第20話歌声が導くもの
第20話:歌声が導くもの(if)
敵の猛攻が止まらない。
深紅の火球が森を焼き、地を揺るがす衝撃が連続する。セレスは怯えていた。けれど、クロウの声が彼女を引き戻す。
「セレス、逃げるんじゃねぇ。お前の“歌”が、みんなを守るんだ!」
彼の声に、セレスの目が見開かれる。
「……怖い。でも……私、歌える……!」
胸に手を当て、深く息を吸う。
そして、声が響いた。儚く、透き通った音色が、闇を切り裂くように広がっていく。
その瞬間――敵の動きが止まった。
彼らの目に、戸惑いと恐怖が浮かぶ。音が、意識を揺さぶっていた。
「これは……魔法か?」
「いや、違う……だが、力が……抜けて……!」
セレスの歌には、精神を癒し、同時に敵の闘志を削ぐ効果があった。それは神に授けられた“特異なスキル”。
だが、それを本人はまだ完全に理解していない。
その隙に、クロウが矢を番え、次々と敵を撃ち落とす。
エリスの炎剣が閃き、主人公――リオ――が前衛を抜ける。
「ここだ……!」
敵の指揮官を見つけた瞬間、リオは跳躍した。
剣が振り下ろされる寸前。
指揮官は、セレスの歌に惑わされ、反応が一瞬遅れた。
斬撃が深く肩口を裂く。
「ぐっ……まさか、歌如きに……!」
指揮官が倒れると、残った敵は統率を失い、次第に散り散りになっていく。
戦いが、終わった。
セレスは膝をつき、肩で息をしていた。
だがその顔は、達成感と安堵に包まれていた。
「……歌えた……私、ちゃんと……」
「すげぇよ、セレス。あんたの歌が、あの場を変えたんだ」
クロウが微笑む。エリスも小さくうなずき、リオはそっとセレスの肩に手を置いた。
「これが、君の力なんだ。まだ始まったばかりだけど、確かに“世界を変える力”だよ」
セレスの目に涙が滲む。けれど、それは嬉し涙だった。
彼女の中で、何かが芽生え始めていた。
力を、受け入れる覚悟。誰かを守るために、歌う決意。
次の旅路は、まだ険しい。
だが、この一歩が確かに未来へ繋がっている。
――次の一撃を、希望へ変えるために。




