……怖いけど、ここまで来られたの、みんながいてくれたから」 主人公が頷く。「ああ。これは俺たちみんなの物語だ」
ふいに、霧の奥から“誰かの歌声”が響いてきた。懐かしくもあり、切なくもあり――それでいて、どこか怒りを孕んでいるような旋律。
「……これは、私の……歌?」 セレスが足を止め、目を見開く。歌声は、彼女自身の声によく似ていた。
やがて霧が晴れ、光の中に“鏡のような存在”が現れる。
それは、セレスと同じ顔をしたもう一人の少女だった。だが、瞳に宿るものが違う。悲しみ、憎しみ、そして――絶望。
「私は、もう一人のあなた」 声が響く。「世界に拒絶され、誰にも受け入れられなかった可能性の、セレス」
セレスが震える。「どうして……あなたが、ここに……?」
「ここは“魂の奥底”。世界が拒んだ『才能の核』と向き合う場所」 鏡のセレスが近づいてくる。「あなたは誰かに必要とされたい。でも、それが誰かを傷つけると知ったとき、あなたはどうする?」
その問いは、セレスだけでなく、全員に突き刺さった。
ルカが立ち上がる。「それでも、私は……歌いたい。傷つけたくないけど、誰かに届いてほしい!」
クロウがうなずく。「俺もそうだ。力を持っているからこそ、守れるものがある」
エリスも静かに語る。「私も、過去に縛られたままじゃいられない。誰かの希望になりたい」
主人公が前に出る。「答えは簡単じゃない。でも、だからこそ――俺たちは進むんだ」
鏡のセレスが、ふと笑った。
「……ならば、その意志を見せて」
次の瞬間、空間が震えた。 霧が一気に晴れ、周囲に広がる光景が変わる。
そこは、過去と未来が交錯する“魂の試練”の場だった。
選ばれし者たちの歌が、再び響き始める――。
次回:第33話(if)「想いの交差点、そして扉は開く」




