第19話兆しと狙撃
第19話:兆しと狙撃
朝日が昇り始めた頃、俺たちは森を抜け、小高い丘の上にいた。
眼下に広がるのは、教団が支配しているという村。その中央にそびえる礼拝堂が、奴らの拠点の一つらしい。
「ここから先は慎重にいくぞ。何が仕掛けられてるかわからん」 クロウが前を歩きながら振り返る。
セレスは昨夜の疲れを残しながらも、毅然と立っていた。彼女の目は、迷っていない。あの夜を越えた今、彼女の中に一つの覚悟が芽生えているのが分かる。
「大丈夫。私、もう逃げない」
その言葉に、俺は小さく頷いた。
だがその瞬間だった。
パンッ——
乾いた音が、風を裂いた。
「伏せろッ!」 クロウの叫びと同時に、俺たちは地面に身を投げ出した。
礼拝堂の塔の上。そこに、狙撃手。
「魔力の弾丸か……くそ、厄介な奴だ」
「エリス、位置はわかるか?」
「塔の南西角。距離およそ三百メートル。……この距離、普通の魔法使いじゃ無理よ」
セレスが俺の隣で息を殺す。その肩が、微かに震えていた。
「セレス、落ち着け。あの歌は使うな、今は——」
「違うの……震えてるのは、怖いからじゃない」
彼女は立ち上がりかけた俺の手を握った。
「……私、誰かを守りたいって、初めて思えたの。あなたたちを見て、やっと……」
その目には涙が浮かんでいた。でもそれは、悲しみじゃない。強くなりたいという想い。
「……わかった。だけど、合図があるまで待て」
俺は腰の剣を抜いた。
「クロウ、エリス、陽動を頼む。俺が接近してあいつを仕留める」
「ま、無茶だけど……あんたらしいわね」
エリスが微笑む。
クロウは、ふっと息を吐いて頷いた。
狙撃手の魔弾が、再び空を裂く。
俺たちは動き出した。
それぞれの信じる想いを胸に、次の一撃を未来へ繋げるために。




