第21話天使の咆哮
第21話:天使の咆哮(if)
「……歌って、こんなに苦しいものなの?」
セレスがぽつりと呟いたその言葉は、夜風に乗って静かに消えていく。彼女の瞳は揺れていた。希望の灯火を宿しながらも、過去の影が色濃く滲んでいた。
「セレス、君の歌は人を救う。でも、それと同じくらい……自分を傷つける力もあるんだ」
主人公のその言葉に、セレスは目を伏せて黙った。
火を囲んでいたクロウが口を開く。
「今のうちに整理しておけ。あの貴族──リオネル・グレイヴ卿は、セレスの歌を利用しようとしてる。奴の手に落ちれば、次に狙われるのは“世界そのもの”だ」
セレスが小さく息を飲む。
「……私、怖い。誰かに歌を求められるのは嬉しい。でも……そのせいで誰かが苦しむのは、もうイヤ」
その言葉に、エリスがセレスの手をぎゅっと握った。
「それでも、あなたの歌が私を救ってくれたのは事実よ。あの日、あの歌がなかったら、私は今ここにいない」
セレスの目が大きく見開かれる。
「だから、私は信じてる。セレスの歌は、誰かの命を繋げる“天使の咆哮”だって」
――天使の咆哮。
その言葉が、セレスの胸に深く刺さる。
そうだ。私は、ただ歌いたかった。誰かに届いてほしかった。ただ、それだけだった。
「わかった。私、もう逃げない」
セレスはゆっくり立ち上がる。星空の下で、彼女はゆっくりと一歩を踏み出した。
「リオネルが私をどう利用しようと、関係ない。私は、私の意志で歌う。誰かを救うために」
その瞬間、彼女の背後に幻のような光の羽が広がった。
クロウが目を見張る。
「……覚醒の兆し、か。まさかここで……!」
主人公は静かに頷いた。
「セレス、君の歌で未来を変えよう。次の一歩は、世界を照らすはずだ」
夜明け前、彼女の歌声が、世界の闇を切り裂くように響き渡った。




