第23話封印された真実と“世界外”からの声
第23話:封印された真実と“世界外”からの声
静寂――それは、風すらも息を潜めたような、異様な空気だった。
セレスは立ち止まり、前を見つめていた。何かを感じ取ったのだろう。
その瞳の奥に、恐怖でも不安でもない。明確な「違和感」があった。
「……聞こえる?」
ぽつりと、彼女が呟いた。
「誰の声だ?」クロウが眉をひそめ、周囲を警戒する。
だが、答える声はなかった。いや、彼らには――聞こえていなかった。
“――セレス。お前の歌は、境界を越える。”
耳元で囁くような声。それはまるで、風と共に運ばれる“何か”の言葉。
セレスだけが、それを聞いていた。
「この場所……この森じゃない。もっと、もっと遠くから……」
セレスの視線は上空――いや、“空の向こう”を見ていた。
「おい、セレス。大丈夫か?」リュカが声をかけるが、彼女はすでに集中の深淵に沈んでいた。
“――歌うな。これ以上は、世界が耐えきれない。”
低く、そして確かな怒りを孕んだ声が、今度は頭の奥に直接響いた。
「歌うこと」それ自体が、世界に何かを“知らせてしまう”。
セレスの身体が、小刻みに震える。
その時、地面が微かに揺れた。周囲の木々が軋み、空気がざわめく。
見えない“力”が、彼らを中心に渦巻き始める。
「来るぞ――!」クロウが剣を抜く。
現れたのは、形なき“霧のような影”。
目も鼻もない。だが、それがこちらを見ていると誰もが確信した。
「なにあれ……人間じゃない……」エリスが息を飲む。
“それ”は、セレスに向かってゆっくりと近づいた。
他の誰にも目もくれず、ただ彼女だけを見ている。
“――存在してはならない。お前は、世界の“均衡”を崩す。”
セレスが歌えば、何かが壊れる。
だが、それと同時に、何かが“繋がる”のかもしれない。
「逃げるな、セレス!」リュカが彼女の手を掴む。
「私は……歌いたい。まだ……終われない……!」
涙を浮かべながら、それでもセレスは前を向いた。
その声が――再び、空に向かって放たれようとしていた。
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