第16話囚われの少女
第16話:囚われの少女
黒い手が地面から溢れ、無数の指が蠢く。それはまるで生きているかのように、主人公たちに向かって伸びてきた。
「下がれ!」
クロウがすぐに叫び、剣を振るって黒い手を断ち切る。しかし、切られた手は霧のように消え、再び地面から湧き上がった。
「……こいつら、本体じゃないってこと?」
エリスが眉をひそめ、詠唱を始める。
セレスは震える手で主人公の袖を掴んだ。
「この声……さっきより……はっきり聞こえる……」
「声?」
主人公は彼女を見つめる。
セレスは怯えながらも、かすかに唇を震わせた。
「……"助けて"って……泣いてる声が、いっぱい……」
その瞬間、少女の鎖が音を立てて引き絞られた。
「やめて……!」
少女は悲鳴を上げた。
「エリス!」
主人公が叫ぶ。
「やるわ! 《聖なる炎よ、穢れを焼き尽くせ――フレア・パージ!》」
黄金の炎が渦を巻きながら黒い手を包み込んだ。燃え盛る光が闇を押し返し、悲鳴のような音が森中に響き渡る。
その瞬間、少女の身体から黒い霧が抜け、彼女は崩れ落ちるように膝をついた。
静寂が訪れた。
主人公はゆっくりと彼女に近づく。
「大丈夫か?」
少女は微かに顔を上げた。彼女の瞳は、どこか悲しげだった。
「……あなたたちは……?」
その問いかけに、主人公は答える。
「俺たちは……ただの旅人だ」
少女の唇がわずかに震えた。
「旅人……なのに、助けてくれたの?」
「そうだ」
少女はしばらく主人公の顔を見つめていたが、やがて目を伏せ、静かに呟いた。
「……ありがとう」
その一言が、森に溶けていく――。




